経済セミナー751号に登場
日本評論社の経済セミナー751号に,「AIによる労働社会の再編――人間と機械の新たな分業」という私の論考が掲載されました。基本的には,私の新刊『労働政策の再創造―AI共生社会における生存と自由』(弘文堂)で展開した議論に沿ったものですが,今回は経済誌への寄稿であることを意識し,専門家だけでなく,一般の読者にも読んでいただけるように書いたつもりです。
今回の企画は,財務省の財務総合政策研究所で昨年来行われてきた「人材マネジメントと組織開発に関するワークショップ」のメンバーが中心となっています。その成果の一部については,先日,財務省の広報誌『ファイナンス』に掲載された座談会でも紹介され,私もそこで発言する機会をいただきました。今回はさらに,『経済セミナー』という場で,自分の考えをまとまった形で示すことができました。
私が重視しているのは,AIが単に労働の場面で人間の仕事を代替したり,補助したりすることが問題なのではないという点です。AIは個人をエンパワーすると同時に,社会システムそのものの設計にも大きな影響を与えます。そして,AIを活用して設計された社会システムが,再び個人の働き方や生き方に影響を及ぼしていくという循環があります。
私たちは,個人としてどのように生きていくかを考える場合にも,これからの社会をどのように構築するかを考える場合にも,AIの力をうまく活用していかなければなりません。ただし,そこで忘れてはならないのは,AIはあくまでも人間のために用いられるべきだということです。当たり前の話に聞こえるかもしれませんが,技術の発展があまりにも速いからこそ,この原点を繰り返し確認しながら,これからの社会を展望する必要があります。
このような問題関心から出発すると,私の議論は,次第に狭義の「労働」の問題だけには収まらなくなっていきます。しかし,そもそも労働とは,雇用契約のもとで行われる従属労働だけを意味するものではなく,人間が生存し,社会を維持するための,もっと広い営みであったはずです。そう考えると,社会のさまざまな現象が労働問題として見えてきますし,そこには人間とAIとの新たな分業という問題が深く関わっていることになります。詳しくは新刊書を読んでいただきたいところですが,まずは今回の『経済セミナー』の論考を,AIと労働社会の未来について考えるための一つの思考の素材としていただければと思います。この号には,ほかにも興味深い論文や鼎談が掲載されていますので,ぜひ多くの方に手に取っていただきたいです。
今回も,編集長の尾崎大輔さんには大変お世話になりました。2年前に同誌(738号)で,太田聰一さんとの対談を企画してくださったのも尾崎さんです。また,以前から,経済学者ではない私とも本づくりをご一緒くださり,川口大司さんとの共著書『法と経済が読みとく雇用の世界』(有斐閣)を世に出してくれました。神戸大学関係の『エコノリーガル・スタディーズのすすめ―社会を見通す法学と経済学の複眼思考』(有斐閣)の出版に際しても,大変丁寧な編集をしていただきました。今回,また一緒に仕事ができたことを,とてもうれしく思っています。機会があれば,ぜひまた新しい企画をご一緒できればと思います。

