趣味

2021年12月27日 (月)

音楽の話のつづき

 音楽の話の続きですが,今年のショパンコンクールの3次予選までいって惜しくもファイナルを逃した角野隼人さんは,東大卒のピアニスト。すでに実績は十分で,YouTuberとしても有名です(「Cateen かてぃん」)。1224日の日本経済新聞でも,また25日の朝日新聞でも,彼のことが採り上げられていました。
 私は,少し前までは彼のことをあまり知らなかったのですが,ヴァイオリンの「チャルダッシュ」の演奏を無性に聴きたくなり,YouTube で検索をしていると,彼の動画に遭遇しました。ヴァイオリニストの髙木凜々子さんとこの曲で共演していて,とても二人が楽しそうであったのが印象的でした。
 「チャルダッシュ」というと,個人的には,古澤巌というイメージがありますが,女性の演奏もいいです。ちなみにチャルダッシュは,作曲はイタリア人のVittorio Montiですが,題名はハンガリー語(csárdás)です。緩急の変化があり,誰もが好きになる曲ですね。
 ヴァイオリニストとしては,やっぱり葉加瀬太郎がいいです。一度だけコンサートに行ったこともあります。ミーハーと言われるかもしれませんが,「情熱大陸」はヴァイオリン曲の楽しさを味わわせてくれますし,「ひまわり」や「エトピリカ」のように,どこか懐かしい感じがするメロディとヴァイオリンの音色は良く合うと思います。
 ところで,今朝のNHKのニュースではN響の「第九」のことが採り上げられていました(N響「第9」コンサート本番までの舞台裏 コロナ禍で渡航制限も 響け「歓喜の歌」 - NHK NEWS おはよう日本 - NHK )。そのなかで,ヴィオラの若い演奏者がインタビューされていて,現在は1年間の契約団員(試用期間)で,正式団員を目指しているとのことでした。彼女には頑張ってほしいですが,労働法をやっていると,ついつい神戸弘陵学園事件を想起してしまいます。芸術の世界のことを,すぐに労働法の話に引きつけるのは野暮なことで,本来は次元の違うことのはずですが,そうとばかり言ってられないのです。先日の研究会でも,この点が少し問題となったので,また後日書いてみたいと思います。
 

2021年11月21日 (日)

ショパンコンクール

 今年のショパン国際ピアノ・コンクールは,反田恭平さんと小林愛美さんが,それぞれ2位と4位に入賞しました。素晴らしいですね。ショパニストとしての世界的な評価を確立し,ピアニストとしての最高の権威を得たといえるのでしょう。驚いたのは,小林愛美さんは,前回もファイナリストになっていたのに,もう一回挑戦して入賞へとランクアップしたことです。もし失敗したら評価が下がってしまうので,なかなかできないことだと思うのですが,そのチャレンジ精神とピアノへの強い思いを感じられました。クローズアップ現代でも紹介されていましたが,YouTube では,彼女の小学生くらいからの演奏を聴くことができ,幼いときから才能が全開の天才ピアニストだったことがわかります。ピアニストのコンクールに向けた苦悩は,かつて映画館で観た「蜂蜜と遠雷」でもよく描かれていました(コロナ前のいつだったか忘れましたが。原作の方も先に買っていたのですが,読まないままずっと本棚に眠っています。映画と少し違うそうなので,時間をみつけて一気に読んでしまうつもりでいますが,そう思いながら何年も経ってしまいました)。
 今回のショパンコンクールのあとは,ほぼ毎日,反田恭平さんの演奏を聴いています。圧巻はセミファイナルでの「英雄ポロネーズ」です。ショパンの代表的な曲の一つですが,ファイナルはオーケストラとの演奏なので,55分間ソロとして聴かせるセミファイナルは,ピアニストとしての自分の力量を最も示すことができる大舞台です。そこでどのような演目の構成で聴かせるかが勝負ですね。反田さんは入念に作戦を考えて,ポーランドの人に訴えかけるような選曲をし,ストーリーを作ったそうです。彼は,天才たちが集うこのコンクールで,周到に戦略を立ててきました。ワルシャワに留学して現地に溶け込んで,ショパンの祖国でショパンを学び,髪型もサムライ風にして目立つようにするなどして,そして今回の大きな成果につなげました。
 セミファイナルで演奏した「葬送」から始まり「英雄ポロネーズ」で終えるというように,まずは暗い世相を描きながら,それを力強く乗り越えていこうとする反田さんのメッセージは,聴衆に大きく響くものがあり,芸術の強さと素晴らしさを教えてくれるものでした(”Largo” という聴いたことがない曲も組み入れていました。ショパンの死後に楽譜が発見された曲だそうで,反田さんも留学後に知ったそうです。Largoはイタリア語で「広い」というような意味ですが,音楽用語では,「ゆるやかに」となります。ただ,この曲がどういう意味のものであるかは,よく知りません)。
 二人の若いピアニストの将来に大いに期待したいです。

 

2021年4月10日 (土)

阪神が好調

 今年は久しぶりに阪神タイガースが気になるシーズンになりました。今年の阪神は,藤浪が投げ,佐藤が打つというのが新たな売りになるということを示すような,今日のDNA戦の快勝でしたね。
 今日はとくに,ルーキーの佐藤輝明の超特大場外ホームランで盛り上がりました。佐藤は,打率は2割に届いておらず,三振も多いのですが,ホームランの魅力があり,打っても打たなくても,佐藤をみたいというファンが多いと思います。こういう日本人選手は,ほんとうに阪神では久しぶりではないでしょうか。身体も大きいですが,桁違いのスケールで,オーラがあります。ドラフト2位の伊藤将司も,開幕からローションに入っていて,先日は新人の勝利1番乗りを果たしています。井川の再来という感じでしょうかね。さらにドラフト6位の中野も1軍に定着で,欠かせない選手になっています。糸原と似たタイプですが,社会人出身の即戦力ルーキーで期待がもてます。これだけ新人が活躍すると監督も助かりますよね。長年阪神を支えた鳥谷はすでにロッテに移り,今年から福留や能見も移籍して,少し前までベテランに頼っていた阪神は大きく様変わりしました。佐藤は外せない選手になっていて,今年は陽川も好調なので,糸井の出番がありませんね。これが長年願っていた世代交代です。投手陣は,あまり期待していなかった藤浪が完全復活し,これまで好投しても勝ち星がなかったのが,今日,ようやく1勝がつきました。藤浪⇒青柳⇒ガンケル⇒西⇒伊藤⇒秋山の6本柱は安定していて,これに高橋遥人が戻ってくれば,もう先発陣は十分です。このほかにも,外国勢は,打撃陣のマルテやサンズは好調ですし,おさえのスアレスも良さそうです。以前は先発要員であった岩貞をなかつぎにし,岩崎も好調のようなので,そんなに連敗しそうにない陣容が整いました。
 ついでに将棋の話をすると,今日,叡王戦の段位別の八段戦で,藤井聡太二冠が広瀬章人八段と戦ったのですが,藤井二冠が強すぎました。あっという間に相手玉を寄せてしまい,バリバリのA級棋士の広瀬八段を圧倒しました。これで18連勝です。その間に勝っている相手には,渡辺名人や豊島竜王も含まれていて,いよいよ無敵状況になってきましたね。誰が止めるでしょうか。

2021年1月30日 (土)

R.Valentino閉店

  コロナが終わったらどこに食べに行こうかと想像するのが楽しみという毎日ですが,六甲近辺ならともかく,三宮となると電車で10分もかかりませんが,当分は行けそうにありません。三宮に出ていくならまず考えるのが,R.Valentinoです。陽気なPietroさんがやっているイタリアンで,イタリアの現地で食べられる料理がそのまま出てきます。食べ終わった後,Pietroさんが自家製Limoncelloをボトルごと机にぽんと置いてくれて好きに飲んでよいよという太っ腹が有り難かったです。ところが,お店のHPをみると,なんと昨年1231日で閉店したそうです。東京からお客さんが来れば連れて行く店でしたし,大学の同僚の教授昇進のお祝いに行ったこともあれば,労働委員会の懇親会に使ったこともありました。数え切れないくらい行っています。閉店と知っていたら,無理をしてでも行っていたかもしれないのに。閉店の理由はわかりませんが,コロナではないかもしれません。日本を愛し,神戸人にほんとうのイタリアンを食べさせてくれていた店はもうありません。残念ですが,これまで有り難うございました,と伝えたいです。
 日本には,高級イタリアンの店は結構ありますが,なんかちょっと違うのです。私は格式張ったイタリアンは好きではありません。イタリアンって,もっと大衆的なものなのです。R.Valentinoこそが,私が求めていた本当のイタリアンレストランでした。R.Valentinoほどではありませんが,本物的な感じが強かったアルポルト神戸も閉店していました。ネットで調べたら,すでに昨年2月に閉店していました。トアロードホテルに開店してすぐのときから,よく使っていましたし(麻布のアルポルトも行ったことがあり,その親戚のような店ですが,私は神戸のアルポルトのほうが好きでした),ここも労働委員会の懇親会で使ったことがありました。大学の同僚の懇親会でも使いましたし,親族の古希のお祝いでも使いました。とても残念です。
 神戸から良いイタリアンが消えていくのは辛いです。イタリアンといっても,どこか違うよねというのが,日本にあるほとんどのイタリアン・レストランです。本物のイタリアンに来てもらいたいですね。

2019年5月17日 (金)

豊島名人誕生

 久しぶりに将棋のことを書きましょう。アモリスタ・ウモリスタになってから初めてかもしれません。
 名人戦第4局は,豊島将之2冠(王位,棋聖)が,佐藤天彦名人に勝ち,4連勝で名人位を奪取しました。1年ちょっと前までは,無冠だが実力ナンバーワンと言われていた豊島新名人でしたが,昨年の棋聖戦で,当時の羽生善治棋聖からフルセットの末,初のタイトル奪取をし,次いで,王位戦でも菅井竜也王位から,同じフルセットの末,タイトルを奪取して2冠となり,いきなり棋界の第一人者に登り詰めました。その後,竜王戦では,広瀬章人八段(当時)が,羽生竜王をフルセットの末破って,竜王を奪取し,羽生の100個目のタイトルを阻止し,かつ無冠にさせたことで,主役を奪われましたが,2018年度は,間違いなく豊島2冠の1年でした。そして順位戦(A級)も順調に勝ち上がり,初の挑戦で,見事に名人を奪取し,これで3冠となりました。A級に昇給したばかりの2017年度(第76期)は,後半に失速して史上初の6人のプレーオフとなり,順位が一番下の豊島八段(当時)は,5連勝しなければ挑戦できないという過酷な状況になりました。さらに王将戦の挑戦者にもなり,その戦いも併行するという超過密スケジュールでした。結局,A級順位戦プレーオフでは3連勝のあと羽生2冠(当時)に破れ名人挑戦を逃し,王将戦でも久保利明王将に敗れタイトル奪取はならなかったのですが,そこから立ち直ったのはさすがです。
 タイトルの序列では,竜王が最高とされていますが,歴史の重さからすると,名人位が棋界最高のタイトルであることは間違いありません(棋士たちは,高額の賞金を出す竜王戦のスポンサーへの配慮からでしょうか,そうは口にしませんが)。ついに,このタイトルにたどり着いた豊島名人は感無量でしょう。これからはタイトル5期で得られる永世名人を目指してほしいです。
 しかし,現在,棋界は,まだ豊島名人による天下統一とまでは言えません。数日前には,昨年から絶好調の永瀬拓矢新叡王が誕生しました。一昨年羽生王座からタイトルをとった中村太一王座を破って,昨年秋には斉藤慎太郎王座が誕生しました。広瀬竜王もいます。それになんと言っても,いま一番注目の強豪棋士は,渡辺明2冠(棋王,王将)です。まさかのA級陥落をした昨年,鬼の住処と言われるB級1組を全勝で駆け抜けて今期A級に復帰しました。その間,まさに鬼のような強さで勝ち続け,棋王の防衛戦では,広瀬新竜王を寄せ付けず,王将戦は久保王将から4連勝でタイトルを奪取しました。そして,もうすぐ豊島新名人の棋聖に挑戦します。勝ったほうが3冠という頂上対決です。
 とはいえ,これが本当に実力ナンバー1の決定となるかというと,そうではないのです。今年初めの朝日杯の決勝で,絶好調の渡辺棋王(当時)を決勝で破って優勝したのが,藤井聡太七段でした。この棋戦は2連覇です。現時点では,まだ豊島新名人のほうが実力は上かもしれませんが,渡辺2冠も含め,この3人の誰がナンバーワンか。また,羽生九段も,NHK杯では豊島2冠(当時)を破るなどして優勝しており,さらに王位戦も挑戦に近いところまで来ていて,まだわかりません。永瀬叡王も広瀬竜王もいます。ということで,現在の状況は,藤井時代が到来するまえの一時的な混乱なのか,それとも,藤井時代の到来はまだもう少し先なのか。藤井七段は,昨年度(第77期),順位戦C級1組で,9勝1敗という好成績ながら,まさかの頭ハネで昇級を逃しました(師匠の杉本昌隆八段が昇級して話題になりました)。これで名人になる可能性がある年が1年遅くなりました。今年はすでに発表される対戦相手をみると,全勝できそうですが,個人的には,昨年やはり9勝1敗で昇級できなかった船江恒平六段に頑張って欲しいですね(第7局が藤井戦です)。藤井七段の初タイトルの最短の可能性といえば,王座戦です。現在,挑戦者決定トーナメントに進出しています。4回勝てば挑戦者となれますが,それまでに羽生九段,そして豊島3冠か渡辺2冠と対戦する可能性が高いです。竜王戦もすでに3組昇級を決め,さらに4組優勝者として決勝トーナメントに出る可能性が残っています。一番早いタイトルは,王座,次いで竜王というところでしょう。

 

2019年2月 3日 (日)

ミステリーを3冊

 ネタバレもあるので,要注意。
 高野和明『13階段』(講談社新書)。前にこの著者の『ジェノサイド』を読んで,第1期のブログで紹介したこともありました。死刑執行直前の男を冤罪から救おうとしているのが,過去に人を殺した経験のある刑務官と傷害致死罪で有罪となり仮釈放になっている二人の男。途中で真犯人がわかりそうでわからないスリリングな展開で一気に読めてしまいます。ここには,善良な保護司もいれば,悪徳保護司も出てくるし,さらに死刑を求刑したが再審請求に向けて尽力してくれる検察官,無責任な弁護士,無能な法務大臣,ことなかれ主義の高級官僚などが次々と登場し,同時に前科者と家族,親族を殺された犠牲者の家族の悲哀も描かれ,正義とはなにか,死刑とはなにかを問いかける社会派ミステリーでもあります。
 東野圭吾『回廊亭殺人事件』(光文社文庫)。かなり前の作品ですが,まだ読んだことがありませんでした。多大な資産を残して亡くなった経営者,一ヶ原高顕の遺言が公開される回廊亭という旅館に集まってきた親族たち。その宿には,数年前にも同じように親族が集まっていたのですが,その夜に火事があり,高顕の秘書である枝梨子と付き合っていた里中二郎が死亡し,枝梨子も首を絞められ,大火傷を負います。実は,枝梨子は,子がいない高顕から,かつて付き合っていた女性が産んだ自分の子を探して欲しいという仕事を頼まれており,そうして見つかったのが里中二郎だったのです。回廊亭で,親族に里中二郎が紹介されるはずでしたが,その前夜に火事で彼が死んでしまったのです。枝梨子は,真犯人を見つけるために,高顕の知人である老婆に変装して回廊亭に乗り込みます。遺産が里中二郎に行ってしまうことをおそれた親族による放火殺人ではないかと彼女は考えています。候補者は数人いたのですが,実は真相はまったく異なっていました。悲しい女性の物語ともいえます。
 島田荘司『占星術殺人事件』(講談社文庫)。さらに前の作品です。設定は,昭和初期の二・二六事件のあった日。殺人予告とも思われる,怪しげな手記どおりに,その執筆者の親族の女性6人が,身体のそれぞれ別の部位が切り取られるという猟奇的な連続殺人事件が起こりました。犯人は,手記を書いた男となりそうですが,その男は,連続殺人事件が起こる前に殺されていました。しかも密室殺人でした。しかも,その間にもう一人,別の親族の女性も殺されていました。犯人は誰か。トリックは予想もつかないものでした。著者の読者への挑戦です。あなたは,この謎が解けるでしょうか。私は,主人公の御手洗さんが教えてくれるまでは,さっぱりわかりませんでした。