将棋

2026年10月10日 (土)

竜王戦開幕

 10月9,10日に東京・渋谷で行われた第39期竜王戦七番勝負第1局は,藤井聡太竜王(名人,六冠)が挑戦者の服部慎一郎七段に勝ち,6連覇に向けて好スタートを切りました。藤井竜王は昨年,5連覇によって永世竜王の資格を獲得しており,今期はさらに連覇記録を伸ばせるかが注目されています。
 服部七段は,今年の棋聖戦五番勝負でも藤井棋聖に挑戦しましたが,3連敗でタイトル奪取はなりませんでした。今回は,その雪辱を期しての再挑戦です。第1局では,後手番の服部七段が藤井竜王の得意とする角換わりを拒否し,相掛かりの力戦形に持ち込みました。序盤から前例の少ない難解な局面となり,両者ともに慎重に時間を使ったため,初日は44手までしか進みませんでした。
 2日目は,服部七段が封じ手で右の桂馬を跳ねて積極的に動き,左辺で本格的な戦いが始まりました。しかし,藤井竜王は冷静に対応し,端に打った角が効果的に働いて,次第に主導権を握りました。服部七段としては,得意とする力戦形に持ち込むことには成功したものの,藤井竜王の対応力の高さを改めて思い知らされる結果となったことでしょう。まだ七番勝負の初戦です。第2局は10月22,23日に静岡県三島市で行われます。
 一方,伊藤匠二冠(叡王・王座)は,棋戦によって明暗が分かれています。王座戦五番勝負第3局では,挑戦者の広瀬章人九段を破り,2勝1敗として初防衛に王手をかけています。王将戦の挑戦者決定リーグでも好調で,10月6日には近藤誠也八段を破り,開幕から3連勝で単独首位に立っています。ただ,A級順位戦では0勝3敗と苦戦しており,さらに10月9日の棋王戦挑戦者決定トーナメント準々決勝では,石井健太郎七段に敗れました。棋王戦では,渡辺明九段や豊島将之九段などのトップ棋士も勝ち残っていますが,意外な挑戦者が誕生する可能性もありそうです。
 女流棋戦では,今日,大きな出来事がありました。金沢で行われた白玲戦七番勝負第5局で,西山朋佳白玲が挑戦者の福間香奈女流四冠を破り,4勝1敗で防衛を決めました。これで西山白玲は4連覇,通算5期となり,「クイーン白玲」の資格を獲得しました。さらに,昨年新設された規定によって,女性として初めて,女流棋士からフリークラスの棋士になる資格も得ました。
 このニュースは,NHKの19時のニュースでも取り上げられていました。たしかに,将棋界にとって歴史的な出来事であり,社会的にも注目されることです。もっとも,西山白玲がこの権利を行使するかどうかは,まだわかりません。棋士になっても,厳しい道のりが待っているかもしれません。本人としては,編入試験を突破するという「準正規ルート」(正規ルートは奨励会経由)で棋士になりたいという気持ちもあるかもしれませんね。

 

2026年10月 2日 (金)

王座戦第3局

 今日,北海道・ニセコで行われた王座戦五番勝負第3局では,伊藤匠王座が広瀬章人九段に勝ち,対戦成績を2勝1敗として,初防衛まであと1勝としました。伊藤王座は,A級順位戦では0勝3敗と苦戦しています。A級は相手がすべてトップ棋士ですから,3連敗そのものを必要以上に重く見るべきではないでしょう。ただ,名人挑戦争いという点では,早くもかなり厳しい位置からの戦いになっています。それだけに,王座戦ではなんとしてもタイトルを守りたいところでしょう。もっとも,伊藤二冠(叡王・王座)は王将戦の挑戦者決定リーグでは連勝しており,決して不調というわけではなさそうです。
 A級では,永瀬拓矢九段,豊島将之九段,増田康宏八段の3人が3戦全勝。近藤誠也八段と広瀬九段が2勝1敗で追っています。佐々木勇気八段と佐藤天彦九段は1勝2敗,糸谷哲郎九段,千田翔太八段,伊藤二冠が0勝3敗です。まだ序盤とはいえ,早くも上位と下位がやや分かれてきた感じもします。B級1組では,渡辺明九段が開幕から6戦全勝で首位を走っています。2番手には4勝1敗の服部慎一郎七段がつけ,さらに3勝2敗で大橋貴洸七段,稲葉陽八段,久保利明九段が続いています。渡辺九段が一歩抜け出した形ですが,長丁場だけに,まだ後半戦で大きく動く余地があります。
 女流棋戦も佳境を迎えています。白玲戦七番勝負では,西山朋佳白玲(四冠)が福間香奈女流四冠に第4局で勝ち,3勝1敗として防衛に王手をかけました。西山白玲はこれまで白玲を4期獲得しており,あと1勝すれば通算5期となって「クイーン白玲」の資格を得ます。さらに,新たな規定により棋士編入資格も得ることになり,女性初の棋士誕生につながる可能性があります。第5局は10月10日に金沢で行われます。



2026年9月17日 (木)

王座戦第2局

 9月15日,名古屋マリオットアソシアホテルで行われた王座戦五番勝負第2局は,伊藤匠王座が広瀬章人九段に115手で勝ち,対戦成績を1勝1敗としました。もっとも,単にタイに戻したというだけではありません。絶体絶命の状況からの,驚くような大逆転勝利でした。 戦型は角換わりで,先手の伊藤王座が早繰り銀を採用しました。しかし,中盤以降は広瀬九段が主導権を握り,伊藤王座は苦しい受けを強いられました。そのまま広瀬九段が押し切るかと思われた最終盤に,広瀬玉に詰みが生じ,勝敗がひっくり返りました。広瀬九段にとっては,痛い敗戦です。勝っていれば2連勝で,王座奪取まであと1勝となるところでした。それが1勝1敗になったのですから,星勘定以上に大きな違いがあります。手にしかけた勝利を逃したという思いを,次の対局までにどう整理するかも重要になりそうです。
 ただ,伊藤王座についても,この勝利で安心というわけではないでしょう。少なくとも王座戦のここまでの内容を見ると,あまり調子がよくないのではないか,という気もします。もちろん,それは広瀬九段がうまく指しているということでもあります。第3局は10月2日,北海道ニセコ町で行われます。
 その少し前,9月12日のJT日本シリーズでも,意外な結果がありました。熊本市で行われた2回戦で,藤井聡太竜王・名人が八代弥八段に敗れたのです。千日手指し直しとなり,指し直し局は初手から双方が1手30秒未満の秒読みでした。八代八段は藤井竜王・名人の攻めをしのぎ,108手で勝利しました。八代八段にとって,藤井竜王・名人との公式戦では5局目にして初勝利です。
 名人がC級2組の棋士に負けるというのは,昔の感覚では大事件です。しかし,八代八段の場合は,名人に勝ったことより,いまだにC級2組にいることのほうが不思議です。朝日杯での優勝経験があり,竜王戦では最上位の1組に在籍しています。私は,実力的にはB級1組以上で十分に戦える棋士だと思っています。今回の勝利も,C級2組の棋士による大番狂わせとは言えないでしょう。
 同じようなことは,佐々木大地七段についても感じていました。2023年には,C級2組に在籍しながら,藤井竜王・名人に棋聖戦と王位戦でダブル挑戦しました。その佐々木七段は,いまはC級2組を脱出し,C級1組で戦っています。では,八代八段はいつC級2組から脱出できるのでしょうか。今期はここまで4連勝です。期首順位も4位で,昇級に向けて好位置につけています。まだ先は長いのですが,JT杯での勝利を見せられると,「今年こそ」という期待が膨らみます。トップ棋士を倒せる力を,順位戦での着実な勝ち星につなげてほしいところです。
 その順位戦ですが,A級では,永瀬拓矢九段,豊島将之九段,増田康宏八段が,そろって3連勝となっています。広瀬九段は2勝1敗です。一方,初のA級で戦う伊藤二冠は,佐々木勇気八段,永瀬九段に敗れて2連敗となっています。明日の近藤誠也八段戦で,初白星を挙げられるでしょうか。王座戦での大逆転が,こちらにもよい影響を及ぼすかに注目です。
 B級1組では,渡辺明九段が5連勝で先行し,服部慎一郎七段が4勝1敗で追っています。渡辺九段は,9月15日の棋王戦挑戦者決定トーナメントでも若手有望の藤本渚七段に勝ちました。A級復帰を目指す順位戦だけでなく,タイトル挑戦を争う棋戦でも,存在感を示しています。
 王将戦の挑戦者決定リーグも進んでいます。永瀬九段,伊藤二冠,郷田真隆九段が,それぞれ初戦を勝っています。藤本七段は永瀬九段に敗れたあと,近藤八段に勝って1勝1敗としました。まだ序盤ですが,若手の藤本七段と,実績十分の郷田九段が,挑戦権争いにどう絡んでくるかも楽しみです。明日には永瀬九段と西田拓也六段の対局が予定されています。
 そして,10月9,10日には,藤井竜王に服部七段が挑む竜王戦七番勝負が開幕します。藤井竜王・名人を倒そうとする棋士たちの戦いを見る楽しみは尽きません。

2026年9月 9日 (水)

藤井王位が7連覇

 昨日から今日にかけて,陣屋で,藤井聡太王位に伊藤匠二冠が挑戦する王位戦七番勝負第6局が行われました。後手の藤井王位が140手で勝利し,シリーズ成績を4勝2敗として防衛を決めました。王位は7連覇,タイトル獲得は通算37期となりました。両者1分将棋になる大熱戦でした。
 戦型は角換わり相早繰り銀です。先手の伊藤二冠が,積極的に仕掛けましたが,難しい中盤戦が続き,藤井王位が60手目を封じました。2日目に入ると,藤井王位が伊藤玉の逃げ道を制限しながら攻めましたが,伊藤二冠も巧みに玉を中段に逃がし,終盤には藤井玉に迫って,一時は攻守が入れ替わり,評価値も伊藤有利になりました。最後は飛車の打ち合いとなりましたが,藤井王位がうまく差し切りました。
 伊藤二冠は第1局と第4局に勝ち,藤井王位と互角に渡り合いました。最後は藤井王位が第5局,第6局を連勝しましたが,伊藤二冠が二冠を保持していることも含め,今後も両者の対決は将棋界の中心になりそうです。
 一方,藤井王将への挑戦権を争う王将戦挑戦者決定リーグも始まっています。現在,永瀬拓矢九段,伊藤二冠,郷田真隆九段が1勝0敗,藤本渚七段が1勝1敗です。伊藤二冠は初戦で西田拓也六段に勝ちました。藤井王位とのタイトル戦を終えたとはいえ,王座戦の防衛戦と王将リーグが続きますので,厳しい日程でどこまで勝ち星を伸ばせるかが注目されます。
 順位戦は,A級では,増田康宏八段が3勝0敗で単独首位に立ち,永瀬九段と豊島将之九段が2勝0敗で追っています。伊藤二冠は佐々木勇気八段,永瀬九段に敗れて0勝2敗です。ただ,まだ序盤ですので,王位戦を終えて順位戦に集中できるようになったことが巻き返しにつながるかもしれません。
 B級1組では,渡辺明九段が開幕5連勝で首位を走り,A級復帰に向けて好発進です。竜王戦の挑戦が決まっている服部慎一郎七段は,3日に稲葉陽八段に負けて初黒星となりましたが4勝1敗で続いています。若手の藤本七段も渡辺九段と稲葉八段に負けて3勝2敗ですが,二人を追っています。
 藤井王位は,これで六冠を堅持しました。伊藤二冠とのシリーズは4勝2敗という数字以上に競った内容でしたが,最後の二局を連勝して決着をつけたところに,タイトル戦での藤井王位の強さが表れていたと思います。

2026年9月 3日 (木)

王座戦始まる

 昨日,王座戦五番勝負が開幕しました。初防衛を目指す伊藤匠王座に,広瀬章人九段が挑戦するシリーズです。第1局は,神奈川県秦野市の元湯陣屋で行われました。相掛かりの将棋となり,先手の広瀬九段が99手で勝利しました。伊藤王座は藤井聡太さんから王座を奪った若き二冠(叡王・王座)ですが,広瀬九段も竜王,王位の獲得経験をもつ実力者です。挑戦者が先勝し,五番勝負は最初から面白くなりました。
 最近,もう一つ注目しているのが,女流棋界を長く牽引してきた西山朋佳白玲と福間香奈女流四冠による白玲戦七番勝負です。先日,清麗戦で西山さんが勝って女流四冠に復帰し,女流タイトルを福間さんと四つずつ分け合うことになりました。白玲戦の第1局は西山さん,第2局は福間さんが勝ち,現在は1勝1敗です。実力が拮抗しているだけに,最後まで目が離せません。今回の白玲戦が特に注目されるのは,西山さんが防衛すれば白玲通算5期となり,「クイーン白玲」の資格とともに,棋士のフリークラスに編入する資格を得るからです。西山さんがその資格を行使すれば,史上初の女性棋士が誕生します。もちろん,西山さんがきわめて強い棋士であることに異論はありません。奨励会三段リーグでは14勝4敗という成績を挙げながら,順位の差で四段昇段を逃した経験があります。棋士編入試験にも挑戦し,あと一歩のところまで迫りました。棋士になるための制度は形式上男女を問わないものの,これまで四段昇段の条件を満たした女性はいません。その壁に最も近づいたのが西山さんです。ただ,白玲を通算5期獲得すれば,改めて棋士との対局によって実力を確認することなく棋士になれるという制度については,以前にもふれたことがありますが,異論もあるところです。
 8月に放送されたNHK杯では,西山さんは行方尚史九段と対戦しました。西山さんは得意の振り飛車を採用しましたが,行方九段が序盤から主導権を握り,西山さんの中終盤の力を発揮させないまま,76手で完勝しました。もちろん,一局の結果だけで棋力を判断することはできません。西山さんはこれまでにも棋士を何度も破っており,行方九段が元A級の実力者であることも考慮する必要があります。しかし,この対局を見ると,女流棋戦で圧倒的な成績を挙げることと,棋士の世界で継続的に戦えることとは,やはり同じではないと感じました。白玲5期という実績は,女流棋界における偉業であることに間違いありません。ただ,それをそのまま棋士としての棋力の証明とみなしてよいかは,別の問題です。棋士編入試験は,棋士を相手とする公式戦で一定の成績を挙げた人に受験資格を与え,さらに棋士番号の大きい順に選ばれた棋士との五番勝負で実力を確認する制度です。性別を問わず,同じ基準によって棋力を判断する点に,この制度の意味があります。
 女性棋士の誕生を待ち望む気持ちはよく分かります。私自身も,西山さんや福間さんが棋士になる日を見てみたいと思っています。しかし,その実現を急ぐあまり,女流棋戦のタイトル数を棋士資格に直結させる必要はない気もします。むしろ,実力によって編入試験の資格を獲得し,試験を突破して棋士になるほうが,本人にとっても,女性棋士の歴史にとっても,より納得感のある形ではないでしょうか。これは,アファーマティブ・アクションに向いているものと向いていないものとがあるということでもあります。参加の機会を広げ,挑戦を妨げる障壁を取り除くことは必要ですが,棋力そのものが資格の核心となる世界では,その基準まで変えることには慎重であるべきだと思います。

 

2026年8月27日 (木)

王位戦第5局

 第67期王位戦七番勝負第5局は,藤井聡太王位(竜王・名人,六冠)が伊藤匠二冠(叡王・王座)に勝ち,対戦成績を3勝2敗としました。あと1勝で王位7連覇です。ここまで2勝2敗。しかも藤井王位は,直前の第4局で伊藤二冠に敗れ,その前には王座戦の挑戦者決定戦で広瀬章人九段にも敗れていました。藤井王位が公式戦で連敗すること自体が珍しく,その意味でも重要な一局でした。戦型は角換わりで,伊藤二冠は右玉に構えました。これに対して藤井王位は,玉を守るはずの金を動かし,相手の玉頭から攻めていくという大胆な構想を採りました。AI時代になっても,トップ棋士の将棋から,まだこのような新しい発想が出てくるのは面白いですね。これで藤井王位が3勝2敗となり,防衛の可能性はかなり高まったようにみえます。
 現在,八大タイトルは藤井六冠と伊藤二冠がすべて分け合っています。伊藤二冠が王位を奪取すれば藤井五冠,伊藤三冠となり,いよいよ「二強時代」と呼べる状況になるでしょう。今回の藤井王位の勝利は,そのシナリオにひとまず待ったをかけたことになります。もっとも,二人の外側からも新しい動きが出ています。王座戦では,前述のように,広瀬章人九段が挑戦者決定戦で藤井六冠を破り,初めて王座への挑戦権を獲得しました。9月2日から,伊藤王座との五番勝負が始まります。伊藤二冠は王座を防衛しながら,その6日後の9月8,9日には藤井王位との王位戦第6局を戦うことになります。伊藤二冠にとっては,かなり多忙で重要な9月になりそうです。
 一方,竜王戦では,服部慎一郎七段が挑戦者決定三番勝負で柵木幹太五段を2勝1敗で破り,藤井竜王への挑戦を決めました。服部七段は今年,すでに棋聖戦でも藤井棋聖に挑戦しています。そのときは3連敗でしたが,同じ年度にもう一度藤井六冠へのタイトル挑戦を実現したこと自体,現在の充実ぶりを示しているのでしょう。
 こうしてみると,今年の秋のタイトル戦線はかなり面白くなりました。中心にいるのはもちろん藤井六冠と伊藤二冠ですが,「藤井対伊藤」という対抗軸だけで将棋界が動いているわけではないのです。

2026年8月20日 (木)

王位戦は2勝2敗

 王位戦第4局は,挑戦者の伊藤匠二冠(叡王・王座)が藤井聡太王位(竜王・名人,六冠)を破り,これで2勝2敗のタイとなりました。終盤では,伊藤二冠の▲4一銀という印象的な一手がありました。ただで取られそうな銀を打ち込む勝負手で,藤井王位も猛烈に粘りましたが,伊藤二冠は的確に受け切り,最後は藤井玉を詰ませました。伊藤二冠は,竜王戦では挑戦権を逃し,順位戦も2連敗ということで,少し調子を落としているのかなと思っていました。しかし,やはりタイトル保持者です。2日制のタイトル戦という大舞台では,しっかり実力を発揮してきました。これで王位戦は改めて五分となり,残りは事実上の三番勝負です。
 藤井竜王への挑戦を目指す竜王戦の挑戦者決定三番勝負では,服部慎一郎七段が柵木幹太五段を破り1勝1敗となりました。第1局は柵木五段が勝ち,そのまま「竜王戦ドリーム」を実現するのかと思いましたが,第2局は千日手指し直しの末に服部七段が勝ち,柵木五段の快進撃に待ったをかけました。次はいよいよ大勝負です。どちらが勝っても藤井竜王への挑戦が決まります。服部七段としては,先の棋聖戦で藤井棋聖に3連敗した雪辱を果たすためにも,もう一度タイトル戦の舞台に立ちたいところでしょう。一方,柵木五段が勝てば,下位クラスから勝ち上がって最高位の竜王に挑戦する,まさに「竜王戦ドリーム」の実現です。どちらが挑戦者になるのか,非常に楽しみです。
 王座戦では,伊藤匠王座への挑戦者を決める一戦が,広瀬章人九段と藤井聡太竜王・名人(六冠)との間で行われました。大方の予想は藤井六冠有利だったでしょうし,実際,終盤ではAIの評価値が藤井六冠側に100%となり,広瀬玉に詰み筋がある局面もありました。ところが,藤井六冠が詰みを逃し,形勢が逆転します。その後は藤井六冠も粘りましたが,最後は広瀬九段が振り切って勝利しました。広瀬九段にとっては2022年の竜王戦以来となるタイトル戦登場で,王座戦では初挑戦です。9月2日から,伊藤王座との五番勝負が始まります。
 将棋界は,秋になると王座戦,そして竜王戦と,大きなタイトル戦が続きます。その一方で,年明けの棋王戦や王将戦に向けた挑戦者争いも少しずつ進んでいます。藤井六冠と伊藤二冠がタイトルを分け合う現在の将棋界ですが,そこに服部七段,柵木五段,そして久しぶりにタイトル戦へ戻ってくる広瀬九段がどう絡んでくるのか。秋の将棋も面白くなりそうです。

2026年7月30日 (木)

王位戦第3局

 王位戦の第3局は,藤井聡太王位(竜王・名人,六冠)が,挑戦者の伊藤匠二冠をやぶって2勝1敗となりました。熱戦でしたが,伊藤二冠が入玉を目指すところを阻止し,藤井王位がうまく寄せきりました。伊藤二冠にとっては,竜王戦でも挑戦権を逃し,順位戦は2連敗ということで,調子が下降気味でしょうか。
 竜王戦は,柵木幹太五段の快進撃が止まらず,ついに永瀬拓矢九段に勝って,挑戦者決定3番勝負に進出することになりました。相手は,伊藤二冠を破って勝ち上がった増田康宏八段を,激戦の末に下した服部慎一郎七段です。服部七段は,先般の棋聖戦で,藤井棋聖に惨敗しているので,リベンジを狙っているでしょう。柵木五段の勝ちっぷりはすさまじいのですが,この勢いで挑戦権の獲得までいけるでしょうか。
 王座戦は,伊藤王座への挑戦者を決める決戦が,藤井聡太竜王・名人(六冠)と広瀬章人九段との間で行われます。藤井六冠は,現在の王位を防衛したうえで,王座を奪還し,七冠に返り咲きたいところでしょう。
 王将戦は,シード棋士である永瀬九段,西田拓也六段,伊藤二冠,近藤誠也八段に,勝ち上がり棋士である本田奎六段,郷田真隆九段,藤本渚七段でリーグ戦が行われることになりました。郷田九段が50代の棋士として,どこまで頑張れるか注目です。

2026年7月17日 (金)

王位戦第2局

 昨日,王位戦第2局が終わりました。有馬温泉で行われました。藤井聡太王位(竜王・名人,六冠)が,伊藤匠二冠(叡王,王座)に勝ち,これで1勝1敗となりました。先手番の伊藤叡王ですが,攻め方にやや無理があったようで,藤井王位の角と馬が攻められ,一方で,獲得した飛車を打つ場をうまく見つけられず,押し切られました。この対局は藤井王位の快勝でしょう。
 竜王戦は,決勝トーナメントが進行中です。5組優勝の柵木幹太五段が6組優勝の西田拓也六段と4組優勝の長谷部浩平六段に連勝して,「竜王戦ドリーム」(下位の組からの下剋上)を掴めるかが注目です。順位戦は,A級は2回戦の途中ですが,2連勝は,永瀬拓矢九段,豊島将之九段,増田康宏八段だけとなっています。前期名人挑戦の糸谷哲郎九段は2連敗と苦しいスタートとなりました。また昇級組の伊藤二冠も2連敗でスタートとなり試練です。B級1組では,早くも2連勝は,渡辺章九段と服部慎一郎七段の二人となりました。渡辺九段は,菅井竜也八段に,絶体絶命のところから粘って逆転勝ちでした。復調気味であった菅井八段に勝って,渡辺九段は完全復帰でしょうか。足のケガさえ完治すれば,もちろん昇級候補の一番手となるでしょう。一期抜けを狙う藤本渚七段は初戦は服部七段に負けましたが,大橋貴洸七段に勝って1勝をあげました。昇級争いを占う意味でも,次の渡辺九段戦は重要な一局となりそうです。

2026年7月 7日 (火)

王位戦第1局

 藤井聡太王位(竜王・名人,六冠)に,伊藤匠二冠(叡王・王座)が挑戦する王位戦の第1局が始まりました。絶好調の藤井王位は,この将棋まで公式戦14連勝です。タイトル戦など強敵ばかりとやっているのに驚異的です。しかし,この連勝を止めたのが伊藤二冠でした。藤井王位が負けるときは,こういう将棋になるのかもしれませんが,受けがしっかりしている伊藤二冠は,ぎりぎりのところで,しっかり藤井王位の逆襲をかわしきりました。トッププロ同士の迫力のある終盤でしたが,伊藤二冠は正確な応手を続け,藤井王位に隙をみせませんでした。藤井王位が必死にすがる感じで攻めるのは,あまりみたことはありません。
 次の第2局は神戸の有馬に来るので,見に行きたい気もしますが,その時間はとれそうにありませんね(というか,いまからでは会場の予約はできないでしょう)。
 一方,伊藤二冠のもつ王座のタイトルに向けて挑戦者決定トーナメントが大詰めを迎えています。ベスト4に残っていた羽生善治九段と広瀬章人九段の対局は,評価値的には,最終盤で羽生九段が勝ちとなっていましたが,最後に緩手を指してしまい,広瀬九段に逆転されてしまいました。羽生九段はベスト4に残っているだけでもすごいのですが,ここのところ,あと一歩のところで挑戦権にたどりつけないというのが続いています。ベスト4のもう一つの山は,丸山忠久九段と藤井竜王・名人です。丸山九段は早指し戦の決勝で藤井竜王・名人に勝ったこともあるので,どんな勝負になるか楽しみです。普通に考えると,ここも藤井竜王・名人が勝ち上がって,伊藤二冠に挑戦するということになりそうですが,広瀬九段も大勝負で藤井竜王・名人に勝ったことがあるので,予断を許しません。

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