国際政治

2026年5月14日 (木)

アフォーダビリティ(affordability)とオステリティ(austerity)

 Trump政権の政策成果を語る際に,最近,ホワイトハウス報道官のレビット(Leavitt)がよく使っている言葉に「affordability」があります。日本語に訳すのはなかなか難しい言葉ですが,「生活に必要なものを,手ごろな価格で買える状態」といった意味でしょうか。ガソリン,食品,住宅など,日常生活に直結するものが「手の届く価格」であることを重視する発想です。
 この言葉を聞いていて,少し前の日本の選挙で,国民民主党の玉木代表が繰り返し使っていた「手取りを増やす」というスローガンを思い出しました。観点は少し違いますが,どちらも,人々の日常生活の感覚に直接訴えかけるという意味で,非常にインパクトのある言葉だと思います。
 多くの人にとって重要なのは,「毎日の生活が成り立つか」ということなのでしょう。アメリカでは,ガソリン価格の上昇がとりわけ強く問題視されます。車社会であるアメリカでは,ガソリンは生活必需品だからです。ある程度の富裕層になると,こうした「affordability」という言葉にはそれほど敏感に反応しないのかもしれません。むしろ「affordability」と対極にある「austerity(緊縮)」こそ望んでいるかもしれません。将来のことを考えると,そのほうが良い政策と言えるからです。しかし,一般の人々にとっては,生活に必要なものを無理なく買えるかどうかは,まさに生活そのものに直結しています。だからこそ,政権選択の際にも,非常に大きなポイントになるのでしょう。
 もちろん,同じことを,「インフレを抑える」「賃金を上げる」と表現してもよいわけです。しかし,「affordability」や「手取りを増やす」という言葉には,もっと直接的で,肌感覚的にわかりやすい響きがあります。だからこそ,人々の心に刺さるのでしょう。国民民主党が一定の支持を集めたのも,まさにその点に理由があったように思います。
 現在の政治では,経済政策そのものについては,各政党間でそれほど大きな違いが見えにくくなっています。そうなると,最後は,「どの言葉が人々の感覚をつかむか」という,スローガンの勝負になっていく面があります。
 富裕層がどう考えるかはさておき,財政再建を考えれば,「austerity」は避けて通れないことでしょう。しかし,現在の政治家たちの辞書には,もはや「austerity」という言葉そのものが存在しなくなっているのかもしれません。この言葉には,大衆を痛めつけるというニュアンスがあるからです。でも,政治がこれを避けていて,本当によいのでしょうかね。

2026年4月17日 (金)

現代の「アヴィニョン捕囚」?

 ローマ教皇レオ(Leo)14世は,訪問先のカメルーン(Cameroon)での演説において,「一握りの暴君によって世界が荒廃している」と述べたと伝えられています。Trumpのことを指しているのは明らかであり,同政権との緊張関係も徐々に深まりつつあるようです。Trump大統領は,アメリカ人であるレオ14世が教皇になれたのは自分のおかげだと述べているともいわれています。何でも自分の手柄にしたがる人物だという印象を受けますね。
 かつて14世紀には,フランス王フィリップ(Philippe)4世が,教皇をアヴィニョン(Avignon)に移し,その権威を事実上掌握したことがありました(いわゆるアヴィニョン捕囚)。「捕囚」という呼称は,紀元前6世紀に新バビロニア王国のネブカドネザル2世(Nebuchadnezzar II)がユダヤ人をエルサレム(Jerusalem)からバビロン(Babylon)へ強制移住させた出来事(バビロン捕囚)になぞらえたものです。
 世俗権力が宗教的権威を取り込み,あるいは従属させようとする動きは,歴史のなかで繰り返されてきたパターンです。Trumpの振る舞いも,フィリップ4世のそれと重なる側面をもっているのかもしれません。これがさらに進めば,ルネサンス期に金融資本でイタリアを支配したメディチ(Medici)家が,一族から複数の教皇を送り込み,教皇庁を事実上「一族の装置」として利用した歴史とも重なります。教皇庁がキリストの代理人の座としてではなく,一族の権力やブランドを強化し,その資産や影響力を維持するための機構へと変質する可能性は,決して過去のものではありません。
 連邦最高裁を含め,既存の制度に対する影響力を強めてきたTrumpの次の関心が,アメリカ大統領を超える象徴的権威をもつローマ教皇へと向かうとしても,不思議ではないようにも思われます。そうだとすれば,それはまさに「権力の暴走」と呼ぶべき事態でしょう。私たちは,こうした動きを前にして,ただ拱手傍観するしかないのでしょうか。

2026年3月 6日 (金)

アメリカ人の良識

 最近のアメリカの動きを見ていると,さすがにアメリカ国内でも,今回のイラン攻撃は「アメリカの国益というより,イスラエルのためにやっているのではないか」という見方が広がっているようです。また,関税によって世界中を敵に回してもアメリカを豊かにするという説明についても,この大統領がすでに政権にいなくなったあとの中長期的スパンでみれば,むしろアメリカがこれまで築いてきた信用を大きく傷つけたという負の遺産を残すだけでしょう。世界の国々は,すでにアメリカを以前のように頼りにしなくなりつつあります。
 もともとアメリカの強みは,軍事力だけではありません。広大な土地や資源もそうですが,それ以上に,自由と民主主義を重視するという理念,そして世界中から優秀な人材を受け入れてきたことなどが,大きな力になってきました。ところが,自由の抑圧,民主主義の軽視,さらに移民の排斥といった動きが強まれば,そうしたアメリカの強みは少しずつ失われていくでしょう。
 この大統領は,おそらくエリートではないというコンプレックスを抱えながら,非常に強い上昇志向を持った人物なのでしょう。こういう人物がトップに立つと,それまでの仕組みを破壊しても何も感じないのかもしれません。しかし残念ながら,壊したあとにどうするのかという構想を描く知恵がないのです。本当に賢い統治者は,優秀なエリートや官僚をうまく使いながら国家を運営していきます。すべてを自分一人でできるわけがないからです。非エリートのトップの周りには,うまい話を持ってくるように見えて,実は自分の利益しか考えていない人が集まりがちです。「類は友を呼ぶ」です。そういう友が,大きく足を引っ張りかねません。
 ところで,今回大きな打撃を受けたイランは,このあとどうなるのでしょうか。ひょっとすると,こういうことをしても,過去の日本の例をみると最終的にはうまくいくという,間違った教訓を信じているおそれがあります。たしかに日本はアメリカによって原爆を二発も投下され,国土も大きく破壊されました。それでもその後,日本は経済大国へと成長し,アメリカにとって重要な同盟国になりました。この成功体験が,アメリカの政策のどこかに影響しているのかもしれません。
 ただし,日本の場合には,イランの例とは大きく違うところがあります。アメリカは天皇を殺しませんでした。憲法は変わり,主権も天皇から国民へと移りましたが,天皇制度は残されたのです。その結果,日本は国家のアイデンティティを保つことができたとも言えます。しかしイランに対しては,同じことがあてはまりそうにありません。もし国家の秩序そのものを壊してしまえば,日本のような戦後の安定した再建は難しいのではないでしょうか。イラク戦争の失敗を繰り返すことになる可能性もあります。
 日本では現在,天皇制の将来をめぐる議論も起きています。このままでは将来,皇位継承が難しくなるのではないかという懸念があり,その一方で秋篠宮家に対する反発などもあり,天皇の長女を天皇にすべきだという議論も高まっています(天皇制が維持されたからこそ,こうした天皇家をめぐる議論ができるのですが……)。 
 もし大統領が,日本の戦後復興を成功例として参考にするのであれば,その成功がなぜ起きたのかをきちんと分析する必要があります。単に強い軍事力で相手を打ち負かせば,同じことが起きるというわけではありません。
 いずれにしても,出たとこ勝負のような形で軍事行動を行い,その結果として何千,何万という人が命を落とすようなことが許されてよいはずがありません。はたしてアメリカの人々は,このような行動を本当に許すのでしょうか。アメリカ人の良識が問われているように思います。

2025年11月 5日 (水)

アメリカの政治はどこへ向かうのか

 ニューヨーク市長選の結果を見て アメリカ最大の都市であるニューヨークで行われた市長選挙で,インド系移民でイスラム教徒のゾーラン・マムダニ(Zoran Mamdani)氏が当選したそうです。マムダニ氏は民主社会主義者と自称し,民主党内でも急進左派とされる人物です。アメリカでも政治の「揺り戻し」が起こりつつあるのかもしれません。今日のクローズアップ現代でもとりあげられていましたが,基本的な支持母体はTrumpと共通するところがあるようです。要するに,この生活難をなんとかしてくれということです。
 もともとニューヨークは民主党が圧倒的に強い地域ですが,それにしても,かなり急進的な思想をもつ人物が市長になったということで,今後の展開がやや心配です。心配というのは,政策内容というより,むしろ共和党が強く反発しそうな点です。実際,トランプ(Trump)大統領は,マムダニ氏を共産主義者と呼び,ニューヨーク市に対する連邦からの補助金を打ち切るというようなことを言っているようです(そんなことは簡単にできるのでしょうか)。
 マムダニ新市長の公約によれば,高所得層に増税を行い,その財源を住宅価格の上昇抑制や市営バスの無料化といった市民生活への直接支援に充てるとのことです。理念としては理解できますが,果たしてそれが現実的なのかはまだわかりません。単なるポピュリズム(populism)的な政策に終わるかどうか,まだよくわかりません。
 それにしても,トランプ大統領の再登場,そしてニューヨークにおける急進左派の台頭と,アメリカ政治は非常に不安定に見えます。思えば,オバマ(Barack Obama)政権からトランプ政権への移行が大きな「振り子」の始まりでした。その後,トランプからバイデン(Biden)へ,そして再びトランプへ――この振れ幅の大きさは,もはやジェットコースターのようです。
 ただ,あえて言えば,オバマ=バイデン時代があまりにもリベラルに傾きすぎたため,その反動としてトランプのような人が出てきて,そして,またマムダニのような人も登場しているのかもしれません。
 政治の安定という観点からは,左右どちらかに大きく振れるよりも,中道に寄った「ほどよい往復運動」が望ましいように思います。欧州はそうした傾向が比較的強いです。
 日本でも,自民党の中で宏池会と清和会が交互に主導権を握るくらいの揺れであれば,政治的安定という点では悪くないかもしれません。あくまでアメリカとの比較ではありますが。

2025年10月29日 (水)

Trump現象のほんとうの恐ろしさ

 日本経済新聞の記事「高市首相,トランプ氏に防衛費増を伝達 80兆円投資『着実に履行』」によると,高市首相はTrump(トランプ)大統領に対して,「タイとカンボジアの紛争終結や中東での停戦合意への米国の貢献を『短期間に世界はより平和になった』とたたえた。米高官によると,トランプ氏をノーベル平和賞に推薦する考えも伝えた」とのことでした。
 私が世界の情勢を正確に把握していないだけで,もしかするとトランプ氏は本当に平和に貢献しているのかもしれません。しかし,一番大きな問題であるロシア(Russia)のウクライナ(Ukrine)侵攻を止めることもできず,中東においてもイスラエル(Israel)への対応は依然として弱腰です。これでノーベル平和賞とは,さすがに違和感を覚えざるをえません。高市首相は「ご機嫌取り」に徹しているのでしょうが,これでは,過去に平和賞を受け取った人々に対して申し訳ない気さえします。
 それにしても,一方的に関税を引き上げ,日本経済を苦しめている人物を,ここまで歓待するとはどういうことでしょうか。私には理解できません。
 思えば,トランプ氏の最大の「功績」とは,民主主義という制度が,こうした「とんでもない指導者」をも生み出しうるという現実を世界に示したことかもしれません。こうしたことは歴史上,決して初めてのことではありませんが,それがアメリカという民主主義の象徴の国で起きたという点に深い意味があるように思います。
 ハンナ・アーレント(Hannah Arendt)は『全体主義の起源』(The Origins of Totalitarianism)のなかで,全体主義を生み出したのは「mob(群衆)」と呼ばれる人々だと指摘しています。彼女は,このことを,フランス語のdéclassé,つまり「階級から外れてしまった人々」という言葉を使って説明しています。20世紀初頭,資本家や労働者という新たな階級が形成される一方で,どの階級にも属さない人々が政治的に取り残され,その結果として全体主義の支持基盤となった,というのが彼女の分析でした。
 どんな階級であれ,そこに属していれば,政治過程の中で誰かが代表してくれます。しかし,どこにも属さない人々は,誰からも代表されないまま,アウトロー的なカリスマに惹かれていく。アメリカにおけるラストベルト(Rust Belt)の白人層は,まさにそうした現代の“mob”だったのかもしれません。誰も自分たちのことを考えてくれないという孤立感が,トランプへの支持につながったという現実があります。そうだとすると,これから先はいったいどうなるのでしょうか。歴史の教訓というものを活かせなければ,とても恐ろしいことになりそうです。
 SDGsにおける「No one will be left behind」(誰一人取り残さない)は,国際的な文脈だけでなく,いろんな場面で何度もリマインド(remind)したほうがよいスローガンです。

2025年6月22日 (日)

帽子をかぶった大統領

 アメリカがイラン(Iran)の核関連施設を攻撃しました。恐ろしい話です。アメリカとイスラエル(Israel)だけの論理で,おぞましいことが進んでいるように思います。今日の日曜日,私たちは平和な日を過ごしていましたが(地震は起きていますが),その裏側で,世界を破滅に導きかねないような軍事攻撃が行われているのです。ウクライナ(Ukraine)でも,ガザ(Gaza)でも,戦争状態は続いています。
   Trump
大統領が,赤いMAGA帽をかぶってインタビューに応じる姿は何度もみてきました。スーツにネクタイ,そして赤い帽子というスタイルは,どうみても異様で,違和感が拭えません。赤沢亮正・経済再生担当相も,MAGA帽をかぶった写真が公開されていましたが,正直,情けないです。
 そもそも,帽子をかぶったまま公式な場でインタビューに応じるというのは,礼を欠いているのではないかという気がします。野球帽タイプのcapをかぶってフォーマルな場に現れるというのは,どうしても粗野な印象を受けます。そして,そのようなスタイルで軍事攻撃の可能性などを語っていたのです。重大なことを話すには不適切な装いでしょう。
  ただ,野球帽に違和感を覚えるという点についていえば,私のほうが古いのかもしれません。アメリカという国は,スーツにスニーカー(sneaker)やリュックサック(ドイツ語読み。英語では“rucksack”でラックサック)というスタイルを広めた国でもあります。そう考えると「何でもあり」なのでしょうね。でも,軍事力の行使については「何でもあり」は困ります。

2025年4月18日 (金)

エルサルバドル

 スペイン語でSalvadorは,救世主と言う意味です。イタリア語では,Salvatoreです。「salvare」は救済するという意味なので,「salvatore」は救済する人ということです。人名でもあり,愛称は「Toto」です。サッカーのワールドカップの1990年イタリア大会で,得点王になり,その後,ジュビロ磐田に来て,中山雅史選手らと一緒に活躍した スキラッチ(Schillaci)も名前はサルバトーレ(Salvatore)で,愛称はトトでした。
 ただ,こんな軽い話をしている場合ではないのです。その名前(スペイン語)が国名になっているエルサルバドル(El Salvador)が,いま話題になっています。BBCニュースの4月11日配信の「「手違い」で中米に強制送還の男性,米最高裁がトランプ政権に帰国支援を命令」をみると,「アメリカの連邦最高裁判所は10日,ドナルド・トランプ政権に対し、中米エルサルバドルの巨大刑務所に「手違い」で強制送還したメリーランド州の男性の帰国を容易にするよう命じた。」とされています。そして,「トランプ政権は先に,キルマー・アブレゴ=ガルシア氏(29)を誤って送還したことを認めたが,同氏をアメリカに戻すよう命じたメリーランド州連邦地方裁判所の命令を差し止めようとしていた。連邦最高裁は7日,この問題を検討する間,地裁の命令の一時差し止めを認めた。しかし連邦最高裁は10日,判事9人の全員一致で,地裁命令を阻止することを拒否した。」
 報道どおりだとこれは無茶苦茶なことです。連邦最高裁が,Trumpが送り込んだ保守系の判事も含めて,全員が帰還促進を求めているのに,それを無視しているというのは,もはや三権分立は機能せず,アメリカが北朝鮮などと同様の独裁国家になったと言われてもおかしくないでしょう。エルサルバドルの大統領も,Trumpに会って,もっと刑務所を建設しろと言われてヘラヘラ笑っていましたが,こんなことを楽しげに語り合っているのが国のリーダーであると考えると,恐ろしくてたまりません。世界は大変なことになりつつあります。

2025年4月17日 (木)

格下の格下の特使

 初夏のような暑さになりました。最近では真夏というと異常な暑さなので,それに比べれば真夏というほどではありませんが,それでも突然,これだけ気温が上がると困ったものです。まだ部屋のなかに,ダウンジャケットも,暖房器具もあるなかで,この暑さです。体温調整も難しいです。咳はほぼ収まっていますが,声は元に戻っていません。気候の急変は心配です。明日は授業があるので,なんとか喉が回復していてほしいのですが,これまでの人生で経験したことがない長引いている症状なので,どのあたりで治るのかの予想がまったくできません。
 話は変わり,今日の最悪の一言は,アメリカに石破茂首相の特使として行った赤沢亮正経済財政・再生相の「自分は格下の格下。出てきて直接話をしてくださったことは本当に感謝しています」です。どういう意図での発言か不明ですが,特使として行ったということは,日本の首相の代わりということなので,Trump大統領が出てきたことについて,感謝するのはよいとしても,それほど卑下すべきではなかったでしょう。やっぱり日本は属国で,その特使が,宗主国の王様に会ってもらい舞い上がったという印象を世界中に与えたのではないでしょうか。交渉は交渉できちんとやると言っていますが期待できません。国際的な舞台では,いかに自分の格を高く見せるかが勝負ということもあるので,Zelenskyy(ゼレンスキー)のようにしろとは言いませんが,情けない気持ちになりました。外交経験の乏しい政治家には荷が重すぎましたね。

2025年4月14日 (月)

韓国大統領罷免

 韓国の尹大統領が罷免されました。昨年12月に非常戒厳を宣言し,国会に軍や警察の発動を命じたことで,国会から弾劾訴追がなされ,憲法裁判所により,非常戒厳は違憲とされ,罷免が認められました。
 韓国の国会は,野党が多数であり,尹政権の政策の実現が阻まれるという状況があったようですが,それにしても非常戒厳を宣言して軍などを投入するというのは,やりすぎです。民主主義に反する暴挙であり,血迷ったとしか言えません。アメリカでも,Trump大統領が2021年に大統領選挙の結果に反対して国会襲撃を扇動したとされていましたが,韓国はアメリカとは違い,きちんと憲法裁判所が大統領の行為を違憲として罷免させた点で民主主義が機能していたといえます。これをみても,アメリカがいまやいかに非民主主義的な国家であるかがわかるような気がします。
 尹大統領は親日的で,彼が大統領に就任してからは,日韓関係は良好でした。非常に良い隣国関係を展開できていましたが,気になっていたのは尹大統領の国内基盤が脆弱であったことです。結局,尹大統領は「自爆」してしまった感じで,残念な結果になりました。次期大統領の候補の一番手である李在明氏は反日的と言われていますが,韓国内でもいろいろな疑惑がとりざたされており,すんなりと当選となるようではなさそうです。どうなるにせよ,北朝鮮の脅威があるなか,日本と良好で建設的な関係を築くことができる大統領が韓国に誕生することを祈っています。

2025年3月29日 (土)

坂の上の雲とロシア

 NHKのBSで,「坂の上の雲」を再放送していたので観ていました。原作は司馬遼太郎の同名の小説です。松山出身の秋山真之・好古兄弟と正岡子規の3人の人生を追いながら,明治の日本人がどのように考えて生きていたのかが描かれていました。ハイライトは日露戦争です。
 満州などの中国大陸での権益をめぐってのロシアとの戦争は,列強に並ぶために必死に努力してきた明治の人たちの思いの集大成でした。「坂の上の雲」は,明治の人たちの,ひたすら上を向いて頑張っていた頃の楽観的なところを描いています。目標が決まったときの日本人の強さはあるのでしょう。必死に西洋の文物を吸収し欧化を進めます。この本に登場する秋山兄弟も,それぞれ留学して外国の軍事を学んできます。しかし,あまりにも早く駆け上がった日本は,分不相応のまま国際舞台に登場し,やがて無謀な戦争に突進し,手痛い敗戦を喫することになります。
 ところでロシアですが,日露戦争のときの皇帝であるニコライ2世は,皇太子時代に日本で斬りつけられて負傷したり(大津事件),日露戦争でまさかの敗戦を喫したりして日本と因縁のある皇帝ですが,何と言っても,その最期は悲惨でした。第1次世界大戦への参戦で国民は疲弊し,ストが頻発し,結局,ロシア革命が起こってロマノフ王朝は退陣を求められます。皇帝一族は監禁されて,最後は反革命派により奪還されることを恐れた革命派により,幼い家族らを含め全員処刑されました。歴史上,これまで誰も経験をしていなかった共産主義革命が,このように展開していくとは,誰も予想していなかったかもしれず,ロシアの歴史における大きな汚点となっていると思います。レーニンがこの処刑を命じたかどうかについては議論があるようですが,革命の出発点でのこの血なまぐささは,ソ連のその後のスターリン体制にも引き継がれてしまったような気がします。そしていまウクライナ戦争です。隣国である以上,付き合っていかざるをえないのですが,この国の不気味さは不安です。