育児介護休業法の改正
育児介護休業法は,2025年4月以降,パワーアップしていきます。「育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」は,その名称からわかるように,育児休業と介護休業がメインですが,その他の制度の拡充が著しいですね。どんどん制度が変わっていくので,それを追っていくのは大変です。今回の改正では,第1に,育児面では,子の看護休暇の改正が注目されます。第2に,介護面では,介護離職防止のための措置の強化が目につきます。第3に,在宅勤務(「住居その他これに準ずるものとして労働契約又は労働協約,就業規則その他これらに準ずるもので定める場所における勤務」),つまりテレワークについて,育児や介護のために講じることの努力義務が導入された点も,テレワーク推進派の私としては注目しています。
個人的に最も気になっているのは,「子の看護休暇」が「子の看護等休暇」になり,看護以外のためにも休暇がとれるようになったことです。まず対象となる子の範囲が小学校3年生にまで拡大され,取得事由に,インフルエンザなどの感染症による学級閉鎖と,さらに「入園,卒園又は入学の式典その他これに準ずる式典」(改正後の施行規則33条の2)が追加されました。また,労使協定による継続雇用期間6か月未満の労働者を除外するということができなくなる点も重要です。入社してすぐの従業員も,この休暇をとれるということです(介護“休暇”も同様)。
もっとも,取得事由の拡大については,コメントしたいところもあります。現在でも幼稚園の入園,卒園に両親が参加することは珍しくありません。今回の法改正は,フレックスタイムや裁量労働制の対象でない労働者が,年次有給休暇を取らなくても,その日に休暇をとることができるようにするということです。ただ,子の看護等休暇は,企業がとくに有給扱いとしていなければ,無給となるので,依然として年次有給休暇をとって参加する人はいると思います(年次有給休暇は多くの労働者は完全消化していませんので)。また,休暇取得に対する不利益取扱いは禁止されています(法16条の4)が,古い世代の上司がいて,子どもが病気や学級閉鎖の場合はさておき,(とくに男性従業員がこの休暇を取得しようとしたときに)入園式や卒園式で休むことに良い顔をしない人もいるような気がします。企業は,きちんと上司を教育する必要があるでしょう。
そう書きながら,実は心のどこかで,ここまで法律で定める必要があるかという気持ちもあります。入園等に関する今回の追加事由は企業の任意の判断にゆだね,就業規則でこの事由を実際に追加した企業は,くるみん認定で考慮するといったぐらいのほうが適切な気がします。それに学級閉鎖も,本人が病気でないことが前提で考えると,テレワークの権利を与えるような規制も考えられたのではないかと思います。狙いは悪くないとしても,やり方をもっと考えたほうがよいということです。