Issue‐based Coalitionとデジタル民主主義
9月6日,ドイツと日本で,対照的な政治ニュースがありました。ドイツ東部のザクセン=アンハルト(Sachsen-Anhalt)州で行われた州議会選挙では,極右政党とされる「ドイツのための選択肢」(Alternative für Deutschland:AfD)が圧勝しました。これに対し,長く州政権を担ってきた中道右派のキリスト教民主同盟(Christlich Demokratische Union Deutschlands:CDU)は惨敗しました。
ドイツでは,移民,治安,ウクライナ支援,ロシアとの関係などをめぐり,AfDと既成政党との違いがはっきりしてきています。もっとも,これは単純な右派対左派ではありません。他の主要政党はAfDとの連立を拒否する「防火壁」(Brandmauer)を維持しているため,現在の対立軸は,イデオロギーというより,むしろAfDを政権担当政党として認めるかどうかです。
同じ日,日本では国民民主党の代表選挙が行われ,玉木雄一郎氏が3選されました。玉木氏は,高市政権に対しても「協力できるところはしていく」と述べ,「対決より解決」の路線を続ける考えを示しています。最初から結果がわかっている選挙で,あまり緊張感はありませんでした。本来は,中道改革連合が分裂しそうなので,国民民主党は野党第1党となる可能性があり,もっと盛り上がってもよいのですが,玉木氏は,野党をまとめて与党と全面対決するより,政策ごとに協力するかどうかを決める姿勢で,自民党にとってかわるという勢いはないようにみえます。
国民民主党がやろうとしているのは,issue-based coalitionというものでしょう。日本語にすれば,「政策課題別連合」というところでしょうか。政党どうしが包括的な合意を結んで連立政権をつくるのではなく,法案ごとに多数派の組合せを変える政治です。衆議院では自民・維新が圧倒的に強い一方,参議院では,円滑に法案を成立させるために他党の協力が必要です。そのため,税制では国民民主党,社会保障や労働政策では公明党,デジタル政策ではチームみらいというように,政策によって協力相手が変わることも考えられます。
日本では,ドイツほどイデオロギーによる政党の違いがはっきりしていません。安全保障では自民党に近いが,社会保障では公明党に近いという人もいるでしょう。有権者の考え方が入り組んでいる以上,政党の組合せも政策ごとに変わってよいのかもしれません。ただ,「政策本位」や「是々非々」となると,結果として,なぜ賛成したのか,どのような修正を求めたのかなどをきちんと説明できなければ,単なる場当たり的な取引になってしまいます。とりわけ減税と社会保障のように,本来は一体として考えるべき政策を,別々の多数派で決めることには注意が必要です。
そもそも,政策ごとに判断するのであれば,その判断を政党や国会議員だけに委ねる必要があるのかという疑問も出てきます。国民が個々の政策について直接意思を示す方法もあるでしょう。デジタル投票などを活用すれば,従来よりも直接民主主義を実施しやすくなる面があります。もっとも,政策は一つひとつ独立しているわけではなく,互いに関連性があるものが多いです。たとえば減税をするなら,歳出を減らすのか,国債を増やすのかを考えなければなりません。社会保障を充実させるなら,その財源も必要です。個々の案件について賛否を尋ねるだけでは,政策全体の整合性が失われる可能性があります。そう考えると,政党には,さまざまな政策を一つのパッケージにまとめ,その優先順位や負担を国民に示す役割があるのでしょう。デジタル技術による直接民主主義は,政党に代わるものというより,政党による意思決定を補うものと考えるべきなのかもしれません。

