国際政治

2025年11月 5日 (水)

アメリカの政治はどこへ向かうのか

 ニューヨーク市長選の結果を見て アメリカ最大の都市であるニューヨークで行われた市長選挙で,インド系移民でイスラム教徒のゾーラン・マムダニ(Zoran Mamdani)氏が当選したそうです。マムダニ氏は民主社会主義者と自称し,民主党内でも急進左派とされる人物です。アメリカでも政治の「揺り戻し」が起こりつつあるのかもしれません。今日のクローズアップ現代でもとりあげられていましたが,基本的な支持母体はTrumpと共通するところがあるようです。要するに,この生活難をなんとかしてくれということです。
 もともとニューヨークは民主党が圧倒的に強い地域ですが,それにしても,かなり急進的な思想をもつ人物が市長になったということで,今後の展開がやや心配です。心配というのは,政策内容というより,むしろ共和党が強く反発しそうな点です。実際,トランプ(Trump)大統領は,マムダニ氏を共産主義者と呼び,ニューヨーク市に対する連邦からの補助金を打ち切るというようなことを言っているようです(そんなことは簡単にできるのでしょうか)。
 マムダニ新市長の公約によれば,高所得層に増税を行い,その財源を住宅価格の上昇抑制や市営バスの無料化といった市民生活への直接支援に充てるとのことです。理念としては理解できますが,果たしてそれが現実的なのかはまだわかりません。単なるポピュリズム(populism)的な政策に終わるかどうか,まだよくわかりません。
 それにしても,トランプ大統領の再登場,そしてニューヨークにおける急進左派の台頭と,アメリカ政治は非常に不安定に見えます。思えば,オバマ(Barack Obama)政権からトランプ政権への移行が大きな「振り子」の始まりでした。その後,トランプからバイデン(Biden)へ,そして再びトランプへ――この振れ幅の大きさは,もはやジェットコースターのようです。
 ただ,あえて言えば,オバマ=バイデン時代があまりにもリベラルに傾きすぎたため,その反動としてトランプのような人が出てきて,そして,またマムダニのような人も登場しているのかもしれません。
 政治の安定という観点からは,左右どちらかに大きく振れるよりも,中道に寄った「ほどよい往復運動」が望ましいように思います。欧州はそうした傾向が比較的強いです。
 日本でも,自民党の中で宏池会と清和会が交互に主導権を握るくらいの揺れであれば,政治的安定という点では悪くないかもしれません。あくまでアメリカとの比較ではありますが。

2025年10月29日 (水)

Trump現象のほんとうの恐ろしさ

 日本経済新聞の記事「高市首相,トランプ氏に防衛費増を伝達 80兆円投資『着実に履行』」によると,高市首相はTrump(トランプ)大統領に対して,「タイとカンボジアの紛争終結や中東での停戦合意への米国の貢献を『短期間に世界はより平和になった』とたたえた。米高官によると,トランプ氏をノーベル平和賞に推薦する考えも伝えた」とのことでした。
 私が世界の情勢を正確に把握していないだけで,もしかするとトランプ氏は本当に平和に貢献しているのかもしれません。しかし,一番大きな問題であるロシア(Russia)のウクライナ(Ukrine)侵攻を止めることもできず,中東においてもイスラエル(Israel)への対応は依然として弱腰です。これでノーベル平和賞とは,さすがに違和感を覚えざるをえません。高市首相は「ご機嫌取り」に徹しているのでしょうが,これでは,過去に平和賞を受け取った人々に対して申し訳ない気さえします。
 それにしても,一方的に関税を引き上げ,日本経済を苦しめている人物を,ここまで歓待するとはどういうことでしょうか。私には理解できません。
 思えば,トランプ氏の最大の「功績」とは,民主主義という制度が,こうした「とんでもない指導者」をも生み出しうるという現実を世界に示したことかもしれません。こうしたことは歴史上,決して初めてのことではありませんが,それがアメリカという民主主義の象徴の国で起きたという点に深い意味があるように思います。
 ハンナ・アーレント(Hannah Arendt)は『全体主義の起源』(The Origins of Totalitarianism)のなかで,全体主義を生み出したのは「mob(群衆)」と呼ばれる人々だと指摘しています。彼女は,このことを,フランス語のdéclassé,つまり「階級から外れてしまった人々」という言葉を使って説明しています。20世紀初頭,資本家や労働者という新たな階級が形成される一方で,どの階級にも属さない人々が政治的に取り残され,その結果として全体主義の支持基盤となった,というのが彼女の分析でした。
 どんな階級であれ,そこに属していれば,政治過程の中で誰かが代表してくれます。しかし,どこにも属さない人々は,誰からも代表されないまま,アウトロー的なカリスマに惹かれていく。アメリカにおけるラストベルト(Rust Belt)の白人層は,まさにそうした現代の“mob”だったのかもしれません。誰も自分たちのことを考えてくれないという孤立感が,トランプへの支持につながったという現実があります。そうだとすると,これから先はいったいどうなるのでしょうか。歴史の教訓というものを活かせなければ,とても恐ろしいことになりそうです。
 SDGsにおける「No one will be left behind」(誰一人取り残さない)は,国際的な文脈だけでなく,いろんな場面で何度もリマインド(remind)したほうがよいスローガンです。

2025年6月22日 (日)

帽子をかぶった大統領

 アメリカがイラン(Iran)の核関連施設を攻撃しました。恐ろしい話です。アメリカとイスラエル(Israel)だけの論理で,おぞましいことが進んでいるように思います。今日の日曜日,私たちは平和な日を過ごしていましたが(地震は起きていますが),その裏側で,世界を破滅に導きかねないような軍事攻撃が行われているのです。ウクライナ(Ukraine)でも,ガザ(Gaza)でも,戦争状態は続いています。
   Trump
大統領が,赤いMAGA帽をかぶってインタビューに応じる姿は何度もみてきました。スーツにネクタイ,そして赤い帽子というスタイルは,どうみても異様で,違和感が拭えません。赤沢亮正・経済再生担当相も,MAGA帽をかぶった写真が公開されていましたが,正直,情けないです。
 そもそも,帽子をかぶったまま公式な場でインタビューに応じるというのは,礼を欠いているのではないかという気がします。野球帽タイプのcapをかぶってフォーマルな場に現れるというのは,どうしても粗野な印象を受けます。そして,そのようなスタイルで軍事攻撃の可能性などを語っていたのです。重大なことを話すには不適切な装いでしょう。
  ただ,野球帽に違和感を覚えるという点についていえば,私のほうが古いのかもしれません。アメリカという国は,スーツにスニーカー(sneaker)やリュックサック(ドイツ語読み。英語では“rucksack”でラックサック)というスタイルを広めた国でもあります。そう考えると「何でもあり」なのでしょうね。でも,軍事力の行使については「何でもあり」は困ります。

2025年4月18日 (金)

エルサルバドル

 スペイン語でSalvadorは,救世主と言う意味です。イタリア語では,Salvatoreです。「salvare」は救済するという意味なので,「salvatore」は救済する人ということです。人名でもあり,愛称は「Toto」です。サッカーのワールドカップの1990年イタリア大会で,得点王になり,その後,ジュビロ磐田に来て,中山雅史選手らと一緒に活躍した スキラッチ(Schillaci)も名前はサルバトーレ(Salvatore)で,愛称はトトでした。
 ただ,こんな軽い話をしている場合ではないのです。その名前(スペイン語)が国名になっているエルサルバドル(El Salvador)が,いま話題になっています。BBCニュースの411日配信の「「手違い」で中米に強制送還の男性,米最高裁がトランプ政権に帰国支援を命令」をみると,「アメリカの連邦最高裁判所は10日,ドナルド・トランプ政権に対し、中米エルサルバドルの巨大刑務所に「手違い」で強制送還したメリーランド州の男性の帰国を容易にするよう命じた。」とされています。そして,「トランプ政権は先に,キルマー・アブレゴ=ガルシア氏(29)を誤って送還したことを認めたが,同氏をアメリカに戻すよう命じたメリーランド州連邦地方裁判所の命令を差し止めようとしていた。連邦最高裁は7日,この問題を検討する間,地裁の命令の一時差し止めを認めた。しかし連邦最高裁は10日,判事9人の全員一致で,地裁命令を阻止することを拒否した。」
 報道どおりだとこれは無茶苦茶なことです。連邦最高裁が,Trumpが送り込んだ保守系の判事も含めて,全員が帰還促進を求めているのに,それを無視しているというのは,もはや三権分立は機能せず,アメリカが北朝鮮などと同様の独裁国家になったと言われてもおかしくないでしょう。エルサルバドルの大統領も,Trumpに会って,もっと刑務所を建設しろと言われてヘラヘラ笑っていましたが,こんなことを楽しげに語り合っているのが国のリーダーであると考えると,恐ろしくてたまりません。世界は大変なことになりつつあります。

2025年4月17日 (木)

格下の格下の特使

 初夏のような暑さになりました。最近では真夏というと異常な暑さなので,それに比べれば真夏というほどではありませんが,それでも突然,これだけ気温が上がると困ったものです。まだ部屋のなかに,ダウンジャケットも,暖房器具もあるなかで,この暑さです。体温調整も難しいです。咳はほぼ収まっていますが,声は元に戻っていません。気候の急変は心配です。明日は授業があるので,なんとか喉が回復していてほしいのですが,これまでの人生で経験したことがない長引いている症状なので,どのあたりで治るのかの予想がまったくできません。
 話は変わり,今日の最悪の一言は,アメリカに石破茂首相の特使として行った赤沢亮正経済財政・再生相の「自分は格下の格下。出てきて直接話をしてくださったことは本当に感謝しています」です。どういう意図での発言か不明ですが,特使として行ったということは,日本の首相の代わりということなので,Trump大統領が出てきたことについて,感謝するのはよいとしても,それほど卑下すべきではなかったでしょう。やっぱり日本は属国で,その特使が,宗主国の王様に会ってもらい舞い上がったという印象を世界中に与えたのではないでしょうか。交渉は交渉できちんとやると言っていますが期待できません。国際的な舞台では,いかに自分の格を高く見せるかが勝負ということもあるので,Zelenskyy(ゼレンスキー)のようにしろとは言いませんが,情けない気持ちになりました。外交経験の乏しい政治家には荷が重すぎましたね。

2025年4月14日 (月)

韓国大統領罷免

 韓国の尹大統領が罷免されました。昨年12月に非常戒厳を宣言し,国会に軍や警察の発動を命じたことで,国会から弾劾訴追がなされ,憲法裁判所により,非常戒厳は違憲とされ,罷免が認められました。
 韓国の国会は,野党が多数であり,尹政権の政策の実現が阻まれるという状況があったようですが,それにしても非常戒厳を宣言して軍などを投入するというのは,やりすぎです。民主主義に反する暴挙であり,血迷ったとしか言えません。アメリカでも,Trump大統領が2021年に大統領選挙の結果に反対して国会襲撃を扇動したとされていましたが,韓国はアメリカとは違い,きちんと憲法裁判所が大統領の行為を違憲として罷免させた点で民主主義が機能していたといえます。これをみても,アメリカがいまやいかに非民主主義的な国家であるかがわかるような気がします。
 尹大統領は親日的で,彼が大統領に就任してからは,日韓関係は良好でした。非常に良い隣国関係を展開できていましたが,気になっていたのは尹大統領の国内基盤が脆弱であったことです。結局,尹大統領は「自爆」してしまった感じで,残念な結果になりました。次期大統領の候補の一番手である李在明氏は反日的と言われていますが,韓国内でもいろいろな疑惑がとりざたされており,すんなりと当選となるようではなさそうです。どうなるにせよ,北朝鮮の脅威があるなか,日本と良好で建設的な関係を築くことができる大統領が韓国に誕生することを祈っています。

2025年3月29日 (土)

坂の上の雲とロシア

 NHKBSで,「坂の上の雲」を再放送していたので観ていました。原作は司馬遼太郎の同名の小説です。松山出身の秋山真之・好古兄弟と正岡子規の3人の人生を追いながら,明治の日本人がどのように考えて生きていたのかが描かれていました。ハイライトは日露戦争です。
 満州などの中国大陸での権益をめぐってのロシアとの戦争は,列強に並ぶために必死に努力してきた明治の人たちの思いの集大成でした。「坂の上の雲」は,明治の人たちの,ひたすら上を向いて頑張っていた頃の楽観的なところを描いています。目標が決まったときの日本人の強さはあるのでしょう。必死に西洋の文物を吸収し欧化を進めます。この本に登場する秋山兄弟も,それぞれ留学して外国の軍事を学んできます。しかし,あまりにも早く駆け上がった日本は,分不相応のまま国際舞台に登場し,やがて無謀な戦争に突進し,手痛い敗戦を喫することになります。
 ところでロシアですが,日露戦争のときの皇帝であるニコライ2世は,皇太子時代に日本で斬りつけられて負傷したり(大津事件),日露戦争でまさかの敗戦を喫したりして日本と因縁のある皇帝ですが,何と言っても,その最期は悲惨でした。第1次世界大戦への参戦で国民は疲弊し,ストが頻発し,結局,ロシア革命が起こってロマノフ王朝は退陣を求められます。皇帝一族は監禁されて,最後は反革命派により奪還されることを恐れた革命派により,幼い家族らを含め全員処刑されました。歴史上,これまで誰も経験をしていなかった共産主義革命が,このように展開していくとは,誰も予想していなかったかもしれず,ロシアの歴史における大きな汚点となっていると思います。レーニンがこの処刑を命じたかどうかについては議論があるようですが,革命の出発点でのこの血なまぐささは,ソ連のその後のスターリン体制にも引き継がれてしまったような気がします。そしていまウクライナ戦争です。隣国である以上,付き合っていかざるをえないのですが,この国の不気味さは不安です。

2025年3月10日 (月)

新たな政治思想の必要性

 Trump大統領の登場で,他人のことを悪く言うことは問題がないという意識が世間に広まったと思います。日本の小学生でも遠慮して言わないようなことを,あの大統領はこれまでも言ってきました。欲望むき出しの粗野な野蛮人という感じです。それを隠すためにスーツとネクタイを着用していますが,それが逆にいかがわしいです。
 ホッブズ(Hobbes)は,国家ができる前の「自然状態」は「万人の万人に対する戦い」と述べていました。人間は生存のために戦うのですが,それだけでなく欲深い存在だということです。アダム・スミスが人間の利己的な行動を肯定したのは,見えざる手で調整されるからというよりも,人間には道徳感情があり自制的であると考えていたことがむしろ重要なポイントでした。利己的な行動だけであれば,まさにホッブズ的な自然状態になりかねません。
 しかし,いまのTrump大統領をみていると,領土に対する欲望は丸出しで,恫喝も辞さないという恥も外聞もない利己主義外交を展開しています。この国もまた「ならず者」国家だという気がします。彼は軍事戦争は嫌いなようなので,グローティウス(Gloutius)やホッブズのいた30年戦争のころとは違うかもしれないのですが,Trumpがしかけている経済戦争・貿易戦争も,現代では,生存に影響しかねない点では同じです。Trumpのような人が出てきたことをふまえ(ただ,これは彼の問題というより,こういう人をうんだアメリカの政治的・社会的状況の問題というべきでしょう),新たな政治思想に基づく国際平和の枠組みが必要なのかもしれません。

2025年2月25日 (火)

ドイツの総選挙の結果

 ドイツの連邦議会選挙の結果が不気味です。連邦議会では同盟関係にあるドイツキリスト教民主同盟(CDU)とドイツキリスト教社会同盟(CSU)が第1️党となり,CDUの党首のMerz(メルツ)が次期首相になるようです。Merkel以来の政権奪還です。与党だったSPD(ドイツ社会民主党)は,予想どおりScholz(ショルツ)首相の不人気もあって第3党に転落しました。CDUCSUは,SPDと連立を組んで過半数を維持することになりそうです。 第2党が,得票率を倍増させたAfD(Alternative für Deutschland:ドイツのための選択肢)です。いわゆる極右政党であるAfDが,SPDを上回るのは,ドイツでは大変な事件ではないかと思います。私はドイツの政治に詳しいわけではありませんが,歴史的なこともあり,ドイツで,こういう政党が出てくると欧州全体に緊張感が高まることになるのではないかと思います。
 欧州でもアメリカでも,移民問題が重要な争点です。選挙の前に,ミュンヘン(München)で,アフガニスタン国籍の難民申請者が車を暴走させて多数が死傷する事件があったことも,AfDにとって追い風となったようです。いまや左派も右派も移民には厳しいところがあります。移民に寛容な政策をとる政府は支持を得にくい状況が出てきています。
  すでにイタリアでは,こちらも極右政党と呼ばれるFdI(Fratelli d'Italia:イタリアの同胞)の党首のMeloni首相が2022年の総選挙で第1党になり政権をとっています。ネオファシスト系の政党なので,これまた欧州諸国はハラハラしていたようですが,ここまでは予想よりソフトに堅実な外交政策をやっているようです。ただ,Trump大統領との近さについては,不穏な空気を漂わせています。ただ,彼女が年初に述べた言葉は力強かったです。「Solo chi non fa non sbaglia.」。「何もしない者は,失敗もしない」という意味であり,前向きに挑戦していくという姿勢を示したものです。極右政党については,どの方向で前向きに行くのかが心配です。個人的には,欧州の移民政策が気になります。旅行者は関係がないとはいえ,排外的なムードが高まると,思わぬとばっちりを食いかねません。今年はイタリアに行く機会がありそうなので,気がかりではあります。

2025年2月12日 (水)

切り札マンはマッドマンか

 カードゲームのトランプは,英語では「trump」とは言いません。たんに「card」です。英語で「トランプをする」は,「play cards」です。英語で「trump」は,「切り札」という意味です。法哲学者のDonald Dworkinの「切り札としての権利」論は有名ですが,英語では「Rights as trumps」となります。日本でも憲法学者の長谷部恭男先生が,「切り札としての人権」というのを唱えています。
 日本語では,トランプ大統領の姓は,カードゲームを想起して変だなと思ってしまいますが,「切り札」という意味だとすると,アメリカ人(とくに彼の支持者)はこの姓を聞くだけで,アメリカを改革する「切り札」だと思うのかもしれません。
 就任後の矢継ぎ早の大統領令については賛否がありそうですが,とりあえずは「やっている感」は十分に出していますし,すでに一定の成果を出しています。Biden政権がやっていたことを,次々と覆すということになれば,とくに対外的な関係に関するものについてアメリカの信用を損なうことになりそうです。もっとも,多くの国は,アメリカというのは,そういう国であり,政権交代があると,オセロのように白と黒が入れ替わることがあると覚悟しているかもしれません。さらに,Trump大統領については,ニクソン(Nixon)元大統領の「狂人理論(madman theory)」を採用しているという説もあります。あいつは狂人で何をするかわからないと相手に思わせること,つまり「予測可能性がない(unpredictable)」ということが交渉力を高めるという理論です。普通の交渉であればともかく,国際的な舞台で大国がとる戦略としては品のないものと思えますが,大国がやるからこそ効果的ということでもあります。そう考えると,実はTrump自体は合理的な計算をして,不合理な人間を装っているのかもしれません。しかし相手にそう思われてしまうと,この戦略は失敗に終わるので,どこかでmadな行動をとって,やっぱりあいつはmadmanだと思わせ続けておく必要があります。そこでなされるmad な行為が日本に害が及ぶものでないことを祈っています。