桃色争議
NHKの朝ドラの「ブギウギ」を観ています。笠置シヅ子の自伝的な内容のドラマです。朝ドラは,「ちむちむどんどん」以来ですね。主人公の福来スズ子は,小学校を出て自分の将来の道を探すときに,自分は歌と踊りが好きということで,花咲少女歌劇団(モデルは宝塚少女歌劇団)の試験を受け,それに落ちたのですが,梅丸歌劇団の試験を受け(試験日を間違えて,その翌日の受験となりましたが),みごとに特別に合格をもらって,修行を始めました。そして,なんとかプロになれたというのが先週までの話(スズ子は子役が演じています)で,今週からは,そこから6年が過ぎた時代に飛び,スズ子役として,主役の趣里(水谷豊と伊藤蘭の娘)が登場しました。
ドラマでは,会社は大恐慌の影響で経営が苦しくなり,人員カットと賃金カットを進めてきました。そのようななか,劇団を引っ張ってきた梅丸トップで演出にも取り組んでいた大和礼子(蒼井優)が,ストライキをすることに決め,スズ子たちも加わります。新聞では「桃色争議」として採り上げられ,世間の注目を集めたというところまで話が進みました。
ストライキに至るまでのシーンが面白かったです。礼子たちは労働組合を結成したというわけではなさそうで,外部からのオルグがあったわけでもありませんが,労働者のごく当然の行動のように,嘆願書を会社に出し,要求が受け入れられなければストライキをすると通告し,会社からのゼロ回答を受けてストライキに突入しました。礼子は,団員たちには,ストライキに参加するかどうかは自由であると告げますが,大半は彼女に従ってストに参加しているようです(いずれにせよ礼子らがいない以上,公演は中止です)。さらに,会社の関係者が,スズ子らの家にやってきて,争議を中止すれば一時金を払うという,わかりやすい争議つぶしのシーンも出てきます。お金をもらってしまって,会社側についた者もいました。この争議がどう決着するのかわかりませんが,今後の展開が楽しみです。
ストライキをすると観客に迷惑をかけるから止めるべきという盟友の橘アオイ(翼和希)の反対もあるなかで,礼子は自分を大切にするためにもストライキをするのだと言います。なんとなくストライキを人格権とみるイタリア労働法を想起させるようなセリフで,これもよかったです。
今年は西武・そごうの労働組合のストライキもありました。ストライキに,近年ないくらい関心が高まっているような気がします。ストライキについて,根本的に考えてみたい方は,拙著『雇用社会の25の疑問(第3版)』(2017年,弘文堂)の第5話「労働者には,どうしてストライキ権があるのか」も読んでみてください。