スポーツ

2024年12月 3日 (火)

大山残留

 FA宣言をしていた大山悠輔選手が,なんと阪神に残留してくれました。多くの人は巨人に行くだろうと思っていたと思います。条件提示は巨人のほうが,はるかに良かったようです(6年契約で総額30億円?)。それでも大山は阪神を選んでくれました。冷静にみれば,どうしても巨人ということでなければ,多少は条件が低くても,阪神にいればポジションは確保されていますし,熱烈なファンもいます。阪神から巨人という禁じ手(?)を使ってまでして無理に移籍しても,ポジションは保障されておらず,甲子園では阪神ファンの前で気まずくなる(激しいヤジを受ける)ことなども考慮したのかもしれません。ただ,もしほんとうにそのような理由であれば,プロとして甘いという感じもしますが……。
 いずれにせよ大山残留で,翌年の打線については,今年と同様に,森下・大山・佐藤のクリーンアップとなりそうです。ただ,これで今シーズンは貧打が続いたことも事実なので,どこかで今年より改善する要素が必要です。大山は得点圏打率は高いとはいえ,前にもみたように打撃成績は阪神では3番手か4番手であり,4番を打つ以上は,もう少し頑張ってもらわなければ困ります。むしろ大山が今年くらいの成績で4番に座り続けることがあると,来年も優勝は難しくなります。サトテルが本塁打30本,100打点くらいに爆発してくれれば,大山も楽に打てて成績が上がるかもしれません。サトテルも,そろそろ来年は頑張らなければ,平凡な選手で終わってしまうおそれがあります。
 このほかの選手では,中野も,来年は正念場です。今年の打率では,ポジションは安泰ではなくなるでしょう。ショートは,来年は小幡で行くでしょう。捕手は坂本中心で行ってもらいたいです。レフトは前川でしょうが,さらなる飛躍がなければ,新外国人(?)にポジションを奪われる可能性があります。大山残留で最もがっかりしたのは井上でしょうが,野口などとともに来年は一軍に定着して,まずは右の代打として,そしてチャンスがあれば,外野のポジションを奪うくらいの迫力をみせてもらいたいです。

 

 

2024年12月 1日 (日)

福岡国際マラソン

 12月になりました。師走です。慌ただしくなります。
 福岡国際マラソンがありました。吉田祐也選手が2度目の優勝をはたしました。記録は2時間516秒です。日本記録に20秒届きませんでしたが,見事な記録です。2000年に藤田敦史(現在は,駒澤大学の駅伝監督)が,当時の日本記録である2時間651秒で優勝したときは驚きました。海外の大会で好記録を出した選手はいますが,優勝のほうが価値があります。吉田選手は,2000年にも2時間75秒で優勝しています。福岡で2度の優勝は見事です。複数優勝は,中山竹通,瀬古利彦あたりにまで戻らなければなりません。
 瀬古さんは,福岡で4回優勝していますが,1983年の4回目の優勝の記録は,2時間852秒でした。当時は2時間10分を切るのが大変な時代で,2時間8分台の記録に興奮したことを覚えています。しかもこの勝負は,日本でもおなじみのタンザニア(Tanzania)のイカンガー(
Ikangaa)が先行逃げ切りをはかり,最後の100メートルで,瀬古がスパートして抜き去った劇的なレースでした。ライバルの宗兄弟や伊藤国光にも勝ち,世界記録保持者のサラザール(Salazar)も破り,その年の2月にあった東京マラソンでの優勝に続き,世界一の実力を世界にとどろかせたのが,この福岡の大会でした。日本のマラソン選手が,記録でも勝負でも,世界に最も近い時期でした。
 瀬古選手はオリンピックでは勝てませんでした(最盛期のモスクワオリンピックのときはボイコットの犠牲になりました)。しかし,オリンピック前年の1983年の福岡に,代表選考レースという大勝負で,アフリカの選手に負けなかった瀬古選手は,いまなお日本の誇りです。

 

 

2024年11月26日 (火)

日曜スポーツ

 少し遅れましたが,大相撲九州場所が終わりました。これでいよいよ冬が来るなという気持ちになります。今場所は,期待の大の里は9勝どまりでした。押し相撲相手に土俵際でもろさがあったり,勝ち急いで逆転されたりしたという印象がありますが,これは昇進場所であることなどから稽古不足であったことが原因ではないかと思います。実力はナンバー1ですから,来場所は期待できるでしょう。優勝は他の2大関が千秋楽の1敗対決をし,琴櫻が勝ち,念願の初優勝です。来場所は綱取りとなります。負けた豊昇龍も13勝での準優勝ですので,来場所は14勝以上で優勝すれば横綱という声がかかるかもしれません。相撲内容的には,豊昇龍は,大の里戦でもそうであったように,強引な投げによる逆転が目につき,あまり強さは感じませんでした。しかし,初日から気合が入っていて動きがよく,本気を出した豊昇龍は手強いということがよくわかりました。琴桜は,お父さんの琴の若と同様,なんとなく勝ち味が遅い感じもしますが,恵まれた身体があるので,来場所は横綱をゲットする可能性はかなりあるでしょう(協会も,引退が近い照ノ富士に代わる横綱がほしいでしょうし)。好調が伝えられていた霧島は序盤の5連敗で調子に乗れず6勝止まりでした。大関復帰への道は険しそうです。若元春は小結で10勝しましたので,来場所は関脇で大勝ちすると,次の場所が大関取りになるかもしれません。さらに弟の若隆景が久しぶりに上位に戻って10勝しました。来場所は小結昇進でしょう。兄弟そろって大関への道を目指してほしいです。少し安定性がないものの,実力はある阿炎と隆の勝も,今場所はともに11勝をあげており,来場所も上位陣にとって脅威となりそうです。熱海富士はやや伸び悩みで8勝どまりでした。下位ですが,豪の山は10勝,優勝経験のある尊富士も10勝で,来番所は上位に上がってきて,わかせてくれることでしょう。十両では伯桜鵬が10勝で,再入幕はほぼ確実です。彼もかつての輝きを見せられるか。部屋を失った白鵬(宮城野)も期待していることでしょう。
 日曜のスポーとしては,もう一つ,高校駅伝の近畿大会がありました。兵庫県大会で2位になった須磨学園は全国大会の出場権がなくなったと思っていたのですが,今年から地区大会で勝てば出場できることになったようです(以前は記念大会だけでした)。近畿大会では,兵庫県大会と同じく,西脇工業と須磨学園のワーツーフィニッシュでしたが,西脇工業は兵庫県大会で優勝して,すでに全国大会への出場権を得ているので,須磨学園が近畿大会の代表として出場できることになりました。両校には兵庫県代表として,外国人留学生のいる他の有力高校(仙台育英,世羅,倉敷など)に負けずに,優勝をめざしてしのぎを削ってほしいです。

 

 

2024年11月23日 (土)

大山選手のこと

 昨晩から少し喉が痛むと思っていたのですが,今朝起きたとき,熱が少し高く,その後,午前中にぐんぐんと上がり378分まで行きました。平熱が低いので,私にとってかなりの高熱で,喉の痛みと頭痛でずっと寝ていました。いろいろ薬を飲みながら,夕方前には36度9分くらいになり,頭痛も喉の痛みも軽くなりました。まだ油断はできません。インフルエンザか,コロナか,ただの風邪かといろいろ考えましたが,数年に1度,突然原因不明の高熱になることがあり,それが久しぶりに起きたのかなと思っています。疲労の蓄積があるなか,急激な気候の変化についていけなかったのが発症のきっかけだったかもしれません
 ということで少し元気になったので,大山のことを書こうと思いました。阪神タイガースの主砲の大山悠輔選手です。FA宣言をしており,阪神退団の可能性が高いと言われています。おそらく藤川監督は,大山が来年はいないと考えて構想を練っているでしょう。可能性が高い移籍先は巨人です。大山は茨城出身ですし,関西にはそれほど縁があるわけではありません。阪神ファンは,地元出身のサトテルが好きであり,大山は自分が主砲と言われながら,ナンバー1
の選手と思われていないことをわかっているでしょう。一方,巨人は,多くの選手が行きたいと考えるチームであり,地方出身者はとくにそうでしょう。高待遇を提示されているはずで,選手としても惹かれるところは大きいはずです。FAはどこのチームで野球をするかを選択できるというプロ野球選手にとっては重要な権利であり,藤川監督があえて大山の残留の説得をしようとしないのも,選手ファーストという観点からは,よく理解できます。
 やや心配なのは,余計なお世話ですが,大山が巨人に行って幸福な選手生活を送ることができるかです。彼の今期のポジションは1塁です。守備は上手ですが,巨人には,大山より格上の岡本和真選手がいます。今シーズンの1塁のゴールデン・グラブ賞も岡本です。巨人はこれまでも他チームの4番打者を引っ張ってきていますが,成功したこともあれば,そうでないこともあります。飼い殺しをすることもありえます。チームの戦略としては,巨人で活躍できなくても,阪神で活躍できないようにするというだけで十分ともいえます。巨人は豊富な戦力があり,一方,阪神は貧打戦のなかでは,大山は良い成績をあげていたので,大山が抜ける影響は阪神には大きいでしょう。巨人はそう考えているかもしれません。また大山は全力プレーを欠かさず,ファンに愛される選手であり,チームメートにもよい影響を及ぼすことが期待されます。いてくれるだけでありがたい選手でもあるのです。
 大山の今期の成績は,打率は.259で,セ・リーグ20位,阪神でも4位です。ホームランもセ・リーグ10位タイの14本で,村上宗隆(ヤクルト)の33本,岡本の27本に遠く及びません。阪神のなかでも3位です。打点は68で,セ・リーグ9位で,これも村上の86,岡本83とは大きな差があり,阪神のなかでも3位です。唯一,大山がすぐれていたのは,得点圏打率で,.354で,これは首位打者をとったDeNAのオースティンに次ぐ2位です。とはいえ,森下翔太も.351で僅差の3位です。強打者の指標であるOPS(出塁率+長打率)も,大山はセ・リーグ14位で,阪神のなかで4位です。
 結局,阪神のなかでは,スラッガーとしての総合的な評価は,森下(ジャパンの4番打者),サトテルに次ぐ3番手です。大山がいなくなったら困るのですが,それでも致命的とまではいえません。外国人で埋めることができる可能性がないわけではありませんし,1塁ということであれば,守備に多少の不安があっても,来季は井上広大が大化けする可能性があります。
 巨人では,大山はどこでも守るつもりかもしれませんが,現実的には,1塁以外だと3塁か外野です。右の代打の切り札のような使われ方になるかもしれません。大山もそんなことは十分に承知しているでしょう。それでも自分が野球をやる場所は自分で選択したいというのが選手の気持ちなのでしょう。もしかしたら岡本は来季にはMLBに行くかもしれないし,ケガでリタイアすることもありえます。
 最終的に大山がどういう決断をするかわかりませんが,どうであれ阪神の功労者なので,活躍を期待したいと思います。

 

 

2024年11月10日 (日)

サトテルは2番でいこう

 ワールドチャンピオンになったMLBのドジャースの大谷翔平選手は,今シーズンは主として2番か1番を打っていたと思います。アメリカは,「2番打者最強説」もあるそうです。ホームラン王を取ったような最強打者がクリーナップではなくて,1番や2番を打つというのは面白い発想だと思います。ホームラン王を取るバッターは,その前にランナーをためておいた方がよいので,1番から3番に有力な選手を置いたあとの4番というのが合理的な発想と思えます。
 ということで,これまでは1番は出塁率が高く盗塁などもできる足の速いバッター,2番は1番で出塁した選手をバントや進塁打で進めることができるような器用な選手,3番と4番はランナーをかえすことができる得点力のある選手,4番バッターは敬遠されることもあるので,5番,6番は3番ほど確実性は高くなくても,得点力のある選手を置いておくというのが合理的な発想でしょう。守備はよくできるが打撃に問題があるような選手は,その後に置いておいたほうがよいでしょう。もちろんDHDesignated Hitter)の制度がある場合は少し考え方が変わってくるかもしれません。
 ホームランバッターを1番に置くのは効率が悪いような気がしますけれども,考えようによっては1番バッターがその回の1番目に打つのは1回の表(ビジターゲーム)あるいは裏(ホームゲーム)は確実ですが,それ以外は,どうなるかわかりません。そうだとすると,打順がたくさん回ってくる1番や2番に最強打者を置いておくというのは,十分にある戦略なのでしょう。実際,今期の大谷のように,1番バッターがホームランをよく打つチームはやはり強いと思います。ペナントレースで優勝した巨人の1番打者の丸のホームランは14本で,阪神の4番の大山と同じです。
 思い返せば1985年の阪神タイガースの優勝の時の1番バッターは真弓明信選手でした。この年はバース,掛布,岡田のバックスクリーン3連発が印象的でしたが,実は真弓も34本ホームランを打って打率322厘というすごい成績を残しています(バースは,54本で35分,掛布が40本で3割,岡田が35本で342厘)。しかも真弓はシーズン途中で怪我で1ヶ月ほど欠場しています。日本シリーズでもホームランを2本打っていますし,初戦で敵地でいきなりヒットを打って勢いづけることもやっています。あの年の阪神優勝・日本一の陰の立役者は真弓選手だったかもしれません。
 阪神タイガースの藤川新監督はサトテルを1番か2番に置くということも考えてようです。とても面白い発想だと思います。大山がいなくなることを前提に,勝負強い森下と前川を4番と5番に置いておくというのは相手チームからみて脅威でしょう。近本1番,サトテル2番,3番は1塁の新外国人(?),4番森下,5番前川,6番中野(?),7番梅野,8番投手,9番小幡というのでどうでしょうかね。

 

 

2024年11月 5日 (火)

全日本大学駅伝

 113日には重要な駅伝の大会がありました。一つは全日本大学駅伝です。出雲駅伝で勝った國學院大學が2冠達成です。これで箱根で3冠達成を目指す資格を得ました。3強と言われた駒澤大学と青山学院が,出雲と同様に,2位と3位に入りました。3校の強さは揺るぎそうにありません。駒澤大学は2区の1年生の桑田がブレーキとなり,早々に優勝戦線から脱落しました。7区の篠原と8区の山川で区間賞をとり,しかも8区は区間新に近いくらいの大快走で2位に上がり底力をみせました。駒澤は3年生のエースの佐藤圭汰がケガのため,出雲も全日本も走っていないなかでの連続2位です。箱根では佐藤が走れそうです。昨年は,佐藤がブレーキとまでは行かなくても,青学に抜かれてしまって往路で勢いが止まったので,今期は雪辱に燃えているでしょう。ただ,全日本のように1人でもブレーキが出てしまうと,國學院と青学が相手の箱根では挽回は難しいでしょうから,藤田監督が桑田を箱根で使うかが注目です(たぶん使うでしょうが)。青学は,出雲も全日本も逆転負けとなっており,これは珍しい感じもします。ただ箱根では抱負な選手層を活かせるので,優勝候補ナンバー1に変わりはないでしょう。國學院は,エースの平林がどの区間で走るのかが見ものですが,昨年力を出しきれなかった選手も,今年は2大駅伝で結果を出しているので,もちろん優勝候補の一つでしょう。
 もう一つ,高校駅伝の兵庫県の予選が行われました。2年ぶりに西脇工業が勝ちました。兵庫県は,須磨学園,報徳,西脇工業の3強が争ってきましたが,今年は西脇工業が勝つだろうということは,昨年から予想されていました。双子の新妻兄弟がずば抜けているからです。この大会も1区で新妻が独走で10キロを30分を切る快走で勝負が決まってしまいました。須磨学園は,昨年の優勝メンバーが残っていましたが,惜しくも2位に終わりました。昨年は須磨学園が全国大会で4位です。8回の全国優勝経験のある西脇工業には,ぜひ全国大学では昨年の須磨学園以上の順位を目指してもらいたいです。女子は須磨学園が予選を勝ちました。昨年は全国大会で6位でしたが,こちらもより上位を目指して頑張ってほしいです。
 
ところで須磨学園で,昨年の全国大会の花の1区で区間賞をとった折田壮太は,今年,青山学院に入り,いきなり全日本駅伝に出場していました。3区で区間5位で見事に1位のまま襷をつなぎました。箱根駅伝でも走るかもしれません。1年生であの青山学院で戦力になっているというのは素晴らしいです。順調に育って,将来的には,マラソンで日本代表になってもらいたいですね。

2024年11月 2日 (土)

ドラフトと移籍の自由

 昨日のドラフトの話の続きです。プロ野球球団は,ドラフトで指名した選手とは独占的な交渉権をもち,入団が決まれば,保留権をもちます。プロ野球選手会のHPをみると,次のように説明されています。「NPB[筆者注:日本野球機構]には保留制度という選手の移籍を禁止する制度があります。そのため球団が保留権を有する選手については国内国外を問わず選手が他球団に移籍するために契約交渉練習参加等を行うことはできません。ですのでNPBでは選手が自分の意思で他球団に移籍ができないのが大原則です。会社を自分で辞めて他の会社に転職するように球団を移籍することはできません」。
 この移籍禁止の唯一の例外がFA制度です。同じHPによると,FAには,国内FAと海外FAがあり,1度目の国内FA権を取得するためには145日以上の1軍登録が8シーズン(2007年以降のドラフトにおいて大学社会人出身者であった場合は7シーズン)に到達することが条件とされ,2度目以降の国内FA権を取得するためには前回の国内FA権行使後145日以上の1軍登録が4シーズンに到達することが条件とされています。阪神では,現在,大山,糸原,坂本,原口がFA権をもっています。全員いなくなると痛いですが,それはファンのわがままで,選手にとっては移籍は大事な権利です。
 ところで,ドラフト指名から,移籍の制限までの,こういう仕組みは,独占禁止法に違反しないのかということは,以前から議論があるようです。実は,公正取引委員会・競争政策研究センターが,2018年に,労働法研究者の間でも有名な「人材と競争政策に関する検討会」の報告書を出したとき,「複数の発注者(使用者)が共同して役務提供者の移籍・転職を制限する内容を取り決めること(それに類する行為も含む。)は,独占禁止法上問題となる場合がある」(17頁)としていました。その後,公正取引委員会は,20196月に,「スポーツ事業分野における移籍制限ルールに関する独占禁止法上の考え方について」を発表しています。そこでは,スポーツ事業分野において移籍制限ルールを設ける目的には,①選手の育成費用の回収可能性を確保することにより,選手育成インセンティブを向上させること,②チームの戦力を均衡させることにより,競技(スポーツリーグ,競技会等)としての魅力を維持・向上させること,というものが挙げられています。そして公正取引委員会は,移籍制限ルールによって達成しようとする①と②の目的が,「競争を促進する観点からみても合理的か,その目的を達成するための手段として相当かという観点から,様々な要素を総合的に考慮し,移籍制限ルールの合理性・必要性が個別に判断されることとなる」と述べています。
 プロ野球の場合,①や②は,選手の移籍制限として,どこまで合理的かについては,かなり疑問があるところだと思います。①は移籍金のようなものでも対応できますし,②は競技としての魅力は,もっと別の方法でも高めることができると思うからです(西武ライオンズは,今シーズンの成績はボロボロでしたが,収益はアップしたそうです。顧客サービスがしっかりしていたのでしょう)。それに戦力の均衡というのなら,JリーグのJ2などのように,球団数を増やして,入れ替え戦をして,強いチームだけ生き残るようにすればよいという考え方もあるでしょう。
 独占禁止法の競争政策という点からどうかということもありますが,労働法の観点からは,彼らが労働者かどうかはさておき,一人の就労者が移籍の自由を制限されていることの違和感は小さくありません。江川卓事件のようにドラフト回避的な行動を,当時は世間も私も冷ややかにみていましたが,今では彼は彼なりに,自分をルールで縛るのなら,そのルールの範囲内でやれるだけの抵抗をして,どうしても入団したい巨人に入るということを貫徹した点で,すごいことをやったなと評価したい気持ちもしています。阪神は,江川にかなりやられましたし,敵としてみると困った投手でした。でも江川は,ストレートとカーブだけで,真正面から向かってきた投手でした。いま振り返ると,その投球は江川の生き方が反映していたのかもしれません。 
 プロ野球ファンとしては,プロ野球選手の「働き方改革」というものも考えていってもらいたいです。フリーランス法が施行されたことで,個人の事業者の働き方に関心が高まってきていると思います。公正取引委員会は多忙だと思いますが,なんとなく年中行事となってしまっているドラフトについて,FA制度のあり方も含めて,もう一度検討の俎上に載せてもよいような気がします。そういえば,公正取引委員会は,9月に,「プロ野球組織は,構成員である球団に対し,選手契約交渉の選手代理人とする者について,弁護士法……の規定による弁護士とした上で,各球団に所属する選手が,既に他の選手の選手代理人となっている者を選任することを認めないようにさせていた」ことについて警告を発したということがHPで掲載されていました(「(令和6919)日本プロフェッショナル野球組織に対する警告について」)。

2024年11月 1日 (金)

ドラフト

 今年もプロ野球選手のドラフト(新人選手選択会議)がありました。指名された選手,指名漏れの選手などの悲喜こもごもの物語が今年もありました。今年は,あの清原和博の長男がドラフトで指名されるかが注目されていました。彼は,中学・高校の6年間野球をやっておらず,大学に入ってから野球を再開したようです(逮捕された父へのわだかまりもあったのでしょう)。ただ4年間の実績でプロになれるほど甘い世界ではないということで,結局,指名はありませんでした。1塁のポジションは,守備に不安があるがパワーがあってホームランを打てる外国人選手や日本人選手のポジションであり,どのチームも1塁を新人から補充しようとは考えていません(もちろん,清原ジュニアを他のポジションで鍛えるということもあるのですが)。
 阪神タイガースは,2位で報徳学園の今朝丸裕喜投手を指名しました。地元で応援している報徳学園の選手が阪神タイガースに入ってくれるのは嬉しいです。今朝丸投手は甲子園ではここ一番というところで必ずしも良い結果を出すことができなかったので,プロでは,そのもっている素材と精神面をしっかり磨いて活躍してほしいです。
 ところで,いまから40年以上前の話ですが,日田林工卒の源五郎丸投手が阪神にドラフト1位で指名されました。私はこの投手のことをよく覚えています。背番号は17で,きれいなフォームで投げる選手でした。専門家の評判も高く,将来豊かな選手でした。ところが,結局,彼は1軍の登板はありませんでした。キャンプでケガをしてしまい,それが治らなかったのです。Wikipedia情報ですが,阪神球団が無理に有料の紅白戦に登板させたことが原因と言われています。今朝丸投手は,変わった苗字で「丸」という字が入っているという点で共通性があるのですが,球団は源五郎丸のときのような失敗をしないよう,大切に育ててほしいものです。藤川監督だから大丈夫だとは思いますが……。

2024年10月27日 (日)

藤川新監督への期待

 あの伝説のストッパー藤川球児が,阪神タイガースの新監督になりました。岡田前監督の野球を継承するには最適の人材といえますが,もちろん藤川監督のカラーを出していくでしょう。投手出身の監督であるから手堅い守りの野球となるかというと,必ずしもそうでないかもしれません。タイガースのスラッガーであった岡田監督は,非常に守備的な野球をしました。振り返ると,岡田野球は,実はあまり面白くない野球でした。これと決めた選手は徹底的に使いますが,新規の登用には慎重で,見切るのも早い気がしました。2軍からは相当タフでなければ這い上がれないという感じで,結局,這い上がったのは前川だけだったと思います。今シーズン,優勝を逃した原因はたくさんあります。成績だけみると,打撃陣では,中野,梅野・坂本の両捕手,木波の不振です。サトテルも期待ほどではありませんでした。とはいえ,大山がかりにFAで流出すると,空いているのは,二遊間と一塁となります(外野は,前川,近本,森下)。ショートは,木浪,小幡以外にも有望若手がいます。そのうちの誰かが二塁に回るかもしれません。一塁には,はずれ続きの外国人選手の獲得が期待されます。投手陣では,MVP投手の村上が勝てず(打線の援護がないアンラッキーなところもありました),伊藤将もダメでした。青柳も戦力とならず,西勇輝も給料分は働いていません。来期は,才木と高橋の両エースは期待できますが,あとはどれだけ今年ダメだった投手が復活するかがポイントです。大竹には多くを期待せず,今年くらい頑張ってくれれば御の字という感じでしょうかね。藤川監督には,新しい投手を発掘してほしいですね。

2024年10月21日 (月)

箱根駅伝予選

 19日に行われた箱根駅伝の予選をテレビで観ました。本戦では,20校(+関東学生連合)が出場でき,そのうち10校は前回の大会の10位以内のシード校です。予選会で上位10校が,本戦出場できるわけですが,これが熾烈な戦いです。各校は12人の選手がハーフマラソンを走り,その成績上位10人の合計タイムで順位が決まります。前回の本戦で優勝候補でしたが,まさかのシード落ちになった中央大学などは,エースを温存しており,やや冷っとしましたが,予選通過です。その他,立教,専修,山梨学院,日体大,中央学院,日大,東京国際,神奈川,順天堂が予選通過です。10位の順天堂と,11位の東京農大は1秒差です。東京農大は,報徳学園出身の学生ナンバーワン(1万メートル 272152)の前田和摩選手が肺気胸で走れなかったのが痛かったですね。惜しかったのは東海大学です。同大の10番目にゴールしそうであったロホマン・シュモン選手が,あと10メートルくらいのところで力尽きて失格で,その次の選手も大幅に遅れていて,シードを逃しました。失格がなければ十分に予選通過できるタイムで来ていたのに,最後の最後でまさかの悲劇が待ち構えていました。
 こういうことが起こったのは,過去最悪に近いと言われるコンディションの悪さです。10月とは思えない高温多湿で,タイムは過去最悪に近いくらいのものだったようです。
 このレースの過酷さは,団体戦であることとも関係しています。チームの戦略として,留学生らエースたちは,個人走でタイムを稼いでもらい,その他の選手は集団走で互いに引っ張りあうというものがあります。ただ集団走は,うまくタイム設定をしなければ沈没してしまうこともありますし,こういう走り方が苦手な選手もいます。また遅れそうになる選手に合わせることもできないので,見捨てていくタイミングの判断も重要でしょう。しかも,途中での総合順位がわからないので,自分がどれくらい頑張ればよいかわからず,オーバーペースになってしまうこともあります。東海大で失格になってしまったシュモン選手も,そういう事情があったような気がします。通常の駅伝であれば,自分のいまの順位がわかりますし,前後の人との差もわかるのですが,そういうことがわからない目に見えないタイム差を意識ながら走るというのは苦痛でしょう。
 箱根駅伝は,本戦の戦いにもたくさんのドラマがありますが,10区でシード校にすべりこむための10位争いも,実は予選会の過酷さがわかると,大きな見どころになります。

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