北朝鮮兵の参戦
北朝鮮兵もロシア側で参戦していると聞いて驚きました。戦争では,戦争当事国の国民ではなく,金で集められた外国人の傭兵が相手国を攻撃することは,古今東西,決して珍しいことではありませんが,北朝鮮の軍人は,国家の命令により派遣されているのではないでしょうか。そうなると,これは傭兵とは言えませんね。
いずれにせよ,ロシア人はたくさんいるにもかかわらず,ロシア人以外の人がロシア人のために戦争して,ウクライナ人を殺そうとしている状況は,本当におぞましいです。ロシア人が傷ついていなければ,ロシアのなかでの厭戦感もなかなか高まらないでしょう。
ところで,もともとロシアは正規の軍隊以外に,ワグネル(Wagner)という民間軍事会社を使っていたことは,よく知られています。2023年6月に,その代表のプリゴジン(Prigozhin)の反乱が鎮圧されたとき,このブログで採り上げたことがありましたが,その後,彼は謎の事故死をとげています。そのときにも書いた西ローマ帝国を滅亡させた傭兵隊長オドアケル(Odoacer)のことが,やはり気になります。傭兵隊長は,皇帝にとっては危険なのです。オドアケルは,その後,東ローマ帝国の皇帝から送られてきたテオドリック(Theodoric)に殺されます。
西ローマ帝国の滅亡前から,ローマ帝国は東西に分かれており,キリスト教は,西方教会(カトリック)と,東ローマ(ビザンティン[Byzantines])帝国の地域に広がった東方教会(ギリシャ正教など)に分かれていました。ウクライナ・ロシア・ベラルーシの地域にあったキエフ・ルーシも,東方正教を受け入れていました。その後,モンゴルに征服されますが,モスクワ大公国のイヴァン3世(IvanⅢ)は,モンゴルの支配から脱し,さらに東ローマ帝国がオスマントルコに滅ぼされて以降は,「ツァーリ(カエサル)」を名乗り,東ローマ(ビザンティン)帝国を引き継ぐと宣言しました。今回のウクライナ侵攻は,ロシア人の多くが信奉するロシア正教会と,その支配から脱しようとするウクライナ正教会(さらにウクライナの西部はポーランドの影響を受けてカトリックが多い)との宗教戦争としての意味もあるということが,池上彰『知らないと恥をかく世界の大問題14 大衝突の時代――加速する分断』(2024年,角川新書)に書かれています。
ロシア正教会のトップの総主教は,Putin支持ということです。宗教は大衆のアヘンだといって毛嫌いしたMarxに忠実に,スターリン(Stalin)はロシア正教会を弾圧したそうです。しかし,Putinは,宗教は国民の支持を得るのに使えると考えて,ロシア正教会を手なづけます。ロシア人の圧倒的多数の宗教はロシア正教会であり,Putinへの根強い支持は宗教の下支えもあるということです。ウクライナとの戦争が宗教戦争の意味をもっているとすると,Trumpの得意のdeal でも解決は困難ではないでしょうか。アメリカ国外のことでTrumpに期待できる数少ないことの一つがウクライナ戦争の終結と拉致被害者の奪還ですが,少なくとも前者は(残念ながら)望み薄ではないでしょうか。