「そうすると」
判決文で「そうすると」という接続詞が使われることがよくあります。私が知らないだけなのかもしれませんが,これは正式な法律用語であったり,あるいは慣用的な法律用語であったりというわけではありませんよね。一般用語としてみたら,「そうすると」というあとに来る結論は,「それゆえ」「このような理由により」「したがって」などと比べると,かなり説得力が小さいものでしょう。あまり論理としてクリアでない場合に使うものだと思っています。逆にいうと,個人的には,労働委員会の命令などでも,できれば「そうすると」という接続詞を使わなくてすむようなクリアな論理が展開できればいいなと思っています。
なんてことを日頃思っていたのですが,たまたま最近届いた『最新不当労働行為事件重要/命令・判例』(菅野和夫先生が監修ということは知りませんでした)の最新号(2025年4月号)に,学研エデュケーショナル事件の都労委命令(令和6年2月20日)が掲載されていて,それを読んでおやっと思うことがありました。この事件は,以前の公文の事件と同様,フランチャイズ経営の学習塾におけるフランチャイジーの労働者性が争点となっているものです。公文事件では,都労委の初審命令では労働者性を肯定していました。学研のほうは,これと違う判断がされて,労働者性は否定されました。事案が違うのでしょうかね。命令文を読んでいると,労働者性を否定する要素もあるし,肯定する要素もあるなか,どっちに転ぶのかはっきりしないまま,「そうすると」という接続詞が来て,労働者性が否定されていました。「そうすると」というのが,どういう論理で結論に結びついているのかよくわかりません。微妙なケースであったので,仕方がなかったのかもしれませんし,和解がうまくいかず,白黒つけなければならないことになったので,こういう書き方になったのかもしれません。気持ちはわかるのですが,申立人からすると納得がいかないところもあるでしょうね。
こういう場合,せめて労働者性の判断だけを専門に迅速にする特別な手続をつくったらどうか,そしてその認定にAIを使ったらどうかというのが,いつもしつこく書いている私の提案です。じっくり審査して正確性を期すという観点からは雑に思えるかもしれませんが,そもそも実体ルールとして労働者性の判断基準がよくわからないものなので,とくに複雑な事案や先進的な事案になれば,正確性の期しようがないのです。それだったら迅速にやってしまったらどうかというのが私の提案の趣旨です。生成AIのクセからすると,「そうすると」と書かずに,「それゆえ」と書いて,思い切った結論を出すでしょう。労働者性については,立法論としては,これを論じる実益がどこまであるのかということに疑問を感じているので,どうしてもラディカルな提案になってしまいますね。
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