地熱発電
再生エネルギー嫌いと言われていたトランプ(Trump)大統領が,地熱発電に熱心であるという日経新聞の記事(高橋徹「トランプ氏が推す次世代地熱発電,日本に『国産化』の強み」)を見て,やや驚きました。その記事にあるように,トランプは,「地球温暖化なんて噓。愚かな連中による史上最大の詐欺だ」と公言し,「化石燃料を掘りまくれとたきつける」人です。
なぜ地熱発電なのでしょうか。地熱発電は,地中深くにある高温の蒸気や熱水を取り出してタービンを回し,電気をつくるという仕組みです。地球の内部では放射性元素の崩壊によって絶えず熱が生まれており,この熱エネルギーを利用するわけです。これは地球の資源を枯渇させないという点で,再生可能エネルギーの一つではありますが,太陽光発電,風力発電,水力発電,バイオマス発電といった,太陽由来のものとは性質がまったく異なります。いわば「太陽の力」ではなく,「地球の力」を使うエネルギーなのです。従来,地熱発電があまり広がらなかったのは,コストとリスクの問題が大きかったからです。地中数千メートルを掘り進めるには膨大な費用がかかり,また熱源が安定して得られる場所は限られています。さらに日本などでは国立公園との位置関係から環境規制が厳しく,開発が容易ではありませんでした。
ところが近年になって,コストの観点からは,掘削技術が飛躍的に進化していることが大きいようです。シェールオイルやシェールガスの採掘で培われたアメリカ企業の技術が,そのまま地熱開発にも応用できるようになってきたのです。つまり「掘ることが得意な国」であるアメリカにとって,地熱発電は自国の強みをそのまま生かせる分野だというわけです。
この「アメリカらしさ」がトランプ氏の琴線に触れたようです。もちろん,AIの発達などにより今後ますます増大する電力需要に対応するためには,環境との折り合いをつけるという至上命題の下で,再生エネルギーに期待せざるをえません。そうした中で,これまで難しいとされてきた地熱発電が有力な選択肢として浮上してきたのだとすれば,注目すべきところです。
記事のなかでは,「風力や太陽光と違い,サプライチェーンをほぼ国内で賄えるのは,円安進行によるコスト上昇を避け,経済安全保障を担保する観点からも見逃せない利点だ」とされています。エネルギーは,できるだけ国産化で対応してもらったほうが安心ではありますが,どこまで地熱発電に期待ができるでしょうか。

