私の作品

2023年10月18日 (水)

新作「企業における高年齢者雇用の論点整理」

 今年は本の刊行がない年になりそうですが,DVDは日本法令から出すことになりました(私自身は,研究室でも自宅でもDVDをみることができない環境なのですが。事前の内容のチェックは動画でしました。今回も動画配信をしてくれたらよいのですが)。
 タイトルは,「企業における高年齢者雇用の論点整理」というもので,2時間くらいの内容です。収録時は,私は途中に休憩を入れずに話しましたが,講演とはちがい,聴衆の方(視聴者)は,適宜休みをいれたり,倍速などで時間を短縮したり,自由に視聴方法を選択できるところがいいと思います。
 タイトルには,「高年齢者雇用」という言葉が入っていますが,高年法や年金制度の話だけをしているわけではありません。実は高年齢者雇用に関する問題には,これからの日本型雇用システムがかかえるいろんな論点が凝縮されています。このDVDでは,前半は高年齢者雇用に固有の問題を扱っていますが,後半はこれからの働き方はどうなるかという問題に広がっています。ジョブ型の働き方,デジタル技術を活用した働き方,あるいは,ゆとりのある働き方,フリーランスのような働き方など,近時の「働き方改革2.0」とでも呼べるような動きは,すべて高年齢者雇用において,まず試験的に始めることができることなのです。これまでの経験があり,体力的にまだ余力のある高年齢者が,新たな働き方にチャレンジするなかで,それが一つのモデルとなって働き方改革が進んでいくのかもしれません。実際,法制度上も,高年齢者を特区的に利用して規制緩和をしたり,新しい規制を試したりすることは,高齢者の就業機会の拡大という大義名分もあり,積極的に行われてきました(労働契約の期間の特例,シルバー人材センター,高年齢者就業確保措置,無期転換の特例,雇用保険マルチジョブホルダー制度など)。その意味でも高年齢者の働き方は,これからますます注目されることになるでしょう。
 とくに,高齢化や労働力人口の減少は不可避的に進行します。少子化対策がかりに成功しても,それが実際に成果を出すには時間がずいぶんとかかります。デジタル技術の活用やAIとの協働という雇用政策全般の課題は,高齢者雇用の課題と照らし合わせて取り組んでいく必要があります。
 本DVDは,このような高年齢者雇用をめぐる論点を,広く多角的に扱ったものです。2時間は長いようで短いです。ぎゅっと圧縮した話になっていますが,できるだけ丁寧に説明することも心がけていますので,ぜひ手にとってみてください。
 本DVDを観終わった方は,誰かにこれからの雇用社会のことについて語りたくなると思いますよ。

2023年7月26日 (水)

NHKワールドJAPAN登場

  昨年末のNHK「視点・論点」以来のテレビ出演ですが,今回はちょっと変わった形です(英語での吹き替えが,かぶさっている出演)。NHKワールドJAPANから,取材の依頼があり,オンラインでの参加でした。テーマは,そごう・西武の労働組合のストライキに関連して,日本ではどうしてストライキが減ってきたのか,今回はなぜ労働組合はストライキをしようとしているのか,ということでした。取材では,いつものように少し脱線して,今後の日本の労働組合運動の展望のようなことも少し話しました。もっと短いかと思っていたので,予想よりはよく使われていました。取材の依頼も対応も非常に丁寧で好感をもてました。キャスターの福島優子さんの誠実なキャラクターからくるのでしょうね。
 インタビューでは,英語,日本語どちらでもよいということでしたが,もちろん日本語を選択しました。時間に余裕があって多少の準備ができれば,せっかくの機会なので,英語でもということも考えたかもしれませんが,なにせ月曜夕方に来た急な依頼でしたので,無理でした。
 実際に取材を受けたのは,火曜の15時半でしたので,その時点ではスト権の確立がされているかどうかわからない状況でしたが,たぶん確立されるであろうという想定での話となりました。英語できちんと訳されているか精査していませんが,関心のある方は,ぜひご覧になってください。Dissatisfied department store workers may spur labor revival (私は,3分くらい経過したところで登場します)。

2023年7月21日 (金)

新作

 公明新聞2023717日号の5面で,メアリー・L・グレイ,シッダールタ・スリ著『ゴースト・ワーク』(晶文社)の書評が掲載されました。公明新聞は,2014年に,朝日新聞経済部『限界にっぽんー悲鳴をあげる雇用と経済』(岩波書店),2015年に,中沢彰吾『中高年ブラック派遣』(講談社現代新書)の書評を書いており,今回は8年ぶりで3度目です。また20184月には「フリーランスという働き方」で登場しています。同紙での書評については,割りと似た感じの本の依頼が来ているような気がします。昨日の日本経済新聞の経済教室で,カール・フレイ氏(オックスフォード大学准教授)は,生成AIは低スキルの労働者に恩恵があると書いていますが,これはまさに「ゴースト・ワーク」(AIを支えながら,闇に埋もれてしまっている人間の労働)なので,その是非の評価は難しいでしょう。
  まったく偶然なのですが,同じ公明党関係の,月刊誌の「公明」からも依頼があって,「チャットGPT時代のリスキリング再考―将来の技術革新に備え,変化に適合できる基礎的なスキルこそ必要」を執筆しました(20238月号)。同誌には,2018年に「人生100年時代の働き方,これからのキャリア」というものを書いたことがあり,5年ぶりです。私は公明党や創価学会とは,なんの関係もありませんが,私の関心のあるテーマで依頼をしてくれるので,ありがたいと思っています。
 もう1本,ビジネス法務(中央経済社)20239月号(Vol.23 No.9)の「Lawの論点」に「DX時代における雇用政策はどうあるべきか―Googleの人員整理が問いかけるもの」を執筆しました。同誌には,2012年に巻頭言として「「入口」と「出口」-狭まりつつある採用の自由-」(ビジネス法務Vo1.12 No.11),2013年には「ビジネスの論理を踏まえた労働法制の再構築を」を執筆しており(ビジネス法務Vo1.13 No.4),こちらは10年ぶりの登場です。調べるまでは,どこかで聞いたことがある雑誌だなという程度で,前に書いていたことを忘れていました。
 懐かしいところから,再び執筆の機会をいただき感謝しています。今回はどれもAIが関係しており,この何年かで,依頼されるテーマの内容もずいぶんと変わりました。今後も,生成AI関係のテーマでの執筆が増えていきそうです。

2023年7月 6日 (木)

「フリーランス&副業で働く!実践ガイド」

 前にも告知しましたが,日経MOOKの「フリーランス&副業で働く!実践ガイド」が発売されました。私もインタビューで登場しています(インタビューを受けて,フリーランスのライターがまとめたものに,私が後から手を入れました)。フリーランス新法が制定され,まだ施行規則などが出ていない段階では,新法の全体像ははっきりしないのですが,法律の動きなどとは関係なく,フリーランスはこれから主流の働き方になるでしょうし,現時点でも関心をもっている人が多いでしょう。ぜひ手にとって読んでみてください。よくあるマニュアル本とは違い,フリーランスを実際にやっている人やフリーランスに造詣が深い人が登場していて,痒いところに手が届く内容になっています。「実践ガイド」という言葉に嘘はありません(フリーランスにとっての難敵であるインボイス制度についての説明もあります)。
 ところで,フリーランスについては,627日の日本経済新聞で,「厚生労働省は自営業やフリーランスの育児支援策として,国民年金の保険料を一定期間免除する措置を設ける」と出ていました。「政府は当初,育児休業給付金と同様の仕組みを新設する方針だった。22年末の全世代型社会保障構築会議の報告書でも『育児期間中の給付の創設についても検討を進めるべきだ』と示していたが,制度設計の難しさから断念し,13日に決定した『こども未来戦略方針』では『育児期間にかかる保険料免除措置を創設する』方針に転換した」ということのようです。方向性は理解できますが,免除することにより減る保険料分はどうカバーするのか(結局は,いつもの財源問題)を含め,制度設計がどうなるのか,その具体的なところをみてから判断したいですね。

2023年6月17日 (土)

「フリーランス&副業で働く!実践ガイド」

 ChatGPT関係の原稿を立て続けに書いており,ずっと締め切りに追われていましたが,ようやくすべて脱稿しました。このテーマに対して世間の関心が高まっていることを感じます。ビジネスガイドで連載中の「キーワードからみた労働法」も次号は「生成AI」がテーマです(最新号は,国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」の令和5年推計版が出たことと関連させて,「高年齢者雇用政策」をテーマにしています)。
 ところで,日経ムックから刊行されるプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス&副業で働く!実践ガイド」には,私の受けたインタビュー記事が出ています。フリーランス新法が制定されて,フリーランスへの注目がますます高まるなか,フリーランスの人たちの働き方がこれからどうなるのかについて,関心をもっている人も少なくないでしょう。本書には実践的な情報が,いろんな角度から盛り込まれており,目次をみるだけでもわくわくします。フリーランスで働いている人にとっても,またフリーランスに何らかの関心をもっている人にとっても,ぜひ手に取って読んでもらいたいです。
 本書に掲載されている私のコメントは,実務的なものではなく,法律家の立場からのものです。フリーランス政策は今回の新法で終わりではなく,まだ解決されるべき課題があると述べています。新法は関連規則がまだ制定されていないので,それをみなければ評価が難しいのですが,いずれにせよ法律の施行にあたる関係官庁が,きちんとフリーランスの地位向上のために仕事をしてもらえるものと信じています。

 

2023年4月26日 (水)

入試問題に登場

 椙山女学園の2023年度の一般入試の現代文の問題に,拙著の『AI時代の働き方と法』(弘文堂)が使われました。入試問題集を出す出版社から,入試問題集への掲載を認めてほしいという連絡があったので,わかりました。これまでも拙著が入試問題に利用されたことは何度かありましたが,新書が多く,『AI時代の働き方と法』はこれで2回目ではないかと思います。もっとも,出題に使われたのは,AIに関する部分ではなく,労働法の誕生にかかわる部分でした。こういう部分のほうが世界史の話にもつながって問題として使いやすいのかもしれません。小問は12もあり,拙文がたっぷり活用されています。漢字の問題もあり,たとえば「夾雑物」の意味,「破綻」「享受」「勃興」の読み方も出されていました。どれもマルチプル・チョイス(multiple-choice)ではありますが,文意に合致した文章を選ぶ問題もあり,これは自分でやっても結構難しくて,受験生は大変だと思いました。正答率を知りたいですね。どなたが作成されたのでしょうか。難しくても,良い問題であり,これまで聞いたことがない大学でしたが,しっかりした大学なのだろうと思いました。

2023年4月12日 (水)

ジュリストの重判に登場

  ジュリストの重要判例解説に,14年ぶりに登場しました。初めて依頼が来たと思いこんでいて,やっと研究者として認知してもらったと喜んでいたのですが,自分のHPに検索をかけてみると,驚くことに,過去2回執筆したことがありました。平成12年度に羽後銀行事件・最高裁判決,平成20年度に新国立劇場運営財団事件・最高裁判決を担当していました。そして,今回の令和4年度版で山形大学事件・最高裁判決です。判例評釈は基本的にはやらないこと(やる能力がない)にして迷惑をかけないようにしているのですが,ときどき興味深い判決を指定されれば,やってみようかなという気になってしまいます。きまぐれで申し訳ありませんが,それでも声をかけてもらえること自体ありがたいことだと思い感謝しています。今回の山形大学事件・最高裁判決は,多くの人が評釈を執筆していて,普通に書いても面白くないので,あまり論じられていないような視点で書いてみましたが,企画の趣旨に合っていたかどうかはよくわかりません。いずれにせよ,労働法の重要判例解説は,土田道夫先生の「労働法判例の動き」が秀逸であり,それだけでも読む価値はありますし,山形大学事件についても,土田先生の書かれたところだけ読んでくだされば十分かと思います(最初に出てきます)。
  このほか,ビジネスガイドで連載中の「キーワードからみた労働法」の第190回は「デジタル労働プラットフォーム」をテーマにしました。先日,神戸大学で開催されたシンポジウムのテーマでもあり,明日の兵庫県労働委員会の研修でもこのテーマで話をする予定です。いまは何が問題であるかを指摘するにとどめていますが,それをどう解決したらよいかの試論も今後提示していくいつもりです。

2023年3月 9日 (木)

読売新聞登場(3月7日朝刊)

 読売新聞の37日の朝刊に登場しました。東京新聞,朝日新聞に続き,最近は新聞づいています。今回は大阪版なので,阪神地区限定かもしれません。読売新聞はとっていないので,今日,紙面が届けられて,内容を確認しました。「フリーランス なぜ保護必要」というタイトルで,例のフリーランス新法案の紹介を軸に,1紙面全体をつかって,法案などの経緯も含め,フリーランス問題についてしっかりと紹介されていました。たいへん良い内容であったと思います。私への取材はフリーランス一般のことでしたが,取材者の問題関心は,主としてギグワーカーのことでした。私は,ギグワーカーだけでなく,もっと広い視点でフリーランスのことを論じたほうがよいという,いつもの立場からお話しました。インタビューには,私以外に,東京大学の水町勇一郎さんと,フリーランス協会代表理事の平田麻莉さんが登場していました。フリーランス関係では,平田さんと一緒に掲載されることが多いですね。これで何回目でしょうか。
 話は変わり,ビジネスガイドの最新号(932号)の,同誌に連載中の「キーワードからみた労働法」の新作(第189回)では,有期労働契約の「更新限度条項」をテーマにしています。日本通運(川崎)事件の東京高裁判決を素材にしたものです。 第190回では,フリーランスに関係するデジタル労働プラットフォームを取り上げる予定です。

2023年1月31日 (火)

季刊ひょうご経済に寄稿

 一般財団法人ひょうご経済研究所から刊行されている季刊雑誌の「ひょうご経済」(157号)に寄稿しました。タイトルは,「デジタル変革後の働き方の変化」です。
 読者が中小企業の経営者向けということでしたので,それを意識して書きました。この研究所は,みなと銀行グループのシンクタンクだそうで,このような地元の研究所の雑誌に執筆させてもらえるのは光栄なことです。みなと銀行は,神戸に住んでいると,みずほ銀行よりも店舗やATMの数では存在感があります。
 ところで,昨年はずいぶんと一般向けの論考を書きました。コロナ禍やDXなどで,これからの働き方への不安が高まっているなかで,私への依頼があったのでしょう。今回の論考でも扱いましたが,テレワークがどうなるのかも経営者の関心事のようです。
 今朝のニュースで,東京が2022年は転出超過から転入超過に変わったと報道されていました。テレワークができるようになったことによる郊外移転が一段落し,やむを得ずテレワークをしていたり,させていたりした従業員や企業の東京回帰が強まっているとの見方もできそうです。しかし,トレンドとしては,こうした東京回帰は一時的なものではないかと思っています。急激に転出が起きたので,揺り戻しがあるのは当然でしょう。
 これからの若者は,なぜ対面型なのかを問うようになるでしょう。対面型のメリットがあると考えている経営者が,そのことを若者にしっかり説得できるところでは,対面型でも若者は集まるでしょう。しかし,そうした説得ができる企業がどれほどあるでしょうか。日常生活のアナログ要素は残してよいのは当然ですが,仕事の分野でのアナログ要素は,かなりの部分が無駄だと考えている人が増えているように思えます。対面での人間関係の良さは,仕事以外のところでこそ発揮されるのです。そうだとすると,長い目でみれば,テレワークは減ることはなく,東京の転入超過もいつかは転出超過に戻ることになるでしょう。

2022年12月27日 (火)

「21世紀ひょうご」に登場

 「公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構」というところから刊行されている「21世紀ひょうご」という雑誌の33号で,「アフターコロナの労働政策はどうあるべきか」という私の論考が掲載されました。同僚の大西裕先生が巻頭言「コロナ禍雑感」を書かれています。今年は,この雑誌を含め,今まで書いたことがない雑誌にいくつか寄稿することができました。
 この組織の研究戦略センター長は,御厨貴さんです。大物を配置していますね。兵庫県に縁はなさそうですが,兵庫県発信の政策研究をリードしてくださるのなら大歓迎です。
 震災といえば,兵庫県には,「フェニックス共済」(兵庫県住宅再建共済制度)というものがあることを,最近知りました(どこかで聞いたことはあったのですが)。年間5千円の負担で,災害時の住宅再建に600万円が給付されるというものです。地震だけでなく,その他の自然災害を対象としているそうです。阪神大震災を経験した兵庫県民だからこそ,共済の精神で大災害に備えなければならないという意識が高いのでしょう。2005年に全国に先駆けて創設されものだそうです。「共済」は,これからの社会保障を考えるうえで重要な理念であると考えていたので,興味をもちました。
 共済から政策研究まで,私の知らなかったところで兵庫県は頑張っていましたね。このほかにも知らないことが,いっぱいあるかもしれません。また何かわかれば紹介します。

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