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2025年10月の記事

2025年10月31日 (金)

欧州に行きたい

 同じようなことばかり書いているかもしれませんが,欧日の物価比較についての話です。ヨーロッパから帰ってくると,つい日本の商品をユーロで換算して考えてしまいます。ヨーロッパにいたときは,むこうの商品はずいぶん高いなと思っていましたが,帰ってくると,日本のものはなんて安いんだろうと改めて感じます。たとえば,1ユーロ=180円で計算すると,イタリアでパニーノとビールをちょっと注文しただけで,スタンディング(立ち食い)で最低8ユーロほどはかかりました。つまり1440円です。日本で昨日,大学の生協で食べたラーメンは500円でした。生協のラーメンにしてはやや高いなと思いましたが,ユーロ換算すれば3ユーロもしません。チップ程度の値段です。普通のラーメン店では1000円超えは当たり前のようですが,それでも6ユーロです。イタリア感覚では6ユーロで食事できるなんて天国のようだということになるでしょう。こういう感覚で,日本の商品を評価してはいけません(当たり前ですが)。6ユーロだから安いなと思っていると家計を悪化させます。日本で生活している以上,1000円は1000円で,6ユーロではないのです。
 この物価差を思うと,日本の若者が気軽にヨーロッパを旅行するのはかなり難しいだろうなと感じます。実際,今回イタリアで見かけた日本人は,時期的なこともあるかもしれませんが,年配の方か新婚旅行らしきひとカップルのツアーがほとんどで,若者はほとんど見かけませんでした。リラの時代や1ユーロが100円や高くても120円前後だったころの記憶をもつ世代としては,どこか寂しい気持ちになります。
 それでも不思議なもので,日本に戻ってしばらく経つと,また行きたいな,という気持ちが湧いてきます。どうやら私にとってヨーロッパ滞在は,リフレッシュのために必要なものであるということを,今回,久しぶりに行って再確認できました。
 これからは,しっかり貯金をして,うまくマイルも貯めながら,次の機会を探したいと思います。ただ,もう以前のようにビジネスクラスで行くのは難しいでしょうね。エコノミーなんてあり得ないというような傲慢なことを考えていた過去の自分を反省です。

2025年10月30日 (木)

クマと人間

 前にもクマと人間のことを書きましたが,再び書きます。
 クマと人間は,どちらも雑食性の動物です。この点で両者は,古くから食べ物をめぐって競合する存在だったといえます。ただし,人間が農耕を始める以前は,人間は平地や河川沿いに,クマは山や森林に暮らしており,生活の場が自然に分かれていました。そのため,互いの生存を脅かさない,ちょうどよい距離が保たれていたのだと思います。しかし,人間が農耕地を広げるようになると,クマとの衝突は避けられなくなりました。
 イギリスでは,すでに1000年以上前(紀元89世紀ごろ)にクマが絶滅したといわれています。当時のヨーロッパヒグマは,森林伐採や毛皮交易のための狩猟の影響で姿を消しました。人間が,森を切り開き,農地を拡大するなかで,クマの生息域を完全に奪ってしまったのです。「イギリス人ならやりそうだ」と思えてしまうのは,この国の歴史上,人間に対しても,海外で同じようなことをやってきたことを知っているからです。
 一方,日本は異なる道をたどってきました。国土の約7割が森林であり,この豊かな森林が,クマと人間の共存の余地を与えてきました。人間が山に踏み込みすぎなければ,クマとの遭遇はまれであり,必要最小限の狩猟を除けば,長く調和のとれた関係が続いてきたのではないかと思います。その象徴が,アイヌ民族の熊信仰です。アイヌの人々はクマを「山の神」と呼び,神の化身として敬ってきました。クマを捕らえて殺すことすら,神をこの世に迎え,その魂を神の世界へ送り返す神聖な儀礼(イヨマンテ)として行われました。クマは人間と敵対する存在ではなく,山の恵みそのものであり,生と死の循環のなかで尊ばれてきたのです。
 イギリスには「パディントン」のような愛らしく,賢いクマの物語があります。しかし,現在のイギリスには野生のクマはいません。クマを失った社会では,クマは恐怖の対象ではなく,かわいらしいキャラクターとして受け入れられるということでしょうか。それは,クマを絶滅させてしまった文化が抱える無意識の罪悪感を,物語の中で癒やしているようにも見えるというのは,意地悪な見方でしょうかね。
 いま,日本では連日のようにクマの出没や被害が報じられています。主な原因は,ドングリの実などの凶作, 高齢化による里山の荒廃とされています。本州や四国に生息するツキノワグマは,北海道に生息するヒグマより体格こそ小さいものの,人を傷つける力は十分にあり,いまでは住宅地への出没も珍しくなくなっています。北海道のヒグマも含め,日本全体のクマの生息域は,確実に人間の生活圏と重なりつつあるといえます。一方で,狩猟者の減少(高齢化も進んでいる)によって対策の現場は限界に近づいています。住宅密集地では発砲の危険もあり,クマの駆除は容易ではありません。
  もはや
「駆除すれば解決」という時代ではありません。クマの出没は,単なる被害や恐怖の問題としてではなく,人間と自然との関係を映す鏡として考えるべきだと思います。都市計画や森林管理を進めるうえで,クマという存在は,人間社会がどこまで自然との共生を本気で考えているかを試す試金石になるからです。
 ヨーロッパではクマとの共存が生物多様性政策の柱とされていますし,日本でも環境省がクマとの共生に関する施策を進めてきました。私たちが問われているのは,クマをどう駆除するかではなく,どのように「距離を保ちながら」共に生きていくかにあります。

2025年10月29日 (水)

Trump現象のほんとうの恐ろしさ

 日本経済新聞の記事「高市首相,トランプ氏に防衛費増を伝達 80兆円投資『着実に履行』」によると,高市首相はTrump(トランプ)大統領に対して,「タイとカンボジアの紛争終結や中東での停戦合意への米国の貢献を『短期間に世界はより平和になった』とたたえた。米高官によると,トランプ氏をノーベル平和賞に推薦する考えも伝えた」とのことでした。
 私が世界の情勢を正確に把握していないだけで,もしかするとトランプ氏は本当に平和に貢献しているのかもしれません。しかし,一番大きな問題であるロシア(Russia)のウクライナ(Ukrine)侵攻を止めることもできず,中東においてもイスラエル(Israel)への対応は依然として弱腰です。これでノーベル平和賞とは,さすがに違和感を覚えざるをえません。高市首相は「ご機嫌取り」に徹しているのでしょうが,これでは,過去に平和賞を受け取った人々に対して申し訳ない気さえします。
 それにしても,一方的に関税を引き上げ,日本経済を苦しめている人物を,ここまで歓待するとはどういうことでしょうか。私には理解できません。
 思えば,トランプ氏の最大の「功績」とは,民主主義という制度が,こうした「とんでもない指導者」をも生み出しうるという現実を世界に示したことかもしれません。こうしたことは歴史上,決して初めてのことではありませんが,それがアメリカという民主主義の象徴の国で起きたという点に深い意味があるように思います。
 ハンナ・アーレント(Hannah Arendt)は『全体主義の起源』(The Origins of Totalitarianism)のなかで,全体主義を生み出したのは「mob(群衆)」と呼ばれる人々だと指摘しています。彼女は,このことを,フランス語のdéclassé,つまり「階級から外れてしまった人々」という言葉を使って説明しています。20世紀初頭,資本家や労働者という新たな階級が形成される一方で,どの階級にも属さない人々が政治的に取り残され,その結果として全体主義の支持基盤となった,というのが彼女の分析でした。
 どんな階級であれ,そこに属していれば,政治過程の中で誰かが代表してくれます。しかし,どこにも属さない人々は,誰からも代表されないまま,アウトロー的なカリスマに惹かれていく。アメリカにおけるラストベルト(Rust Belt)の白人層は,まさにそうした現代の“mob”だったのかもしれません。誰も自分たちのことを考えてくれないという孤立感が,トランプへの支持につながったという現実があります。そうだとすると,これから先はいったいどうなるのでしょうか。歴史の教訓というものを活かせなければ,とても恐ろしいことになりそうです。
 SDGsにおける「No one will be left behind」(誰一人取り残さない)は,国際的な文脈だけでなく,いろんな場面で何度もリマインド(remind)したほうがよいスローガンです。

2025年10月28日 (火)

伊藤叡王が二冠に

 藤井聡太王座(竜王・名人,七冠)に伊藤匠叡王が挑戦するというタイトルホルダー同士の王座戦5番勝負の激突は,2勝2敗でフルセットとなりましたが,伊藤叡王が勝ってタイトルを奪取しました。途中で駒の取り合いとなったあとの変化が,伊藤叡王に有利となり,良いタイミングで敵陣に飛車を打つことができて,玉頭への攻撃で優勢となり,着実に逃げ切りました。後半も乱れない安定ぶりが伊藤叡王の強さですね。
 これで伊藤叡王はニ冠となり,藤井竜王・名人は六冠に後退しました。タイトル数ではまだ大きな差がありますが,二冠というのは,歴代でも数少ないことであり,伊藤二冠は棋士に名を残す棋士となりました。現役で二冠以上とったことがあるのは,藤井六冠,伊藤二冠以外は,羽生善治九段,谷川浩司17世名人,森内俊之九段,佐藤康光九段,高橋道雄九段,南芳一九段,久保利明九段,渡辺明九段,豊島将之九段,永瀬拓矢九段だけです。次は三冠をめざすことになるでしょう。棋王戦はベスト4に残っていて挑戦者になる可能性は高いです。王将戦は挑戦者決定リーグに入っていますが,2敗で苦しいスタートで,こちらは,挑戦は難しそうです。三冠となると,これは藤井,羽生,谷川,森内,渡辺,豊島に絞られ,歴代でも,大山康晴一五世名人,中原誠一六世名人,升田幸三実力制第四代名人,米長邦雄永世棋聖しかいません。伊藤叡王は,それを目標に挑戦することになります。
 伊藤叡王が勝ち残っている棋王戦は,ベスト4以降は,2敗で敗退という独特のルールです。伊藤叡王と対戦するのは,斎藤明日斗六段,そして,糸谷哲郎八段と増田康宏八段の対戦となります。
 順位戦は,A級は4回戦まで進んで,永瀬九段が4連勝,3勝1敗が豊島九段,近藤誠也八段,糸谷九段です。他方,佐藤天彦九段は4連敗で,苦しい状況です(降級は渡辺九段が確定なので残り一人)。B級1組は,7回戦まで進み,伊藤二冠が6勝1敗でトップ,5勝1敗で大橋貴洸七段,広瀬章人九段が追いかけています(昇級は2名)。ここでも伊藤二冠は好調です。
 女流棋戦は,プロ編入試験の資格を得て勢いがあった福間香奈女流六冠でしたが,西山朋佳白玲に21敗から3連敗で逆転防衛を許しました。この二人は,今度は立場を逆にして,女流王座戦も始まっていて,こちらは福間女流王座が,挑戦者の西山女流二冠に先勝しました。

2025年10月27日 (月)

地熱発電

 再生エネルギー嫌いと言われていたトランプ(Trump)大統領が,地熱発電に熱心であるという日経新聞の記事(高橋徹「トランプ氏が推す次世代地熱発電,日本に『国産化』の強み」)を見て,やや驚きました。その記事にあるように,トランプは,「地球温暖化なんて噓。愚かな連中による史上最大の詐欺だ」と公言し,「化石燃料を掘りまくれとたきつける」人です。
 なぜ地熱発電なのでしょうか。地熱発電は,地中深くにある高温の蒸気や熱水を取り出してタービンを回し,電気をつくるという仕組みです。地球の内部では放射性元素の崩壊によって絶えず熱が生まれており,この熱エネルギーを利用するわけです。これは地球の資源を枯渇させないという点で,再生可能エネルギーの一つではありますが,太陽光発電,風力発電,水力発電,バイオマス発電といった,太陽由来のものとは性質がまったく異なります。いわば「太陽の力」ではなく,「地球の力」を使うエネルギーなのです。従来,地熱発電があまり広がらなかったのは,コストとリスクの問題が大きかったからです。地中数千メートルを掘り進めるには膨大な費用がかかり,また熱源が安定して得られる場所は限られています。さらに日本などでは国立公園との位置関係から環境規制が厳しく,開発が容易ではありませんでした。
 ところが近年になって,コストの観点からは,掘削技術が飛躍的に進化していることが大きいようです。シェールオイルやシェールガスの採掘で培われたアメリカ企業の技術が,そのまま地熱開発にも応用できるようになってきたのです。つまり「掘ることが得意な国」であるアメリカにとって,地熱発電は自国の強みをそのまま生かせる分野だというわけです。
 この「アメリカらしさ」がトランプ氏の琴線に触れたようです。もちろん,AIの発達などにより今後ますます増大する電力需要に対応するためには,環境との折り合いをつけるという至上命題の下で,再生エネルギーに期待せざるをえません。そうした中で,これまで難しいとされてきた地熱発電が有力な選択肢として浮上してきたのだとすれば,注目すべきところです。
 記事のなかでは,「風力や太陽光と違い,サプライチェーンをほぼ国内で賄えるのは,円安進行によるコスト上昇を避け,経済安全保障を担保する観点からも見逃せない利点だ」とされています。エネルギーは,できるだけ国産化で対応してもらったほうが安心ではありますが,どこまで地熱発電に期待ができるでしょうか。

2025年10月26日 (日)

日本シリーズ始まる

 1025日に日本シリーズが始まりました。阪神タイガース対福岡ソフトバンクホークスの対戦です。初戦は,21のロースコアで,阪神が競り勝ちました。阪神はたった一度のチャンスをものにして,森下のショートゴロ,サトテルのタイムリーで逆転勝ちし,それを先発の村上が粘り強く初回の1点だけでなんとか7回まで守り抜き,及川,石井という絶対的な中継ぎ,抑えで逃げ切りました。阪神得意の試合展開に持ち込めました。
 一方,第2戦は,先発が才木かと思っていたら,後半戦ずっと離脱していたデュプランティエ(Duplantier)の先発でした。しかし乱調で2回で6点とられて試合が終わってしまいました。どういう理由での起用であったかわかりませんが,先発5人は,村上,才木,高橋,伊藤将,デュプランティエでいくということで,甲子園の初戦に才木をまわすため,今日はダメもとでデュプランティエでいったのでしょうか。でも悪すぎましたね。これで11敗です。甲子園で巻き返しです。今日は大差なので,いろんな選手を使えたのもよかったと前向きに考えましょう。ただ,大山の調子が悪すぎるのが心配です。小久保監督は,大山には眠ってもらっておこうということで,9回に大差であったにもかかわらず,大山のところで左投手から右投手に変えましたね。智将どうしの戦いは,これからです。

 

 

2025年10月25日 (土)

「政策の窓」はいつ開く?

  労働時間規制の改革がなぜ進まないのでしょうか。政策に関する意思決定理論からみると,ある意味で偶然に任せるしかないという考え方もあります。組織の意思決定におけるゴミ箱(Gabarage Can)モデルは,大学などの組織での意思決定は合理的になされるものではなく,ゴミ箱にいろいろなもの(問題や解決アイデアや参加者やタイミング)が混ざり合っていて,それが偶然に結びついたときに意思決定につながるというものです。合理的な意思決定モデルに対するアンチテーゼです。これを政策決定の理論として確立したのが,John Kingdonの「政策の窓」の議論です(『アジェンダ・選択肢・公共政策: 政策はどのように決まるのか』)。政策は,問題の流れ,政策の流れ,政治の流れが,あるタイミングで合流し,問題が解決策と結びつき,それが望ましい政治情勢と結びついたときに,「政策の窓」が開いて,政策決定がなされるということです。「窓」とは,絶好の機会を意味する「a window of opportunities」という言葉から来ています。
 彼の著書の原文(Agendas, alternatives, and public policies)を引用すると,次のようになります。「The separate streams of problems, policies, and politics come together at certain critical times. Solutions become joined to problems, and both of them are joined to favorable political forces. This coupling is most likely when policy windows-opportunities for pushing pet proposals or conceptions of problems-are open.」(下線は私がつけたもの。ChatGPTの和訳によると,次のようになります「問題,政策,政治というそれぞれ独立した流れは,ある重要な時期に一つに結びつく。 解決策は問題と結びつき,さらにそれらは好意的な政治的力と結びつく。 このような結びつきが最も起こりやすいのは,「政策の窓」——つまり,特定の提案や問題の捉え方を推し進める好機——が開いているときである。」)
 研究者は,信念をもって,いつか開く窓に備えて,政策(解決アイデア)の準備をし,政治の流れにうまく乗れるタイミングを待つべきだということでしょう。

2025年10月24日 (金)

「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」

 「世界の真ん中で咲き誇る」というのは,安倍首相がよく用いていたキャッチフレーズだそうですが,高市首相も外交・安保政策において,これを引き継いでいるようです。しかし,この言葉に少し違和感があります。その意味をしっかり理解しているわけではありませんが,もし「咲き誇ること」自体が目的であるならば,どことなく権力志向が強すぎるような感じがします。
 国民が求めている真の強さとは,日本の国力に見合った強さであり,必ずしも咲き誇ることではありません。派手に目立つ外交ではなく,地道であっても確実に国民に成果をもたらす外交こそ必要です。話が飛躍するかもしれませんが,戦前,松岡洋右外相が,満州事変後の世界からの日本への批判に反発し,国際連盟を脱退するという派手なパフォーマンスを演じて,国内の一部では快哉の声もあったものの,世界から孤立し,第二次世界大戦への悲劇につながりました。「咲き誇る」というと,中身よりも,外観という感じがして,そういうものは追求してほしくないのです。
 外交とは,本来,成果を誇示するものではなく,国家として着実に利益を積み重ねていく営みです。真の強さとは,力を見せつけなくても,したたかに生き残ることのできる強さのことではないでしょうか。もちろん「世界の真ん中で咲き誇る」とは,強いアメリカの傘の下で咲き誇るということであれば,それはそれでしたたかな戦略かもしれないのですが……

2025年10月23日 (木)

第1次安倍政権の蹉跌の再来?

 高市政権が労働時間規制の緩和を打ち出したことについて,昨日,政治学者の中北浩爾氏が,安倍第一次政権のホワイトカラー・エグゼンプションの失敗の二の舞いになるおそれがあるといった趣旨の投稿を日経のNoteにされていました。今回の緩和策の具体的な中身がまだ見えていないので何とも言えませんが,2007年当時の安倍政権時代のホワイトカラー・エグゼンプションについては,当時すでに「自己管理型労働制」として法案要綱まで作成されており,もしその後の政府側の対応ミスがなければ,もう少し違った展開になっていた可能性があります。「残業代ゼロ法案」というネーミングが世論に強い反発を呼びましたが,それに対して「そういう制度ではない」ときちんと説明できなかった点も,政府側の守りの甘さだったと思います。その後,働き方改革で,高度プロフェッショナル制度が導入され,安倍氏としてはリベンジを果たしたつもりかもしれませんが,この制度は使い勝手が悪すぎて,リベンジにはなっていないものでした。
 昨年の自民党総裁選でも,解雇規制改革が議論に上りましたが,中身が曖昧なまま改革を掲げ,批判に対して十分な説明ができないということが繰り返されました。おそらく,今回はそのようなことはないと期待したいです。
 労働政策にはさまざまな課題があります。たしかに解雇規制の問題も重要でありますが,労働時間規制は日常の経営の現場において,企業にも労働者にも最も関心のあるテーマの一つです。いつも述べていることですが,労働時間規制の政策目的は健康の確保にあります。そうであれば,その目的をどのような施策を講じれば最も効率的に実現できるか。既存の制度の枠組みにとらわれず,自由な視点で,かつ,スピード感をもって検討することそ,いま労働政策において求められていることです。

2025年10月22日 (水)

上野厚生労働大臣の就任挨拶

 新しい厚生労働大臣が,どこまで労働政策に精通しているかはわかりませんが,高市首相の強力なリーダーシップの下で,「働き方改革」が次の段階に進む可能性があります。
 厚生労働省のHPに掲載された同大臣の就任挨拶によると,総理から次のような指示があったとされています。
 ① 次なる感染症危機への対応に万全を期すこと。
 ② 全世代型社会保障を構築するとともに,データに基づく医療行政のメリハリ強化を進め,攻めの予防医療を通じて社会保障の担い手の拡大を図り,格差の是正とセーフティネットの構築を目指すこと。
 ③ 人口減少・少子化を乗り切るため,給付と負担の在り方に関する国民的議論を踏まえ,税と社会保障の一体改革,とくに給付付き税額控除の制度設計に着手すること。
 ④ 付加価値を高める労働への転換を図り,リスキリングやデジタル技術の活用を後押しして「稼げる日本」への変革を進めること。あわせて,兼業・副業の促進,最低賃金の引上げの加速,さらに心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和の検討を行うこと。
 ⑤ 働き方改革を推進するとともに,多様な働き方を踏まえたルール整備を図ること。
 ⑥ 保険証の廃止をめぐる不安に丁寧に対応し,マイナ保険証の利用促進と円滑な移行に取り組むこと。
 この中で注目すべきは,③に掲げられた「給付付き税額控除の制度設計」です。もちろん,これが,従来の社会保障制度の単なる上乗せ措置に終わってはなりません。働き方が雇用から自営へとシフトするなかで,社会保障システムそのものを再構築するという問題意識で取り組んでもらいたいです。ビスマルク型の社会保険から脱却し,累進課税の強化と低所得層への給付を組み合わせた税制中心のセーフティネットへ転換する試みを期待したいところです。最低賃金,生活保護,失業給付,さらには公的年金に至るまで,いずれも「誰から徴収し,誰に再分配するか」という観点から,制度を根本的に見直す必要があるのです。社会保険の枠組みに縛られていては,もはや時代の変化に対応できません。
 労働政策の部分はおおむね従来の方針を踏襲していますが,④の末尾に含まれた「心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和の検討」は注目です。これが官邸主導で意図的に盛り込まれたものであれば,今後の政策展開に大きな影響を与える可能性があります。経済界は労働時間規制の見直しに強い関心を持っています。私は,労働時間規制を見直して,デジタル技術を活用した健康自己管理の支援へと政策の軸を移すべきだと考えています。新政権の方向性が私の提言と一致しているかはまだ不明ですが,適用除外やみなし,特例などが乱立し,結果として制度が複雑化している現行の労働時間規制は,いったい誰のためのものなのかが見えにくくなっています。いったんゼロベースでどのようにしたら国民が健康的に働けるかという観点から,制度全体を見直すことが必要でしょう。そのためには,官邸の強い政治的リーダーシップが不可欠だと思います。

2025年10月21日 (火)

高市政権誕生

 自民党の高市早苗総裁が首相に選出されました。ついに日本にも女性の首相が誕生したことになります。もっとも,今回の選出は,女性が勝ったというよりも,保守思想を前面に掲げ,安倍政権の正統な後継者という立場を明確にしたうえで,自力で首相の座を勝ち取ったという印象があります。そこには,党内の長老をうまく取り込みつつも,潮目を見極めて勝負に出た彼女の政治的感覚の鋭さがあったのでしょう。
 一方で,日本維新の会との連立が今後どのように作用するかは未知数です。維新側にとっては,参議院選挙では伸び悩んだものの,衆議院で一定の議席を持っていたことから,今回の連立に踏み切れたといえます。しかし,勢いとしてはすでに下り坂であり,大阪・関西万博が一定の成果を上げたとはいえ,維新の支持が今後劇的に回復するとは考えにくい状況です。兵庫県でも維新への評価は高くなく,「大阪の地域政党」という印象は依然として残っています。それでも,高市さんにとっては,首相の座を手にするためには,落ち目とはいえ維新との連携が欠かせなかったということです。
 日本維新の会の政策のなかで,とくに注目しているのは社会保障改革です。党のサイトをみると,その主たるテーマは「社会保険料を下げる」ことにあります。とくに現役世代の手取りを増やし,経済を活性化させようという姿勢が鮮明です。具体的には,次の4つの柱が掲げられています。 ⑴ 薬局で買えるお薬への保険適用を見直す。 ⑵ 窓口負担のあり方を公平に改革する(富裕な高齢者の窓口負担は引き上げる)。 ⑶ 医療のデジタルトランスフォーメーション(医療DX)を推進する。 ⑷ 病床数の適正化を図る。
 これらの政策は非常に合理的で,方向性としてもよいと思います。医療の効率化は,高齢化が進むなかで現在の医療提供体制を維持するためにどうしても必要ですし,高齢者であっても富裕層の医療負担はある程度高くてもよいと考えます。今回の連立政権合意文書のなかにもこの改革方針が含まれていますが,自民党は本当にそれを受け入れるでしょうか。議員定数の削減や企業献金の禁止も大切なテーマではありますが,それ以上に,国民の生存に直結する社会保障という大きな課題に,維新がどこまで切り込めるのかに注目していきたいと思います。

2025年10月20日 (月)

水町勇一郎『詳解労働法(第4版)』

 水町勇一郎さんから『詳解労働法(第4版)』(東京大学出版会)をいただきました。いつもありがとうございます。「はしがき」を読むだけでも,この2年弱のあいだに労働法の世界でどんな動きがあったのかがよくわかり,大変参考になります。膨大な新しい情報を丁寧にフォローし続けている姿勢には,本当に頭が下がります。
 とくに実務家の方にとっては,今回の改訂もまた貴重な座右の書になることでしょう。

2025年10月19日 (日)

クライマックスシリーズ突破

 今年のクライマックスシリーズは,阪神タイガースは,優勝決定から1ヶ月間以上,真剣勝負をしていないというブランクを感じさせず,みごとにDeNA3連勝をし,日本シリーズ進出を決めました。村上と才来の両エースを立てた初戦と第2戦は,早めの投手交代で継投に入りました。とくに第2戦は苦戦しましたが,最後は延長10回に森下の一発でサヨナラ勝ちでした。森下は大舞台に強いですね。
 第3戦は,髙橋遥人を先発に立てました。後半からの登場とはいえ,左投手としては最も信頼できる投手でした。期待どおりの好投で,サトテルの初回の一発もあり快勝しました。
 さてパ・リーグのほうは,日本ハムがソフトバンク相手に頑張っていて,最終戦にもつれ込みました。日本シリーズでは,新庄監督の日本ハムとの対戦を観てみたい気もしますが,やはりペナントレースで優勝したチームどうしで最強チームを決めるということのほうがいいですね。

竜王戦第2局

 藤井聡太竜王・名人(七冠)に佐々木勇気八段が挑戦している竜王戦第2局は,藤井竜王の2連勝となりました。早い終局でした。佐々木八段は果敢に攻めましたが,藤井竜王に見切られていたようです。ますますパワーアップしている感じ
です。 藤井聡太七冠の名人位をめざしたA級順位戦の戦いは,今期は糸谷哲郎八段が好調です。まだ先が長いですが,いまや対藤井七冠とのタイトル戦の常連となっている永瀬拓矢を打ち破って,豊島将之九段とともに,関西勢が名人位への挑戦争いに参戦してもらえることを楽しみにしています。降級争いは,いまのところはよくわかりません。復帰組の糸谷八段と初A級の近藤誠也八段はともに好調で,今期はA2期目に入った千田翔太八段と中村太地八段が生き残れるかが焦点となっています。渡辺明九段の休場で降級確定なので,あと一人の争いとなります。
 B1組は,伊藤匠叡王,広瀬章人九段,大橋七段が51敗で並び,それを服部慎一郎七段らが追いかける展開です。伊藤叡王と服部七段が有力です。A級復帰を目指す菅井竜也八段や稲葉陽八段は厳しい状況ですね。降級は,石井健太郎七段が6連敗でほぼ確定的でしょう。高見泰地七段と佐藤康光九段は成績が伸びておらず厳しい展開です。

2025年10月17日 (金)

ミラノ五輪

次の冬のオリンピックは,ミラノ・コルティナ(Milano-Cortina)五輪ですが,コルティナ,正確にはコルティナ・ダンペッツォ(Cortina d’Ampezzo)は,ミラノから遥かに離れたところにあります。ミラノは五輪のインフラの提供をし,競技はコルティナで行われるということのようです。コルティナは小さな村で多くの人を受け入れるキャパはとてもありません。選手の移動などは大変ではないでしょうか。ミラノは五輪で経済的には潤うのでしょうが,ミラノ五輪という名称はやや誤解を招きそうです。ミラノは北の方だから雪が降るのではないかと誤解する人も多いと思いますが,昔と違い,いまはミラノに雪が降るということはほとんどありません。

2025年10月16日 (木)

イタリア2位以上確定

 イタリアでも,地方に行けば別なのかもしれませんが,都市部ではキャッシュレスの進歩はすさまじく,現金を持ち歩く必要は基本的にはありません。チップにつかうくらいです。逆にスマホは必須であり,この点は7年前よりもかなり進んでいるように思えます。スリに気をつけなければならない旅行者にとっては,現金不要は助かります。スリのほうの狙いも,スマホに変わっているそうです。日本人の好きなiPhoneは狙われやすいということで,気をつけていました。印象としては,治安はかなりよくなっている気がします。たまたまかもしれませんが。
 サッカーのワールドカップの欧州予選は,イスラエル(Israel)は結局,追放されず,14日にイタリア・イスラエル戦が行われました。ホームのイタリアが30で快勝しました。会場があったウディネ(Udine)では,街で抗議デモがあったりして,厳戒態勢で試合が実施されたようです。選手は試合に集中しにくいなかでも,結果を出しました。イタリアは,これで2位以上は確定で,プレーオフ進出は決まりました。かりにノルウェー(Norway)に勝っても得失点差でとても追いつけないので,1位通過は無理でしょう。

2025年10月15日 (水)

イタリアの最新鉄道情報

 イタリアの鉄道の切符には,これまで旅行者泣かせのルールがありました。 紙の切符を買った場合,必ず駅の刻印機でconvalidare(コンヴァリダーレ)刻印(打刻)をしなければなりません(俗には,timbrare :ティンブラーレとも言います)。もしこれを忘れて乗車すると,たとえきちんと切符を買っていても無賃乗車扱いになってしまうという恐ろしい仕組みです。
 これは,まるでネズミ取りのような制度でした。運が良ければ検札に来る係員に見つからずに済みますが,もし見つかれば言い訳は一切通用しません。罰金はかなり高額で,支払いを拒めば警察沙汰になることもあると聞きます。イタリアを旅したことがある方なら,この「刻印し忘れ」のストレスを一度は味わったことがあるのではないでしょうか。 ところが,最近ではスマートフォンやクレジットカードのタッチ決済で乗れるようになり,こうした「刻印」の概念が不要になりつつあります。ただし,今でも紙の切符を購入した場合には,チケットに“Convalidare sul retro”と書かれているので,うっかり忘れてしまうことがあります。電車に遅れそうになって,できないこともあります。
 ミラノ中央駅からミラノ・マルペンサ空港に向かうマルペンサ・エクスプレに乗ったとき,ネット上では「空港から市内へ行く場合は刻印不要」との情報がありましたが,逆の「市内から空港へ戻る場合」については確証がなかったので,念のため途中のBovisa(ボヴィーザ)駅でいったん降り,刻印機を探すことにしました。ところが,駅には刻印機が見当たりません。駅員に聞いてみたところ,「Non è neccesario.」(必要ありません)とにこっと笑って答えられ,「Arrivederci」(さようなら)で終わりでした。どうやら本当に刻印は不要のようです。 わざわざ降りて確認しなくてもよかったのですが,それでも不安が解消されて一安心。 と思っていたら,列車の中で本当に検札がやってきました。ドキドキしながら紙のチケットを差し出すと,係員がにっこりして「Perfetto!」(問題なし)と言ってくれました。
 もしかするとマルペンサ・エクスプレスだけの特例かもしれませんが,少なくとも今のミラノでは,紙の切符でも刻印なしで乗れるようになっているようです。ご参考までに。
 なお,ほんとうはクレジットカードのタッチで乗ることができて,行くときはそうしていたのですが,試しに紙で発券して乗ってみようと思ったので,今回の出来事を経験できました。少なくともミラノでは,市内のトラム,バス,地下鉄すべてクレジットカードのタッチで乗れます。90分で2.2ユーロということになっているのか心配ですが,90分以内に乗りかえてタッチしていることもあるので,きちんと90分以内であれば2.2ユーロ以内におさまるように調整されているかどうか,まだクレジットカード会社の請求がアプリ上もなされていないので,少し不安ではあります。

2025年10月14日 (火)

円安日本

 欧州に来てみると,日本の円の弱さをあらためて痛感します。2018年にイタリアに来たおきもたしか1ユーロ130円くらいで,それでも円安だなと思った記憶があります。今はなんと180円前後。空港で両替したときには,手数料込みで185円というレートでした。物価も上がり,円も弱くなって,ヨーロッパ旅行というのは本当に贅沢な体験になってしまいました。かつては私たちが東南アジアに行って,物価が安いと感じ,自国の経済的な優位をどこかで意識していた時代もありました。けれども今は,その逆で,円の弱さを実感し,なんとなく寂しい気持ちになります。もちろん,輸出企業にとっては円安は有り難いことでしょう。しかし,ここまでの円安はさすがに限度を超えているように思えます。
 一方で,日本への旅行者が増えているのも,いまの円安を考えればよくわかります。おそらく彼らの感覚では,「どうしてこんなに物価が安いんだろう」「日本の労働者の賃金はどうなっているんだろう」といった疑問を抱くのではないでしょうか。かつては,日本に来た外国人は,その物価高に嘆いていました。その時代のことを知っているので,手ごろに旅できる国になってしまったという現実に,少し複雑な気持ちになりますね。

2025年10月13日 (月)

「煙」のミラノ

 ミラノ(Milano)の話の続きですが,日本から来るたびにいつも感じるのは受動喫煙の被害です。タバコの煙をずっと浴びながら歩いているような感じで,これは本当にたまりません。風邪をひいているわけではないのに,喉が苦しくなり,喘息のような症状になりかけてしまいます。神戸も特に空気がきれいというわけではありませんが,ミラノの空気の悪さは桁違いです。レストランなど屋内では喫煙が禁止されていますが,その代わり路上では自由に吸えるため,通りでは,屋内では吸えない喫煙者が一斉にタバコを吸っているという感じです。その結果,通行人は煙の中を歩く羽目になり,特に私のようにタバコの煙に敏感な人間にとってはなかなかつらい環境です。
 もっとも,イタリア人も観光客も特に困っている様子はないので,こちらが少し敏感すぎるのかもしれませんが,それでも実際に呼吸器に支障が出てくるので,意識せざるを得ないのです。
 ミラノは昔から大気汚染が深刻だと言われてきました。その主な原因は自動車の交通量の多さであり,さらに地形構造上,汚染物質が溜まりやすいことも知られています。ミラノはポー平原(Pianura Padana)の中に位置し,北をアルプス(Alpi),南をアペニン(Appennini)山脈に囲まれた盆地のような地形のため,風が弱く,空気が滞留しやすいのだそうです。
 実際,ミラノの大気汚染は冬の時期に特に深刻化する問題とされています。寒い季節には気温の逆転層が発生して,スモッグなどが地表に溜まりやすくなるそうです。これこそが,かつてから文学や映画で語られてきた「霧のミラノ(la nebbia di Milano)」の正体です。 今の季節の程度の汚染であれば,地元のミラネーゼ(Milanese)にとっては,たいしたことはないと感じているのかもしれません。とはいえ,日本から来る身には,この空気の悪さはなかなか堪えるもので,困ったものです。「霧」はいいですが,「煙」は簡便してもらいたいですね。

2025年10月12日 (日)

地下鉄の増設

 今回ミラノ(Milano)に来ていちばん驚いたのは,地下鉄の路線が一つ増えていたことです(M4)。 これはLinate(リナーテ)空港にまでつながる初の路線です。ミラノには Malpensa(マルペンサ)空港 と Linate空港 の二つがあります。国際線で日本から来る場合には,通常は Malpensa空港を利用します。かつては Linate空港からも国際線が出ていましたが,今は国際線はMalpensa空港に集中させているようです。Malpensa Express(マルペンサ・エクスプレス)ができるまでは,Malpensa空港にいくのは,タクシーかバスしかありませんでした。かつてはCadorna(カドルナ)までしか来ていませんでしたが,いまではミラノの玄関である中央駅,Stazione Centrale(スタツィオーネ・チェントラーレ)までつながっています。とても便利にはなりましたが,時間的にはやはり50分から1時間程度はかかります。Linate空港まではDuomo(ドゥオーモ)近くのSan Babila(サンバービラ)から15分程度で行けるのではないでしょうか。
 かつてはLinate空港へ行く公共交通手段は,73番のバスしかありませんでした。私が以前ミラノに住んでいたころは,自宅から空港に行くたびに,いったん Duomoまで出て,そこからSan Babila発の73番のバスに乗り換えるという面倒な経路をたどっていました。当時の最寄り駅は 緑色のM2線のSantAgostino(サンタゴスティーノ) でした。その一つ手前に SantAmbrogio(サンタンブロージョ) という駅があり,いまではそこからM4の地下鉄に乗り換えることができます。ちょっと早くなっただけともいえそうですが,個人的には地下鉄一本で空港まで行けるようになったという変化が,便利になったミラノを実感させるものでした。

2025年10月11日 (土)

Bocconiでのセミナー

  今回のイタリア旅行のメインは,Bocconi大学で開催された高齢者と介護に関するセミナーに参加することでした(セミナーは2部構成で,私は高齢者編のほうでプレゼンをしました)。Bocconi大学の教授である Maurizio Del Conte が久しぶりに招待してくれたので,最近は引きこもりでしたが,思い切って行ってみることにしました。Bocconiが出してくれる旅費はエコノミー席分だけということで,プレミアムエコノミーとの差額は自分で負担しました(痛い出費です)。「なんでお金を払って仕事をしなければならないのか」という気もしないわけではありませんが,それでも,こういう機会でもなければ海外に行くことがないので,お金には代えがたい価値があったと思います(もちろん報酬があるわけでもありませんし,ホテルは2泊分だけ料金は負担してくれたのですが,宿泊税は自分もちになっていて驚きました。ミラノでは4つ星以上だと,17ユーロかかります)。
 外国人参加者は私と Catherine Barnard だけでしたが,彼女は大学の都合で急遽オンライン参加となりました。久しぶりに会った(?)のですが,バタバタしていて,挨拶はできませんでした。
 参加者も聴衆も,どうも私たち外国人の2人を除き,イタリア人ばかりなのに,なぜかBocconiでは「こういうセミナーは英語で行う」ということになっているらしく,すべて英語で進行されました(Catherineも私もイタリア語はできるのですが)。最初から英語でやるということは聞いていたので,それは覚悟のうえでしたが,もっといろんな国の人が参加するかと思ったら,ほとんどはイタリア人とイタリア語が話せる外国人だけだったのです。
 それはさておき,正直なところ,日本の話など誰も興味がないだろうと思い,予定された時間より短く,セミナーの進行を妨げないようにと空気を読んだつもりでいました。プレゼンを終えればお役御免だろうと思っていたら,質疑応答でなぜか私だけに質問が集中してしまい,「なんでやねん」と思いながら四苦八苦して答えました(うまく答えられたか自信はありません)。とにかく,予想に反して日本への関心が非常に高かったのです。
 私の話のエッセンスは,「高齢者に対する労働政策はデジタル技術を活用すれば未来がある」という,いつもの主張だったのですが,これはあくまで個人の意見であり,希望のようなものでもあります。それなのに,聴衆の中には「日本ではそう考えられている」と受け取った人もいたようで,少しまずいなと思いました。In my opinion と断っていますので誤解をするほうが悪いと,割り切っています。もちろん,客観的なデータ(日本の人口構造の変化や,高年齢者雇用安定法の内容など)もきちんと示したうえで話をしました。
 でも,こういう会議って,とんがったことを言ったほうが盛り上がるのです。デジタル技術を活用すると,高齢者差別につながると言って,食って掛かってきた人もいました。高齢者のフレキシブルな働き方を認めていくと,処遇が下がり,新たな差別問題にならないか,という法的な問題を質問してきた人もいて,報告のなかでは当初は入れていた定年後の雇用について,細かすぎると思って省略したら,質問されてしまいました。不合理な格差の禁止規定が定年後の有期の高齢者に適用されることにともなう問題は,とてもいきなり質問されて答えられるものでもなく,基本的なことを話しただけで終えました。 

2025年10月10日 (金)

イタリアのAI(IA)新法

 イタリアで,2025923日に「人工知能に関する規定と政府への委任」を定めた法律第132号が成立しました。この法律は,一部の事項を直接定めつつ,その他の部分は政府への委任立法(delega legislativa)によって詳細を定めるという構成になっています。
 ちなみにイタリアでは,「人工知能」は AI ではなく IAIntelligenza Artificiale) と呼ばれ,定冠詞がつくと「lIA(リア)」になります。最初は現地で「リア」と言われても何のことか分からず戸惑いました。こちらが話すときも,文脈なしに「リア」とだけ言っても通じないことが多く,結局フルで言う必要があって,これが意外と面倒です。EUという言葉も同様で,イタリア語では UEUnione Europea)です。これも略すと通じづらいので,なるべくフルで言ったほうが確実です。
 ところで,この法律はEUAI法(AI Act)に基づく国内法整備としては,EU諸国で初のものです。とくに労働関係に関して興味深い規定が多く,現地の研究者にも話を聞きました。その内容は,帰国後にまとめたいと思います(現地でというのは,いま,私はイタリアに滞在中なのです)。
 ところで,現地で alfabetizzazione digitale という言葉も,ネット上で見かけることがありました。 Alfabetizzazione は本来,「アルファベットを習得すること」=「読み書きができるようになること」を意味します。そこに digitale(デジタル)がつくので,要するに「デジタルリテラシー」のことですね。 英語では literacy という言葉を使いますが,イタリア語ではこの語を使わないのはなぜでしょうかね。聞くのを忘れていたので,あとで自分で調べてみようと思います。

高市とMeloni

 自民党総裁になった高市早苗さんが首相に選ばれれば,日本では初の女性首相ということになります。イタリアではすでに Giorgia Meloni(ジョルジャ・メローニ) 首相が誕生しています。彼女もイタリア初の女性首相で,右派勢力に指示されていることも高市さんと重なる部分があります。
 メローニ首相は,意外にも安定した人気を保っています。イタリアは,他の欧州と同様,連立政権の国ですが,その中でメローニの率いる「イタリアの同胞(Fratelli d’Italia)」が3割前後の支持を維持しているというのは,かなり安定した状態といえるでしょう。この点について,イタリアの友人のMaurizio に聞いたところ,メローニは,何もしないから支持されているという分析をしていました。強引に押し付けない分,反発も起きないということです。もしそうなら,それで本当にいいのか,という気もします。
  確かに,イタリアの経済は厳しく,公的債務が大きい以上,思い切った経済政策を打ち出す余地は限られています。財政再建の足かせの中で、やりたくてもできないという現実があるのかもしれません。しかし,そうやって何もしないことが結果として政権を安定させているのだとすれば,それは少し危うい安定にも見えます。
 政治が何も動かないまま,連立の名のもとに停滞が続くという構図は,日本でも大連立が起こるとあてはまるようになるかもしれません。だからといって,日本は,国債が円建てで日銀など国内で保有されているので破綻はしないから,安心して財政出動してよいという話に高市さんが乗っかると,それはそれでほんとうに大丈夫なのかという心配もあります。
 いずれにせよ,イタリアを一つの参照点として,その共通点と相違点をみながら,日本の将来を考えることは興味深い試みかもしれません。

2025年10月 9日 (木)

イタリア人とバレー

 イタリア人というと,個性が強く,びっくりするようなアイデアで周りを驚かせるというイメージがあります。スポーツでも,最近は低迷しているとはいえ,かつては天才的なひらめきで観客を魅了するサッカー選手を輩出してきました。そういうお国柄ですから,組織的な作戦が大切なバレーは向かないのではないかと思っていたこともありました。
 私がバレーを知らないだけで,実は組織性だけでなく個性も大切とされるスポーツなのでしょうか。実はイタリアは,世界有数のバレーボール強国です。先日終わった世界大会では,男子が二連覇,女子も優勝し,男女そろって金メダルという偉業を達成しました。マッタレッラ(Mattarella)大統領も大喜びだったそうです。
 では,現在の日本はどうなのでしょうか。かつての男子といえば,ミュンヘン五輪の金メダルのことが思い出されます。大古,猫田,横田というような名前がよくテレビから流れていたのを覚えています。女子といえば,東京オリンピックの「東洋の魔女」です。大松監督の「おれについて来い」型の猛烈なしごきは有名ですが,その背後には選手への深い愛情もあったのでしょう。だからこそ,女子たちも成果を出せたのだと思います。とはいえ,今日のスポーツ界では,たとえ愛があっても,あのときのようなしごきはもう許されないでしょうね。

2025年10月 8日 (水)

王座戦第4局

 藤井聡太王座(竜王・名人,七冠)に,伊藤匠叡王が挑戦する王座戦の第4局は,藤井王座が勝ってタイとなり,最終局にまでもつれこむことになりました。将棋の内容は難しくてよくわかりませんでしたが,どうも伊藤叡王の角が封じ込められてうまく使えない展開になったようです。伊藤叡王は受けが強いのですが,そこを藤井王座がうまく攻めを切り込んでいっているというところでしょうか。藤井王座は竜王戦とタイトル戦が並行して進んでいますが,まだ若いので,頭脳面でも,肉体面でもスタミナは十分でしょう。
 昨日の王位戦の予選の浦野真彦八段と福間香奈女流六冠の対局は死闘でした。福間さんは,これに勝つと,再度,棋士編入試験の受験資格が発生します。産休で休んでいた時期もはさみながらですが,とにかく男性棋士にあまり負けていません。浦野八段相手にも過去負けたことがなかったのですが,この将棋は浦野八段が本気を出しました。マスコミに注目される一局なので,還暦を過ぎている浦野八段も,無様な将棋はさせないということでしょう。240手まで行きました。途中までは浦野八段が少し良かったところもあったのですが,最後の福間さんの攻めの切れ味は見事でした。でも,私は浦野八段の頑張りに感動しました。

 

2025年10月 6日 (月)

政治と透明性

 昨日の私的領域と公的領域の続きです。両者の区別ということを聞くと,古代ギリシャにおけるオイコス(oikos:家)とポリス(polis:都市・政治共同体)の区別を思い浮かべる人も少なくないでしょう。古代ギリシャの民主制は、市民がアゴラ(agora:広場)に集まり,互いに弁論を戦わせて意思決定を行うというものでした。そこでは政治が透明な場で行われることが重要とされ,個人的な感情や利害が入り込むことは戒められていました。民主制とは,本来「市民がみんなで決めること」を重んじる政治制度であり(ただし,市民には,女性,外国人,奴隷は含まれていません),個人の能力が最大限に発揮されることが重視されるため,そこに私的な政治的取引(談合)があってはならないのです。
 このような観点から見ると,今回の自民党総裁選には少なからず違和感を覚えます。表向きは透明性を重視した手続のようにみえても,実際には特定の政治家や派閥が主導し,「貸し借り」の文化や露骨な論功行賞人事がなされようとしています。自民党に根強く残る村社会的な文化が,いまだに政治の透明性を曇らせているのでしょう。そうした構図は,まさに公私混同と呼ばれても仕方がないでしょう。
 とはいえ,現代社会では「私的領域の尊重」もまた一つの価値です。昨日も書いたように,プライバシーや個人の自由が過剰に守られた結果,逆に社会全体の利益に反することもあるかもしれませんが,それほど私的領域は強くなっています。ただ,少なくとも政治の場は,社会全体の利益(公益)を考えるものであってほしいです。  
 誰もが透明な場で議論しながら意思決定をしていく。そうした政治空間をどう再生するかが問われています。そう考えると高市自民党はすでに最初から,躓き始めているようにみえます。どこかで村社会の論理から脱却して,透明で開かれた政治に飛躍できるか。それとも,このままズルズルと古い自民党の体質をひきずるか。もちろん後者であれば,自民党に未来はないでしょう(今回はとりあえず首相には選ばれるのでしょうが,それを許す野党も情けないのですが……)。

2025年10月 5日 (日)

ハッシーの事件に思う

 元将棋棋士のハッシー(橋本崇載)が,102日,大津地裁で,殺人未遂などの罪で懲役5年の実刑判決を受けました。元妻とその父親が住む住宅に侵入し,クワで2人を襲ってけがを負わせたとされています。弁護側は精神障害の影響を主張しましたが,裁判所は完全責任能力を認定したようです。
 ハッシーはA級まで上り詰めた実力者であり,人気者でした。私も大好きな棋士の一人でした。そのような人が,なぜここまで転落してしまったのか。多くの人が衝撃を受けたのではないでしょうか。もちろん,彼が重い法的責任を問われるのは当然ですし,被害者の受けた恐怖は残り続けるでしょうから,これで解決ということではないでしょう。ただ,あらためて,この事件を通じて考えさせられるのは,「家庭」という空間の特異性です。
 家庭は最も身近でありながら,最も閉ざされた場所です。そこでは愛情や支えが生まれる一方で,暴力や支配,そしてときとして孤立も生まれます。今回の事件の背景にも,離婚や親権などの家庭問題があったようです。家庭の中で起きることは「プライバシー」として外部から見えにくく,問題があっても周囲が気づきにくいのが現実です。 私たちは,家庭のことには他人が口を出すべきではないと考えがちですが,この考え方が行きすぎると,家庭内での暴力や心理的支配や孤立が見過ごされる危険があります。実際,日本で起きる殺人のうち,被疑者と被害者が親族関係にあるものが半数近くを占めるとされています。家庭は愛と平和の場であると同時に,最も深刻な犯罪の現場にもなりうるということです。
 多くの人は,普通の人は犯罪などおかさないと思っているでしょう。しかし,私は,ハッシーの事件は特別なものではなく,誰にでも起こりうることではないかと思っています。家庭という閉ざされた場所で起きるちょっとした暴力が,少しこじれて暴走すれば,何が起こるかわかりません。
 私的領域と公的領域の線引きはたしかに難しい問題です。プライバシーを守ることは大切ですが,隔離されて,みえなくなってしまうことの危険性もあります。その危険性は,ときに親族間の問題にとどまらず,無差別殺人など社会全体への脅威に発展しかねません。つまり,家庭という私的領域を完全に不可侵なものとして扱うことは,社会全体の安全をも脅かすことにつながりかねないのです。
 個人も社会も守るためには,私的領域を絶対視しすぎないということも必要です。家庭の問題だから仕方がないと片づけてしまわず,かといって国家が家庭のなかにずかずかと入り込むことも許されるべきではないので,そのバランスをどうとるべきか。ハッシーの事件はまさにこうした問いを私たちに突きつけているように思えます。

2025年10月 4日 (土)

竜王戦

 自民党の新しい総裁に高市早苗さんが選ばれました。正直,複雑な気持ちもあります。結局,自民党には人材があまりいなかったのでは,という思いが拭えません。ただ,高市さんにはせっかく選ばれた以上は日本のためにしっかりと頑張ってほしいです。さっそく気になる発言は,ワークライフバランスに関するものです。自分自身が寝る間も惜しんで働くのは勝手ですが,周りの者まで巻き込まないでほしいですし,少なくとも職員たちにはしっかり休める環境を作ってほしいですね。良い仕事は健康的な環境からしか生まれませんし、優秀な公務員はそういう労働条件を用意しなければ集まってこないでしょう。体力だけあってガムシャラに働けるという人ばかりでは困ります。知性をもって,スマートに力を発揮できる人材を活かすということが大切だという意識を,新総裁にはもってもらいたいです。
 さて、話は変わって将棋の竜王戦。藤井聡太竜王(名人・七冠)に佐々木勇気八段が挑戦しています。2年連続の同一カードということで佐々木八段にも期するところがあるでしょうが,初戦は藤井竜王が制しました。長丁場ですので,次戦以降の挽回を期待しましょう。
 順位戦のほうは、渡辺明九段の休場が大きなニュースでした。昇級候補からは外れていましたが実力でしたので,存在感はありました。これでA級陥落は確定で,残念です。現在は,糸谷哲郎八段が絶好調で,このまま名人挑戦へと突っ走れるか注目です。
 B級1組では伊藤匠叡王が順調に勝ち星を重ね5勝1敗でトップを走っています。王座前でも藤井王座をリードをしており充実しています。服部慎一郎七段は斎藤慎太郎八段に敗れて4勝2敗となりましたが,昇級レースはまだこれからです。伊藤匠叡王と服部七段が昇級の最有力というのは揺るぎません。
 逆に降級争いは厳しく、石井健太郎七段はいまだ白星がなく,高見泰地七段,佐藤康光九段も危ないです。順位1位の菅井竜也八段も勝ち星が伸びず,安泰とは言えません。

2025年10月 3日 (金)

シーズン終了

  阪神タイガースの今年のシーズンが終わりました。原口が引退というのは寂しいですが,よく頑張りました。その一方でサトテルが40本塁打・102打点,村上が最多勝タイ&最高勝率(144敗),才木が最高防御率と,投打の主力がしっかりタイトルを取ったのは本当に見事でした。その間の石井の無失点記録もありましたし,打者や投手のタイトルは必ずしも優勝チームから出るとは限らないので,今年のようにチームの柱がそろって結果を残したのは素晴らしいことですね。チーム全体の雰囲気もすごく良さそうです。
 優勝が決まった後の試合はほぼ五分でしたが,消化試合にしてはよく頑張っていたと思います。相手チームはCSを目指して必死でしたしね。昨年と同じくDeNAは秋になると調子が上がってきていて,DeNAが上がってきたら,CSではかなりの強敵になりそうです(ただ監督が辞任を発表している影響がどうでるでしょうか)。ケイ(Kay)とジャクソン(Jackson)に,東が出てきたら,そう簡単には打てません。正直2敗は覚悟しなければならないでしょう。そこをどう切り抜けるか楽しみです。
 一方パ・リーグはソフトバンクが強かったです。日本ハムも最後まで頑張りましたが,あと一歩届きませんでした。ただ,元阪神の新庄剛志監督は,しっかりチーム作りをしているようなので,来年あたりに花開きそうな気がします(交流戦の頃の印象なので細かい部分までは追えていないのですが)。

2025年10月 2日 (木)

環境は票にならない?

 最近,「環境政党」という言葉を耳にする機会が減った気がします。ヨーロッパでは緑の党(ヴェルディ)などが今も活動を続けていますが,全体としては環境よりも経済を重視する傾向が強まっているように感じます。今回の自民党総裁選について,私は党員ではないため内部事情に詳しいわけではありません。しかし外部から見ていて気になったのは,環境やエネルギー政策がほとんど議論の俎上に上っていないように思える点です。
 その背景には,いくつかの要因が考えられます。第1に,物価高や景気対策,安全保障などが喫緊の課題として国民の関心を集めており,環境分野が相対的に後景に退いている可能性があるからです。第2に,日本政府はすでに「2050年カーボンニュートラル」や「GX(グリーントランスフォーメーション)」といった長期的な政策方針を打ち出しており,党内では争点として新規性がないことがあるのかもしれません。
 そして第3に,より懸念されるのは,環境政策に消極的な姿勢を示す米国のTrump大統領に対し,日本の政権与党が迎合しているのではないかという点です。首相に選ばれると,まずはTrump大統領の来日もあり,政策を合わせる必要があるのでしょう。米国が環境政策に距離を置く場合,日本もその流れに引きずられる危険性があります。これでは情けないです。
 環境政策は,未来の世代に直結する課題です。野党なら生活に直結する政策にこだわるのは仕方がないとしても,責任与党である自民党は,次世代に対する責任を果たす姿勢を明確に示すべきです。たとえ現在の国民に一定の負担を求めることになっても,持続可能な社会の構築に向けて踏み出すことにこそ,政治的リーダーシップの知性と情熱が問われるのではないでしょうか。自民党員の皆さんには,ぜひこの視点から候補者の姿勢を見極めていただきたいと思います。

2025年10月 1日 (水)

NHK Oneのトラブル

 今日から10月になりました。と言っても,特に強く意識しているわけではありません。法科大学院の授業は今週からすでに始まっていますし,秋入学でもないので,4月1日のように「何かが始まる」という感覚はあまりありませんね。
 ただ,日課にしているテレビ体操については,月が変わると体操の内容や背景の映像に少し変化があるので,その点を楽しみにしています。ところが,今朝は思わぬトラブルがありました。NHKプラスが「NHK One」なるものに変わってしまい,うまくログインできなかったのです。私はNHKプラスにGmailで登録していたのですが,認証コードが届かず,何度やり直しても状況は変わりませんでした。もっと簡単に移行できるのだろうと思っていたのですが,まだ実現していません。ネットで調べてみると,どうやら「Gmailは使えない」ということだったそうです。もっと早く知らせてくれればよかったのに,そのせいで時間を無駄にしてしまいました。こうしたトラブルは予測できなかったのでしょうか。やっぱりNHKはダメだなと思ってしまいました。
 結局,NHKプラスは引き続き見逃し配信を利用できるとのことで,夕方になって遅ればせながら体操をしました。そこまでして体操をする必要があるのかという気もしましたが,日課が他人のせいで継続できなくなるのは嫌なので続けました。
 こういうことがあると,関係ないことかもしれませんが,昨年夏にNHKのインタビューを受けたのに,結局,御蔵入りになり,何の連絡もないという出来事を思い出し,また怒りがこみ上げてきました(それ以前も,不義理を受けたことがあります)。良い番組を作っているのかもしれませんが,どこか信用できない会社です。今回の件も,しっかりリスク管理のできる会社なら避けられたのでしょうが,NHKはそういう会社ではないのでしょうね。学生から,もし就職相談を受けたら,薦めない会社です。

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