アレルギー検査
アレルギーという言葉は,1906年にオーストリアの医師ピルケ(Pirquet)が提唱したもののようです(次のURLを参照)。ギリシャ語のallos(異なった)とergon(働き)を組み合わせた言葉で,もともとは「反応の仕方が変わる」という意味でした。最初から現在のように,体に有害な反応だけを指していたわけではなく,体を守る反応も含む,もっと広い概念だったそうです。
なぜこのようなことを調べたのかというと,人間ドックの際に受けたアレルギー検査で,何も検出されなかったからです。私は年に1回は,喘息のように感じる症状が出て,数回咳き込むことがあります。何かにアレルギー反応を起こしているのだろうと思っていたので,意外な結果でした。何も出なかったのはよいことなのでしょうが,では,あの咳は何だったのかという疑問が残ります。
日本アレルギー学会の「アレルギーとは」によると,医学でいうアレルギーとは,免疫の仕組みによって,体に有害な症状が引き起こされることをいいます。本来,免疫は細菌やウイルスなどから体を守る仕組みですが,花粉や食物など,通常は害を及ぼさないものに対しても過剰に反応してしまうことがあります。花粉症などでは,IgEという種類の抗体が関わり,ヒスタミンなどの物質が放出されることで症状が起こります。体を守る仕組みが,かえって本人を困らせるわけです。単に「免疫は強ければよい」とはいかないところに,人間の体の難しさがあります。
では,検査で何も見つからなければ,アレルギーがないと判断してよいのでしょうか。私が受けたのは,「View39」という血液検査でした。花粉やダニなどの吸入系と,卵や牛乳,小麦などの食物系を合わせた39項目について,それぞれの原因物質に対する「特異的IgE抗体」を調べるものです。今回は,これらがすべて陰性だったということです。
ただし,39項目を調べたといっても,世の中にあるすべての原因物質を調べたわけではありません。また,金属によるかぶれのように,IgE抗体とは別の仕組みで起きるアレルギーもあり,その場合には,皮膚に試薬を貼るパッチテストなどが用いられます。「アレルギー検査」という名前から想像していたほど,あらゆるアレルギーをカバーする検査ではないようです。
さらに,検査の対象に含まれるものでも,血液検査が陰性だからといって,必ずアレルギーを否定できるわけではありません。逆に,抗体が見つかっても,実際には症状が出ないこともあります。たとえば食物アレルギーでは,何を食べたときに,どのような症状が出たかということと,検査結果とを合わせて判断する必要があります。検査結果だけで「ある」「ない」がきれいに分かれると思っていたのですが,そう単純ではありませんでした。
もう一つ,私が区別していなかったのは,喘息とアレルギーとの関係です。喘息には,特定のアレルゲンを確認できないタイプもあります。また,冷たい空気や香りなどの刺激で症状が誘発されることもあり,咳が出るからといって,何かにアレルギー反応を起こしているとは限らなかったのです。結局,喘息かどうかは,症状の出方を確認し,必要に応じて呼吸機能などを調べて判断するもののようです。
ということですが,「何も検出されなかった」と「何もない」とは,同じではありません。人間ドックで疑問が一つ解消するつもりが,かえって新しい疑問が生まれました。ただ,自分の体について,安易に分かったつもりになっていたことに気づけたのも,検査を受けた意味でした。

