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2025年9月の記事

2025年9月30日 (火)

王座戦第3局

 王座戦第3局は,伊藤匠叡王が藤井聡太王座(竜王・名人,七冠)に勝利し,対戦成績が2勝1敗としました。王座戦は5番勝負ですので,伊藤叡王はこれでタイトル奪取に王手をかけました。この一局は,先手の伊藤叡王が藤井王座を押し切った印象で,非常に力強い勝ち方でした。次の第4局は,タイトル戦の舞台として知られる神奈川の陣屋で行われます。私自身,一度訪れてみたい場所です。
 一方,先日のNHK杯では,谷川浩司十七世名人と服部慎一郎七段の対局がありました。谷川十七世名人は最近服部七段と対局しており,4連敗を喫していました。今回も厳しい戦いになると思っていて,原稿に追われていたこともあり,リアルタイムでは観ていなかったのですが,谷川さんが勝ったと知って,あわててNHKプラスで観戦しました。NHK杯は持ち時間が短いこともあり,通常はベテランには不利と見られていますが,63歳の谷川名人は「ひねり飛車」という,近年では珍しい戦法を採用(私は個人的には好きな戦法です)。これが奏功し,見事に服部七段を破りました。まさに驚きの勝利といえば失礼でしたが,嬉しかったです。
 服部七段といえば,昨年は史上最高勝率に迫る勢いを見せた若手の有力棋士であり,現在もB1組の順位戦で首位を走り,来期にはA級昇級の可能性が高い人です。その服部七段に勝利したのは,大きな意味を持つ一局といえるでしょう。さらに谷川十七世名人は,非公式戦ながらサントリー東西対抗の予選で船江七段にも50数手で勝利しています。東西対抗は勝ち進みましたが,予選決勝で,久保利明九段に負けてしまいましたが,復活を感じさせました。最近は攻め味の鋭さが戻り,本来の「光速流」がよみがえってきているのかもしれません。とはいえ,年齢的に勝ち続けるのは容易ではないでしょう。順位戦B2組でも22敗とまずまずの成績を残しています。まだまだ私たちに夢を感じさせてください。

2025年9月29日 (月)

大の里5度目の優勝

 大相撲秋場所は大の里が優勝しました。前半戦で伯桜鵬に敗れたときはどうなるかと思いましたが,全般的には安定した強さを見せましたね。あっという間に押し出してしまうという感じで,ほんとうは四つ相撲で技をかけあうという相撲のほうが好きですが,まあ仕方ありません。千秋楽の豊昇龍戦は,話題作りのためにわざと本割は譲ったようにも感じられましたが,いずれにせよ優勝決定戦では見事な寄りで,締めくくりました。豊昇龍の投げ技はかなり研究されているのでしょうかね。安青錦にも,切り返されていましたね。そのウクライナ(Ukraine)出身の安青錦は,実力はすでに大関クラスで,抜群の安定感です。入幕して4場所連続11勝というのはすごいです。ただレスリング仕込みなのか,構えが低く,相撲内容はあまり面白くないですが。
 一方で,若隆景は10番以上勝てば,大関昇進かもという状況でしたが,残念ながら負け越しました。再挑戦は厳しいかもしれませんが,怪我から復活してきたので,頑張ってほしいです。霧島は力が衰えてきたでしょうか。王鵬や隆の勝は番付が下がれば大勝ちしますが,上がるとつまずくということの繰り返しです,ただ上位陣にとっては怖い力士でしょう。
 大の里はこれで5回目の優勝となり,今後どこまで優勝回数を伸ばすのか楽しみです。一方,豊昇龍は今場所が精一杯の感じであり,今後は,大の里と安青錦の2強時代が来るかもしれません。

2025年9月28日 (日)

イタリアサッカーの危機

 最近,世界でイスラエル(Israel)の行動に対して強い非難の声が上がっています。国連でもネタニヤフ(Netanyahu)の演説のときは,多くの人が席を立ちました。ガザ(Gaza)地区の悲惨な状況は,報道を通じて連日伝えられます。もともとはハマス(Hamas)の先制攻撃があったのですが,その背景にもいろいろありそうで,歴史からみると,何が原因か,もうつかみきれません。ただ,人権侵害の疑いが濃厚な状況が継続している以上,イスラエルの攻撃をやめさせなければなりません。仮にこれを機に領土拡大を志向するような方針が表明されれば,イスラエルのいっそうの孤立は避けられないでしょう。Trumpは,ノーベル(Nobel)賞がほしいから,頑張るかもしれませんが,そういう私欲がみえている人は仲介役には不向きでしょう。
 のような国際情勢の混乱は,サッカーの世界にも影響が及んでいます。現在,2026年のFIFAワールドカップ欧州予選では,イタリア(Italy)とイスラエルは同じグループ(グループ I)に属しています。2025年9月8日,イタリアはイスラエルと対戦し,5-4 という劇的なスコアで勝利しました。この試合は終盤まで勝敗が流動的であり,まさに薄氷を踏むような勝利でした。ところが,このイスラエルの出場資格そのものが今問題視されており,欧州のUEFA内ではイスラエルを国際舞台から除外する可能性についての議論が報じられています。もしそのような除外措置が実施されれば,イスラエルはワールドカップ予選から締め出されることになり,予選グループの順位や対戦構図が大きく変わります。
 現在,グループIの1位はノルウェー(Norway)です。イタリアは初戦で0対3で負けてしまい,その後,ノルウェーはモルドバ(Moldova)に10点差で大勝するなどし,得失点差では圧倒的に有利です。つまりイタリアは,かりにノルウェーに勝ち点で追いついても,得失点差で1位になることは難しいのです。1位になる唯一の可能性は,ノルウェーとホームであたる試合で勝ち,さらにノルウェーがイスラエルに負けてくれることです(もちろんイタリアが残り全部勝つことが前提です)。現在,ノルウェーに勝つ可能性が少しでもあるとすればイスラエルしかありません。ところが,もしイスラエルが除外されれば,この可能性がなくなるのです。そうなると,イタリアは厳しいプレーオフに回ることになり,予選突破のシナリオは厳しくなるでしょう。
 イタリアは過去2大会連続で本大会出場を逃しています。2018年大会ではプレーオフでスウェーデン(Sweden)に敗れ,2022年大会でもプレーオフで北マケドニア(North Macedonia)に敗れました。2021年はUEFA EUROで優勝して欧州チャンピオンになっていたのですが,まさかの敗退でした。今回はそのときよりもイタリアは弱体化しています。いまやSerie Aは中心にいるのは外国人選手だらけで,イタリア人選手が減っているそうです。日本からもかつてはカズも中田も本田も長友もSerie Aに行きましたが,もう誰も行きませんよね。
 今回もノルウェーに勝っていれば,こんな心配はしなくてよかったのですが,イタリアはかつてのようなサッカー強国ではないということです。現実的には,イスラエルが追放されるかどうかに関係なく,プレーオフ行きは避けられないでしょう。そうすると3大会連続イタリア不在ということになるおそれが高まります。残念ですが。

2025年9月27日 (土)

老兵

 今日は少し飲みすぎて疲れましたので,簡単に日記を書きたいと思います。 今日は,神戸労働法研究会の報告を聞き,いつものことですが,大変勉強になりました。とくに公務員の懲戒免職と退職手当の不支給をめぐる事件の報告が聞きながら,行政法上の論点も気になると同時に,労働法上の同種の論点も気になりましたし,そもそも公務員とはどのような特別性があるのか,ということも考えさせられる材料を得ることができました。いつか,きちんと書いてみたいです。
 最近は,研究会への参加者も減っていますが,そのこと自体は気になっていません。皆それぞれの場でしっかり研究をしてくれていれば問題ないと思っています。ただ,もし研究会をあまり大事にしないということですと,どうしても独りよがりになってしまい,それは危険です。とはいえ,私自身,研究会では少し喋りすぎて,あとから反省して,申し訳なく思っています。いかに迷惑をかけずに老兵は消え行くかが重要ですが,そう言いながら,自分が消え行くべき老兵と自覚できていないのが問題ですね。

2025年9月26日 (金)

あんぱん最終回

 NHKの朝の連続テレビ小説「あんぱん」が最終回を迎えました。長く続いた物語が終わってしまい,少し寂しい気持ちもありますが,見応えのある作品だったと思います。これまでほぼ全回通して視聴した「ちむどんどん」「ブギウギ」「おむすび」も印象に残っていますが,今回の「あんぱん」はとりわけ印象深いです。主人公ノブを演じた今田美桜さんは,まさに旬の女優として大きな存在感を放っていました(世界陸上の番組では,織田裕二さんと共演(?)して頑張っていましたね)。今回のドラマでは若い頃から老年期までをしっかりと演じ分け,役柄の幅広さと表現力を見せてくれました。華やかさだけでなく,年齢を重ねる姿を自然に演じた点も印象的でした。
 とはいえ,この作品の真の主役は,やはり,やなせたかしさんだったでしょう。実際,この番組も,彼の創作活動が中心に描かれており,その世界観を深く知ることができたことは大きかったです。「アンパンマンのマーチ」に込められた思いや,「手のひらを太陽に」が生まれた経緯など,よく知っている歌に新しい意味を見出せたことは,大きな収穫だったと思います。また,この番組には反戦のメッセージがしっかりと込められていました。アンパンマンは決してバイキンマンを滅ぼすことはないのです。人間は欲深い存在として争いを繰り返すけれど,本当は愛すべき部分もあることを伝えていました。勧善懲悪の物語が多い中で,このような視点を提示した作品は稀であり,それこそがこの作品が広く支持された理由の一つだったのではないでしょうか。子どもたちはわかっているのです。徹底的に殺し合うなんておかしいのです。いじめっ子は,いつの世にもいるし,どうにもならない困ったちゃんもいる。でも,そんな子にも,どこか愛すべきところはある。これが子どもたちが,おそらく本能的に知っている世界であり,それがアンパンマンの世界だったのでしょう。
 アンパンマンの誕生には,やなせたかし自身のつらい戦争体験から生まれてきたことを知ることができたのも,とても意義深いことでした。今も世界で悲惨な戦争が続いている状況を思えば,この作品が投げかけたメッセージは一層重みを増しているように思います。
 私自身,このドラマの影響もあり,高知を訪ねてしまうほど強い関心を抱きました。「鉄腕アトム」がかつて社会に大きな影響を与えたように,「アンパンマン」もまた,いまや日本の文化に深く根付いているのだと言えるかもしれません。
 番組としては,蘭子や八木社長の今後といった物語も,もう少し見てみたかった気持ちはあります。ただ,主人公をノブに据えた以上,彼女の人生に焦点を当てて描き切るということだったのですね。

2025年9月25日 (木)

労働時間規制の見直し論

 最近,経営サイドから労働時間制度の見直しを求める声が高まってきています。裁量労働制や高度プロフェッショナル制度の使い勝手の悪さに対する不満が背景にあるようです。たしかに現行制度には不都合もありますが,もう少し要件を緩めてほしいという程度の希望を伝えるだけでは,大きな成果は生まれにくいのではないでしょうか。
 そもそも,現行の労働時間制度があることによってどれほど多くの支障があるのかは,冷静に検証する必要があります。もちろん,企業によっては,ほんとうに困っているところもあるでしょう。しかし,多くの場合,労働時間の管理はそれほど厳格にされているわけではなく,労働者が自らの意欲さえあれば,長時間働くことができてしまうというケースも多いのではないかと思います(もちろん業種や職種によります)。過労死のような事態は絶対に避けなければなりませんが,そうした極端なケースに至らない限り,労働者自身が満足して働いている場合も少なくありません。そうした労働者からすると,たとえサービス残業をしていても,とくに現在の法制度に異を唱える気持ちはないでしょう。
 労働時間制度が話題になることがあるのは,企業が労働者を過剰に働かせて健康障害を招き,労災の対象になる場合や,サービス残業を強いるようなケースです。このような企業が「制度に不満だ」と言っても聞き入れる必要はないでしょう。問題は,真面目に制度を守ろうとしている企業が,はたして本当に困っているのかどうかです(労働者のやりがい搾取になっているだけという声もありえますが)。
 私は,労働時間制度の根本的見直しは必要だとは考えています。ただ,前提となるのは,企業が労働者に成果に応じた公正な評価と処遇を行い,労働者もそれに納得しているという関係が成立していることです。そのうえで,労働者のほうから,成果をあげたくても,労働時間規制(1週40時間しか働けないとか,法定の時間外労働しか認められないとか)があるから,それができなくなっているという不満がでてきてはじめて,規制緩和論は説得力をもつのです。日本社会にとっては,そうした成果意欲が高い人材が数多く育つことが望ましいと思いますが,現状はまだそこに至っていないのではないかと感じています。ほんとうの意味での成果に応じた賃金という体系が確立していないのではないかという疑問です。賃金体系の透明化が,労働者のモチベーションを高め,そこではじめて労働時間規制の桎梏が浮かび上がってくるのではないでしょうか。
 労働時間制度があるから,こうした人材が育たない,という主張もありますが,本当にそうなのかは疑問です。もし制度の見直しが必要ならば,労働者の側からもそのような声が出てきても不思議ではありません。そうした声が出てくる状況になって初めて,経営者サイドが考えているような労働時間制度の見直しが,社会的に受け入れられることになるのだと思います。

2025年9月24日 (水)

反転の重要性

 物事は逆から見ることで,かえって真実がよく見えてくることがあります。写真のポジとネガではありませんが,ネガをみることによって,ポジの世界がよく見えてくることもあります。ポジばかりみていると真実に近づけないのかもしれません。
 これは全く私の未熟さであったのですが,最近,かつてよく批判していた学説を読み返すと,むしろその方が優れていると感じることが多くあります。たとえば西谷先生の自己決定論は,今考えると大変優れた展開であるように思いますし,内田貴先生の関係的契約論や,その後の制度的契約論についても,その本当の意義を十分に理解できていなかったと反省しています。私的自治や個人の自己決定の視点は,近代のある時期の歴史的要請から出てきたものにすぎず,一度,これを中世の世界に降り立って反転させてみると,近代の異常性(それが現代にもつながる)がみえてくることもあります。
 私はかつて2018年秋から1年間とったサバティカル(研究専念休暇)のときに,自分の労働法に対する考え方を根本から考え直す機会を持ちました。その結果,労働者の権利論を,企業の義務論として構成したらどうなるのかという試みを行いました。権利と義務は裏表の関係ですが,視点を変えると違ったものが見えてきました。現在取り組んでいるのは,「自由」というものに基本的な価値を認めないとしたら,どのような世界が到来するのかという思考です。このようなことは法学の世界では邪道に近いものですが,今や自由や民主主義,人権といった概念そのものに根本的な疑義が突きつけられていると感じます。思考実験をどこかでやらなければ,何も見えてこないのではないかと思うのです。
 今は,そうした知的な格闘の最中にあり,私にとってはサバティカル以来の「第二の自己改革」を行っているところです。その成果はいずれ形になるでしょう。成功か失敗かは分かりませんが,こうした試みを経なければ,私自身の研究生活は完結しないと考えています。

2025年9月23日 (火)

国連軽視?

 石破茂首相が国連総会で演説を行うと報じられています。日本の首相は,昨年の岸田前首相もそうでしたが,国連総会でのスピーチを辞任の花道のように用いる傾向があります。しかし,国内での支持を失い,選挙にも敗れた首相が,国際舞台で発言をすることに対しては,違和感を覚える人も多いのではないでしょうか。国民の信任を欠いた首相が世界に向けて語ることを,他国の人はどう思うでしょうかね。
  今回の演説に関連して注目されるのは,パレスチナ国家承認の問題です。政府は「二国家解決の立場は変わらない」としながらも,「今はその時期ではない」と判断を見送りました。しかし,では一体どのような時期になれば承認するのか。その説明は十分ではなく,結局のところアメリカの了承がなければ動けないのではないでしょうか。これでは「日本外交は米国から独立していない」という従来の評価を,再び裏づけただけでしょう。
 パレスチナ承認を見送ることが妥当かどうかは,私にはよくわかりません。しかし,日本政府の説明は,国内での国会答弁のような言い回し(「いかに実効性のあるものにするかが大切」など)にとどまり,国際社会に説得力をもつものとは思えません。結局,「自民党村」のなかでしか通用しないような論理を,そのまま国際舞台に持ち込んで,みっともない姿をさらけ出すだけではないでしょうか。
 国内政治に目を移しても,自民党総裁選では経済政策が主要なテーマとなっています。ただ,それはトランプ大統領が導入した関税政策の影響を大きく受けたものです。対米関係に左右される日本経済の現実を直視せざるを得ませんが,だからといって国際舞台での日本の姿勢までが米国依存一色に見えてしまうのは情けないです。
 たしかに,日本の首相がアメリカから完全に独立して政治を行うことは現実的には難しいかもしれません。しかし,国際社会においては,もう少し自律的で堂々とした姿勢を示してもらえればと思います。国連総会という舞台は,本来であれば日本の外交的立場を力強く発信する機会のはずですが,残念です。まだ石破さんのプレゼンを聴いていない段階で,評価を下すのは早すぎるかもしれませんが。

2025年9月22日 (月)

やっぱりお好み焼き

 ようやく秋が来たという感じです。1日中,冷房をつけずに過ごすことができ,電気代の節約ができてよかったです。このまま本格的な秋に突入してほしいものです。世界陸上も終わり,ちょっとした空虚感があります。ここ最近はいくつか重要な原稿を抱えていて,朝から晩まで頭を回転させていますが,夕方になるとさすがに疲れます。その意味で,世界陸上はちょうどよい息抜きになっていました。
 ところで先日,おそらく40年以上ぶりくらいにもんじゃ焼きを食べました。おそらく学生時代に東京で一度口にしたことがあるだけで,そのときは「一体どこがおいしいのだろう」と思った覚えがあり,それ以来まったく食べていませんでした。やはり関西人にとってはお好み焼きでなければならず,いまでも,定期的に食べたくなります。しかし,もんじゃ焼きについては,もう一度食べたいという気分になったことはありませんでした。
 もっとも,学生時代の記憶はあやふやですし,半世紀近くも経てば味の感じ方も変わるかもしず,あるいは,もんじゃ焼きそのものも進化している(?)のではないか。そんな思いからというわけではありませんが,たまたま先日「清十郎」という店に入る機会がありました。注文したのは「清十郎もんじゃ」です。別にまずいわけではありませんが,「もう一度食べたい」と思うほどでもなかったですね。その店ではお好み焼きと焼きそばも頼み,こちらは大いに満足しました。
 どうして,関東の人々はもんじゃ焼きを好み,関西ではお好み焼きに根強い人気があるのでしょうか。ChatGPTに尋ねると,お好み焼きは「一枚の料理」としてしっかり形を整え,切り分けて食べるスタイルであり,いわば完成品を共有する文化を映し出しているのに対して,もんじゃ焼きは「作りながら食べる」料理であり,小さなヘラで焦げた部分をつまみながら,仲間内でだらだらと時間を過ごすことに重きが置かれており,食そのものよりも,むしろ「一緒に鉄板を囲んで過ごすプロセス」が楽しみの中心なのだという返事でした。ということで,お好み焼きともんじゃ焼きは目的が違うということなのですかね。
 いずれにせよ,私は,おそらく今後,自分からすすんで,もんじゃ焼きを食べることはないような気がします。

2025年9月21日 (日)

世界陸上閉幕

 世界陸上7日目は,やり投げの予選で北口榛花選手が残念な結果となりましたが,次のオリンピックでの活躍に期待したいです。彼女のおかげで,やり投げの面白さが多くの人に伝わったと思います。
 8日目は,朝からビッグニュースが飛び込んできました。藤井菜々子選手が女子20キロ競歩で銅メダルを獲得しました。最後に猛烈な追い上げを受けましたが,50センチ差でかろうじて3位に入りました。
 リレーでは,4×400メートルは残念な結果でしたが,4Kリレーは23位で着順により決勝進出です。小池選手,桐生選手は安定した走りを見せ,200メートル準決勝に出場した鵜澤選手がアンカーを務めました。サニブラウン選手は,やはり調子が悪そうですね。
 日本中が注目した5000メートル決勝には,田中希実選手が登場しました。超スローペースの難しい展開となり,結果は12位でしたが,十分に健闘したと言えるでしょう。10000メートルのチャンピオンであるChebet選手が,1500メートルのチャンピオンであるKipyegon選手と最後に競り勝っての2冠は見事でした。田中選手はラスト1周までは前方で走っていましたが,スローペースだったため,多くの選手が余力を残していました。それでも,田中選手の走りは感動を与えてくれました。難しい勝負のなかで必死にもがきながら,世界と十分に渡り合っていた姿は感動的です。今後も引き続き応援していきたいです。
 今日の最終日には,天皇一家が登場するというサプライズがありました。ちょうど4×400メートル男子決勝の直前で,大雨の土砂降りのなかでの登場となりました。この勝負は,ボツワナ(Botswana)がアメリカを破って金メダルを獲得するという驚きの展開でした。実はアメリカは予選6位で敗退していましたが,ケニア(Kenya)とともにザンビア(Zambia)から妨害を受けたとして救済レースが設けられ,両者が一騎打ちで勝ったほうが決勝進出という形になり,午前中のレースでアメリカが勝利して決勝に進出していました。ただし,リレーでの妨害行為に対して救済措置を取るのは例外的なことで,バトンタッチのところは大混戦となるので,それをかいくぐるのも技術であると言われています。今回の救済措置は悪しき前例となるかもしれません。決勝では,アメリカのアンカーは400メートルハードルのチャンピオンBenjamin選手でしたが,最後の最後に逆転されました。ボツワナの執念が光りました。一方,女子のほうはアメリカの圧勝でした。400メートルのチャンピオン,マクローフリン・レブロン(Mclaughlin-Levrone)選手が安定した走りを見せました。このほか,800メートル女子の決勝も,5000メートル男子の決勝も,見応えのあるレースでした。これらの試合のときは,暑さもひいて,選手にとっては良いコンディションでした(そのあと気候が急変しました)。日本選手が決勝にいなかったのは寂しいですが,女子は,田中選手と廣中選手を除くと世界との距離は遠いですし,男子も三浦選手を除くと厳しい状況です。
 トラックの最後の種目は4Kリレー決勝です。雨中の決戦でした。女子はアメリカが圧倒的に強く,第1走のJefferson Wooden選手は100メートル,200メートル,4Kリレーで3冠を達成しました。男子は予選で波乱があり,失格が続出しました。日本は第4レーンで走りましたが,6位に終わりました。1走と2走の間が詰まってしまい,タイムを稼げませんでした。もう少し2走のスピードが出ているタイミングでバトンパスができていれば良かったと思いますが,それでも今回はメダルには届かなかったでしょう。38秒を切らなければ勝負になりません。2走と4走の直線コースでは,10秒を切る選手を配置できなければ厳しいです。強豪国のバトンミスが減ってきているので,なおさらです。
 最後はフィールド種目の女子の走り高跳びでした。雨が降るなかで,跳びにくそうで気の毒でした。注目のUkraineのMahuchikh選手は銅メダルに終わりましたが,まさに水の滴る美女という感じで,飛ぶ姿も待つ姿もきれいな映像でした。勝負はAustraliaOlyslagers 選手が初めての金メダルをとりました。終始,笑顔をみせていた彼女の爽やかな姿は印象的で,とても良いフィナーレでした。

2025年9月20日 (土)

自民党総裁選

 小泉進次郎氏が,自民党総裁選に立候補を表明しました。昨年は解雇規制の見直しを口にして失速し,私もいい加減な政策提言をしてほしくないという批判をしました。今年は多くの候補とも賃上げには言及しているものの,解雇など労働市場に関連するディープな規制改革には触れていないようです。その一方で,野党も主張している給付付き税額控除に言及する人もいて,今年は労働関係では,この制度が注目を集めることになるかもしれません。
 給付付き税額控除は,税額控除に加え,一定の所得水準以下であれば給付が行われる仕組みであり,低所得者対策として期待されています。ただし,制度設計の具体的な中身によって姿は大きく変わります。勤労所得に対する税額控除の仕組みとするならば,就労インセンティブを損なわないという利点があります。ただ,他の社会保障給付や最低賃金制度との調整はどうするのでしょうか。私は,給付付き税額控除は,現行の生活保護を含むさまざまな所得保障制度の統合的な枠組みとして構想すべきだと考えています(社会保障と税の統合)が,そうした議論は今のところなされていません。いずれにせよ,この制度をしっかり論じるには高度に専門的な議論を要するため,総裁選で語られても具体案が示されることはないでしょう。昨年の解雇規制と同様の「雰囲気だけの議論」をするなら,主たる争点にすべきではないでしょう。
 むしろ注目すべきは,もう少し紛れのない議論が可能な,外交や皇位継承問題です。たとえば,パレスチナ(Palestina)国家承認の見送りに見られる対米追従外交をTrump政権下でも継続するのか(Trump政権にどこまでつきあうのか),あるいは皇位継承問題にどのようなビジョンをもっているのか。さらに,環境問題にどう取り組むのかも重要です。こうした国家の基本的方向性に関わる論点で,各候補がどれだけ個性的な主張を展開できるかに注目したいです。自民党の村社会のなかでどう生き延びるかということよりも,国民に向き合って政党として生き延びれるかを考える候補者にでてきてほしいです。

2025年9月19日 (金)

世界陸上5日目・6日目

 世界陸上の5日目は1500メートル決勝に注目していました。イギリスから3選手も出ていました。伝統的にイギリスは強いですね。優勝候補だったJosh Kerr選手ですが,途中で足のトラブルがあったようで脱落しました。でも最後まで走りきったのは見事です。優勝は,Wightmanかと思っていたら,最後はポルトガルのNaderが大逆転です。1500メートルはやはり面白いです。日本人には厳しい競技ですが,いつか出てきてほしいですね。
 6日目は,田中希実さんが5000メートル予選に出場し,先頭を最後まで引っ張って見事に5位で決勝進出です。次の2組の廣中璃梨佳さんは果敢に飛ばしましたが,最後は抜かれてしまいました。800メートル女子の予選は,注目の久保凛選手が登場しました。厳しいレースになりましたが,まだ高校生です。勉強の1戦です。大会に出場できたこと自体が快挙です。800メートルは,体格が違う外国人選手に囲まれてしまうと,スピードが出せないので,このあたりが今後の課題でしょうかね。
 男子200メートルは,鵜澤は準決勝に進出しましたが,わずかに届かず,決勝を逃しました。かつての銅メダリストの末續選手は偉大でしたね。男子400メートルは,中島佑気ジョゼフは5位でしたが,健闘しました。ただ決勝では自己ベストを出さなければ厳しいです。決勝まで体力を残せるかが勝負ですね。メダルは十分にみえているので,次の勝負に期待していたいです。400メートル女性は,マクローフリン・レブロン(Maclaughlin-Levrone)が優勝しました。400ハードルでも金メダルをとっている選手ですが,やたら織田裕二が推しているのが,ちょっとうざかったですが,走りはとてもきれいで見事な走法でした。すばらしい金メダルです。

2025年9月18日 (木)

王座戦第2局

 藤井聡太王座(竜王・名人,七冠)に,伊藤匠叡王が挑む王座戦は,藤井王座先勝のあとでしたが,伊藤叡王が逆転勝ちしました。1分将棋になってから,藤井王座に緩手があったようで,最後は藤井玉に詰みが生じました。双方の玉が接近し,駒が錯綜していましたが,伊藤叡王が難解な将棋を征しました。あの藤井王座でも,時間がないなかでは指し手の精度が下がるのですね。
 この将棋は,ホテルオークラ神戸で実施されました。三宮からシャトルバスで10分くらいですし,JR元町からも,歩いて20~30分で行けます。少し古いですが,落ち着いた感じの良いホテルです。先日は,ホテルの中にある医療施設で人間ドックを受けてきたばかりでした(毎年,利用しています)。AbemaTVで見ていると,昼食休憩後の対局再開時に,人間ドックについている昼食券を使って食事したときに接客してもらった従業員(責任者クラス?)の方が,対局者にお茶を出しているのが映ってびっくりしました。今度,対局者が昼食で注文したハヤシライスやオムライスを食べに行きたいと思っています。
 第3局は名古屋のマリオットです。駅に直結しているところで,一度宿泊したことがあります。ロビーには常に大勢の人が出入りしているような大きなホテルです。王座戦は1日制なので時間が比較的短いこともあり,1分将棋になると,今日のように何があるかわかりません。藤井七冠からタイトルを奪った経験のある唯一の棋士であり,王座戦の今後から目が離せません。

2025年9月17日 (水)

世界陸上4日目

 昨日の世界陸上の4日目は村竹ラシッドか見事に110mハードルの決勝に進出しました。惜しくも5位でしたが,メダルまであと一歩でした。この勝負も夢を見させてくれました。男子400mは中島佑気ジョゼフが,なんと着順で決勝に進出しました。走りは予選の方が良かったですが,とくに競り勝って順位で決勝進出はびっくりです。途中まで少し離されていたのでもうダメだろうと思っていましたが,見事な追い上げでした。400mというと34年前の高野進選手のことを思い出します。あの時の日本人選手の決勝進出は奇跡でした。それ以来の決勝進出ですが,400メートルはそれだけ日本人にとって遠い種目のです。村竹選手にしても中島選手にしても見事なファイナリストです。外国人の父と日本人の母を持つハーフ(これは現在では差別語か?)の選手には,それなりの苦労もあったと思いますが,とにかく結果が出て良かったです。
 1500m女子はキピエゴン(Kipyegon)が強かったです。田中希実さんが,この種目で勝負するのは,かなり大変なような気がします。もし決勝で自己ベストと同タイム(35919)を出していても11位です。それでも,決勝に出れていたら,それで十分ともいえそうですが,彼女にはもう一段高いステップに上ってほしいので,やはり最低のノルマは決勝で入賞ということにしたいです。とりあえず5000mで期待したいところです。キピエゴンは5000メートルにも出場するようです。
 男子800mの落合晃選手は,世界選手権に出場するだけでも大変な種目です。予選敗退となりましたが,まだ19歳と若いので良い経験になったと思います。とにかくアジア人で世界と戦える中距離選手というのは三浦龍司選手以外はいないので,頑張ってください。跳躍系では,走り高跳びで韓国の選手が頑張って,銀メダルをとりましたね。これは見事です。

2025年9月16日 (火)

世界陸上3日目はDuplantisの日

 昨日の世界陸上3日目は,SwedenのスーパースターのDuplantisの世界記録を最後まで観ていたために,寝るのが遅くなりました。ほんとうに良いものをみせてもらいました。ノーミスで金メダルを確定させたうえで,前人未到の6メートル30センチに挑戦となりました。最初の2回は惜しいところで失敗でしたが,3回目,なんとなく予感はしていましたが,バーは揺らしながらも見事に成功です。競技場にいた人もほとんど誰も帰っていなかったでしょう。棒高跳びでこれだけ感動を与えてくれるとは……。映画の演出ではないかと思えるような劇的な世界記録でした。
 午前中の男子マラソンは,アフリカの有力勢が脱落していくなかで,日本選手にも十分にチャンスがあるレースとなりましたが,惨敗でしたね。たしかに近藤選手はなんとかくらいついていて善戦したとはいえますし,ずっと観戦していたので,よく頑張ったと言いたいですが,結果は11位と厳しいものでした。ほかの二人は勝負にもなりませんでした。
 同じ善戦でも,3000メートル障害の三浦龍司はすごかったです(彼に対しては,いつも同じようなコメントをしているかもしれませんが)。8位ですが,最後の最後まで,観ている人に夢を与えてくれました。最後に後ろの選手と接触してバランスが崩れたのが残念でした(反則を受けたかどうかよくわかりませんでしたが,セパレートではない中距離のラストスパートは疲れ切ったなかでの激走で激しい肉弾戦となり接触が起こりやすいです)。いずれにせよ,メダルが十分に射程圏ということはよくわかりました。それにしても日本人でこの競技で勝負できるのはすごいことです。ハードル競技のほうがテクニックが必要であり,その点で器用さがある日本人に勝負ができる要素があるということかもしれません。かつて400メートル障害で為末大選手も活躍しましたね(今回は400障害は,3人とも予選敗退です。為末の偉大さがわかります)。三浦選手は,かつての新宅雅也選手と同じように,3000メートル障害からマラソンへと飛び立っていくつもりかもしれませんね。
 110メートル障害は,泉谷選手がフライングぎみの隣の選手に影響されて,スタートが大幅に遅れてしまい予選敗退となったのはもったいなかったですが,村竹選手と野本選手は着順で準決勝進出です。と書いていたところ,泉谷選手が,一人棄権が出たので,準決勝進出が決まりました。
 男子走り幅跳びは,橋岡選手がわずかの差で決勝進出ができませんでした。3回目の跳躍が良かっただけに,もったいなかったですね。

2025年9月15日 (月)

フリーランス法制についてのヒアリング

 12日に,内閣府の規制改革推進室の方から,フリーランス法制の今後に関するヒアリングを受けました。私たちの近著『フリーランス法制を考える―デジタル時代の働き方と法』(弘文堂)を事前に読んでくださったそうで,そのうえで,政策への応用を見据えた具体的な質問をしてくれました。未来志向の規制改革を志向する行政機関であれば,私たちの本には参考になる点が多く含まれているのではないかと思います。
 先方の主な関心は,デジタルプラットフォーム透明化法(特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律)を,今後デジタルレイバープラットフォーム(DLPF)にも適用すべきかどうかという点でした。ヒアリングを通じて議論は広がり,たとえば対象をフリーランスに限定すべきか,PF(プラットフォーム)就労者に絞るべきか。また,PF事業者を規制対象に含める場合,それが透明化法の拡張なのか,フリーランス法の拡張なのか,あるいは第三の法律として新たに設計すべきなのか,といった論点にまで及びました。さらに,そもそもどのような事項を規制すべきか,規制手法として透明化法のような共同規制的アプローチが適しているのかどうか,といった点も話題になりました。
 さらに,透明化法には独占禁止法的な発想がありながら,実際には約款規制的な取引規律法として機能していますが,そうした枠組みがPF就労者にも適しているのかどうか。そして,団体交渉の位置づけをどう考えるべきか,といった点も話題となりました。これらの論点はいずれも,従来の法律の枠組みでは捉えきれないものであり,新たな発想で論じる必要があると感じています。その方向性について,私たちの考えをお伝えしました。
 厚生労働省では,いま「労働者性をどうするか」といった,ある意味では従来型の議論をしていますが,それはそれとして,デジタル時代におけるPF就労の本質的な課題にも取り組まなければなりません。将来的には,ギグワークの比重は減少し,政策課題は,雇用や自営といった従来の区分が意味を持たなくなるような,自律分散型の就労者に対して,どのようにセーフティネットを構築するかという方向へと移っていくはずです。こうした課題に関心のある方,思考実験をしてみたい方には,ぜひ私たちの本を手に取っていただきたいと思います。

2025年9月14日 (日)

世界陸上2日目

 30分繰り上げて早朝から行われた女子マラソン。途中では,日本選手は厳しいかもしれないと思いながら観ていましたが,最後に小林香菜選手の驚異的な追い上げに心を打たれました。こじつけかもしれませんが,人生はこういうものだなと感じました。エリート選手に引き離されて苦しい展開になったものの,そこからの粘りが本当に素晴らしかったです。最初は軽くTVで流していただけなのですが,途中から目が離せなくなり,ゴールの瞬間には思わず感動してしまいました。陸上競技の多くは個人競技なので,選手一人ひとりにドラマがあり,それが観る者の心を動かします。小林香菜選手は早稲田大学出身で,在学中はマラソン同好会のようなサークルに所属していたそうです。そこから実業団に進み,急速に力を伸ばしてきました。人生はどんなルートを通っても,良い指導者との出会い次第で目標に到達できるということで,多くの人に希望を与えることでしょう。今回の7位入賞は金メダルとは違いますが,高橋尚子選手や野口みずき選手が金メダルを獲得した頃の状況とは,今は少し違うのかもしれません。ケニアやエチオピア選手の絶対的な強さのなかで,大和撫子がアジア勢で唯一,結果を出してくれました。️
 一方,男子1万mは厳しい戦いでした。スローペースで始まったので,まずいと思いました。最後のスピード勝負では勝てないからです。やっぱり,実力の差は大きかったですね。鈴木芽吹選手は駒澤大学時代から応援している選手で,今回は厳しい結果でしたが,その経験を糧にさらなる飛躍を期待しています。まずは1万mで6位入賞した廣中璃梨佳選手のように,粘りきって走れるようになってほしいです。

2025年9月13日 (土)

世界陸上始まる

 陸上好きの私としては,日本で開催される世界陸上は嬉しいです。
   初日は,35キロ競歩でいきなり銅メダルが誕生しました。途中までトップで走っていた川野選手は脱落しましたが,勝木選手が粘ってメダルを獲得しました。暑さと湿度の過酷なレースでした。マラソンと同様,もう少し良いコンディションで戦わせてあげたいですね。
 男子100メートルは注目でしたが,あまりにも世界とのレベルが違っていて惨敗でした。田中希実さんは1500メートル予選は敗退でしたが,勝負は5000メートルです。3000メートル障害は,三浦龍司選手は安定していますね。見事に決勝進出です。10000メートル女子決勝は,厳しい戦いとなりましたが,廣中璃梨佳選手は最後に見事に追い上げて6位入賞は見事でした。田中さんと並ぶ女子陸上界のエースです。男子砲丸決勝は,面白かったです。Crouser(クルーザー)選手の3連覇となりましたが,最終投てきで,メキシコの選手が逆転で2位に入ったのは感動的でした。1600メートル混合リレーは,予選はぎりぎりで通過して,決勝に出られてよかったですが,実力差は明らかです。アメリカ,オランダ,ベルギーという順位でした。

2025年9月12日 (金)

教育の質の低下と宇沢理論

 最近,教育の現場に対する信頼が揺らいでいると感じます。学力の低下や教員の過重労働といった構造的な問題に加え,信じがたい事件が報じられることも増えました。たとえば,小学校の男性教員が女子児童を盗撮し,SNSで画像を共有していたという報道は,教育者としての倫理以前に,人間としてのモラルが崩壊しているとしか言いようがありません。このような事件が起きてしまう教育現場に,子どもを安心して預けられるのかと,深い不安を覚えます。
 最近,経済学者・宇沢弘文氏の『社会的共通資本』(岩波新書)を読み直しています。宇沢氏は,教育・医療・環境など,人間が豊かに生きるために不可欠な制度や資源は,市場原理に委ねるべきではなく,専門家集団が公共性と倫理に基づいて運営すべきだと説いています。何を社会的共通資本と捉えるかは人によって異なりますし,私は労働それ自体も含められるのではないかと考えていますが,いずれにせよ教育はまさに社会的共通資本の典型だと思います。
 本来,教育は,人類社会が築いてきた文化と価値の継承であるはずです。しかし,近年の教育の現場では,成果主義的な発想や効率重視の姿勢が強すぎて,教師は,現場の成果管理者のような扱いになってしまっていないでしょうか。その結果,教育の本質が見落とされ,倫理や使命感が後回しにされてしまっているのではないでしょうか。
今回のような教員による性加害事件は,教育の「商品化」がもたらした副作用の一端かもしれません。
 子どもたちの未来を守るために,教育のあり方を根本から問い直す必要があると強く感じます。そしてその問い直しの出発点として,宇沢弘文氏の思想は,教育をどのような公的サービスと位置づけ,そして,そこにどのような人を配置すべきかということを考える際の重要な示唆を与えてくれます。そして,この面でも,AIの活用は重要なポイントとなると思います。人類の文化や価値の継承をAIにゆだねるのは情けないと考える人もいるかもしれませんが,むしろAIを活用して,どう人類の文化や価値を継承するかということを考えていく必要があるのです(AIという魔物をうまく使ってやれ,という気概でしょうかね)。

2025年9月11日 (木)

新浪氏の辞任に思う

 最近,違法サプリの問題を通じて「THC」や「CBD」といった成分について知る機会がありました。私は普段,サプリメントは「酒豪伝説」くらいしか服用していませんが,今回の新浪剛史氏(元サントリー会長)の辞任報道には驚かされました。
 サントリーは健康食品も扱う企業ですから,会長が違法成分を含むサプリを持っていたという疑惑が持ち上がればまずいですね。本人も,少なくともそのサプリにグレーな成分が含まれている可能性は認識していたでしょうし,それゆえ適法性の確認はしていたはずです。しかし,報道によればその成分は日本では違法とされていたとのことです。
 これに関係する麻薬取締法は,過失犯は処罰されないので,新浪氏がいう合法だと信じていたという主張がとおれば,故意が否定されて処罰されないことになります。経済同友会代表の辞任がまだ決まっていないのも,そうした法的判断が確定していないからかもしれません。とはいえ,仮に違法とは思わなかったとしても,リスクのあるサプリを服用していたという事実は残ります。会長辞任はそのためでしょう。
 依存症などでなければ,睡眠障害への対策だったのでしょうか。体質にもよりますが,眠れないまま重要な仕事をこなすのは並大抵のことではありません。私自身,時差ボケがひどく,頻繁に海外を飛び回るような仕事は到底できません。
新浪氏は体力的には恵まれていたのでしょうが,それでもサプリに頼らざるを得なかったのでしょうか。民間企業のトップでありながら,経済同友会など公的な役割も担っていた“スーパーマン”が,睡眠のためにサプリを必要としていたという事実は,現代の働き方の過酷さを象徴しているようにも思えます。
 もしそのような過剰な働き方がトップ層に常態化していたとすれば,周囲の社員や関係者にも同様の働き方を暗黙のうちに強要していた可能性はないか,という懸念も生じます。トップが休息を犠牲にして働き続ける姿勢を見せれば,それが「美徳」として共有され,結果として健康や法令遵守よりも成果やスピードが優先される風土が生まれてしまう危険性があります。「もっとゆっくり働いたらどうですか」と言いたくなるのは,単なる皮肉ではなく,現代社会における働き方の在り方への問いかけでもあります。過剰な責任を背負い,休息すら確保できない状況が,結果として法的リスクを招くのであれば,それは個人の問題にとどまらないともいえます。

2025年9月10日 (水)

王位戦終わる

 藤井聡太王位(竜王・名人,七冠)に永瀬拓矢九段が挑戦している王位戦は,藤井王位3連勝のあと,永瀬九段が2連勝して,盛り返していました。しかし,第6局は,藤井王位が勝って防衛となりました。これで6期連続となります。無敵です。途中まで評価値的にはやや永瀬九段が優勢のようで,素人目にも,藤井玉が左右から挟撃されて追い詰められていたようにみえましたが,永瀬玉が2ニの壁金もあり,あっという間に追い込まれ,寄せられました。この対局は,先週行われるはずでしたが,対局予定地の静岡があの竜巻に見舞われて,対局ができなくなるというアクシデントがありました。今回は東京の将棋会館で行われました。タイトル戦は全国を回ってやるのですが,悪天候のリスクとの戦いでもあります。これだけ日本の気象が不安定になっていると,タイトル戦も常にプランBCを考えていなければなりませんね。もちろん,そういう対策はできていると思いますが。
 白玲戦は早くも第2局が行われ,福間香奈女流六冠が,西山朋佳白玲に勝ち,11敗となりました。ところで,前に書いた白玲5期でプロ編入ということに対する,藤井七冠による異議の理由は,「棋力の担保があるか」ということでした。いまや羽生善治九段の最盛期よりも強いと思わせる藤井七冠の言葉ですから重い言葉です。ただ,よく考えると,藤井七冠が現在戦っているのはほとんどタイトル戦であり,通常の男性棋士との対局はほとんどありません(そのなかでも勝率は8割と驚異的です)。通常の男性棋士と対戦すると,ひょっとすると藤井七冠からは「棋力不十分」と言われるかもしれませんね。

2025年9月 9日 (火)

高知に行きました

 神戸に住んでいても,日常生活の中には,高知があふれています。私は高知のおいしいお酒とカツオがいただける「座屋(いざりや)」はお気に入りの店ですし,その他にも日本酒は高知のお酒をよく飲んでいます(私は自宅ではワインですが,外では日本酒をけっこう飲みます)。「座屋(いざりや)」は高知に本店があるし,朝ドラの「あんぱん」は,高知で育った夫婦の話ですし,なんてことも考えながら,今回,高知に行ってきました。四国は,徳島も香川も愛媛も仕事で行ったことがあるのですが,高知からは声がかかったことがありませんでした。今回もプライベートな旅行です。
 高知は,朝ドラの影響でしょうか,やなせたかし色・アンパンマン色でいっぱいでした。桂浜の坂本龍馬の銅像は,半世紀ぶりに訪れました。桂浜は,私の記憶とは違って,現代的なリゾート地に変わっていました。そのなかの一つの店で食べた貝ベースのラーメンは絶品でした。カツオを食べるということが旅行のメインの一つで,「座屋」本店には行きませんでしたが,カツオの藁焼きを食べられる居酒屋に行って堪能しました。もっとも料理自体は,神戸で食べるものと大きな違いは感じませんでした。ただホテル近くの日本酒専門店では,神戸から来たというと,地元でしか手に入らないという日本酒を丁寧に紹介してくれました。思わず「大人買い」して神戸に送ってもらいました。今日届いたので,さっそく「文佳人」(秋上がり)を飲みました。絶品でした。
 高知は,最低賃金も低く,経済的に遅れている印象があるかもしれませんが,食文化は豊かです。若者には刺激がないかもしれませんが,ゆっくり生活するのには良いところではないでしょうか(地元の人からは無責任なことを言うなと言われるかもしれませんが)。今回の1泊の短い滞在では,行けないところもたくさんあったので,今度はもっとゆっくり訪問したいです。神戸からは遠いのですが,かつて子どものころ,家族で行った四国一周旅行の道を,もう一度辿ってみたいと思います。

2025年9月 8日 (月)

石破退陣表明

 石破茂首相が,自由民主党総裁を辞任すると表明しました。阪神優勝で盛り上がる関西では,ニュースの扱いは2番手でしたが,こちらのほうが日本にとっては大きな出来事です。
 次に誰が首相になるのかはまだ見えません。石破首相以外にふさわしい人物が浮かばず,自民党が与党の地位を失う可能性もあります。茂木敏充氏には人望がなく,高市早苗氏なら野党が結束して野田佳彦政権が再登場するかもしれません。小泉進次郎氏は「軽い神輿」として担ぎやすいと見られていますが,その一方で大化けする可能性もあります。
 林芳正官房長官は首相就任を目指して参議院から衆議院に鞍替えしました。小泉氏や「コバホーク」(小林鷹之)といった世代が首相になれば,自身の機会が失われるため,出馬は必至でしょう。林氏が首相になるとすれば「これが最後」という覚悟かもしれません。
 石破氏は満を持して首相になったわけではなく,むしろ旧安倍派の面々の厚顔無恥さが想定以上だったのかもしれません。本来,選挙の責任を取るべきは旧安倍派の関係者だったと思います。選挙とカネの問題が自民党内部で「軽微な罪」とみなされていて,安倍派の面々の扱いが不当に重いという捉え方が党内ではあったとしても,結果として選挙とカネが選挙に敗れた主因となったのです。旧安倍派は巧みに石破氏に自分たちの責任を転嫁しましたが,有権者はその点を見ているはずです。
 石破おろしは,自民党の延命のための策だと党員の多くは考えているかもしれません。しかし,実際には党の寿命を縮めることになったのかもしれません。麻生太郎などが動いてキングメーカー気取りであることが,一番見苦しいことではないでしょうかね。

2025年9月 7日 (日)

阪神優勝

 阪神タイガースが優勝しました。まだ余韻に浸っています。2年ぶりです。強くなりました。97日の優勝はNPBセ・リーグ史上最速だそうです。夢のようです。私の子ども時代は,江夏がいても,田淵がいても,巨人に勝てませんでした。赤ヘルが強くなり,中日や広岡のヤクルトが優勝しても,阪神は1964年以降は,吉田監督の1985年まで優勝できませんでした。それからまたあと1990年代は優勝できず,ようやく星野仙一監督の2003年,岡田監督の2005年と優勝しましたが,その後はまた暗黒の時代で,岡田監督の再登板の2023年の優勝は感動的でした。そして今年です。今年の強さは,また格別です。1985年のときのようなバース,掛布,岡田,真弓の強力打線とは違い,たしかにサトテルはよく打っていますが,全般的には,ロースコアの戦いで投手陣で勝ち抜くスタイルです。岡田監督の守りのスタイルと似ています。
 今年は,村上と才木という右の2枚のエースが安定していました。1964年の優勝は,私は記憶はありませんが,バッキーと村山という二人の大エースが競い合いました。ただこのときはバッキー29勝,村山22勝と桁違いでした。投手分業制が確立していない時代で,エースは先発完投が当たり前でした。いまは先発は100球くらいで交代なので,後半に逆転するような試合では勝ち星はつきません。むしろ,そのあとの中盤そして終盤が重要で,阪神はそれらの投手の安定が際立っていました。言うまでもなく,日本記録更新中の石井の活躍は大きいです。私は,MVPは石井ではないかと思っています。たしかにサトテルも候補になりますが,石井がいなければ優勝はできていなかったことは確実です。
 近本は8月後半は調子が崩れましたが,この選手は,いるだけでみんなが安心する阪神の支柱です。中野は選手会長として頑張りました。森下は勝負強いバッティングでチームを何度も救いました。サトテルは,野球選手としてなぜ1年でここまで成長できたかが不思議ですが,たんなる阪神の人気選手の域を超え,日本を代表する大選手になりましたね。大山は,不動の4番の座をサトテルに譲り,脇役に徹しました。この献身性も,珍しいことです。大山がいてくれてよかったという試合がいくつもありました。6番以降は安定しませんでしたが,守備的には坂本捕手の成長が大きいです。梅野が控えに回るという形になったことで,阪神の捕手は安定しました(3番手の捕手が育っていないのが問題ですが)。6番と8番,レフトとショートが流動的になったことで,選手間の競争が激しくなり,そのなかでいろいろと新しい選手ができてましたし,とくに熊谷の活躍がすごかったです。投手陣は,村上,才木,大竹,伊原,途中から伊藤,高橋も加わり,途中まではデュプランティエも貢献してくれました。抑えは,石井以外にも岩崎,及川,桐敷,湯浅,途中からドリスらも頑張りました。
 監督の選手起用で印象的であったのが,選手が怪我をしないことを最優先に,とりわけ投手を慎重に使っていたことです。中盤以降の選手は疲労が蓄積することに配慮し,目先の1勝を取りに行くような無理な使い方はしませんでした。貯金があったからできたことでしょうが,新人監督の冷静な選手起用は際立っていました。ファンからすると,疑問があるような選手起用も,あとからみると,しっかりとした理由があることがわかり,その一貫した姿勢は,どことなく理詰めの研究者のような雰囲気もありました。
 藤川監督が強調したように,ペナントレースのチャンピオンであるのは阪神であり,そのことは変わりありません。このあとのクライマックスシリーズや日本シリーズがありますが,これは別のステージです。日本シリーズにも勝ってほしいですが,むしろ期待したいのはセ・リーグ2連覇です。

2025年9月 6日 (土)

読書の秋

 毎年,多くの本が刊行されます。そのなかのごく一部しか読むことはできませんが,少しでも多くの本を読まなければ損だという気持ちになります。せっかく他人が知識を提供してくれているのに,それを活用しない手はないからです。最近ではデジタル本であれば,見事な要約をしてくれるAIもあり,全文を読む必要すらありません。Marxの『資本論』やLockeの『市民政府二論』のような古典もインターネット上で参照でき,要約も容易に得られます。たとえばロックが労働による所有について述べた箇所や,生存権的な発想が見られる部分を生成AIに尋ね,その引用が正しいかどうかを原文で確認することもできます。
 自分の書いた文章も忘れていることが多いため,NotebookLMに読み込ませて要約や確認をしています。質はともかく量的には膨大なので,AIに頼らなければ自分でも整理ができません。
 自宅の本棚はそれほど大きくはないものの,それでもかなりの数の本があります。眺めていると「まだ読んでいない」「もう一度読んでみたい」「読まなければならない」と思う本が目につきます。また研究室に行けば本だらけで,地震が来れば本に埋もれてしまうほどです。つまり,私の周囲だけでも膨大な情報が眠っており,それを一生のうちにすべて吸収することは到底できないのです。だからAIを活用して,少しでも吸収できないかと考えています。もっとも,自分のよく知っている分野については,生成AIに尋ねても正しい答えがすぐに返ってくるわけではありません。数度のやりとりを経てようやく正解にやや近づくということもよくあります。ただ,これも,こちらが誤答への注意を払いながら,プロンプトの工夫をすることで改善が期待できます。いずれにせよ,AIの可能性を理解し,これをうまく使うことは,手書きからキーボード入力へと移行したときと同様,少なくとも私たちの業界では避けられないでしょう。

2025年9月 5日 (金)

野川忍『労働法(第2版)』

 野川忍先生から『労働法(第2版)』(日本評論社)をお送りいただきました。大著です。いつもお気遣いいただき感謝申し上げます。明治大学は定年退職されたそうですが,研究活動はまだ続けられるのでしょう。はしがきにも,研究者としての責任感がにじみでています。
 『労働法』は,まともに体系書を書くとなると,やはり本書のように1000頁を超えるボリュームのあるものとなります。最近の『労働法』という名のつく本は,このような本格的な本と,安直に学べることを売り文句とした本の両極端となってきているような気もします(いつも同じようなことを言っていますね)。
 本書では,拙著のAI時代の働き方と法―2035年の労働法を考える』(弘文堂)を「AI時代の労働法制を論じた好文献」として紹介してくださっています(312頁注49)。有り難いことです。また,拙著が,今後の労働法制の展望について,「少なくともこれまでの労働法の機能のほとんどが失われる可能性を示唆している」という内容で紹介してくださっています(31頁注39)。私は,現在も基本的にはこの考え方に変わりありませんが,より広いパースペクティブで労働政策を論じようと知的格闘をして苦しんでいます。
 それはさておき,『最新重要判例200労働法』(弘文堂)の改定作業をする際にも,本書のような信頼のおける体系書は助かります。本書を参考にしながら,最新の判例や学説の動向を確認させてもらえればと思っています。

2025年9月 4日 (木)

王座戦

 藤井聡太王座(竜王・名人,七冠)に伊藤匠叡王が挑戦する王座戦5番勝負が始まりました。シンガポールでの国外対局です。藤井王座以外でただ一人タイトルをもつ伊藤叡王が二冠目をめざして挑戦をします。王位戦で永瀬拓矢九段に2連敗して調子が下降気味にみえる藤井王座でしたが,今日は快勝ではなかったでしょうか。途中まで先手の伊藤叡王がわずかですが評価値は上でしたが,桂馬による飛車・銀両取りがかかり,そこで伊藤叡王が猛攻をしかけましたが届きませんでした。第2局は2週間後に「ホテルオークラ神戸」で行われます。
 女流の白玲戦が始まりました。西山朋佳白玲(女流二冠)に福間香奈女流六冠が挑戦した初戦は西山白玲が勝ちました。この二人の対局は,最近は,福間さんが押し気味でしたが,この将棋は西山さんが強かったです。白玲戦は,タイトル通算5期でプロ棋士に編入できる権利が与えられることになりましたが,藤井竜王・名人が異論を唱えたことでも話題になりました。羽生善治前会長が清水市代女流七段に女性初の会長を引き継ぐうえでの置き土産という感じがしますが,編入試験とは別ルートでのプロ騎士になれる権利を与えることの是非は議論あったところです(これは前にも書きました)。西山さんはすでに3期もっていて,あと2期とればプロ棋士になれます。西山さんや福間さんがプロ棋士になっても,おそらく男性棋士は異論を唱えないでしょう。男性棋士はかなり二人には負けていますから。しかし,この二人以外の女流棋士は,残念ながら男性棋士に勝てそうな人はいないのです。西山さんや福間さんを想定して白玲通算5期でプロ棋士になるという制度をつくってしまうのは,はたしてよいのでしょうか。男性プロ棋士が,身を削るような三段リーグを経てやっと四段(プロ)になることに比べて,これでよいのかという気もします。実際に白玲5期でプロになる女流棋士が出てきたときに,議論が再燃するかもしれませんね。いまのところは西山さん以外に,白玲のタイトルをとったことがあるのは福間さんだけです(1期)。

2025年9月 3日 (水)

作家の自宅住所

  朝ドラの「あんぱん」で,柳井崇の家にファンの子(この作品の脚本家の中園ミホさんがモデル)が押しかけてきたシーンがありました。昔は,書籍には作家の住所が書いてあったので,それで知ったという設定でしょう。現在の感覚からすると,どうして自宅住所がわかったのか不思議に思えそうですが,昔は普通のことだったのです。作家にファンレターを送るということはあったようで,中園さんもやなせたかしと文通をしていたそうです。ややシチュエーションは違いますが,似顔絵を書いてもらったのは実話だそうです。
 いまでは書籍に著者の住所を書くというのはありえないことです。SNSの時代ですので,SNSを通したやりとりはありえても,リアル世界でプライベートな場での交流は考えられません。これは個人情報保護法の制定などでプライバシー意識が高まったということもありますが,もともとそういうのは嫌だったけれど,慣行だと言われて仕方なくそうであったということもあったかもしれません。
 もちろん出版社には,送付してもらう物などがあるので自宅住所を教えますが,必ずしもそういう特別な必要がない場合でも,副業先に源泉徴収票の関係などの理由で住所を伝えるよう求められることがあります。マイナンバーを提示すれば十分ということにはならないのでしょうか(住所とマイナンバーだと,どちらかというと,マイナンバーのほうを教えるほうがよいです)。管轄の税務署が知りたいというのであれば,それだけ教えればよいはずですよね。マイナンバー1枚で十分ということが増えれば,もっと普及すると思います。以前,ある大学で講演した際には,生年月日まで教えるよう求められたことがありました。目的を尋ねると,同姓同名の人を識別するためだという説明でした。このように,不用意に個人の情報を取得したがる組織はまだまだ存在しますね。

2025年9月 2日 (火)

パレイドリア

 幼い子どもは,日常生活のなかの思いもかけない記号や文字をみて怖がることがあります。大人には何が怖いと感じているのか,わからないのですが,徐々に言葉を話せるようになると,怖がっていた理由もわかってきます。記号や文字が不気味なモンスターのようなものにみえているのです。
 生成AIにこのことを問うと,どうもパレイドリア(Pareidolia)と呼ばれる脳の働きが関係しているそうです。パレイドリアとは,古代ギリシャ語から来ているもので,「本物ではない像を,何かに似ていると認識すること」という意味だそうです。
 曖昧な視覚情報から意味のある形を見出す脳の働きであり,雲の形が動物にみえたりするのも,そのためです。これは錯覚ではなく,脳が意味を探そうとするという自然な認知機能であり,とくに顔認識に関する領域(側頭葉の一部)が活性化しているのです。私たちも,のっぺらぼうの顔でも,脳で補って好きな顔として認識してしまうというのも,それと同じかもしれません。幽霊をみたというのも,同じでしょうかね。
 とくに幼児期は,視覚での認知と感情反応が密接に結びつく時期だそうで,文字や記号に「顔らしさ」を感じやすく,それに対する恐怖反応は,未知のものに対する自然な防衛本能なのです。これは同時に,子どもの脳は,自分のみている世界を意味で満たそうとする創造的な作用をしていることも意味しています。
 最近では音声を発する機械もあり,たとえばリモコンで操作して音声が出てくると,そのリモコンに恐怖心をおぼえるということもあるようです。どのように想像と創造を働かせているのかわかりませんが,その能力はある意味では羨ましいものです。成長にともない,知識が増えていき,創造・想像できる部分が小さくなっていくのでしょうが,それは残念なことでもあります。

2025年9月 1日 (月)

マジック7

 甲子園の巨人戦も21敗で終わり,マジックは7。これで優勝はもう間違いないでしょう。藤川監督は,甲子園の巨人戦ということにこだわっていて,まだ巨人戦は東京ドームで1試合残っていますが,もう終わったという感じのコメントを出していましたね。177敗という圧倒的な成績で巨人に勝ちました。大逆転で負けたゲームもあるし,今回のようなギリギリの勝負もあるのですが,巨人にダメージが残るような勝ち方が多かった印象です。今年の阪神は負けをあまり引きずらないのは,藤川監督の超前向き思考が影響しているような気がします。次につながるかどうかということしかみていません。選手もそういう観点で評価されるので,失敗しても,前向きな失敗であれば許されるということで,思い切ったプレーができそうです。昨日は,なかなか1軍でのチャンスがめぐってこなかった小野寺が活躍してよかったです。
 しかし,今年の阪神は,なんといっても熊谷敬宥選手の活躍がすごいです。内野手登録で,専門はセカンドやショートですが,どこでも守れるし,そこでファインプレーを連発します。代走要員だったのに,勝負強い打撃で,現在,阪神のなかでチャンスに一番期待できる選手です。そろそろ相手投手にも研究をされ,弱点がつかれるかもしれませんが,何かやってくれそうな雰囲気が漂っています。これまでの下積みの長さが無駄になっていないということでしょう。実は攻走守3つが高いレベルで揃っているのであり,使わない手はありませんでした。これまでは一つに秀でていなければなかなかチャンスがつかめなかったのですが,今年は運がよかったです。ショート木浪とレフト前川が当初のレギュラーであった今シーズンですが,二人が脱落したとき,まずはショートは小幡ですが,レフトと6番が定まりませんでした。レフトに外野登録ではない熊谷,高寺,中川(捕手登録)あたりを使うという発想の転換が柔軟でした。左投手の場合には,熊谷をショートにし,レフトに高寺か中川らを使うということで,攻撃力と守備力がアップしました(前川は,守備は下手です)。攻撃力というと,ホームランや長打を打てる選手というイメージですが,単打でもタイムリーヒットを打ったり,四球を選べることも攻撃力ですよね。ロースコアのゲームが多い昨今の試合では,この意味での攻撃力が貴重となっています。ちなみに熊谷は守備では,センターも,サードも,ファーストも守っています。
 前川は28分を打てるならともかく,四球もあわせて3割ちかい出塁率をもつ熊谷は,守備力だけでさらに2分くらいアップできるので,とても勝てません。前川はファンの期待が大きいのですが,打撃をみがき,サトテルに近いくらいの成績をあげなければパ・リーグへのトレード要員となるでしょう(DH導入まで阪神は1年待ってくれるか。あるいはサトテルが大リーグに行って,大山が3塁に戻り,そのあとの1塁を狙うかですね。それにしても3割,30本,100打点くらいをあげなければ無理でしょうが)。
 熊谷は,まだヒッティングマーチがないようです。糸原,木浪のような元レギュラーや原口にあるのはよいですが,前川,島田,小野寺,ヘルナンデスにもあるので,今シーズンの活躍からすると,熊谷にはすぐにつくってほしいですね。

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