政治人材の枯渇
ダイヤモンド・オンラインで,ジャーナリストの清水克彦氏の「米大統領選は『失言製造機vs暴言王』が濃厚,見るに堪えない“醜悪な戦い”に」という記事を読みました。確かに,Bidenの失言はひどく,このままだと,暴言王のTrumpと失言王のBidenという超高齢の候補者どうしの大統領戦ということになり,アメリカってそれほど人材がいなのかと言いたくなります。この記事では,「筆者も日頃,日本の政治を,『見るに堪えない。もっと生きのいい政治家はいないのか』と思いながら取材しているが,バイデン氏とトランプ氏の泥仕合を想像すると,『まだアメリカよりはマシか…』と思ってしまうのである」という文章で締められています。
ただ,ふと思うのは失言とされている「私が説得し日本は防衛費を増やした」は,ほんとうに失言だったのでしょうかね。首相を大統領と呼んだり,意味不明の「女王陛下,万歳!」と言ったりするのは,前者は,そもそも外国の首脳の肩書など何とも思っていないということで(これはこれで外交儀礼上問題ではあるのですが),後者は,記憶の混戦によるもので,それ自体は困ったものではあるものの,高齢者にはありがちであるのに対して,防衛費問題は妙に具体的で,失言とは思えないのです。あえて自分の手柄とするために事実でないことを発言した可能性もありますが,それよりも実際にそうであったが,confidentialであったものを語ったという意味での失言であったかもしれません。日本の外交政策がアメリカ寄りすぎて,岸田首相はアメリカの「ポチ」だという指摘は前からあって,その真偽はわかりませんが,超高齢者Bidenのいつもの失言(事実ではないことを言ったという意味での失言)だということで片付けてよいでしょうか。
岸田首相が一連の外交政策でやってきたのは,西側陣営の一員としてウクライナの徹底支援をすることや,ロシアと中国を敵視し,ロシアの日本侵攻や台湾有事の危険性をあおって防衛費を増強してアメリカに満足してもらうことのようにみえます。これだけの対米追従をしたおかげで,アメリカ訪問時には厚遇され,またサミットではBiden訪日を実現させることができ(債務上限問題で議会対応に追われていたにもかかわらず,他の予定はキャンセルしたが,広島サミットだけには参加した),岸田首相は大満足だったでしょうが,国益にかなっているのかは,よくわかりません。グローバルサウス(global south)がやっているような,したたかな外交を願うのは無理なのでしょうかね。
たしかに日本の政治状況は,アメリカよりはマシのような気がしますが,岸田首相がもし暴走しているのだとすれば,よりおそろしいことが起こっていることになるかもしれません。そうでないことを祈るばかりです。