AI

2023年7月17日 (月)

生成AI時代の就活

 梅雨は明けたのでしょうかね。うなるような猛暑。当初は暑さに身体がなじまず調子が良くなかったですが,だんだんなじんできました。それでも,できるだけ涼しい屋内にいるようにはしています。屋外では,見るからに暑そうな格好をしているサラリーマンがいますが,気の毒です。服装はもっと自由にさせてあげたらよいのですが。就活ルックも変わるべきでしょう。個性のない服装は,これまでは,そちらの組織に染まりますという従順さのアピールで,就活生にとってマストであったと思いますが,いまや本人の平凡さを示すもので,伝統的な大企業を除くと,マイナスポイントとなりかねません。生成AIの時代,「あなたはAIを使って何ができますか」と尋ねられたときに,AIだけでできてしまえるような平凡な答えしか出せないようだと,成長性のある企業には,採用されないでしょう。いわゆる就活スーツを着ているような人は,第一印象として,平凡な人であるという印象を与えかねません。
 もちろん就活ルックは,就職活動期において,服装に悩まなくてもよいという点で効率的です。服装で競い合わないという学生間の「談合」が暗黙のうちにできあがって慣行化したという面もあるかもしれません。
 ただ,オンライン面接をしないような企業には将来性がないともいえます(オンラインでは服装もある程度自由になるでしょう)。最後の1回くらいは対面をするとしても,オンラインをできるだけ活用している企業を学生も選択したほうがよいでしょう。従業員に余計な苦労をさせるような企業は避けるべきです。
 ところで, ビジネスガイドの最新号では,「生成AIと人事労務」という特集のなかで,「キーワードからみた労働法」でも「生成AI」をとりあげてほしいというリクエストを受けました。私にとって「生成AI」関連で執筆した最初のまとまったものです。今日,労働問題において,生成AI抜きで語ることは不可能となってきています。AI時代の到来は,すでに言われていたことですが,生成AIの登場により,その発展のスピードが格段に高まりました。生成AIの登場で,人がモノを考えなくなることを懸念する声がありますが,ほんとうはその逆でしょう。社会が大きく変わるなか,これまで常識的と考えて思考停止していたことについて,一つひとつ考え直していくことが求められる時代ともいえます。社会貢献のあり方から,働き方まで,いろんなことについてAIを上手くつかいながら自分で考えていける人材が求められます。たかだ服装ですが,そこにはいろいろなものが詰まっているといえるかもしれません(もちろん,あえて黒一色にするという個性もありえます)。

2023年6月21日 (水)

藤井竜王・名人がみせるAIの可能性

 藤井聡太竜王・名人の衝撃の逆転勝利(一撃必殺で相手を倒したという感じです)の余韻から,まだ冷めていない将棋ファンも多いでしょう。
 ところで,先日,羽生善治九段が,いま話題の成田悠輔さんと対談している動画を観ましたが,藤井竜王・名人が,負けた将棋などで,自分の指した手についてAIを使って検討しているということを話していました。いまや人間よりAIは強いので,プロ棋士であっても,AIを使って勉強するのは当然のことであり,藤井竜王・名人も例外ではありません。いまはプロ棋士がAIに勝てないことは,もはや問題ではありません。全員がAIというツールを使って勉強できる状況のなかで,なぜ藤井竜王・名人だけが強いのかが問題なのです。羽生九段は,AIの判断をどう咀嚼して自分の戦術に活かしていけるかで差が出るというようなことを言っていたように思います。
 AIという巨人に乗っかると,どんな新しい景色をみることができるのか。これからは,そういう観点からAIと向き合っていく時代なのでしょう。誰もが乗れそうではありますが,やはり使い方というものがあって,その巧拙により,みることができる景色が違ってくるのでしょう。しかも,それは単にテクニカルなものにとどまらず,自身の思考経路など,人格のより深い領域に関わるものでもあるのです。
 NHKのクルーズアップ現代で,谷川浩司十七世名人が,藤井竜王・名人は終盤でもおそれを知らないようだという趣旨のことを述べていました。将棋界では「震(ふる)える」という言葉がありますが,終盤で優勢な局面でも,思い切った手を指せず,結果として緩手を指してしまうというのが,「震える」の典型です。羽生九段の場合は,勝ちが決まったと確信した場合に,指したときの手がほんとうに「震える」のは有名ですが,これは違う意味の「震える」です(でも神経が非常に高ぶった状態なのでしょうね)。いずれにせよ,藤井竜王・名人は震えないのです。強靭な精神力なのか,神経が図太いのかわかりませんが,終盤において震えないというのは,これまでは人間にないAIの強みでした。その面でもAI並みであるのが藤井竜王・名人です。
 人間の脳の回路がAIと融合したら,どんなことになるか。藤井竜王・名人の活躍は,それを将棋をとおして,人類に示してくれていくのでしょう。