保護司の仕事の重要性
保護司の方が,過去に担当していた保護観察対象者に殺害された疑いがあります。もし事実であれば嘆かわしいことです。保護司の仕事はボランティアであり,長年勤務していた人は勲章がもらえるような重要な社会貢献活動をしているのですが,相手が犯罪者ということで,二の足を踏む人が少なくありません。保護司のなり手をみつけるのは大変です。私も,兵庫地方労働審議会の会長をしていたときは,保護司選考会の委員となっており(保護司の選考に関する規則3条1項10号で,地方労働審議会会長は委員となると定められています。その他は,地方裁判所長,家庭裁判所長,検事正,弁護士会長,矯正施設の長の代表,保護司代表,都道府県公安委員会委員長,都道府県教育委員会教育長,地方社会福祉審議会委員長,学識経験者です),その大変さはよく知っています(ちなみに,この委員の仕事もボランティアです)。
地域社会の安全を維持するためには,刑務所を出た人が再び犯罪をおかさないようにすることが大切です。その意味で,保護司の役割はとても大きいものといえます。とはいえ,日中に職場に出かけている会社員となると,なかなかこの仕事を務めることはできません。これは会社員が地域社会の担い手になれないという問題の一つといえます。テレワークは会社員を自分が住んでいる地域社会に回帰させるための手段となるといういつもの話になるのですが,地方政治への参加などと並んで,保護司のような仕事をできる状況をつくるということもテレワークのメリットの一つというべきでしょう。
犯罪者の更生には,就職による社会復帰が重要でしょう。厚生労働省及び法務省は,2006年度から,刑務所出所者等の就労の確保のために,刑務所出所者等総合的就労支援対策を実施しているようです。刑務所出所者等の雇用に協力する事業者は,「協力雇用主」として登録するという制度もあるようです。労働市場における弱者としては,女性,高齢者,若年者,障害者,(単純技能の)外国人などのカテゴリーが挙げられることが多かったのですが,刑務所出所者もこれに加える必要があるかもしれません。雇用政策で論じられることはあまりありませんが,保護司選考会に地方労働審議会会長が委員となっていることは,保護司の活動は雇用政策とも関係していることを示しています。犯罪者の更生を雇用政策におけるテーマとして論じることは,取り組むに値するものだと思います。