王座戦第3局
王座戦第3局は,伊藤匠叡王が藤井聡太王座(竜王・名人,七冠)に勝利し,対戦成績が2勝1敗としました。王座戦は5番勝負ですので,伊藤叡王はこれでタイトル奪取に王手をかけました。この一局は,先手の伊藤叡王が藤井王座を押し切った印象で,非常に力強い勝ち方でした。次の第4局は,タイトル戦の舞台として知られる神奈川の陣屋で行われます。私自身,一度訪れてみたい場所です。
一方,先日のNHK杯では,谷川浩司十七世名人と服部慎一郎七段の対局がありました。谷川十七世名人は最近服部七段と対局しており,4連敗を喫していました。今回も厳しい戦いになると思っていて,原稿に追われていたこともあり,リアルタイムでは観ていなかったのですが,谷川さんが勝ったと知って,あわててNHKプラスで観戦しました。NHK杯は持ち時間が短いこともあり,通常はベテランには不利と見られていますが,63歳の谷川名人は「ひねり飛車」という,近年では珍しい戦法を採用(私は個人的には好きな戦法です)。これが奏功し,見事に服部七段を破りました。まさに驚きの勝利といえば失礼でしたが,嬉しかったです。
服部七段といえば,昨年は史上最高勝率に迫る勢いを見せた若手の有力棋士であり,現在もB級1組の順位戦で首位を走り,来期にはA級昇級の可能性が高い人です。その服部七段に勝利したのは,大きな意味を持つ一局といえるでしょう。さらに谷川十七世名人は,非公式戦ながらサントリー東西対抗の予選で船江七段にも50数手で勝利しています。東西対抗は勝ち進みましたが,予選決勝で,久保利明九段に負けてしまいましたが,復活を感じさせました。最近は攻め味の鋭さが戻り,本来の「光速流」がよみがえってきているのかもしれません。とはいえ,年齢的に勝ち続けるのは容易ではないでしょう。順位戦B級2組でも2勝2敗とまずまずの成績を残しています。まだまだ私たちに夢を感じさせてください。

