テレワーク

2022年6月25日 (土)

ムーブレス・ワークの時代

 先日,NTTが,在宅勤務が原則で,出社は出張扱いとするという制度を導入したことにふれましたが,622日の日本経済新聞では,「アクセンチュア,社員の居住地を自由に 在宅勤務を前提」,さらに少し前の同月3日には,「DeNA,社員の居住地自由に 働き方多様化で人材獲得」という記事もあり,いよいよ「ムーブレス・ワーク」(拙著『デジタル変革後の「労働」と「法」』(2020年,日本法令)216頁以下)の時代が到来しようとしているのかもしれません。
 拙著『労働法で企業に革新を』(商事法務)では,後半はDXのインパクトに関するストーリーが展開しますが,127頁あたりに,主要な登場人物の一人である深池が,完全テレワークを導入したので,母親のいる実家の西宮市に転居したいと申出をするシーンが出てきます。同書では,人々が好きなところに住んでテレワークするという「ムーブレス・ワーク」の世界を描いていたのですが,現実も段々そうなりつつあります。
 私の予想よりも現実の進行は遅いのですが,それは「出社派」と「在宅派」が拮抗しているからでしょう。個々の企業で,「出社派」と「在宅派」が覇権をめぐって争っているのかもしれません。どちらも許容するというハイブリッド型は難しいので,原則「出社」で特別な理由があるときは「在宅OK」という「原則出社派」企業と,逆に原則「在宅」で特別な理由があるときだけ出社してよい(交通費はそのときだけ支払う)という「原則在宅派」企業に二分されていくのでしょうね。ただ,DX時代において,付加価値の大きい創造的な仕事をするのは「出社」する従業員と「在宅」の従業員のなかのどちらに多いでしょうか。私は「在宅」だと思います。いまは両者は拮抗していますが,そのうちたちまち「在宅」一色になるのではないかと予想しています。中小企業も,費用の問題はあっても,「原則在宅派」に変わらなければ,人材が集まらなくなります。いまから準備しておいたほうがよいでしょう。 

 

2022年6月20日 (月)

NTTのテレワーク推進に拍手

 経団連が「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を改訂して,対策をやや緩めたようです。感染状況やウイルスの危険性に関する医学的知見の蓄積に応じて,適宜,改訂するのは必要なことです。一方で,改訂版では,「感染拡大期においては,テレワーク(在宅やサテライトオフィスでの勤務),時差通勤,ローテーション勤務(就労日や時間帯を複数に分けた勤務),変形労働時間制,週休3日制など,様々な勤務形態や通勤方法の検討を通じ,公共交通機関の混雑緩和を図る。」となっていますが,これらは感染拡大期に限る必要がないというのが私の立場です。
 おそらく経済界は,仕事にかぎらず,なんとか人に移動してもらいたいので,移動に抑制的な内容はできるだけ避けたいということなのでしょう。私は,人々が移動しなくても働けるようにし,移動するのは仕事以外のプライベートな場面に限定されるというような社会が実現しなければならないと考えており,仕事のために移動させられるのは,ちょっと過激に「人権侵害だ」(私は「場所主権」と呼んでいます)と言ったりしています。
 そういうなか,昨日の日本経済新聞に,「NTT,居住地は全国自由に 国内3万人を原則テレワーク―居住地は全国自由に 出社は出張扱い,飛行機も容認」という記事が出ていました。NTTはその前身の電電公社の時代から,労働事件の多い企業という印象がありますが,従業員に場所主権に配慮した勤務スタイルをほんとうに実現していくのであれば,これは一挙に労働面でも優良企業のトップランナーに躍り出るのではないかと思います。たしかに,業種的には,ICTの活用は得意分野でしょう。自らが率先してICTを活用した働き方を実践することにより,他企業に自分たちの提供するサービスを活用してもらえればという狙いもあるのかもしれません。ただ,同紙の別の記事で,「NTT,人材確保に危機感」とあったように,この業界では人材難であり,優秀な人材確保のためには,事業所に出てこいというような働き方では,もはやダメだということでもあります。これは来たるべきDX社会での働き方を先取りしたものでもあります。
 「やっぱり仕事って,みんなで集まってわいわいやるのが最高ね」という人もいるかもしれません。そう言える働き方ができている人は幸せだと思います。ただ,ひょっとすると,それは,知らぬ間に仕事に私生活が乗っ取られ,洗脳されているだけかもしれません。ぜひ拙著の『誰のためのテレワーク?―近未来社会の働き方と法』(明石書店)(とくにその最後に書いている「呪縛からの解放」というところ)を読んでもらえればと思います。

 

2022年5月20日 (金)

やっぱりオンライン

 昨日は,「ビジネス+IT WEBセミナー」に登場しました。テーマは,「なぜいまテレワークなのか~その将来性と課題~」というもので,私は事前収録した動画の配信という形での参加です。拙著『誰のためのテレワーク?―近未来社会の働き方と法』(明石書店)のエッセンスを40分の講演にまとめました。大学でのオンデマンド型の授業も,同様の事前収録で,最近ではこのパターンにも慣れてきました。録画されているので,最初のころからは,ちょっとでもミスをすれば撮り直したくなるのですが,徐々に言い間違えや救急車の音が入ってきたりなどのことは気にならなくなりました。撮り直しができるというのは危険なことで,A型人間ならなかなか完了しないかもしれませんが,私はそうではないので,踏ん切りを付けることができるようになってきました(途中で声が枯れてあまりにも聞き苦しくなったときは撮り直したことはありましたが)。
 ところで,現時点でのテレワークの普及度はよくわかりませんが,出勤しない働き方は着実に増えていると思います。とくに学校でのオンライン授業がなんだかんだ言って少しずつ広がっており,そのメリットを実感している学生も増えているはずです。今朝のNHKの朝のニュースでは,北海道の地方の高校で,専門の教師がいない科目を,オンライン授業で補っているという話が紹介されていました。実家から離れず,自然豊かなところで,高度な勉強もできるというのは,まさに良いとこ取りであり,ICTの活用により,そういうことが可能となっているのです。今後は種々の教育コンテンツが,ネット配信されるようになり,自分の関心次第で,場所と時間に関係なく学習できるようになるでしょう。
 こういう学生が増えてくれば,企業だって,仕事のために特定の場所に集合させるという発想が時代後れとなる可能性があるのです。テレワークの将来性というのは,様々な点から根拠付けることができますが,オンライン慣れして,そのメリットを実感した「移動しない優秀人材」(正確には,自分の好きなところに住んだり,観光したりするためには移動するが,仕事のためという理由では移動しない人たち)に合わせた就業環境を用意する必要性からも,テレワークへの移行が進むと予想できます。