教育無償化に思う
日本維新の会は,教育無償化を推進する前原誠司共同代表が国会議員のリーダーとなり,この政策を進めようとしています。当面は高校授業料の就学支援金制度の所得制限撤廃と支給上限の引上げが論点となっているようです。大学も含めた高等教育の教育無償化は,一見よそうさな政策ですが,賛否両論がありえます。否定論としては,「高等教育機関に行かなくてもよい人々を過剰に誘導するのではないか」という懸念があります。現代において大切なのは,特定のスキルを磨くことです。高校や大学での総合的な教育よりも,専門学校などで尖ったスキルを身につける方がよいということもあるのです。つまり教育無償化が全ての学生にとって最適であるとは限らず,多様な進路選択を支援する制度こそ求められるといえます。
一方で,教育無償化は,人的投資という観点から極めて重要です。昨日のBSフジのプライムニュースでは,土地問題について論じられていましたが,評論家の人が,現在の親たちは,子どもに残すべき資産としては,土地などの不動産ではなく,教育であると考える人が増えているのではないかと指摘していました。金銭的なものではなく,子どもが稼得能力を高めたり,豊かな人生を送る可能性を広げたりできる教育への投資こそが,不動産に投資するより重要ということです。日本人の間では土地神話が強いといいますが,それも変わっていくのではないかということでしょう。人口が減少していく日本では,住宅が余り,住宅政策の優先順位が下がっていく可能性があるのです。多くの国民は,効果がでるまでに時間のかかる教育への投資は,ややもすれば後回しにしがちであり(現在バイアス),だからこそ国家が介入する意味があるのです。これからのデジタル時代に対応できる能力格差(デジタル・デバイド)は貧富の差に直結する可能性があり,それを防止することこそ最も優先度が高い政策なのです。
そうみると,教育無償化の意義は小さくありません。今後は,多様な教育の選択肢を整備しつつ,デジタル社会に適応できる学びを提供することが重要です。とくに重要なのは,AI時代にふさわしい教育システムを構築すること(カリキュラムだけでなく,AIを活用した教育など)であり,それがなければ,無償化の効果もでないということも忘れてはなりません。