外国人労働とデジタル優先主義
外国人を雇用する職場での法令違反が,繰り返し確認されています。厚生労働省が9月15日に公表した2025年の監督指導結果によると,技能実習生を雇用する事業場では監督対象の73.2%,特定技能外国人を雇用する事業場では76.5%で,労働基準関係法令違反が認められました(ただし,これは法違反の疑いがある事業場を対象とした監督の結果です)。気になるのは,違反の内容です。技能実習,特定技能のいずれについても,違反は,使用する機械等の安全基準,健康診断結果についての医師等からの意見聴取,割増賃金の支払の順に多くなっています。
こうしたなか,2027年4月1日から,技能実習制度に代わる育成就労制度が始まります。新制度は,日本の人手不足分野における人材の育成・確保を目的とするものです。ただ,人手不足への対応の仕方となると,出てくるのが「デジタル優先主義」です。ここでは,具体的には,人手不足のときに,いまの仕事のやり方をそのままにして,足りない人数を補おうとするのではなく,まずデジタル技術によって仕事を変えられないかを検討する,ということです。重要なのは,単に新しい機械やソフトを買うことではなく,業務の再編成です。AIに任せられる事務作業や,機械に任せられる運搬作業はないか。このようにして,仕事を一つずつ見直すことで,必要な人数だけでなく,人に担ってもらう仕事の中身も変わる可能性があります。そのうえで,日本人,外国人,AIや機械が,どのように分業すれば効率的に仕事ができるかを考えることになります。もちろん,国籍で役割を固定する話ではありません。
実は,外国人の受入れとデジタル化を結び付ける仕組みは,すでにあります。物流倉庫分野では,特定技能外国人を受け入れる企業に対し,入庫・在庫・出庫を管理する情報システムの利用が求められています。ただし,これは業務全体を点検して,省力化の余地を尽くしたかどうかまで確認する仕組みではありません。一定の機能をもつシステム等の利用を受入れ条件に組み込んだものであり,デジタル優先主義とは少し違います。
もう少し踏み込むなら,外国人を受け入れる企業に,DXに対応するための業務体制の点検と省力化に向けた計画の作成を求め,その実施状況も確認する仕組みが考えられます。もちろん,AIや機械でできる仕事が少しでも残っている間は,外国人を採用できないということではありません。また,高度な専門人材や,日本で暮らす永住者などの採用一般を対象とする話でもありません。人手不足対策として設けられた受入れ制度を利用する企業の取組を,どう位置付けるかという問題です。
DXが,外国人を排除するためのものと受け取られると困ります。むしろ,外国人を危険な作業からできるだけ遠ざけるためにも,仕事のやり方を変えられないか,ということです。そうすると外国人への依存を減らせるかもしれません。のみならず,十分な安全対策もないまま外国人を働かせている職場は,日本人にとってもブラックである可能性が高いのです。DXへのサポートこそ,政府が優先的に取り組むべき雇用政策なのです。

