将棋

2024年11月29日 (金)

竜王戦第5局

 竜王戦第5局は,今度は藤井聡太竜王(七冠)が,挑戦者の佐々木勇気八段に快勝しました。これで藤井竜王が32敗となり,防衛に王手をかけました。佐々木八段は,早い段階で相手陣に角を打って馬をつくることはできたのですが,結局,それがうまく働かなかったです。藤井玉は玉飛接近の悪形であり,素人は真似をしてはいけないのですが,レベルの高い技術をみせてくれているのだと思います。第6局は,佐々木八段の先手なので,第4局のような研究成果をみせてくれるか楽しみです。
 藤井王将への挑戦権を争う王将戦挑戦者決定リーグは,永瀬拓矢九段と西田拓也五段のプレーオフとなり,永瀬九段が勝って挑戦権を得ました。西田拓也五段は,最終戦で広瀬章人九段を破り,同じく近藤誠也七段を破った永瀬九段と51敗で並んだのですが,惜しくも挑戦には届きませんでした。しかし,大健闘であり,彼の名前を将棋ファンに広く知らしめることになったでしょう(前に書いたBlogで,広瀬九段にも挑戦の可能性があると書いていましたが,それは間違いでした。可能性があったのは,西田,永瀬,近藤でした)。広瀬九段は敗れて33敗で,菅井竜也九段と近藤七段と並んだのですが,順位の関係で陥落となりました。陥落は,このほか羽生善治九段と佐々木八段となりました。
 JT杯は,渡辺明九段が広瀬九段を破り,優勝しました。準決勝で藤井七冠(竜王・名人)を破った広瀬九段ですが,惜しくも準優勝でした。
 順位戦のB1組は,昨日行われ,首位を走っていた糸谷哲郎八段が石田健太郎七段に負けて72敗となりました。石田七段は44敗です。これで斎藤慎太郎八段に勝った近藤七段が71敗でトップに立ちました。斎藤八段は44敗です。二人を追うのが,今回抜け番であった佐藤康光九段の53敗です。昇級争いは3敗までではないかと思うので,実際上は,近藤,糸谷,佐藤康での争いとなりそうです。降級は,山崎隆之八段が大橋貴洸七段に敗れて17敗となり,大ピンチです。大橋七段は44敗です。三浦弘行九段も,高見泰地七段に敗れて26敗でピンチです。高見七段は54敗です。降級の危険があった広瀬九段は大石直嗣七段に勝って45敗となり,逆に大石七段は35敗で苦しくなりました。羽生九段は,順位戦で分が悪かった澤田真吾七段に勝って45敗となり盛り返してきました。澤田七段は44敗です。現在,降級圏にいるのは,山崎,三浦,大石ですが,4敗組もまだ安全とは言えないところがあります。3人目の降級者は57敗となる可能性があり,最後まで降級レースは激しいものとなりそうです。

2024年11月16日 (土)

竜王戦第4局

 竜王戦第4局は,藤井聡太竜王(七冠)相手に,挑戦者の佐々木勇気八段が快勝しました。これで22敗のタイです。先手の佐々木八段は積極的に攻め続け,なんと時間を2時間以上も残して勝ってしまいました。事前の研究をぶつけたというところでしょうが,持ち時間が8時間と長い将棋ですので,藤井竜王も対応できそうなものした。しかし,本局ではなすすべがありませんでした。これで対戦成績も佐々木八段からみて46敗と近づいてきました。
 佐々木八段は,藤井王将(竜王・名人)への挑戦を争う王将戦の挑戦者決定リーグでは,5連敗で早々に陥落が決まっていますが,名人戦は41敗でトップを並走しており,藤井竜王・名人の2つのタイトルに照準を合わせているのかもしれません(連覇がかかるNHK杯では早々に負けてしまいました)。
 その名人挑戦をかける順位戦A級は,佐々木八段とともに,永瀬拓矢九段と佐藤天彦九段が41敗でトップを走っています。佐藤九段は前局で初黒星を喫しました。勝った稲葉陽八段は初白星(14敗)です。ここから挽回できるでしょうか。稲葉八段と同じく4連敗であった菅井竜也八段も,中村太地八段に勝って14敗です。菅井八段は調子をあげてきているので,ここからが楽しみです。その他は渡辺明九段が32敗,千田翔太八段・増田康宏八段という昇級組はともに22敗,中村八段は23敗,豊島将之九段は14敗です。降級争いは熾烈なものとなりそうです。
  B級1組は,糸谷哲郎八段が71敗で快調です。近藤誠也七段も61敗です。2敗はいないので,この二人が飛び出しています。この二人は最終局で顔を合わせます。一方,降級に関しては,山崎隆之八段が16敗で黄信号です。25敗の三浦弘行九段もピンチですね。さらに35敗の広瀬章人九段がまさかの苦戦です(JT杯将棋日本シリーズでは準決勝で藤井竜王・名人に勝って決勝進出を決めるなど,他棋戦では好調です)し,同じ35敗ですが,順位が下の羽生善治九段も危ない位置にいます。ただ,前局の高見泰地七段相手の執念の逆転勝利は,残留に向けて大きな1勝ではないでしょうか。
 王将戦の挑戦者決定リーグは,佐々木八段とともに,羽生九段も永瀬九段に敗れてリーグ陥落が決まりました。現在は西田拓也五段と永瀬九段が41敗でトップ,近藤七段と広瀬九段が32敗で両者を追いかけています。最終局は,西田五段は広瀬九段と,永瀬九段は近藤七段と対戦です。広瀬九段以外の3人に4人全員に挑戦のチャンスがあるので,最終局は大勝負になりそうです。なお降級はあと1人(全部で3人)で,前期の挑戦者である菅井八段はすでに33敗で全対局を終えており,順位が1位なので,広瀬九段と近藤七段がどちらかが敗れれば残留,二人とも勝てば降級というギリギリのところにいます。

 

2024年10月26日 (土)

竜王戦第3局

 佐々木勇気八段が藤井聡太竜王(七冠)に挑戦している竜王戦7番勝負の第3局は,藤井竜王が勝って21敗となりました。佐々木八段が優勢であったと思いますが,2日目に入り,攻め合いの選択がわずかに甘かったようで,最後は藤井竜王が攻め切りました。藤井竜王がいったん攻めのギアを入れたとき,そこから逃れるのは難しいということが改めてわかりました。佐々木八段は,次の対局で敗れると,後がなくなるので,なんとか頑張りたいところでしょう。
 順位戦は,A級では,佐藤天彦九段が4連勝で快調です。永瀬拓矢九段,渡辺明九段,佐々木八段が31敗で追っています。今期の挑戦者は,この4人の中から出るでしょう。一方,関西勢は菅井竜也八段と稲葉陽八段が4連敗で苦しいです。前期の挑戦者である豊島将之九段は,菅井八段との全敗対決で,なんとか逆転勝ちして13敗となりました。
 王将戦は,挑戦者決定リーグが進行中です。7人の総当たりです。西田拓也五段が31敗で好調です。羽生善治九段,永瀬九段,菅井八段に勝っており,予想外といえば失礼ですが,藤井王将(七冠)への挑戦に一番近い状況にあります。近藤誠也七段,広瀬章人九段が21敗,永瀬九段が11敗でこれを追っています。菅井八段と羽生九段は12敗,佐々木八段は2敗で出遅れました。西田五段以外は,3局か4局残しており,挑戦も陥落もまだわかりません。西田五段は,広瀬戦と佐々木戦を残しています。ここを11敗で乗り切れば,プレーオフ以上に行ける可能性が広がります。羽生九段は,残りの相手が,近藤七段,永瀬九段,佐々木八段と強力なので,4人の残留枠に残れるか微妙です。
 
 女流棋戦は,1023日に王座戦が始まりました。体調が心配された福間香奈女流王座(女流五冠)でしたが,西山朋佳女流三冠に,初戦は勝利をおさめました。ここで福間王座の体調を考えて,第2局は2月下旬に行うことが決定されています。その前に産休前の11月上旬に短期間で倉敷藤花戦の3番勝負を,挑戦者の伊藤沙恵女流四段をむかえて行います。ただ白玲戦のほうは,本日予定されていた第6局は,体調不良で2局連続の不戦敗となり,これで4敗となって,西山白玲の防衛となりました。福間さんの白玲奪取への挑戦は,来年に期待したいです。

2024年10月20日 (日)

竜王戦第2局

 藤井聡太竜王(七冠)に佐々木勇気八段が挑戦している竜王戦の第2局は,佐々木八段が快勝しました(ようにみえました)。1日目はほぼ互角でしたが,2日目に入り,徐々に佐々木八段が形勢を良くしました。藤井玉は居玉,いったん防御に回ると脆弱でした。一方,佐々木玉は右玉で,8筋を破られたものの,玉は危険地から離れていました。最後は迫られましたけれど,玉に接近した悪形の飛車が防御に利いたという感じでしょうか。佐々木八段の充実ぶりが感じられます。今回の竜王戦は熱戦が期待できそうです。
 順位戦のB1組は,徐々に差がついてきました。トップを走るのは,糸谷哲郎八段で6勝1敗,1局少ない近藤誠也七段が51敗,斎藤慎太郎八段が42敗です。糸谷八段は,近藤七段や斎藤八段との対局が残っており,まだ山場はこれからでしょう。羽生善治九段は,近藤七段に敗れて25敗と苦しい星勘定になりました。このほか,三浦弘行九段も25敗です。最下位が,山崎隆之八段が15敗です。降級は3名で,残留ラインは5勝くらい(全12局)だと思いますので,山崎八段はかなり苦しくなりました。羽生九段もやや危ない状況になってきました(最後は残留すると思いますが)。昇級組の高見泰地七段が43敗,石井健太郎七段が33敗で健闘しているのでベテラン勢がやや苦しくなっています。ただ佐藤康光九段は43敗で頑張っています。今日のNHK杯も,豊島将之九段を撃破しており,まだまだ若手に負けないという感じです。
 女流棋戦は福間香奈女流五冠の体調が心配です。西山朋佳白玲(女流三冠)に挑戦している白玲戦で,昨日,体調不良で不戦敗となりました。主催者側に迷惑がかかるとしても,妊婦ですから, 周りが理解して受け入れなければならないでしょう。とはいえ,主催者側の延期せずに不戦敗という対応もやむを得ないところでしょう。これで福間さんからみて,白玲戦は23敗となりました(7番勝負)。第6局がどうなるか心配ですが,今回は無理せず,また来期に頑張ってもらえればという気もします(父親のようなコメントです)。福間さんとしては,できるだけ戦いたいかもしれません。前夜祭などのイベントは中止して,最大限配慮をしてあげてもらえればと思います。西山白玲も棋士編入試験の第3局が近づくなか,落ち着かない状況が続くと思いますが,女流のトッププロですから,眼の前の棋戦に集中できるでしょう。先日の棋聖戦でも,男性棋士に勝っています(同日になされた2局目は負けてしまいましたが,福間女流五冠と同様,男性棋士と互角の勝負ができる力があることは,誰も否定しないでしょう)。

 

 

2024年10月 8日 (火)

竜王戦始まる

 将棋の竜王戦が始まりました。藤井聡太竜王(七冠)に佐々木勇気八段が挑戦します。佐々木八段は初のタイトル戦です。藤井竜王のデビュー以来の連勝を29で止めたのが佐々木八段ですし,昨年のNHK杯決勝で藤井竜王を破ったのも佐々木八段です。しかし,それ以外では佐々木八段は藤井竜王に勝つことができていません(本局前で佐々木八段側からみて2勝4敗)。初のタイトル戦のプレッシャーもある中,どのように戦っていくのかが注目されるところです。初戦は熱戦だったと思います。佐々木八段も果敢に攻めていたのですが,最後の切り合いで一歩,藤井竜王の方が早かった感じです。7番勝負の長丁場ですから,まだまだ佐々木八段にはチャンスがあると思います。
 順位戦はB級1組がすでに6局を終え,中盤戦にさしかかろうとしています。糸谷哲郎八段が5連勝で快調に飛ばしています。近藤誠也七段が4勝1敗,斎藤慎太郎八段が4勝2敗で追っているところです。昇級争いでは,山崎隆之八段が1勝4敗で苦しい戦いを強いられています。三浦弘行九段も4敗していましたが,直近の戦いで羽生善治九段に勝って2勝4敗としました。負けた羽生九段も2勝4敗で,まさかの降級争いとなっています。降級者は3人なので,順位1位の広瀬章人九段も含め,少し心配な状況です。もちろん,まだ6局残っていますから挽回の可能性はありますが,何しろ「鬼の棲家」と言われるB級1組ですから,羽生九段や広瀬九段も油断はできません。もう一人のベテラン,佐藤康光九段は3勝3敗で頑張っています。
 その他の棋戦では,王将戦の挑戦者決定リーグ戦が始まりました。7人で藤井王将との対決を目指して争いますが,初戦で初リーグ入りの西田拓也五段が羽生九段に勝ったことが少し驚きのニュースです。その他,永瀬拓矢九段が藤井達也八段に勝ち,近藤誠也七段が佐々木勇気八段に勝ち,広瀬章人九段に敗れました。まだまだ始まったばかりですが,西田五段が勢いに乗ってどこまで勝てるかが注目です。
 女流の王将戦では,福間香奈女流五冠が西山朋佳女流王将(女流三冠)に挑戦し,幸先良く1勝をあげました。福間さんは12月に出産予定で,11月17日から来年2月12日まで休場が認められました。女流の王将戦は3番勝負で,3局目は10月29日なので,休場までには決着がつきそうです。福間さんが挑戦者である白玲戦はやや微妙な状況で,現在,福間さんが2勝1敗ですが,4局目に予定されていた9月28日の対局が西山白玲のコロナ感染により中止となり,日程は10月12日,19日,26日のまま1局ずつづれていきます。第7局目にまでもつれた場合の日程が決まっておらず,その場合,福間さんの休場に間に合うかが心配されます。
 さらに,王座戦も予定されており,こちらは福間女流王座に西山さんが挑戦することになっています。第1局は10月23日に行われたあと,第2局は来年2月下旬に行われる予定です。おそらくタイトル保持者が妊娠・出産を理由に休場するのは前例がないことのように思いますが,このような特例措置を認めることについては,主催者が良しとすれば問題はないでしょう。休場を認めるのは当然のことです(すでにルール化されています)が,タイトル戦において不戦敗になるかどうかについては,女流もプロ棋士である以上,厳しい判断がされる可能性もありました。ただし,そういった厳しい判断はすべきではないでしょうし,授乳時間の配慮,着物非着用,椅子の使用許可など,特別な対応もあってよいでしょう。歴史に残る女流棋士である福間さんですから,ぜひこれからの「ママ棋士」のモデルとなってほしいです。将棋ファンなら誰もが福間さんの将棋を観たいと思っているはずですから,彼女には高い発言力があると思います。それを発揮して,「ママ棋士」の環境整備への道を作ってもらいたいですね。

 

2024年10月 2日 (水)

王座戦終わる

 藤井聡太王座(七冠)に,永瀬拓矢九段(先日,ASDの発達障害であることをカミング・アウトしました)が挑戦した王座戦ですが,藤井王座が3連勝で防衛しました。激戦でした。先手の永瀬九段は,評価値的には最終盤まで圧勝でした。勝率が7割に近い永瀬九段が,ここで勝ちを逃すとは考えにくいのですが,これが藤井王座の迫力というか,魔力なのでしょう。藤井王座が,詰めろ(何も対応しなければ詰まされる状態)で迫られている最終盤。藤井王座の手番で,受ける手もありますが,攻める場合には,相手玉を詰ますか,相手に駒を使わせて,詰めろを解除するしかありません。永瀬玉には詰みがない状態で,藤井王座は9六に王手で香を打ちました。王手には永瀬王座は応じなければなりませんが,玉は9八にいたので,永瀬王座は9七に歩を打ちました。歩は一番安い駒なので,手放しても攻めに影響しないように思えるのですが,これが大悪手でした。正着は9七桂だったようです。永瀬九段は,9筋に歩を打ったので,二歩が禁止であることから,もはや9筋に歩を打てなくなりました。そのため,藤井玉は詰めろでなくなり,次の藤井王座の着手で逆に永瀬玉がほぼ受けなしに追い込まれました。永瀬九段も9七桂はみえていたそうです。双方1分将棋なので,十分に考えがまとまらない状態で,永瀬九段は間違えてしまいました。将棋は最後に悪手を指したほうが負けと言われるように,評価値で(つまりAIであれば)必勝の局面で,一定の悪手で数値が一気にひっくり返りました。あの永瀬九段でも間違えるのは驚きですが,対藤井戦では既視感のある光景です。
 藤井九段は,相手がAIであれば負けになっている局面であったことはわかっていたようです。でも逆転するためには,相手が間違ってくれなければなりません。少しでも間違えやすい手を差しながら,相手が時間がないという状況をふまえ,相手が間違えやすいような複雑な局面をつくるというのが,藤井九段の戦法であった気がします。永瀬九段は罠に落ちたのです。藤井七冠は,ただでさえ圧倒的に強いのに,こんな「魔力」まで使われると,誰も勝てませんね。
  西山朋佳女流三冠の棋士編入試験の第2局は,試験官の山川泰熙四段が勝って,11敗となりました。どうも途中で飛車を捕獲されてからは,うまくいかなかったようですね。まだこれからです。コロナ感染で体調がちょっと心配ですが,巻き返しを期待しましょう。西山さんは,現在,先日,妊娠を発表した福間香奈女流五冠との白玲戦が進行中です。現在,福間さんが21敗でリードしており,西山さんとしては,その防衛戦にも全力を尽くす必要があります。ただ,西山さんのコロナ感染で1局がとび,第5局目に予定していた1012日が第4局となります。福間さんの出産が12月予定で,少し日程が心配です。臨月までには決着がつくと思いますが,女性の棋士は大変ということを感じさせられました。でもトッププロで出産しながら頑張るというのは,これからの女性の棋士にとって,素晴らしい先例をつくることになると思います。

2024年9月18日 (水)

王座戦第2局

 藤井聡太王座(七冠)に,永瀬拓矢九段が挑戦している王座戦5番勝負の第2局ですが,藤井王座が勝って2連勝となり,防衛に王手をかけました。内容は,素人には難解でしたが,先手の藤井王座が5五に桂を打ってからは優位に立ったようにみえました。最後は香の頭に角を打つという,見たこともないようなすごい手で永瀬九段を投了に追い込みました。
 久しぶりに谷川浩司17世名人のことを話しますと,あと4勝1400勝という大記録がかかっています。これまで1400勝以上は,羽生善治九段(1570勝)と大山康晴15世名人(1433勝)しかなく,谷川17世名人は1396勝で,大山15世名人の記録にあと37と近づいています。ただ最近の勝利のペースですと,あと2年はかかりそうです。そんななか,今日は王位戦の予選で,若手の徳田拳士四段に勝ちました。最後は「光速の寄せ」と言えそうな見事な寄せでした。これで1397勝であり,まずは今年中に1400勝,できれば今期中に1410勝あたりにまで伸ばしてもらいたいです。
 A級順位戦は,本日,佐藤天彦九段が,かつて名人位を奪われた豊島将之九段に勝ちました。天彦九段は3連勝,豊島九段は3連敗で,前期の名人挑戦者である豊島九段は大苦戦となっています。このほか,菅井竜也八段,稲葉陽八段も3連敗で,前にも書いたように,関西勢は厳しい状況です。佐々木勇気八段は,中村太地八段に勝って,3連勝で先頭を走っています。
 NHK杯は,注目の藤井七冠(竜王・名人)と西山朋佳女流三冠の対局がありました。結果は,藤井七冠の貫禄勝ちでしたが,これは仕方がありません。ただ,この対局で西山さんが弱かったという印象は受けませんでした。棋士編入試験に挑戦中の西山さんは,福間香奈女流五冠とも,熾烈なタイトル戦を繰り広げています。現在,防衛戦である白玲戦は,11敗です。また女流王座戦には福間女流王座への挑戦を決めています。ただ,西山さんが棋士編入試験に合格したら,西山さんの女流タイトルや女流棋戦の出場資格はどうなるのでしょうかね。女性「棋士」と「女流棋士」の両方を兼ねることになるのでしょうか。何かルールがあるのかもしれませんが,棋士になることを選択したら,女流棋士の資格を失うというほうが,すっきりしている気がします。男女の格差をなくしていくという観点からは,女流棋士が実績をあげて,将来的には女流棋士というカテゴリーがなくなるのが理想でしょう。

2024年9月 6日 (金)

王座戦

 王座戦(将棋)が開幕しました。藤井聡太王座に永瀬拓矢九段が挑む5番勝負です。永瀬九段はこれまで王座戦と相性が良く,藤井聡太が八冠を達成した際,最後の一冠が永瀬九段の保持していた王座でした。二人はよく「VS」(1対1の練習将棋)を指しているそうで,永瀬九段は年下の藤井王座を深く尊敬している様子です。永瀬九段の真摯な将棋に対する姿勢は広く知られており,年下の藤井王座(七冠)から少しでも何かを学ぼうとしているのでしょう。
 ですが第1局では,藤井王座が圧倒的な強さをみせました。先手の永瀬九段も終盤で際どい受けを繰り返しましたが,AIの評価値では藤井王座が優勢を保っていました。終盤でもAIが示す最善手を指し続ける藤井王座の姿をみると,もはや人間離れした域に達しているように思えます。
  一方,藤井名人(七冠)への挑戦権を争うA級順位戦では,関西勢が不振に陥っています。豊島将之九段は2連敗,菅井竜也八段と稲葉陽八段はそれぞれ3連敗中です。現在2連勝なのは佐藤天彦九段,佐々木勇気八段,増田康宏八段で,永瀬九段も2勝1敗とまだ挑戦者戦線に残っています。とくにA級2年目で,次の竜王戦の挑戦権をすでに獲得しており,さらに王将戦のリーグ入りも決めた佐々木八段の活躍に期待したいです。昨年は伊藤匠現叡王が大躍進しましたが,今年は佐々木八段がその役を担うかもしれません。
  B級1組では第5局が終わり,糸谷哲郎八段が4勝1敗で好調です。空き番があって3勝1敗で,近藤誠也七段と昇級組の石井健太郎七段が追っています。斎藤慎太郎八段は佐藤康光九段に敗れ,痛い2敗目(3勝)を喫しました。佐藤九段も3勝2敗で並んでいます。石井七段に敗れた羽生善治九段は2勝3敗と厳しいスタートですが,残り全勝すれば昇級の可能性はまだあるでしょう。一方,降級争いでは三浦弘行九段が1勝4敗と苦戦し,山崎隆之八段も1勝3敗と苦しい状況です。棋聖戦で藤井棋聖に3連敗してから調子を崩している感じもします。さらには,毎年昇級争いをしていた澤田真吾七段も1勝3敗と出遅れていますが,これから盛り返すでしょう。

2024年8月29日 (木)

王位戦終わる

 王位戦の第5局は,有馬温泉(神戸)の「中の坊瑞苑」で行われました。結果は,藤井聡太王位(竜王・名人,七冠)が,渡辺明九段に勝って,41敗で防衛しました。これで連続5期となり永世王位の資格を得ました。2つ目の永世資格です。永世王位は,大山康晴,中原誠,羽生善治に次ぐ4人目です。王位戦は紅白のリーグ戦を勝ち抜いて挑戦者決定戦を実施し,その勝者が挑戦してくるというルールで,この棋戦に相性がよかった棋士としては深浦康市九段(これまでの唯一のタイトルが,王位3期),広瀬章人九段(初タイトルが王位。その後,竜王位も1期),菅井竜也(唯一のタイトル)が挙げられます。木村一基の悲願の初タイトル(「中年の星」と言われました)も王位でしたが,翌年に藤井聡太の登場でタイトルを奪われてしまい,その後,藤井王位は,豊島将之九段を2期連続,佐々木大地七段,そして今回の渡辺九段を破って永世王位となりました。
 今回の最終局は,藤井王位が先手でしたが,途中で藤井玉が7七にいて,渡辺九段の5五角が直射していて怖い位置にあるようにみえました。しかし,うまく5五角を追い払い,居玉であるものの堅そうにみえた渡辺玉をあっという間に寄せてしまいました。最後は,渡辺九段は無理攻めとわかっていても頑張りましたが,投げるに投げれなかったのでしょう。
 藤井七冠は,叡王を奪われたことで,その後の棋戦に影響するのではないかという見方もありえましたが,そういうことに影響されない精神的な強さが藤井七冠の特徴です。盤上没我で,対局に入ると,余計なことが気にならないのでしょう。渡辺九段との戦いはいつも白熱したものとなっていましたが,この王位戦は第4局も第5局も,渡辺九段にほとんど勝機がなかったようです。ということは,かなり実力差がついてしまったということでしょうかね。
 次のタイトル戦は,永瀬拓矢九段との王座戦5番勝負です。藤井王座は,王位戦が早く終わったので,王座戦の防衛戦に集中できますね。第4局の会場が神戸のホテルオークラなので,ストレートの結果にならないかぎり,再び神戸に来ることになります。永瀬九段も対策を十分に練ってくるでしょうから,熱戦を期待しています。

2024年8月20日 (火)

王位戦第4局

 藤井聡太王位(七冠)に,渡辺明九段が挑戦している王位戦第4局は,藤井王位が勝って31敗となり,防衛に王手をかけました。渡辺九段は先手でしたが,攻勢に出たのは藤井王位で,銀を5五に進出し,1三にでた角を5筋に直射させ中央突破を図り,角切りで相手陣を脆弱化し,飛車が成り込んで王手をかけたところでは,藤井王位が優勢となりました。それにしても,あの渡辺九段が,こうまで一方的に押し込まれるとは驚きです。よほど藤井王位は渡辺九段との相性が良いのでしょうね。
 竜王戦は,挑戦者決定3番勝負で,佐々木勇気八段が,広瀬章人九段を2連勝でくだして,藤井竜王(七冠)への挑戦権を得ました。藤井竜王のデビュー以来の連勝を29で止めたのが佐々木八段ですし,2年連続での対決となった前期のNHK杯の決勝でも,佐々木八段が藤井竜王をやぶって前年の雪辱をはたして優勝しています。対戦成績は藤井竜王からみて52敗ですが,大事な勝負では勝っている佐々木八段の,竜王戦での藤井竜王との対決はとても楽しみです。 
 佐々木八段は,順位戦でもA級で,2連勝で好調な出だしです。このほか2連勝は,佐藤天彦九段,増田康宏八段で,名人挑戦の本命の豊島将之九段は,渡辺明九段に敗れて2連敗,そのほか,菅井竜也八段,稲葉陽八段も2連敗と関西勢は苦しい出だしです。11敗は,永瀬拓矢九段,渡辺明九段,中村大地八段で,さらに増田八段とならんで初昇級組である千田翔太八段も11敗です。
 B1組は,連勝は近藤誠也七段だけ(2勝)で,21敗に斎藤慎太郎八段,羽生善治九段,糸谷哲郎八段,高見泰地七段が並んでいます。2連敗ないし3連敗はおらず,すでに昇級・降級争いは混沌としています。
 ところで,佐々木勇気八段は,王将戦でも,最強メンバーが集まるとされる挑戦者決定リーグ入りにあと1勝というところまで来ています。昨期はリーグに入ったものの,24敗で陥落しました。今期はリーグ入りすれば,昨年の経験を糧にして,ひと暴れが期待できそうです(リーグにシードされているのは,菅井八段,羽生九段,永瀬拓矢九段,近藤七段の4人です)。

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