『詳説 労働契約法(第3版)』
荒木尚志・菅野和夫・山川隆一『詳説 労働契約法〔第3版〕』(弘文堂)をいただきました。いつも,どうもありがとうございます。労働契約法について何か調べるときには,まず参照しなければならない本です。その最新版が出たことは,大変ありがたいことです。第2版が2014年刊行でしたから,実に12年ぶりの改訂ということになります。
この12年間の大きな変化の一つは,旧労働契約法20条が削除され,有期雇用労働者の不合理な労働条件の禁止に関する規定が,短時間・有期雇用労働法に移されたことでしょう。これに伴い,第3版では,新たにパート・有期労働者の均等・均衡待遇に関する節が設けられ,多くのページが割かれています。本のタイトルの下にも,「パート・有期労働者の均衡・均等待遇を含む」と注記されています。体系的にみれば,短時間・有期雇用労働法は,部分的には,いまや労働契約法の特別法のような位置づけかもしれません。
もう一つ目を引いたのが,「労働者」の定義を扱う箇所に,「非労働者の法的保護」が新たに加えられていることです。フリーランス法の制定もあり,労働者か非労働者かという境界領域をどう扱うかが,現在の労働法における重要な問題となっていることを示すものといえるでしょう。
そして,おそらく今後とくに重要になるのが,第4章「今後の課題」です。基本的には第2版の議論が踏襲されているように思いますが,今回は従業員代表制にかなり力を入れた内容となっています。これは,過半数代表者制度のあり方などが改めて政策課題となっている現在の政府の議論の動向とも重なります。労働契約法の将来を考えるうえで,個別の労働契約ルールだけでなく,職場における集団的な意思形成をどのように制度化するかが重要になっているということでしょう。
私自身は,短時間・有期雇用労働法8条の効力をどう考えるか,あるいは過半数代表者制度を今後どのように制度設計していくべきかといった点では,本書の著者たちとは異なる立場をとっています。しかし,それは見解の違いというだけのことです。自分の見解をもつためにも,まず現在の労働契約法についての正統的な解釈がどのようなものであるかを知る必要があります。
その意味で,本書は,研究者や実務家はもちろん,労働法を本格的に学ぼうとする学生にとっても,まず参照すべき基本文献であり続けるでしょう。もちろん,いつまでも,この3先生に頼っていてはいけません。第4版で,フレッシュなメンバーが入るかが注目ですね。

