国際問題

2024年11月17日 (日)

北朝鮮兵の参戦

 北朝鮮兵もロシア側で参戦していると聞いて驚きました。戦争では,戦争当事国の国民ではなく,金で集められた外国人の傭兵が相手国を攻撃することは,古今東西,決して珍しいことではありませんが,北朝鮮の軍人は,国家の命令により派遣されているのではないでしょうか。そうなると,これは傭兵とは言えませんね。
 いずれにせよ,ロシア人はたくさんいるにもかかわらず,ロシア人以外の人がロシア人のために戦争して,ウクライナ人を殺そうとしている状況は,本当におぞましいです。ロシア人が傷ついていなければ,ロシアのなかでの厭戦感もなかなか高まらないでしょう。
 ところで,もともとロシアは正規の軍隊以外に,ワグネル(Wagner)という民間軍事会社を使っていたことは,よく知られています。20236月に,その代表のプリゴジン(
Prigozhin)の反乱が鎮圧されたとき,このブログで採り上げたことがありましたが,その後,彼は謎の事故死をとげています。そのときにも書いた西ローマ帝国を滅亡させた傭兵隊長オドアケル(Odoacer)のことが,やはり気になります。傭兵隊長は,皇帝にとっては危険なのです。オドアケルは,その後,東ローマ帝国の皇帝から送られてきたテオドリック(Theodoric)に殺されます。
 西ローマ帝国の滅亡前から,ローマ帝国は東西に分かれており,キリスト教は,西方教会(カトリック)と,東ローマ(ビザンティン[Byzantines])帝国の地域に広がった東方教会(ギリシャ正教など)に分かれていました。ウクライナ・ロシア・ベラルーシの地域にあったキエフ・ルーシも,東方正教を受け入れていました。その後,モンゴルに征服されますが,モスクワ大公国のイヴァン3世(IvanⅢ)は,モンゴルの支配から脱し,さらに東ローマ帝国がオスマントルコに滅ぼされて以降は,「ツァーリ(カエサル)」を名乗り,東ローマ(ビザンティン)帝国を引き継ぐと宣言しました。今回のウクライナ侵攻は,ロシア人の多くが信奉するロシア正教会と,その支配から脱しようとするウクライナ正教会(さらにウクライナの西部はポーランドの影響を受けてカトリックが多い)との宗教戦争としての意味もあるということが,池上彰『知らないと恥をかく世界の大問題14 大衝突の時代――加速する分断』(2024年,角川新書)に書かれています。
 ロシア正教会のトップの総主教は,Putin支持ということです。宗教は大衆のアヘンだといって毛嫌いしたMarxに忠実に,スターリン(Stalin)はロシア正教会を弾圧したそうです。しかし,Putinは,宗教は国民の支持を得るのに使えると考えて,ロシア正教会を手なづけます。ロシア人の圧倒的多数の宗教はロシア正教会であり,Putinへの根強い支持は宗教の下支えもあるということです。ウクライナとの戦争が宗教戦争の意味をもっているとすると,Trumpの得意のdeal でも解決は困難ではないでしょうか。アメリカ国外のことでTrumpに期待できる数少ないことの一つがウクライナ戦争の終結と拉致被害者の奪還ですが,少なくとも前者は(残念ながら)望み薄ではないでしょうか。

 

 

2024年9月25日 (水)

中国と正しく向き合う必要性

 中国の深圳で起きた児童刺殺事件は衝撃的でした。わがことのように心が締め付けられる思いです。親が一緒にいても狙われるというのは,とてつもなく治安が悪い国だからだという気もしますが,実際の深圳は治安が悪いところではないそうです。これは偶発的に起きた事件では片付けられず,根拠のない推測をすべきではありませんが,国民感情が敵対的であるという土壌から生まれた犯罪と考えられるかもしれません。
 ところで,事件があった日が,93年前に,1931年満州事変が勃発した柳条湖事件と同じであったことは偶然かもしれませんが,気になるところです。この事件も1928年の奉天事件と同様,鉄道の爆破でした。奉天事件で爆殺された張作霖の息子の張学良は,当時,父を継いで奉天地区の実権を握っていましたが,柳条湖事件では日本軍に抵抗しなかったことで有名です。
 中国にとっては,満州事変は,自国の領土内に,日本の傀儡政権である満州国の建設がなされたという屈辱の始まりであったことでしょう。この歴史について中国でどのように教育されているの知りませんが,日本では,淡々と事実を教えているだけのような気もします。しかし,日本のあのときの戦争は,今日では,国土に原爆を落とされて終結したアメリカ相手の戦争という記憶のほうが大きいように思いますが,日本が海外で仕掛けた満州事変以降の日中戦争こそが,あの一連の戦争の始まりであることを忘れてはなりません。私たちは自虐史観に陥る必要はありませんが,誇り高い中華民族が自国を侵略されたことについて,どういう感情をもっているかということに,もう少し注意をしたほうがよいのかもしれません。そんなことは,中国に住んでいる日本人は百も承知なのでしょうが,それでも約1世紀近く前のことであっても,決してアーカイブ(archive)の出来事ではなく,なおアクチュアル(actual)な問題であるということは何度も思い起こす必要があります。
 その意味で,中国で住むということは,いろんな意味で警戒が必要でしょう(私は中国は香港にしか行ったことはありません)が,とくに日本人は気をつけたほうがよいのでしょう。もちろん友好的な中国人はたくさんいるでしょうが,根底に流れている不信感というものは,なかなか払拭できません(私が,個人レベルでアメリカ人と友達になることはできるのですが,マスとしてみたときのアメリカ人には,どこか不信感をもっているのと同じか,それ以上のものでしょう)。こういう状況を変えるためには,中国と,心の底でどう思うかはともかく,うまくやっていくしかないのです。おそらく五百旗頭真先生が生きておられたら,そうおっしゃるでしょう。日本政府が自身の努力不足を,中国の責任にするような論調(中国は覇権主義的であるなど)には気をつけて,等身大の中国を(もちろん,その脅威も含めて)みていく必要があると思っています。

2024年2月 4日 (日)

イランと日本

 サッカーのアジアカップの日本・イラン(Iran)戦は地上波で放映されていたので,すべて観ました。かつての弱いころの日本のような試合で,後半はイランに一方的に攻められていました。イランのDFは疲れているようでしたが,日本が攻めないので持ちこたえましたね。他方,日本のDFの板倉選手は,前半にイエローカードをもらい,足の調子も悪そうで,その後は思い切ったディフェンスができず,最後はPKを献上してしまいました。後半から交代すると思っていたのですがね。それにしてもイランは強かったです。勝つ意欲が強かったと思います。
 ところで,イランといえば,政治のレベルでは,アメリカと交戦状態に入りつつあります。現段階では,イラク(Iraq)とシリア(Syria)でイラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊(Quds Force)」や親イラン武装勢力への空爆にとどめているので,直接イランと交戦しているわけではありません。しかし中東情勢はきなくさく,どこで暴発するかわかりません。とても心配です。イスラエル(Israel)とハマス(Hamas)の停戦交渉も難航しているようです。
 最近,佐藤優氏の『イスラエルとユダヤ人―考察ノート』(角川新書)を読みましたが,佐藤氏は,イスラエルを支持することは国益にかなうと述べています。ハマス側に同情的な世論が多い中,違った見解を知ることも必要だと思います。その佐藤氏が,先週,クローズアップ現代に登場していました。彼がテレビに登場するのはきわめて珍しいことのようで,私も初めて観たと思います。番組のなかでは,たとえばゴルバチョフ(Gorbachev)の生存情報をいち早く得たというような,たぶんインテリジェンスの世界では重要だけれど,やや自慢話が入っているかなと思って観ていたのですが,教育の話などについては傾聴すべきことがありました。番組は30分でしたが,HPでは彼のインタビューのフルバージョンが出ていて,それを読むと,佐藤氏の言いたいことがよくわかりました。相手の論理を理解すること,そして相手に自分の論理を理解させるためには信頼関係が重要であること,恵まれた人はそれを社会に還元しなければならないこと,自分たちが先人から受け継いだものは,きちんと次世代の引き継がなければならないこと,人間はほおっておくと排除の論理で殺し合いをしてしまうので,それを避けるために知恵があることなど,一つひとつしっかり突き詰めて考えるべきことを提示してくれています。
 イランと日本との間には,百田尚樹の『海賊とよばれた男(上)』『海賊とよばれた男(下)』(講談社文庫)でも描かれていた「日章丸事件」などからくる深い絆があるはずです。イスラエルやアメリカの論理もイランの論理も理解しながら,日本ならではの立場で平和を訴えることができるはずです。岸田首相は,広島に首脳を集めたパフォーマンスで満足するのではなく,もし彼がこれまでの悪評を乗り越えて,政治家として名を残すことがあるとすれば,それは広島出身であることを最大限に活用して,世界平和に貢献する成果をあげたときではないかと思います。サッカーの日本代表は勝利への熱量が足らなかった感じがしますが,首相には情熱をもってこの仕事に取り組んでもらいたいです。

 

2024年1月15日 (月)

気になるイエメン情勢

 紅海の入り口にあるYemen(イエメン)という国の現在の情勢が気になります。行ったことがない国です(それどころか中東のどの国にも行ったことがありません)が,コーヒーのMokha(モカ)で有名なモカ港があることは知っており,親しみは感じていました。しかし,いまその国で,危険な事態が進行中のようです。同国のフーシ(Houthi)派というイラン(Iran)寄りの勢力が,日本の船舶を拿捕して連行しました。遠く離れた国の出来事であるとはいえ,この地域の航路をおさえられると,日本経済にも深刻な影響を及ぼす可能性があるでしょう。さらには英米がフーシ派を攻撃するために,軍事作戦を始めたとの報道があります。イスラエル(Israel)とパレスチナ(Palestina)との紛争も激化しており,徐々に戦線が広がっていく嫌な予感がします。第3次世界大戦につながらないことを祈るばかりです。
 フーシの背後にはイランがいる以上,アメリカの攻撃にイランは黙っていないでしょう。さらにイランとイスラエルの戦いが本格化すると,手がつけられない状況に陥るかもしれません。そうならないように,現在の段階で,紛争を抑え込む必要がありますが,アメリカはあまりその気がないようです。どうして,みんなこんなに好戦的なのでしょうか。
 こうした危機的な情報にもかかわらず,日本の株価は連日大幅に上昇しています。大地震があったために,日銀の金融政策が継続されると予想されています。それによりアメリカとの金利差は維持され,当分は円安が続くとみられています。その結果,輸出関連企業を中心に株式市場に資金が流入しているようです。海運企業も例外ではなく,商船三井も日本郵船は4%以上,川崎汽船は10%近い大幅増です。紅海の不安定化など,どこ吹く風です。でも,これは不思議であり,どこか異常な状況に感じられます。世界的な危機が始まる前の最後の宴ということにならないか心配です。
 平和があってこそ経済が成り立つのです。中東においては,これまでの外交努力などもあり,日本がはたせる役割は大きいと言われています。はやく国内政治を整えて,この問題に取り組まなければならないのです。それなのに,自民党の政治刷新本部は,冗談ではないかと思えるようなメンバーで構成され,とても国内政治の混乱は終息しそうにありません。いつも人事で遊ぶだけで,問題の本質に向き合わないこの政権の欠点が露呈しています。嘆かわしいことです。

2023年12月31日 (日)

平和の追求と有事への備えを

 今年は,昨年来のウクライナ(Ukraine)の戦争に加えて,ガザ(Gaza)地区の戦争も始まり,悲惨な1年でした。NHKの朝ドラのブギウギでも,東京空襲のシーンがありました。アメリカは,日本の民間人に向けて,空から無慈悲に爆弾を落としました(最後は広島と長崎の原爆でした)。許せないことです。神戸も空襲を受けています。私たちは,その生き残りの子孫なのです。いまウクライナやガザで起きていることは,実際,日本でも起きたことですし,またいつ起こるかわからないことです。他人事と思っていてはいけないでしょう。イスラエル(Israel)という国を理解するのは,かなり難しくなりました。テロの先制攻撃を受けたことは確かとしても,また人質がいるためにその救出が必要であることも確かとはいえ,この事態を口実として,ガザを支配下に置こうとしているのではないかという疑念もあります。ユダヤ人の歴史には気の毒なところは多々あるのですが,中東における現代のイスラエルの動きは,もともとはイギリスに責任があるとはいえ,Palestina人にとっては迷惑以外のなにものでもないのです。現時点では,よく言われる「ジャングルの掟」の世界で,力勝負で決着をつけようとするところがありますが,本来,アメリカの原爆で終わった第二次世界大戦のあとは,国際連合における五大国が国際紛争を抑止する警察官の役割をするということになっていたはずです。それがロシアの戦争で,その枠組みは崩壊し,中東については,アメリカが積極的に和平に向けた介入をしてくれないということで,世界は再び第二次世界大戦時の状況に戻ってしまうのではないか不安でいっぱいです。そうなったとき,日本は,ほんとうにあのときと同じ轍を踏まないと言い切れるでしょうか。これだけ政治が大切となっている時期に,裏金問題などで弱体化した現在の国内の政治状況は危機的でもあります。
 ところで,ウクライナが,大国ロシアとの戦争で持ちこたえているのは,大統領のメディア戦術が巧みで,しかもリアルな被害状況が瞬時に世界に配信され,世界中の共感を得ていることも大きいでしょう。Palestinaへの同情が広がっているのも,同じ理由です。また,1225日の日経新聞の記事で,ウクライナでは高度に電子政府化が進んでいたために,数百万人が住む場所を追われ,パスポートや住民票を失った人が少なくないにもかかわらず,社会がパニックになっていないということが書かれていました。国家の危機を,デジタル技術が救っている面があるのです。もちろんデジタルに頼りすぎることは,サイバー攻撃などにより一気に麻痺してしまう危険もあるのですが,それでも日本の現状は,デジタル化の危険を口にするような段階にまで至っていないような気がします。忍び寄る戦争の危機のなか,戦争を回避して平和を追求する努力は欠かせないのですが,それと同時に,有事の際の市民生活を守るためのデジタル政府化というものも,来年にはぜひとも最優先で取り組んでもらいたいです。私たちは,そういうことができる政府を選ばなければなりません。

2023年9月19日 (火)

中国との付き合い方

 「汚染水」大臣が辞めてよかったのですが,期待していた盛山文科大臣の就任会見での不安定な答弁をみて,失望しました。自分のことを「新米大臣」というのは,謙遜から出た言葉かもしれませんが,これから文部科学行政を担っていく大臣の最初の言葉としては,頼りないです。即戦力が求められる教育行政について,新米で責任をもったことが当面はできないというのなら,大臣就任を断るべきでしょう。教員のなり手不足についても,名案がないというのは,がっかりです。これだけ教育問題が言われているなかで,常日頃から,一個人として何か思うところがなかったのでしょうか。今日も,経済産業省の方とリモートで意見交換をしたのですが,重要なのは教育であるという話になりました。盛山大臣に期待していただけに残念です。
 ところで話は変わり,中国側は,処理水問題を口実にして不当な対応をとっていて,日本の水産業に大きな影響を与えているようです。私は中国の対応に腹立たしさを感じるものの,他方で,日本政府が,中国に対して「科学的根拠」を無視した対応をとっていると強く批判していることには,やや疑問もあります。日本政府は,トリチウムの濃度が薄くなり健康に問題がないということについて,考えられる様々な角度から説明されています。私も経産省のアップしている動画をみました。政府は,科学的根拠の説明としては,これ以上やれることはないかもしれません。一方で,科学者の言うことだから信用しろと言われても,そう簡単に信じてはならないということも,いろいろな教訓から学んでいます。国際原子力機関(IAEA)事務局長のGrossi氏が出てきても,これでIAEAのお墨付きがあるからよいといえるのでしょうが,彼個人は科学者ではなく,行政官であり,なんとなく政治家っぽい匂いがするので,印象がよくないです。そもそも排出されているトリチウムが健康に無害であるといっても,ないほうがよいのですから,国土が近い中国や韓国が反対するのは理解できるところです。たとえ彼らが政治的にこの問題を利用しているとしても,利用するネタを与えてしまっているのは日本です。遠い国である欧米が日本に賛成しているのは,日本政府の科学的根拠に賛同しているというよりも,自分たちには影響がないことだと思っているからかもしれません。
 処理水の放出はどうしても日本にとって必要である以上,科学的根拠だけで攻めるのではなく,もう少し丁寧な対応もあったのではないかと思います。自分が逆の立場であったら,そう思うかもしれません(もちろん,実際の私は,日本政府の説明に一応納得して,日本の魚介類を食べて応援したいと思っています)。中国の肩をもつわけではありませんが,実は政府の外交交渉のまずさが,日本の水産業に大打撃を与えているかもしれないのです。私たちは,韓国や中国が内政の問題があれば,すぐに日本たたきに走って,国民の目線を国外に向けさせるということに不快感をおぼえていましたが,同じようなことを日本政府がやっているかもしれないということに注意すべきでしょう。
 それとは別に,日本のビジネスの中国依存も,そろそろ見直すべきではないかと思います。中国相手のビジネスだと安定的にこれを展開することは難しいでしょう。台湾有事があるかもしれません。中国人が欲しくなければ結構です,と言えるくらいの状況をつくらなければ,リスクは残るでしょう。観光業も中国からの旅行客に頼るのは,もう辞めませんか。無責任なことを言うなと言われそうですが,中国があまりにも巨大な市場なので,冷静な判断ができなくなっているかもしれません。いきなり旅行客が来なくなったり,製品の輸出できなくなったり,輸入できなくなったり,というようなことが起こる危険性があり,しかも日本政府にはそういう状況を避けるだけの十分な外交力がないとなると,中国に依存しないビジネスに向けて,少しずつ努力せざるを得ないでしょう。製造業などでは,そういう動きはすでにあるようですが,その他の製品も同じようにしなければならないでしょう。
 別に敵対する必要はないのです。依存しすぎるとお互いよくないというのは,人間社会にはよくあることです。適度の距離感をもって,警戒しながらも,うまく付き合っていくということを,政治もビジネスもやっていってもらえればと思います。

2023年4月24日 (月)

人工ダイヤモンド

 人工ダイヤモンド(lab grown diamonds)が,天然ものよりかなり安い価格で販売されているというニュースをみました。ダイヤモンドは環境破壊や紛争の源になるので,工場で製造できるのなら,そのほうがよいでしょう。この話を聞き,Di Caprio主演の映画「Blood Diamond」を思い出しました。かなり前に観たので記憶はやや怪しいのですが……,シエラレオネ(Sierra Leone)の内戦のなかで,反政府軍に捕まった主人公の黒人が,ダイヤモンドの強制採掘場で働かされているとき,高価なピンクダイヤモンドを発見しましたが,政府軍から襲撃を受けるなか,それを奪われないように埋めて隠しました。その後,Di Caprioが演じるダイヤモンドの密売人(武器を調達して,その代金としてダイヤを受け取る)が,この情報を聞きつけて,彼に接近し,その場所を二人で探そうとします(最後はDi Caprioは力尽きてしまいます)。反政府軍に息子が捕まえられて兵士にさせられてしまう話や兵器を売りつけてボロ儲けする白人と白人に迎合する黒人が登場するなど,考えさせられることが多い映画でした。いまスーダン(Sudan)で内戦が繰り広げられています。民主化が実現するまでのやむを得ない犠牲なのかもしれませんが,膨大な天然資源(スーダンの場合は金)の利権がちらつく点は,映画の話と似ている面があるかもしれません。 遠い国のことのようにも思えますが,日本になにかできることがあるのでしょうか。

2022年11月 1日 (火)

カミカゼ・ドローン

 少し前に,アメリカの「アジア系米国人ジャーナリスト協会」が,ウクライナ戦争でのロシアによる無人ドローン攻撃について「Kamikaze Drone」という言葉が使われていることについて,アジア系に対する差別を助長するとして抗議を申し込んでいるという記事が出ていました。Tsunami と同様,KamikazeHarakiriなどは,日本語がそのまま使われており,日本人としては複雑な気持ちです。Kamikazeという言葉は,自爆テロのときにも使われます。神風特攻は,外国人には衝撃を与える攻撃であり,日本人としては忘れたくても忘れてはならない黒歴史です。どうしてあんな愚かな作戦で若い人たちを無駄死にさせたのか,怒りを禁じ得ません。
 外国人からすると,日本人の精神性にカミカゼ的なものがあるのではないかと思いたくなるようです。私の知っている外国人は,親しくても,そういうことをあからさまには聞いてきませんが,おそらくは聞いてみたいと思っているでしょう。私としては正面から聞いてほしい気持ちもしますが,それならこちらから話題を切り出せばよいのですが,そこでうまく説明できるかというと,あまり自信はありません。どうして神風特攻隊がうまれたのか。実は,そういうことを,私たちはきちんと総括できておらず,それゆえ,外国人にもうまく説明できないため,彼ら,彼女らの疑問や疑念はいつまでもなくならないのでしょう。
 神風特攻は軍関係が対象で,民間施設や民間人を相手にはしていないので,無差別な自爆テロとは違うし,ましてやウクライナの無人ドローンは「無人」である点でまったく違うものです。しかし,そういうことを言っても,自爆=カミカゼは,外国人には定着してしまっているのです。ただ少なくとも現在の「無人ドローン」と「神風」はまったく無関係であるということは,やはり日本人としては,しっかり政府に海外向けに説明をしておいてもらいたいですね。
 日本人のなかには,神風特攻について,あの死を無駄にしないために,彼らを英雄視しなければいけないとする考え方もあるようですが,それは間違った考え方です。あの死を深く悼みながら,ああいうクレージーな命令を発した上層部への怒りを忘れてはならないのです。いろいろ批判もある百田尚樹ですが,彼の『永遠の0』(講談社新書)は,この問題についての良い教材です(かつて,この本は,このブログの前身でとりあげたことがあります)。理不尽な神風特攻に対して悲しみと怒りをかみしめ,そういうことが二度と起こらないようにするために,どうすればよいかをしっかり考えておく必要があります。そうしなければ,外国人の疑念を払拭できないどころか,私たちやその子孫が同じことを繰り返してしまわないか,心配になります。

2022年8月 4日 (木)

Pelosi訪台に思う

 アメリカのPelosi下院議長の訪台は,悪いタイミングでしたね。報道によると,このタイミングとなったのは,自分の都合のようです。もちろん台湾を応援する行動それ自体は良いのですが,タイミングをまちがえれば,かえって周辺国を危険に巻き込むということを,よく自覚してもらいたいです。こういう配慮をしないで独善的な行動をとるのは,いかにもアメリカ人的だと思いますが,これは偏見でしょうか。
 ウクライナ戦争も長期化し,対ロシアで結束していたアメリカは,今回のPelosiの訪台を阻止できなかったことで,Biden大統領のリーダーシップの欠如を露呈しました。対ロシア強硬派であったイギリスは首相が退陣しましたし,イタリアも首相退陣が決まりました。フランスの大統領は国内基盤が脆弱です。結局,政権交代がほとんど起こらない独裁国家のほうが強いということになりかねません。そういうときにこそ日本も含めた西側は結束しなければならないのに,議員たちが勝手な行動をとるようではうまくいかないでしょう。あげくに,中国に余計な挑発をした感じになりました。これはまさに中国が言うように「火遊び」のように思えます。
 中国の覇権主義的な行動を抑え,台湾が香港みたいにならないようにするのが大切なのは当然です。しかし,日本と中国との関係は,圧力一辺倒で対処すればよいというような単純なものではありません。幸い,いまは日韓関係は良いですが,これも大統領が代われば,どうなるかわかりません。中国,韓国,ロシア,北朝鮮と周辺国が敵や非友好国ばかりになったとき,遠くにいて,しかも様々な面で弱体化してきているアメリカだけが頼りというのは,とても不安です。

 それにしても残念なのは,香港に行ける日が私が生きている間には来そうにないことです(←これはちょっと言い過ぎでした)。台湾が,そういうことにならないように心より祈っています。台湾有事となると,沖縄だって危険になってきます。

 岸田首相は,平和のための新構想というのをぶちあげましたが,海上安全とか防衛増強とかが中心で,台湾問題(それはひいては沖縄や本土の安全の問題にもつながる)にどれだけ効果があるのか疑問です。ただお金を使うだけの平和構想では困ります。平和のための明確なビジョンとその実現のための戦略があり,一つひとつの政府の行動が,その戦略に基づいて進められていて,そのために必要だから税金を使うのだという説明を国民にわかりやすくすべきです(もちろん外交などでは,言えないこともあるでしょうが)。平和は遠のき,国家は窮乏する,というようなことになっては,私たちの子孫に申し訳ないことになります。重要な政治課題が次々とふりかかっている現在,岸田政権のやることを,しっかり関心をもってみていくことが必要です。