有期労働契約判例
弘文堂『ケースブック労働法(第8版)』が出たのが2014年3月で,それから11年が経過しています。たった11年という気もしますが,この間に最も激しく変化があったのが,有期労働契約に関する部分でしょう。ケースブックでは,有期労働契約については雇止めに関する判例しか掲載されていません。労働条件の均衡については,丸子警報器事件判決は掲載されていますが,いまさらこの判決というわけにはいかず,授業では扱う判例を追加しています。私の『最新重要判例200労働法(第8版)』には掲載されていますが,判決は全文を読んでもらいたいので,そう促すような質疑応答をするように心がけています(ソクラティック・メソッド)。昨年には名古屋自動車学校事件の最高裁判決が出ており,基本給,賞与,退職金,諸手当について,だいたい判例がそろってきましたが,そこから判例分析としては何を導き出せるでしょうか。最高裁は,「困った」法律になんとか対応しているということかもしれません。私が裁判官なら,短時間有期雇用法8条に強行性を認める解釈は難しいとして,立法趣旨とは違うかもしれませんが,訓示規定と解したくなります。地裁でもいいので,どこかでそういう解釈を示す裁判例が出てこないですかね。訓示規定や理念規定としても,状況によっては,不法行為が成立して損害賠償請求できることはありえます(現在の規定でも,結局は救済方法は不法行為なのですが)。そうなると,丸子警報器事件の判決も参考になりうるので,一転して,これを授業で取り扱うことにもなるかもしれないのですが……。

