テレワーク

2023年3月18日 (土)

子育てとテレワーク

 岸田首相は,子育て政策を中心に据えて支持率の回復に向けて活路を見いだそうとしているようです。子どもを大事にする政策は,昨日も書いたのですが,バラマキやイメージ戦略だけにとどまるのであれば困るのですが,そうでない本当に役立つものであれば大歓迎です。神戸市と隣の明石市とを比較して,育児世代においては,明石市の取組みが魅力的で(https://www.city.akashi.lg.jp/shise/koho/citysales/index.html ),ちょっと田舎というイメージの明石市(明石市民の方,スミマセン)にでも住みたいという人が多いように思います。収入的にまだ十分に高くない若い世代において,子どもが一人生まれたときに,急に負担が重くなるのは辛く,そこで自治体からの助成があれば助かるのは当然です。泉房穂・明石市長に対しては毀誉褒貶が激しいようですが,私は応援したいですね。財源と給付を明確にして,そのうえである程度のリーダーシップをとって実績を上げるというのは,当然やるべきことですが,簡単なことではありません。もちろん,明石市も,どこかに負担がかかっていて,その問題点がいつかは顕在化するかもしれませんので,最終的な評価がどうなるかわかりませんが,何かやってくれそうな市長という点で,私は明石市民ではありませんが,関心をもってみています。加古川市長とやりやっているようですが,それも含めて,良い意味での競争をしてもらえればと思います。泉さんは,政治家を辞めるそうですが,このままあっさり引っ込むとは思えませんね。彼のような人を必要としているところは,多いでしょう。
 ところで,今朝の日本経済新聞で「女性の力が生きる地方議会に」というタイトルの社説がありましたが,問題意識は私も共有しています。子育ての問題も含めて,女性の視点を政治や行政の場でもっと反映させたほうが,大きな改善を期待できます。そして,子育ても,女性の地方議会進出も,テレワークが重要なポイントになると考えています。
 テレワークをうまくできれば,賃金を減らさず,キャリアを中断せず,仕事を継続できます。収入不安の問題がなくなるのです。現状では,テレワークができない企業や業種や職種も多いのでしょうが,ここにもっと力を入れるべきなのです。これが子育て問題への対処として最も効果的なものだと思っています。地方議会についてもテレワークの効果は大です。テレワークにより,地方政治に関心をもつ人が増えると思われるからです。自分の家にいる時間が長くなれば,住む地域の問題への関心が高まり,そうしたところから,地方政治の活性化が生まれるのだと思います。そして,女性はもともと男性よりも家にいる時間が長かったとすれば(それが良かったかどうかはさておき),そうした女性が地方政治に参加しやすくするようにすることもまたとても大切です。女性やテレワークにより居住地に戻ってきた男性・女性が増えることが,自分たちの住んでいる地域を良くするためにも必要なことなのです。かりに女性が家事に忙しいとしても,やはりテレワークができれば,議員活動をしやすくなるでしょう。
 ということで,子育て問題の解決についても,地方議会の問題についても,テレワークの推進をぜひ政策課題に入れるべきです。しかし,政権中枢にいる人は,誰もテレワークをしていないでしょうから,そういう問題意識は出てこないかもしれませんね。

 

2023年1月31日 (火)

季刊ひょうご経済に寄稿

 一般財団法人ひょうご経済研究所から刊行されている季刊雑誌の「ひょうご経済」(157号)に寄稿しました。タイトルは,「デジタル変革後の働き方の変化」です。
 読者が中小企業の経営者向けということでしたので,それを意識して書きました。この研究所は,みなと銀行グループのシンクタンクだそうで,このような地元の研究所の雑誌に執筆させてもらえるのは光栄なことです。みなと銀行は,神戸に住んでいると,みずほ銀行よりも店舗やATMの数では存在感があります。
 ところで,昨年はずいぶんと一般向けの論考を書きました。コロナ禍やDXなどで,これからの働き方への不安が高まっているなかで,私への依頼があったのでしょう。今回の論考でも扱いましたが,テレワークがどうなるのかも経営者の関心事のようです。
 今朝のニュースで,東京が2022年は転出超過から転入超過に変わったと報道されていました。テレワークができるようになったことによる郊外移転が一段落し,やむを得ずテレワークをしていたり,させていたりした従業員や企業の東京回帰が強まっているとの見方もできそうです。しかし,トレンドとしては,こうした東京回帰は一時的なものではないかと思っています。急激に転出が起きたので,揺り戻しがあるのは当然でしょう。
 これからの若者は,なぜ対面型なのかを問うようになるでしょう。対面型のメリットがあると考えている経営者が,そのことを若者にしっかり説得できるところでは,対面型でも若者は集まるでしょう。しかし,そうした説得ができる企業がどれほどあるでしょうか。日常生活のアナログ要素は残してよいのは当然ですが,仕事の分野でのアナログ要素は,かなりの部分が無駄だと考えている人が増えているように思えます。対面での人間関係の良さは,仕事以外のところでこそ発揮されるのです。そうだとすると,長い目でみれば,テレワークは減ることはなく,東京の転入超過もいつかは転出超過に戻ることになるでしょう。

2022年9月16日 (金)

テレワークは定着するか

 予告していましたように,昨日は,佐藤博樹さんとのランチタイムセミナーがありました。時間が限られていて,どうなるかと思いましたし,打ち合わせはごく簡単なもので,ほぼぶっつけ本番でしたが,なんとか終えることができました。視聴者も多く,私にとっては貴重な経験でした。やはりWebセミナーはすごいです。どこかに人が集まっているところで講演するのとは違い,こちらが移動しなくても,たくさんの人に話を聞いてもらえるのは,何度やってみても,不思議な感覚です。聴衆の顔が見えるわけではなく,佐藤さんの顔だけを見て話すので,二人だけだと思ってつい余計なことを話してしまうことがないように,気を付けていました。
 実は講演後に佐藤さんやスタッフの方と雑談をしたのですが,そこでは少し過激な話もしていました。経営者や上司がテレワーク導入に賛成してくれなくて困っているという意見について,話が盛り上がりました。これは実は,私がテレワーク関係の講演をしたときに,よく質問されるテーマです。上司層からはテレワークについての批判的な質問をよく受けるのと同時に,若手からは上司たちの無理解についての質問や嘆きが投げかけられるのです。拙著『誰のためのテレワーク?』(明石書店)でも,プロローグで,先輩たちの無理解に嘆く主人公Aくんの話を取り上げています。それへの解答は,まずはテレワークの価値を理解してもらうために拙著を読んでもらう,と言いたいところです。拙著のメッセージは,テレワークは,導入するかどうかの問題ではなく,どのように導入するかが問題だというものであり,それを受け止めてもらえればと思うのです。ところで,テレワークが実現する場所主権は,在宅勤務オンリーではなく,個人が場所を選んで生活や労働ができるというところがポイントであり,結果として就労場所はオフィスであってもいいし,はたまたリゾート地であってもよいのです。大事なのは,労働者が選択できるということです。佐藤さんも昨日,このことを繰り返し指摘してくださいました。こういう働き方を許容するのは,マネージする側には大変な負担となるのですが,それを乗り越えることこそが,プロのマネージャーの仕事なのです。一方,労働者側からすると,そういうマネージメントができない会社には,とっとと見切りをつけてしまうのも大切です。これは多くの聴衆の前では言えないことですが,個人的に相談されたら,そう答えます。テレワーク体制やデジタル体制を導入するのには手間も費用もかかるでしょうが,その方向に行っていない会社の将来は暗いでしょう。いまはピンピンしているような会社でも10年後はどうなっているかわかりません。これからは次々とデジタルネイティブ世代が出てくるので,テレワークなんて当たり前という感じになるでしょう。場所主権を享受できないような会社には,優秀な人材は集まらないでしょう。役所も同様です。いまだにファックスやフロッピーを使っている会社に誰が入所・入社するでしょうか。そう考えると,いますでに働いている人も,自分たちの会社がどこまで新しい流れに適応する能力をもっているかを,しっかり見極める必要があります。
 私がテレワークのことを書き始めてからかなり時間が経ちますし,それを上記の本にまとめた2021年はすでに遅すぎると思っていましたが,いまなおアクチュアルなテーマであり,拙著のメッセージを伝えなければならないという状況で,日本はこれでほんとうに大丈夫かと不安になります。

 

2022年9月 4日 (日)

オンライン会議の弱点?

 今年の甲子園の高校野球は,それほど雨の影響を受けなかったのではないでしょうか。日本全国を見渡すと,大きな水害をもたらした豪雨が多かったようですが,神戸ではそれほどひどい雨がありませんでした(これからは,わかりませんが)。ひょっとすると気候変動の影響はこういうところにも及んでいるのかもしれません。各地域の気候の特徴というものが,今後,どんどん変化していくのでしょうかね。
 ところで話は変わり,産政研フォーラムの134号で,いつも楽しみにしている大竹文雄さんの連載エッセイ「社会を見る眼」の今回のテーマは「オンライン会議は創造的な発想を阻害する?」というものでした。海外の実験データなどに基づき,結論はイエスであり,ただ集中力が必要な会議は,オンライン会議のほうが優れているとされ,結びは「私たちは,オンライン会議と対面会議とをうまく組み合わせていく必要がある」というものでした。まあ,そういうところかなとは思うのですが,一人の人間単位で考えた場合には,ハイブリッド方式は生活のオーガナイズが難しくなり非効率な感じもしますので,会社内で,この部署や業務は対面会議中心,この部署や業務はオンライン会議中心というように切り分けたほうがよいように思います。
 みんなが集まって雑談できるような環境こそ創造性を生むということは,よく言われてきました。それはそのとおりなのだと思います。私たちのコミュニケーションとは,言語的な情報のやりとりだけでなく,非言語的な情報のやりとりをしており,これがテレワークでは難しいのです。五感をつかった感覚的な情報や体験情報はテレワークでは伝わにくいということです。創造性には,こうした非言語的な情報が役立っているということは,直感的にもよくわかるので,これはテレワークの弱点といえるのかもしれません。
 たとえば会社員ではなく自身の職場をもっている作家や芸術家のような人たちは,どうやって創造的な仕事をしているかというと,おそらく自分で進んで外の刺激を求めて動いているのだと思います。自宅にこもっていては行き詰まるのは当然でしょう。会社員の場合は,オフィスに出社することもそれに含まれますが,何か決まった時間に,どこかの場所に行くことを強制されるということにいなると,それは創造性に必ずしもプラスにならないような気もします。
 創造性を要する仕事で,期待どおりの創造性を発揮してもらうためには,仕事の時間や場所の決定権はできるだけ本人に与えたほうがよいのです。創造性のポイントは,オンラインか対面かということより,個人の選択肢がどれだけ広く認められるような働き方のスタイルを認めるかなのだと思っています。その意味でも,時間や場所の自己決定ができる時間主権や場所主権が大切なのです。

2022年8月23日 (火)

首相のテレワークに思う

 さすがにこれだけ連日,旧統一教会系のニュースが出てくると,自民党の支持率が下がるのはやむを得ないでしょうね。岸田首相としては,清和会の問題と言いたいところでしょうが,自分で選んだ閣僚にも教団と関係があった人がたくさんいるし,報道が確かであれば,前経産大臣で現在の自民党の政調会長は教団と濃密な関係があります。首相は得意の「検討する」とか「しっかり取り組む」という類いの言葉で逃げ切るのは容易ではないしょう。
 コロナ感染は気の毒ですが,タイミングとしては最悪で,同情よりも危機管理のなさが非難されています。テレワーク派としては,ここで首相も公務をテレワークでしっかりできるとアピールして,日本でのテレワークの定着に貢献してくれればよいなと思っていたのですが,テレビで映し出されていたのは,モニターの向こうで首相が話をしていて,手前にぶら下がり記者が並んで聞いているという異様な風景です。ここはZoomミーティング(役所だからWebEXか?)だろうと,多くの人がツッコミを入れたことでしょう。首相がリモートなのだから,ぶら下がるほうもリモートでということにならないのが情けないです。
 岸田首相が行く予定であったTICAD(アフリカ開発会議)では,最後のフロンティアと言われているアフリカをめぐる重要な話合いが予定されているようです。首相がリモートで参加するということで,これでうまくいくのなら,別にいちいち国際会議に行く必要はないことになり,こういうことが積み重なっていけば,テレワークの推進に追い風となるでしょう(航空会社は出張がなくなり困るでしょうが)。他方で,国際会議で大切なのは,公式のやりとりだけでなく,メディアでは扱われない「密約」のようなものなのだという話もあります。公式のやりとりは儀式にすぎないので,見栄えがどうかという問題を除けば,リモートでもやれてしまうのでしょうが,首脳どうしが腹を割った話をするのは対面型でなければできないのかもしれません。個人的には,そういう密約的なもので物事が決まっていくことに不信感があるので,やはりテレワークでやってもらいたいと思う反面,外交が現実には密約で決まるのであれば,リモートでしか参加できない今回の状況はデメリットになると思うところもあります。
 ところで,まったく次元が異なることですが,私は海外旅行のような大きな行事がある前には,風邪をひくなど体調を崩さないように注意をするようにしてきました。もう10年くらい前になるでしょうか,海外旅行の前に,ついうっかりと,ある焼き鳥屋(その頃は六甲にあった名店で,いまは芦屋にあり,巨人の選手が遠征時に食べにいく店です)で,店長の勧める生の鶏肉をつい食べてしまって,あとで深く後悔したことがありました。そのときは酒をけっこう飲んでいたので,勢いで食べてしまったのですが,カンピロバクターの恐怖にその後ずっと苛まれました。幸い発症はせず(店長は信頼のおける人で,たぶん心配のない鶏肉だったから出してくれたのでしょうが),事なきを得ましたが,そのときの経験から旅行前は食べ物も含め,いろいろと注意をする必要になりました。いまは海外旅行はしませんが,コロナ禍という状況なので,何か大きなイベントがある前には,他人にはできるだけ会わないようにするなど行動を自制しています(もともと自制をしていますが)。
 もちろん首相の今回のことは,久しぶりの休日で自身の休息や家族サービスをしていたのでしょうし,そのことを責めることはできません。休息や家族サービスはむしろ好ましいことであり,むしろ自身の健康や家族を犠牲にして政治一筋という人は,国民にも無理なことを求めてきそうで,かえって信用できません。とはいえ,このタイミングでの感染は,イメージとしてはよくないですね。

2022年7月27日 (水)

前期の授業終了

 今日で前期の授業が終わりました。あとは期末試験だけとなりました。今日やったのは明日の授業分のオンデマンド動画の収録ですが,とにかく終わってよかったです。今学期も,私の場合は完全リモートであり, LSではリアルタイム型,学部はオンデマンド型と異なるタイプのリモート授業をやりました。いろいろ失敗もあったのですが,一つひとつ乗り越えてきたと思っています。LSはソクラティックメソッドなので,私が何か話をするのではなく,事前に出している質問に対する答えを受けて授業を展開するというスタイルでした。そのため,リモートであることのデメリットは私にはあまり感じられず,むしろ教室でやっていたらマスク越しで話して聞きづらいとか,議論をしづらいということが起こりそうでした。それに,私はソクラティックメソッドといいながら,かなり話をしてしまうのですが,マスク越しだと,すぐに苦しくなるので,そうたくさん話をすることもできなくなり,授業の内容も変わっていたことでしょう。対面型でやるときはマスク着用というのであれば,私には今学期のようなオンライン授業でやるという選択肢もなければ困ります。
 学部のオンデマンド授業は,できるだけ学生が目の前にいるつもりで話をしました。最初は言い間違えたら,もう一回収録し直すなんてこともしていましたが,実際の授業では,言い間違えに気づいたら,その場で訂正して進んでいくので,オンデマンドであっても同じようにすることにしました。間違って喋った部分が残ってしまうのがイヤだという感じもあったのですが,そういう「潔癖主義」は捨てました。
 今週月曜日は,一般社団法人経営研究所の「人事部門責任者フォーラム」に呼んでいただき,講演をしました。「アフターコロナ後の働き方と法」というテーマですが,未来志向の私の労働法の世界をお話したつもりです。充実したコメントをいただき,私も勉強になりました。この講演は,私も参加者も全員リモートということで,最近は,この講演スタイルばかりです。この講演は夜開催でしたが,現在は,夜開催のものは体力に自信がないので,新たな依頼はお断りしています。
 8月には経済同友会の「規制・競争政策委員会」での講演を予定しており,さらに915日には,佐藤博樹さんがナビゲータをされるウェビナーで,テレワークのことを話す予定です(どちらもリモートです)。前者は会員限定ですが,後者は,参加は無料ですので,もし関心がある方は,こちらをみてください。
   こんな感じで,テレワークを実践しています。コロナの感染状況が急速に悪化するなかで,安心して仕事ができるので助かっています。

2022年7月11日 (月)

兵庫にも第7波?

 参議院選挙で自民党が大勝したことにより,今日の日経平均株価は大きく上がりました。景気対策への期待から,ということでしょうかね。岸田首相は,選挙がない黄金の3年間を手に入れたのであり,これには期待と不安が相半ばですが,これまでの実績からは,私には不安のほうがちょっと大きいです。参議院選挙後にやると先延ばしにしていたいろんな政策が,どのように実行されていくか注目です。
 当面は,コロナの第7波に向けた対策に全力で取り組んでもらいたいです。兵庫県も,斎藤知事は,第7派宣言はしていないようですが,危機感を示しています。町にでると,今月に入り,マスクをしない人が目立つにようになってきました。私も,外出時に,周りに誰もいなければマスクはしませんが,マスクをしている人が近づいてくれば,エチケットとして自分もつけますし,マスクをしていない人が近づいてくれば,予防のためにマスクをつけます。ということで,どっちにしても,あごにかけているマスクを,人が近づいてくれば鼻にまで引き上げています(マスクのおかげで,にんにくやニラを遠慮なく食べられるのは,よいことですね)。
 リモート会議に参加していると,現場にいる人はマスクをしていることが多いです。マスクをしていないリモート参加者どうしは,顔の表情がよくみえて,普通の会議となるのですが,現場の人はマスク越しで話し,表情もよくみえないので,なんとなく議論がしづらいです。私はマスクをして話すとすぐに苦しくなるので,マスクをずっとしていなければならない場には行かないようにしています。そのため,リモート会議しか参加していません。
 現在,企業も,テレワークを止めるところ,継続するところ,さらにこれに固定するところに分かれてきました。予想できたことではありますが,いつも述べているように,最後に残るのは,テレワークに対応したところでしょう。大半の会議はリモートでできるはずなのです。それでも,出勤を促すのは,対面のコミュニケーションは新しいアイデアを生みやすいというメリットがあるからだと,よく言われます。たしかに他人の話を聞くと,勉強になることは多いです。ただそれがリモートで,できないわけではないでしょう。むしろ,アイデアのわくところとは,「馬上・枕上・厠上」の「三上」であるという言葉もあります。現在では馬上はちょっと違うでしょうが,電車やバスに乗って外をみているとアイデアが湧くことがよくあります。「厠」はアイデアよりも,情報収集の場所ですね。アイデアという点では,むしろ個人のリラックスした環境が大事な気がします。コミュニケーションは情報収集の方法であり,それならリモートでもOKだと思います。
 まあ,対面とテレワークそれぞれのメリットがあるのでしょう。テレワークをするかどうか個人の選択に任せるという企業もあり,労働者としても,それが一番良いと思います。場所主権という考え方からも,在宅か出勤かの二者択一でないほうがよいです。とくに介護や育児などの家族的な負担のない人は,在宅やリモートを好きなように選択して働けたほうがよいのかもしれません。ただ,いったん家族的な負担がかかってくると,テレワークの有り難さが身にしみたものとなるでしょう。
 高校時代の3人の友人と定期的にやってきた飲み会は,20202月を最後にストップしています。少人数なのでやってもよいのかもしれませんが,でもいまのコロナの状況を考えれば,とても実施する気にはなれません。私は感染しても重篤化はしないでしょうが,他人に感染させないように行動制限がかかること自体が困ったことになります。一定の年齢になって,いろいろ社会的責任や家族的責任を担うようになると,窮屈ではありますが,できるかぎり自制せざるを得ないのです。コロナも早く治療薬が普及して,インフル並みになってほしいものです。

2022年6月25日 (土)

ムーブレス・ワークの時代

 先日,NTTが,在宅勤務が原則で,出社は出張扱いとするという制度を導入したことにふれましたが,622日の日本経済新聞では,「アクセンチュア,社員の居住地を自由に 在宅勤務を前提」,さらに少し前の同月3日には,「DeNA,社員の居住地自由に 働き方多様化で人材獲得」という記事もあり,いよいよ「ムーブレス・ワーク」(拙著『デジタル変革後の「労働」と「法」』(2020年,日本法令)216頁以下)の時代が到来しようとしているのかもしれません。
 拙著『労働法で企業に革新を』(商事法務)では,後半はDXのインパクトに関するストーリーが展開しますが,127頁あたりに,主要な登場人物の一人である深池が,完全テレワークを導入したので,母親のいる実家の西宮市に転居したいと申出をするシーンが出てきます。同書では,人々が好きなところに住んでテレワークするという「ムーブレス・ワーク」の世界を描いていたのですが,現実も段々そうなりつつあります。
 私の予想よりも現実の進行は遅いのですが,それは「出社派」と「在宅派」が拮抗しているからでしょう。個々の企業で,「出社派」と「在宅派」が覇権をめぐって争っているのかもしれません。どちらも許容するというハイブリッド型は難しいので,原則「出社」で特別な理由があるときは「在宅OK」という「原則出社派」企業と,逆に原則「在宅」で特別な理由があるときだけ出社してよい(交通費はそのときだけ支払う)という「原則在宅派」企業に二分されていくのでしょうね。ただ,DX時代において,付加価値の大きい創造的な仕事をするのは「出社」する従業員と「在宅」の従業員のなかのどちらに多いでしょうか。私は「在宅」だと思います。いまは両者は拮抗していますが,そのうちたちまち「在宅」一色になるのではないかと予想しています。中小企業も,費用の問題はあっても,「原則在宅派」に変わらなければ,人材が集まらなくなります。いまから準備しておいたほうがよいでしょう。 

 

2022年6月20日 (月)

NTTのテレワーク推進に拍手

 経団連が「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を改訂して,対策をやや緩めたようです。感染状況やウイルスの危険性に関する医学的知見の蓄積に応じて,適宜,改訂するのは必要なことです。一方で,改訂版では,「感染拡大期においては,テレワーク(在宅やサテライトオフィスでの勤務),時差通勤,ローテーション勤務(就労日や時間帯を複数に分けた勤務),変形労働時間制,週休3日制など,様々な勤務形態や通勤方法の検討を通じ,公共交通機関の混雑緩和を図る。」となっていますが,これらは感染拡大期に限る必要がないというのが私の立場です。
 おそらく経済界は,仕事にかぎらず,なんとか人に移動してもらいたいので,移動に抑制的な内容はできるだけ避けたいということなのでしょう。私は,人々が移動しなくても働けるようにし,移動するのは仕事以外のプライベートな場面に限定されるというような社会が実現しなければならないと考えており,仕事のために移動させられるのは,ちょっと過激に「人権侵害だ」(私は「場所主権」と呼んでいます)と言ったりしています。
 そういうなか,昨日の日本経済新聞に,「NTT,居住地は全国自由に 国内3万人を原則テレワーク―居住地は全国自由に 出社は出張扱い,飛行機も容認」という記事が出ていました。NTTはその前身の電電公社の時代から,労働事件の多い企業という印象がありますが,従業員に場所主権に配慮した勤務スタイルをほんとうに実現していくのであれば,これは一挙に労働面でも優良企業のトップランナーに躍り出るのではないかと思います。たしかに,業種的には,ICTの活用は得意分野でしょう。自らが率先してICTを活用した働き方を実践することにより,他企業に自分たちの提供するサービスを活用してもらえればという狙いもあるのかもしれません。ただ,同紙の別の記事で,「NTT,人材確保に危機感」とあったように,この業界では人材難であり,優秀な人材確保のためには,事業所に出てこいというような働き方では,もはやダメだということでもあります。これは来たるべきDX社会での働き方を先取りしたものでもあります。
 「やっぱり仕事って,みんなで集まってわいわいやるのが最高ね」という人もいるかもしれません。そう言える働き方ができている人は幸せだと思います。ただ,ひょっとすると,それは,知らぬ間に仕事に私生活が乗っ取られ,洗脳されているだけかもしれません。ぜひ拙著の『誰のためのテレワーク?―近未来社会の働き方と法』(明石書店)(とくにその最後に書いている「呪縛からの解放」というところ)を読んでもらえればと思います。

 

2022年5月20日 (金)

やっぱりオンライン

 昨日は,「ビジネス+IT WEBセミナー」に登場しました。テーマは,「なぜいまテレワークなのか~その将来性と課題~」というもので,私は事前収録した動画の配信という形での参加です。拙著『誰のためのテレワーク?―近未来社会の働き方と法』(明石書店)のエッセンスを40分の講演にまとめました。大学でのオンデマンド型の授業も,同様の事前収録で,最近ではこのパターンにも慣れてきました。録画されているので,最初のころからは,ちょっとでもミスをすれば撮り直したくなるのですが,徐々に言い間違えや救急車の音が入ってきたりなどのことは気にならなくなりました。撮り直しができるというのは危険なことで,A型人間ならなかなか完了しないかもしれませんが,私はそうではないので,踏ん切りを付けることができるようになってきました(途中で声が枯れてあまりにも聞き苦しくなったときは撮り直したことはありましたが)。
 ところで,現時点でのテレワークの普及度はよくわかりませんが,出勤しない働き方は着実に増えていると思います。とくに学校でのオンライン授業がなんだかんだ言って少しずつ広がっており,そのメリットを実感している学生も増えているはずです。今朝のNHKの朝のニュースでは,北海道の地方の高校で,専門の教師がいない科目を,オンライン授業で補っているという話が紹介されていました。実家から離れず,自然豊かなところで,高度な勉強もできるというのは,まさに良いとこ取りであり,ICTの活用により,そういうことが可能となっているのです。今後は種々の教育コンテンツが,ネット配信されるようになり,自分の関心次第で,場所と時間に関係なく学習できるようになるでしょう。
 こういう学生が増えてくれば,企業だって,仕事のために特定の場所に集合させるという発想が時代後れとなる可能性があるのです。テレワークの将来性というのは,様々な点から根拠付けることができますが,オンライン慣れして,そのメリットを実感した「移動しない優秀人材」(正確には,自分の好きなところに住んだり,観光したりするためには移動するが,仕事のためという理由では移動しない人たち)に合わせた就業環境を用意する必要性からも,テレワークへの移行が進むと予想できます。