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2025年4月の記事

2025年4月30日 (水)

名人戦第2局

 藤井聡太名人(七冠)に,永瀬拓矢九段が挑戦している名人戦の第2局は,熱戦となりましたが,藤井名人の勝ちで,これで2連勝となりました。途中で,永瀬九段は,藤井名人の玉頭に迫っていきましたが,いったん飛車を撃退したあと,永瀬九段の1手の疑問手をとがめて,藤井名人の攻めが始まり,最後は手堅く勝ちました。強さが光りました。
 名人戦と並行して行われる棋聖戦は,なんと杉本和陽五段が,決勝で永瀬九段に勝ち,初挑戦を決めました。C2組の棋士のタイトル挑戦はあまり例がありません(2年前には,佐々木大地七段が挑戦したことがありました)。棋聖戦との相性が良かったのでしょう。藤井棋聖に勝つことは難しいでしょうが,同じ振り飛車党の菅井竜也八段が昨年の王将戦で藤井棋聖に完敗したので,再び振り飛車がどこまで藤井棋聖に通用するか楽しみです。
 王位戦では,挑戦者決定リーグの白組で永瀬九段が4連勝でプレーオフ進出を決定,紅組は渡辺明九段が休場となり,その不戦敗を考慮すると,佐々木勇気八段と大橋貴洸七段と八代弥七段が31敗で並走しています。
 女流棋戦では,西山朋佳女流三冠が,タイトル挑戦戦(女流王位戦)の直前に病気で辞退というアクシデントがありました。急遽,挑戦者決定戦で西山女流三冠に負けていた伊藤沙恵女流四段が福間女流王位に挑戦となり,初戦は伊藤女流四段が勝ちました。
 ところで,女流棋戦は,白玲に通算5期でクイーン白玲になると,プロ棋士(フリークラス)になれるようにすることが検討されているというビッグニュースが飛び込んできました。現在は西山女流三冠が白玲通算3期(福間女流五冠が1期)で,最も近いところにいます。現在は,プロ棋士編入試験を突破しなければなりませんが,女流どうしの戦いだけで,プロ棋士になれる可能性があるということになると,厳しい三段リーグを経なければならない男性棋士との比較から甘いのではないかという,異論が出てくるかもしれませんね。

2025年4月29日 (火)

昭和の日

 今日は昭和の日です。今年は昭和100年,戦後80年という年です。阪神が暗黒時代から抜け出して優勝してから40年です(伝説となっている,バース,掛布,岡田の甲子園バックスクリーン3連発がありました)。40年というと,男女雇用機会均等法の成立から40年,御巣鷹山の事故から40年です。1985年はいろいろなことがあった年だったのです。Wikipediaで確認すると,このほかにも,横綱北の湖の引退,田中角栄が脳梗塞でたおれて政界引退,NTTJTの誕生(電電公社やタバコの日本専売公社の民営化),豊田商事事件,夏目雅子が白血病で若くして死去,プラザ合意などがありました。
 その15年前に大阪万博がありました。三波春夫の万博の歌は,いまでも頭に残っています。今回の万博は,テーマソングはあるのでしょうかね。今回の万博については,やる必要はない,あるいは延期すべきであるというように批判的ではあったのですが,始まった以上,どういうことがなされているか観ておきたい気がしてきました。55年前のほうの記憶はほとんどありませんが,どこも列が長がかったので,並ぶ必要がなかったギリシャ館に入ったという記憶があるだけです。今回は折角の機会なので,意地をはらずに素直になって,面白そうなパビリオンは拝んでおこうと思います。これから情報収集をすることにします。

2025年4月28日 (月)

使用者の経費援助禁止はなぜ存在するのか

 連合総研の『労働組合の「未来」を創る理解・共感・参加を広げる16のアプローチ』(20246月)の報告書をみていて(これは大変よい報告書だと思います),そこで収録されている座談会のなかで,就業時間中の有給の組合活動の禁止をめぐる議論があり,山川隆一先生の「経費援助も,実質的に自主性を侵害しなければ違法ではない」という発言に,他の参加者が驚くというところがありました。たしかに,これは難しい法解釈上の問題があり,あいまいなところもあるのですが,正確に理解するには,経費援助禁止規定がなぜあるかということから考えておかなければなりません。経費援助は不当労働行為である前に,労働組合の定義のところに出てくるもので(2条ただし書2号),それは労働組合が自主的な団体でなければならないという要請から出てくるものです。企業の経費援助を受けているような団体は自主性を損なう危険性があるとされているのです。これは経験的な事実からくるものですが,でも実際には自主性を損なっていない場合もありえて,それならどうだろうということです。たとえば実質的な交渉をしたうえで労働協約により勝ち取ったという経費援助であれば,自主性があることのまさに証しだともいえます。しかし,そうした問題のない経費援助と,御用組合化のおそれのある経費援助との区別が実際には難しいので,許容される経費援助の範囲は限定されることになるのです。このあたりをどう評価するかは,労働委員会の資格審査でも問題となるところです。ただ,経費援助でも,就業時間中の組合活動については,山川先生も指摘されているように,「労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し,又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではな」い,という明文の例外規定があるので,それを根拠として解釈を広げることは可能です。
 とはいえ,座談会のなかで,他の参加者が,こうした学説をもっと広めようという方向で議論をしているのは,ちょっとどうかと思いました。
 そもそもこの規定は,前述のように,不当労働行為禁止規定(労組法73号)である前に,労働組合の定義規定に含まれていることが大切です。まだ経費援助が不当労働行為として禁止されていなかった旧労組法の段階から,労働組合の定義として,「主たる経費を使用者の援助に仰ぐもの」が除外されていました。どうしてこういう規定があるかというと,繰り返し述べるように,労働組合への教育機能なのです。経費援助を受けていたり,また別の条文にあるように利益代表者の参加を認めたりしていると,自主性を失った御用組合(カンパニーユニオン)になってしまいます。こうした組合は,組合員のためにもなりませんし,なによりも,ほんとうに自主的な組合をつくろうとしている労働者に迷惑となります。そして,そのことが不当労働行為の話につながるのです。つまり,自主性を失っている労働組合の存在は,使用者にとっては,真正な労働組合の結成や活動を阻害するという点で都合がよいから禁止されるのです。ただ経費援助禁止それ自体は,労働組合側にそういうものを受けないほうがよいですよ,という意味が強い規定なので,それほど強い効力(違反への制裁的効力)をもたせるのはどうかという話になっていきます。法律をつくるときに,もう少し上手なやり方があったのではないかと思いますが,いまさら法改正は難しいでしょう。
 こういう独特の規定であることから,経費援助禁止規定は,行為規範と評価規範として分けて考えるのがよいでしょう。つまり行為規範としてみた場合,やっぱり経費援助は受けない方がよいのです。したがって,労働組合には使用者の経費援助を受けないようにしなさいと言わなければなりません。例外は,労組法で明文で定められている範囲(「労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し,又は交渉すること」,「厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し,若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与」)に厳格に限定すべきです。
 一方,裁判や労働委員会の場で経費援助行為を判定するとときの評価規範としては,自主性の実質的な侵害がなければ,容認するという態度がとられやすいし,それでよいのだと思います。経費援助禁止規定は,いわば歴史の教訓ということなので,それをふまえて労働組合は使用者からの経費の援助のあり方を考えてほしいというものであり,労働委員会としては,労働組合がそのことをわかったうえで,自主性をしっかり確保しながら労働協約を締結して経費援助を受けているのなら問題とはしないという態度をとることが多いのだと思います。山川先生の発言は,こういうことをふまえたものだと思っています。
 ちなみにチェック・オフは経費援助に形式的には該当しないと思いますが,こちらは経費援助禁止規定の趣旨を実質的に考えると,自主性を侵害する行為として望ましくないともいえます。こちらは適法とする解釈が定着していますが,真正な労働組合であれば,組合費は組合自身がしっかり徴収するのが本来の姿でしょう(組合員に直接しっかり納入してもらうべきだということです)。使用者の手を借りて賃金からの天引きで組合費の徴収することは望ましくないということを理解したうえで,徴収コストが高すぎるなどの理由で,必要悪としてやっているという自覚が労働組合には必要だということです。
 もっとも労働組合と使用者との関係に関する敵対型モデル(労組法の立場)というものを放棄して,抜本的な法改正をするならば,話は変わってきます。経費援助の禁止や利益代表者の参加の禁止といったうるさいことを言わなくてもよくなるでしょう。これが従業員代表制度の根底にある議論にもつながります。

2025年4月27日 (日)

大型連休

 大型連休が昨日から始まりました。私は,昨日は神戸労働法研究会があり,自身もプレゼンをしたので,本日から連休と言いたいところですが,大学の授業は,基本的にはカレンダーどおりですので連休は5月3日から6日までの4連休にとどまります。ゴールデン・ウイークの休みがどうなるかが年によって変わるというのは,あまりよくないので,少なくとも公的機関は,4月29日から5月5日の1週間は休みにして,文字通りのゴールデン・ウイークにすればどうでしょうかね。また,その前後に土曜や日曜がくっつくと連休が伸びます。たとえば28日が土曜日であれば,5月6日は日曜となるので,28日から5月6日までの9連休となり,27日が土曜日であれば,27日から5月5日までの9連休となるという感じです。28日が月曜であったりすると悩ましいですが,そこは28日を休みにして,連休を26日の土曜日からにするかどうかは,各企業の判断とすればよいでしょう。
 一方で,このような一斉連休は,観光地が混むというような問題があるので,休暇時期をばらしたほうがよいという考え方もあります。それなら逆にゴールデン・ウイークをやめて,4月29日や5月4日の祝日は別の日に移動させてよいでしょうし,さらに5月5日もこの日にこだわる必要はないでしょう。たしかに,端午の節句なのですが,こどもの日という以上は,もはや男の子の成長だけを祝う必要はないので,男の子のいる家庭がその日にお祝いをするのは自由だけれど,男の子,女の子双方のお祝いの祝日としては,別の日に設定してよいような気がします。前に建国記念日のハッピーマンデー化について書いたことがありましたが,特定の日にこだわるべき祝日とそうでない祝日を分けるということです。ハッピーマンデーよりも,祝日を分散させながら,年次有給休暇の100%消化を目指しながら,できるだけ個人の好きなときに休めるようにするというのが理想でしょう。

2025年4月26日 (土)

個性とは何か

 前に書いた養老孟司さんの話の続きですが,彼は,個性などを求めるなということを言っています。個人は身体的にみれば,あるいは遺伝子をみても,十分に個性的であり,親の細胞でさえ免疫反応を起こすくらい個性的であるのです。ハラリ氏も『サピエンス全史』で,アメリカ独立宣言のすべて人間は平等に造られていると唱えていることを皮肉って(?)います。そもそも人類は「造られたもの」ではないし,異なった形で進化しており平等ではない。むしろ,そこで平等であるとしている人間には奴隷が含まれていないという身勝手なものであるということも指摘しています。
 養老さんは,個性的な個人からなる社会のなかで,社会のルールを学ぶ,つまり他人に合わせることを学ぶことこそ,子どもたちに教えるべきだと言っています。これは,道徳のことなのかもしれません。個性的な人類に,さらに個性的であることを求めれば,社会がうまくいくわけがないということでしょう。養老さん自身,十分個性的であると思いますが,こういう一流の人は,その個性がにじみでてくるのは仕方がなく,ただ本人は自分が個性的であろうとは考えていないのでしょう。東大教授をされていたことからもわかるように,あるときは個性をおさえて社会のルールにしたがってこられたのでしょう。個性の発揮は,促されて行うものではないということです。
 ただ,研究者は,独創性が求められるのですが,これは個性とは違うのでしょうか。私は研究者の場合,かぎられた分野で独創性を求めて,個性的な研究をすることはやはり必要なのだと思っています。しかし,それは研究者が行っている学問は,人類の進歩を目指すものでなければならず,他人の学問をそのままなぞっているだけでは,やる意味がないということからだと思います。人類は分業して生きているわけですが,分業は個人がその得意分野で自身の個性を発揮することが大切です。学問の領域で,他人の学問をなぞることしかできない人は,学問の発展に貢献できないので,本人は別の分野で個性を発揮したほうがよいのです。
 必要以上に個性的である必要はありません。ただその個性にあった仕事に従事し,そこでその仕事の分野の進歩につながるような独創性があることが人類にとって大切なことなのです。養老さんでいえば唯脳論などがそれにあたるのでしょう。ただ,それはあくまで個々の仕事のなかの専門的な分野のなかでのことであり,普通の社会生活のなかでは,あまりに個性的であっては困るということなのだと思います。これが私なりの養老先生の個性的であるなという言葉の意味であると理解しています。それもまた個性的な解釈かもしれず,おそらく養老流でいえば,おまえの脳は,そこで処理できる範囲でしか解釈はできないのであり,つまり解釈というのはそもそも個性的で主観的であるから,勝手に解釈してもらってよいということになるのでしょう。

2025年4月25日 (金)

福知山線事故

 JR西日本の福知山線の脱線事故から20年です。多数の死傷者が出た,この痛ましい事故は,亡くなった方やその遺族に多大な苦しみをもたらしました。その後の遺族対応にあたったJR西日本社の社員にも大きな苦しみを与えたと言われています。私は,事故後に会社がコンプライアンス体制の確立という目的のために立ち上げた「企業倫理委員会」の委員に,元最高裁判事の滝井繁男先生や会社法の大家の森本滋先生らと共に参加させてもらう機会をいただきました。もうかなり前のことで,その後のフォローアップはしていませんし,滝井先生もまた当時のJR西日本側の社長であった佐々木隆之氏も鬼籍に入られ,あのときの委員会のことを集まって振り返る機会はもう得られないのでしょう。
 あのとき感じた巨大企業の組織風土の重々しさは,組織を変えることがいかに難しいかを示すものでした。自分なりに,どうしたら大組織が,信用を回復して,事故防止や安全という問題の背後にあるコンプライアンス意識を確立させることができるかを,労働法の観点にとどまらず広い視野で考えることができたのは貴重な機会でした。とくに,当時の社長や次期社長となられた真鍋精志氏たちと机をはさんで意見をかわすことができたのは勉強になりましたし,滝井先生や森本先生のお話をお聞きする機会があったことも得難い経験でした。
 JR西日本は,あの事故のことを忘れてはなりません。毎年この日が来た時に過去を振り返り,事故防止の重要性を再認識することは,やり続けなければならないでしょう。そのことなども含め,この20年でこの会社がどういうように変わったかということを,いつかまた内部の人と話す機会があれば,うかがってみたいと思います。

2025年4月24日 (木)

教皇を悼む

 ローマ教皇フランシスコ(イタリア語では,Fancesco(フランチェスコ))が亡くなりました。初の南米出身の教皇で,アルゼンチン(Argentina)人ですが,イタリア系移民だそうです。アルゼンチンとイタリアというと,イタリアの国民的な物語である「Cuore」や,そのなかの5月の月例物語である「Dagli Appennini alle Ande(アペニンからアンデスへ)」)は,日本では「母をたずねて三千里」として有名です。出稼ぎのためにアルゼンチンに行った母親を追い求めて再会をはたすジェノバ(Genova)の少年の話です。Cuoreは,1886年にエドモンド・デ・アミーチス(Edomondo De Amicis)が発表した作品です。1861年に統一(リソルジメント:Risorgimento)を果たしたイタリアの愛国小説と言われています。当時は,アルゼンチンが先進国であったことは,いまでは忘れられているかもしれません。欧州から多くの移民が行ったと言われています。Francescoも,そうした移民の子だったのでしょうね。
 平和を愛する高い人格をもった教皇だったようです。カトリックがあまり多くない日本にも来てくれて,核兵器の廃絶のための貴重なメッセージを伝えてくれました。彼には,核に関する日本政府の消極的対応がどのように映っていたことでしょうか。アメリカのTrump政権にも批判的でした。亡くなる前日にVance副大統領に会ったそうです。どんな会話をしたのかわかりませんが,怒りで憤死したのではないと信じたいです。

2025年4月23日 (水)

両立支援も大切ですが……

 少し前の号ですが,「産政研フォーラム」の144号の「子育て支援のあり方」という特集で,佐藤宏樹さんと武石恵美子さんの論考がありました。佐藤さんは,デュアルキャリアが難しいという現状を指摘されているのですが,図表5の「デュアルカップル実現の条件」というのをみると,「20歳代の初期キャリアの段階にキャリア継続意欲を獲得」⇒「ライフイベントを経験しても就業継続を希望するキャリア意識の確立」⇒「パートナーと会う」⇒「カップルのそれぞれがお互いのキャリア希望を理解し,尊重」……というように書かれていて,結構,ハードルが高そうです。また「職場の上司のマネジメントが鍵」と書かれているのですが,キャリアが特定企業で展開されるものではないというこれからの時代には,上司がどうあれ,企業風土がどうあれ,自分でキャリア展開できるようにならなければならず,それは決して猛烈な働き方を前提としないものだと思います。武石さんの論考でふれていた両立支援研究会では,「ライフステージにかかわらず全ての労働者が『残業のない働き方』となっていることをあるべき方向性として目指」すとなっていて,それは素晴らしいことだと思います。重要なのは,労働者が時間主権や場所主権を取り戻すことです。その両方を実現するのがテレワークです。改正育児介護休業法は第一歩ですが,もっとテレワークを中心に据えた法改正をしてもらえればよかったかなと思います(入園の式典の参加などまで子の看護等休暇に含めて,法令で義務付ける必要はなかったでしょう)。テレワークが広がれば社会が変わるということは,拙著『誰のためのテレワーク?』(2021年,明石書店)でも力説しているつもりです。
 自分の時間は自分でオーガナイズし,仕事と生活の時間配分は自分で決めていくということが,個人が幸福になるために必要なことです。雇用される働き方では難しいかもしれませんが,今後はそういうことができる企業でなければ人は集まらないでしょうし,フリーランスが増えていくことも十分に考えられます。いずれにせよ「仕事」を中心に考えず,「生活」を中心に考えて,それでも生計を維持できるような社会をつくるということこそ最上位の目的に据えると,どういう政策が必要となるのかを,厚生労働省の次の研究会ではぜひ検討してもらいたいです。

2025年4月22日 (火)

三柴丈典『生きた労働安全衛生法』

 三柴丈典著・日本産業保健法学会協力『生きた労働安全衛生法―成り立ちと運用実態』(法律文化社)をお送りいただきました。三柴さんには,いつも資料や書籍をありがとうございます。
 いつも言っているように,今後,労働安全衛生法の重要性が高まることは誰も否定できないところです。しかもこれからはデジタル社会なので,デジタル技術がもたらすリスクへの対応と,その対応にデジタル技術を用いることが必要という二重の意味でデジタルが鍵となります。これはこの分野にかぎらず,労働法の他の分野(労働法だけではないのですが)にもあてはまるものです(拙著『デジタル変革後の「労働」と「法」』(2020年,日本法令)を参照)。三柴さんが言われている「リスク創出者管理責任負担原則」は,基本的には異論はありませんが,より根本的な解決として,危険な現場では人間を活用しない(ロボットを活用する)という原則を定立し,それこそが管理責任の第一の内容であるという考えをとることが大切だと思っています。人間を危険な労働からできるだけ隔離することこそ,最大の労災予防と思えるからです。コストの問題はありますが,そこは政府の助成が望まれます。なかなか実現が難しい政策かもしれませんが。
 今回いただいた本は,前半の労働安全衛生法の概説に続き,条文ごとに,監督指導状況や関連判例も紹介され,図や写真もあって,とても読みやすく,参考になります。面白い企画です。分野がマニアックではありますが,関心のある人には,ぜひお勧めしたいです。

2025年4月21日 (月)

あんぱんの正義

 NHKの朝ドラは,「おむすび」に続いて,同じひらがな4文字の「あんぱん」を,前にも書いたように,ずっと観ています。「おむすび」とは違い,歴史上の人物を,脚色が入っているとはいえ扱っているので,それだけ興味ももちやすくなっています。先週から子ども編が終わり,今田美桜さんの生き生きとした演技に惹かれます。視聴率があまり高くないということですが,私と同様,ほぼNHKプラスで観ている人はカウントできないので,どれくらい視聴されているドラマかどうか,本当のところはわかりくいのではないでしょうか。
 ところで,やなせたかしさんは,NHKのニュースで,過去のインタビューのなかで,「正義は簡単にひっくり返ってしまうことがある」とし,「決してひっくり返らない正義ってなんだろう」と問いかけ,それが「お腹を空かせて困っている人がいたら一切れのパンを届けてあげることだ」と語り,それがこのドラマのナレーションでも使われていました。私は,これこそ「生存権」だと思いました。生きていくのに困っている人に必要なのは「一切れのパン」(食事)であり,政府がそれを保障したり,国民が互いに助け合ったりして生きていけるようにするというのが,国民にとっての根源的な権利である「生存権」なのでしょう。正義とは生存権だということです。もっとも,権利というような法学的なタームではなく,むしろこれは国民の道徳的な義務であり,政府への権利などということは言わないほうが,やなせさんの言わんとすることに合致しているかもしれません。政府が関与すると,そんな正義なんてすぐにひっくり返ると言われてしまいそうです。
 ところで,この番組の主題歌は,ドラマに合っていないという批判があるようで,私も最初に聴いたときは,ちょっと違和感を覚えましたが,いまは何も感じなくなっています。音楽家の野田洋次郎氏のほうが,何枚も上手だったのでしょうね。

2025年4月20日 (日)

叡王戦第2局

 叡王戦第2局は,伊藤匠叡王が,斎藤慎太郎八段に勝って,11敗のタイに戻しました。玉を囲わずに,玉の近いところで,互いに桂馬が睨みを利かし,飛車も宙に浮いたら,下がったりと激しく動き,素人には難解な将棋でした。伊藤叡王が思い切った攻めをしていた感じです。斎藤八段は先手番で負けたのは痛かったですが, 5番勝負なので,次の対局が大切ですね。
 棋聖戦は,決勝に進出したのは,羽生善治九段に勝った永瀬拓矢九段,西田拓也五段に勝った杉本和陽五段です。西田五段は,昨期は王将戦で,プレーオフで挑戦者決定戦にまで進出してあと1勝で挑戦者になりそうなところまで行ったなど(永瀬九段に敗れました),活躍が目立ちます。棋聖戦でもベスト4まで来ましたが,今回も,あと一歩及びませんでした。永瀬・杉本の決勝は,誰もが永瀬九段が勝つと予想しているでしょうが,杉本五段には意地をみせてもらいたいです。藤井対永瀬のタイトル戦ばかりでは面白くないので。なお王位戦の挑戦者決定リーグは,紅白に分かれて,それぞれの優勝者が挑戦者決定戦を行いますが,白組ではここでも永瀬九段がトップを走っています。
 竜王戦のランキング戦も進んでいます。1組では,佐々木勇気八段が菅井竜也八段に勝って2位以上を確定させて,出場者決定戦(本戦トーナメント)への進出を決めました。もう一人は,八代弥七段と木村一基九段の勝者です。八代七段は順位戦は最下位なのに,竜王戦では最高位のところで頑張っています。このアンバランスは不思議ですね。
 今日のNHK杯では,早くも羽生九段が登場して,若手の宮本広志六段に貫禄勝ちでした。

 

 

2025年4月19日 (土)

バカの壁

 アメリカの相互関税は,理屈もなにもあったものではないので,日本から説得しようにも,やりようがないということでしょう。これって理不尽な気もしますが,よく考えると,養老孟司のベストセラーの『バカの壁』(新潮新書)では,「話せばわかる」なんてことはないと書かれています。お互いが違う前提をもっているときには,いくら話しても相互の理解につながりようがないということです。家族のように価値観が近ければ,わかりあえるかもしれないですが,それでも子どもが大きくなってきたらそうはいかないわけです。ましてや外国育ちでまったく日本の文化との接点などなさそうな人で,日本人といえば安倍晋三元首相しか知らないかもしれないような人に,いくら話しても理解が得られるわけがありません。日本がいかにアメリカの雇用に貢献しているかということを説明しても,響かないのです。脳というのは,自分が知りたくない情報は頭に入らないように遮断しているというのが,養老説で,それが「バカの壁」なのです。おそらく日本の役人も,そういうことはわかっているはずです。「話してもわからない」ことを前提に,ぶつからないようにするにはどうすればよいかだけを考えるということが現実的な対応なのです。
 これは日常生活でもあることです。個人的には,労働委員会の和解もこんな感じだと思っています。労働組合側や使用者側があまり合理的な判断をしていないと思われることがあります。そういうことにこだわっていれば損ではないかというような合理性に訴えかける説得をどんなに試みても,理解してもらえないことはよくあります。これは相手がバカだということではないのです。むしろ,こちのほうが相手のことがわかっていないという意味でバカなのです。和解が成立するのは,こちらが双方の主張をしっかり聞いて,その気持に心から共感し,相手にこの人の言う提案なら聞いてみようかという感情をもってくれる場合だと思います。ここでは理性ではなく,感情の世界があるのです。そんないい加減なものでよいのか,と言われそうですが,人間というのものはそんなもので,もっというと理性的な判断をすると思われている脳なんてものも,その程度のものだということです。そういうことを知らないで理性でなんでも解決できると考えていることこそ,ほんとうの思い上がったバカなのでしょう。ということを再認識するためにも,『バカの壁』は有り難い本です。

2025年4月18日 (金)

エルサルバドル

 スペイン語でSalvadorは,救世主と言う意味です。イタリア語では,Salvatoreです。「salvare」は救済するという意味なので,「salvatore」は救済する人ということです。人名でもあり,愛称は「Toto」です。サッカーのワールドカップの1990年イタリア大会で,得点王になり,その後,ジュビロ磐田に来て,中山雅史選手らと一緒に活躍した スキラッチ(Schillaci)も名前はサルバトーレ(Salvatore)で,愛称はトトでした。
 ただ,こんな軽い話をしている場合ではないのです。その名前(スペイン語)が国名になっているエルサルバドル(El Salvador)が,いま話題になっています。BBCニュースの411日配信の「「手違い」で中米に強制送還の男性,米最高裁がトランプ政権に帰国支援を命令」をみると,「アメリカの連邦最高裁判所は10日,ドナルド・トランプ政権に対し、中米エルサルバドルの巨大刑務所に「手違い」で強制送還したメリーランド州の男性の帰国を容易にするよう命じた。」とされています。そして,「トランプ政権は先に,キルマー・アブレゴ=ガルシア氏(29)を誤って送還したことを認めたが,同氏をアメリカに戻すよう命じたメリーランド州連邦地方裁判所の命令を差し止めようとしていた。連邦最高裁は7日,この問題を検討する間,地裁の命令の一時差し止めを認めた。しかし連邦最高裁は10日,判事9人の全員一致で,地裁命令を阻止することを拒否した。」
 報道どおりだとこれは無茶苦茶なことです。連邦最高裁が,Trumpが送り込んだ保守系の判事も含めて,全員が帰還促進を求めているのに,それを無視しているというのは,もはや三権分立は機能せず,アメリカが北朝鮮などと同様の独裁国家になったと言われてもおかしくないでしょう。エルサルバドルの大統領も,Trumpに会って,もっと刑務所を建設しろと言われてヘラヘラ笑っていましたが,こんなことを楽しげに語り合っているのが国のリーダーであると考えると,恐ろしくてたまりません。世界は大変なことになりつつあります。

2025年4月17日 (木)

格下の格下の特使

 初夏のような暑さになりました。最近では真夏というと異常な暑さなので,それに比べれば真夏というほどではありませんが,それでも突然,これだけ気温が上がると困ったものです。まだ部屋のなかに,ダウンジャケットも,暖房器具もあるなかで,この暑さです。体温調整も難しいです。咳はほぼ収まっていますが,声は元に戻っていません。気候の急変は心配です。明日は授業があるので,なんとか喉が回復していてほしいのですが,これまでの人生で経験したことがない長引いている症状なので,どのあたりで治るのかの予想がまったくできません。
 話は変わり,今日の最悪の一言は,アメリカに石破茂首相の特使として行った赤沢亮正経済財政・再生相の「自分は格下の格下。出てきて直接話をしてくださったことは本当に感謝しています」です。どういう意図での発言か不明ですが,特使として行ったということは,日本の首相の代わりということなので,Trump大統領が出てきたことについて,感謝するのはよいとしても,それほど卑下すべきではなかったでしょう。やっぱり日本は属国で,その特使が,宗主国の王様に会ってもらい舞い上がったという印象を世界中に与えたのではないでしょうか。交渉は交渉できちんとやると言っていますが期待できません。国際的な舞台では,いかに自分の格を高く見せるかが勝負ということもあるので,Zelenskyy(ゼレンスキー)のようにしろとは言いませんが,情けない気持ちになりました。外交経験の乏しい政治家には荷が重すぎましたね。

2025年4月16日 (水)

東山動物園

 名古屋市にある東山動植物園は,とても良い動物園です。名古屋に行くことはあまりありませんが,行けば必ず寄りたいと思うところです。先日も名古屋に行く機会があったので,短時間でしたが,行ってきました。印象に残ったのは,ゴリラやチンパンジーといった霊長類です。私自身が,前よりもチンパンジーなどに関心をもっているので,改めて彼ら(?)の仕草などをみるのは興味深いものでした。とくに近くでみることができたのがゴリラであり,明らかに高い知能をもっているような目です。動きをみても,人間に近いものですね。いまは檻の中と外という関係ですが,先祖をたどっていくと,ほんのわずかなところで分岐して,長い時間をかけてそれぞれの進化を遂げてきたことになります。
 チンパンジーとは交雑はできないとしても,DNAの差はわずか1.2パーセントであり,遺伝子レベルではその差はわずかです。なんてことを考えていると,チンパンジーをみていると,親近感が湧いてきますね。ゴリラともそれほど遺伝子は違っていないそうです。ゆっくり時間をかけて,見つめ合っていると,もしかしたらコミュニケーションをとれるかもしれないなんて気持ちになってきました。
 東山動物園には,このほか,ゾウやライオンも印象的です。このほかにも広い敷地で動物たちがゆっくり過ごしており,その迫力を間近で体感できる施設もあり,これがこの動物園ならではの魅力です。さらに,東山動物園といえばコアラの存在も忘れてはなりません。木の上で眠る姿は非常に可愛らしく,来園者の人気一番でしょう。もう一つ人気があるのは,レッサーパンダです。愛嬌があるのが人気の秘密でしょう。小さい子は,コアラやレッサーパンダが好きなようです。大人も子どもも楽しめる動物園です。
 機会があれば,また名古屋に行って,この動物園に行きたいですね。ついでに言うと,名古屋は,ひつまぶしや味噌カツも美味しいです。名古屋というのは,観光するところがないというようなイメージがありますが,私はそうは思いませんね。

 

 

2025年4月15日 (火)

鍼治療を受けてきました

 株価の乱高下も少しおさまりましたが,今度は気温の乱高下です。今日は寒かったです。皆さんも体調維持に気をつけてください。私の呼吸器の不調はかなり改善し,体調は戻ってきていますが,まだ完全ではありません。西洋医学では限界があるということで,ここは,かつてよく使っていた鍼の活用という原点に戻るべきだろうということで,昼頃に思い立って,ダメもとで予約をしてみました。幸い予約がとれたので,行ってきました。激しい腰痛に悩まされていたときには,よくお世話になってきたところですが,呼吸器の不調で行くというのは初めてです。東洋医学は,こういうすっきりしない症状が続くときにこそ利用しなければなりませんよね。すぐに治るというわけではありませんが,施術を受けて,少し肩や背中が楽になった気がします。咳をすると筋肉が固まるので,鍼でほぐすのがよいのですね。吸い玉をしてもらい,背中には異様な跡がついています(貴景勝や大の里の背中にあったものですね)。
 ところで,昨日は夜中に咳で目が覚めるということはなかったのですが,変な夢をみて目が覚めました。自分の目の前で外国人が別の外国人を敵と決めつけて銃撃をしているけれど,実は何も関係のない人であることがわかり,それがしかも子どもであり,その子は重傷を負いながら歩いていくというような内容です。寝る前に変な映画をみたわけではありません。ただテレビでTrumpやその政権にいるアメリカ人をみて,自分たちの国以外の人のことは何も考えていないのだろうなと強い不快感をもっていたので,それがかつて観た何かの映画やテレビドラマのシーンと混戦して夢のなかで出てきたのかもしれません。ただ,私たちがいま見ている現実も,さまざまな戦争にあふれた悪夢の世界です。そして,なかなかこの悪夢から覚めそうにないのです。悲しいことです。

 

 

2025年4月14日 (月)

韓国大統領罷免

 韓国の尹大統領が罷免されました。昨年12月に非常戒厳を宣言し,国会に軍や警察の発動を命じたことで,国会から弾劾訴追がなされ,憲法裁判所により,非常戒厳は違憲とされ,罷免が認められました。
 韓国の国会は,野党が多数であり,尹政権の政策の実現が阻まれるという状況があったようですが,それにしても非常戒厳を宣言して軍などを投入するというのは,やりすぎです。民主主義に反する暴挙であり,血迷ったとしか言えません。アメリカでも,Trump大統領が2021年に大統領選挙の結果に反対して国会襲撃を扇動したとされていましたが,韓国はアメリカとは違い,きちんと憲法裁判所が大統領の行為を違憲として罷免させた点で民主主義が機能していたといえます。これをみても,アメリカがいまやいかに非民主主義的な国家であるかがわかるような気がします。
 尹大統領は親日的で,彼が大統領に就任してからは,日韓関係は良好でした。非常に良い隣国関係を展開できていましたが,気になっていたのは尹大統領の国内基盤が脆弱であったことです。結局,尹大統領は「自爆」してしまった感じで,残念な結果になりました。次期大統領の候補の一番手である李在明氏は反日的と言われていますが,韓国内でもいろいろな疑惑がとりざたされており,すんなりと当選となるようではなさそうです。どうなるにせよ,北朝鮮の脅威があるなか,日本と良好で建設的な関係を築くことができる大統領が韓国に誕生することを祈っています。

2025年4月13日 (日)

インサイダー取引疑惑

 Trumpの相互関税の方針がぶれていて,そこは私の予想が外れてよかったという気もしますが,自動車などに高い関税がかけられている状況に変わりはありません。株価も,Trumpに振り回されて乱高下していますし,為替も動きが急です。ただ,こういう荒れた相場の場合には,損をした人もいるでしょうが,大儲けをした人もいるはずです。とくにTrumpが相互関税を90日猶予するという発表の前に,SNSで「いまが買い時だ」という投稿をしており,インサイダー取引で儲けた人がいる可能性は十分にあります(大統領自身もそうかもしれません)。しかし,自分たちで世界をかき乱しながら,利益だけはしっかり得ているというようなことが本当にあったのなら,それは許しがたいことです。徹底した調査がされるべきでしょう。
 こんなに株価が変動するのなら,もう株式投資をやめようと思う人が増えるかもしれません。株は上がることもあれば下がることもあり,日々の値動きに一喜一憂していてはダメなのですが,ニュースでも毎日,日経平均株価などが報道され,否が応でも意識させられてしまうことでしょう。どんな報道があっても平静でいられる人であればさておき,そうでない人は,株などはもっていないほうが精神衛生上よいのです。とくに一部の人がうまいことをやって儲けているなんていうのを聞くと,それだけで血圧が上がりそうで,身体に悪いです。いずれにせよ,阪神の勝敗のようなものにさえ過剰に影響されてしまう私のようなタイプの人は,株には向いていないでしょうね。
 老後2000万円問題などもあるので,金融機関への預金だけでは老後は不安だと言われてきました。政府は,新NISAで,株式投資に誘導する政策を進めてきました。しかし,確実にお金を増やすことは不可能です。しかも,今回のTrump騒動のように,自分にコントロールできない事情に左右されます。でも,自分でコントロールできる範囲でやれることもあります。それは,資産を増やすのではなく,資産ができるだけ減らないように支出の見直しをしたうえで,健康を維持して医療費をおさえ,少しでも長く働いて収入を得ることができるようにすることです。FPが忠告するように,株などの相場の変動があるものは,ほったがらしにしておくことができる余裕資産で運用すべきなのでしょう。

インサイダー取引疑惑

 Trumpの相互関税の方針がぶれていて,そこは私の予想が外れてよかったという気もしますが,自動車などに高い関税がかけられる状況に変わりはありません。株価も,Trumpに振り回されて乱高下していますし,為替も動きが急です。ただ,こういう荒れた相場の場合には,損をした人もいるでしょうが,大儲けをした人もいるはずです。とくにTrumpが相互関税を90日猶予するという発表の前に,SNSで「いまが買い時だ」という投稿をしており,インサイダー取引で儲けた人がいる可能性は十分にあります(大統領自身もそうかもしれません)。しかし,自分たちで世界をかき乱しながら,利益だけはしっかり得ているというようなことが本当にあったのなら,それは許しがたいことです。徹底した調査がされるべきでしょう。
 こんなに株価が変動するのなら,もう株式投資をやめようと思う人が増えるかもしれません。株は上がることもあれば下がることもあり,日々の値動きに一喜一憂していてはダメなのですが,ニュースでも毎日,日経平均株価などが報道され,否が応でも意識させられてしまうことでしょう。どんな報道があっても平静でいられる人であればさておき,そうでない人は,株などはもっていないほうが精神衛生上よいといえるかもしれません。とくに一部の人がうまいことをやって儲けているなんていうのは,聞くだけで血圧が上がりそうです。いずれにせよ,阪神の勝敗のようなものにさえ過剰に影響されてしまう私のようなタイプの人は,株には向いていないでしょうね。
 老後2000万円問題などもあるので,金融機関への預金だけでは老後は不安だと言われてきました。政府は,新NISAで,株式投資に誘導する政策を進めてきました。しかし,確実にお金を増やすというようなことは難しいことです。自分にはコントロールできない事情に左右されるからです。自分でコントロールできる範囲でやれることといえば,資産を増やすのではなく,資産ができるだけ減らないように支出の見直しをしたうえで,健康を維持して医療費をおさえ,少しでも長く働いて収入を得ることができるようにすることです。FPが忠告するように,株などの相場の変動があるものは,ほったがらしにしておくことができる余裕資産で運用すべきなのでしょう。

2025年4月12日 (土)

新刊書紹介

 大学に行くと3冊新しい本が届いていましたので,ご紹介します。著書の皆様がたには御礼申し上げます。
 水町勇一郎さんから『社会に出る前に知っておきたい「働くこと」大全』(KADOKAWAをいただきました。高校生,大学生らを対象に,働くことについて,わかりやすく解説したものです。私も似たようなタイトルの『君たちが働き始める前に知っておいてほしいこと』(2008年,日本労務研究会)という本を書いたことがありますが,今回の水町さんの本のほうが,はるかに重厚で情報も豊富です。このタイプの本は,どこまで研究者のこだわりを捨てながら,わかりやすさを追求するかが勝負ということになるのでしょうが,そこはどうあれ,水町ブランドで読者をつかむことでしょう。
 村中孝史さんからは,村中孝史・堀江崇寛・平木健太郎『起業のための企業法務入門』(北大路書房)をいただきました。帯のところで,京都大学大学院教育支援機構大学院共通科目の講義から生まれたと書かれています。内容は,企業法制・財務と労務の2つからなっており,1冊で企業法務をめぐる重要なことが学べます。労働法屋にとってみれば,財務に関する情報が充実しているので,たいへん勉強になります。社会人の大学院の授業などに役立ちそうです。
 大木正俊さんらからは,大木正俊・植村新・鈴木俊晴・藤木貴史『労働法判例50!』(有斐閣)をいただきました。労働法の判例を50に絞ったということで,『労働判例百選』(有斐閣)や私の『最新重要判例200労働法』(弘文堂)よりも解説を(量的には)詳しくすることができています。学部の授業くらいでしたら50の判例もあれば十分なのかもしれませんね。

2025年4月11日 (金)

前期授業の開始

 今日はLSと学部授業の1回目でした。1回目は,それぞれで違う内容の授業をすることを予定していたのですが,結局,似たような内容になりました。もちろん,LSの方は少人数の対話型講義,学部は大講義という点で,違いはあります。LSでは,なぜ民法の雇用規定があるのに,労働法が誕生したのかという質問から始めてみました。民法は契約当事者の自由・対等の関係を重視し私的自治を尊重したものであるが,それでは実際の労働者と使用者の格差の問題に対応できないからであるという趣旨の答えがあったのですが,それでは,なぜ民法の雇用規定には,労働の従属性という要素が考慮されていないのか,あるいは,逆の視点から,なぜ民法の雇用規定は自由・対等というものを前提としていたのか,という質問をしてみました。対話型は筋書きのないドラマのようなもので,どんどん議論が展開していくわけですが,最後はフランス革命,ナポレオン法典にまで話題は広がりました。LSの授業としては,いきなりディープなところに入り込みましたが,将来の法曹には,どうしても労働法はなぜ誕生したのか,ということに加え,契約の自由とは何なのかということを考えてもらいたかったのです。
 学部の授業でも,その流れをひきずっていましたが,より直接的に「労働政策」の歴史という観点から,資本主義や産業革命の話から初めて,とくに労働法は,労働政策の実現のための一手段にすぎず,今日ではデジタル技術を使って,ハードロー的な規制とは違うナッジ的な手法もあるという最近の規制手法論の話まで盛り込みました。初回から90分しゃべりっぱなしで疲れてしましましたが,それよりも困ったのは,老眼鏡を忘れてしまったことです。手元の教材の字が読めず困りました。忘れ物防止リストの筆頭に老眼鏡を掲げておくことを,久しぶりの授業なので忘れていました(スライドを投影するために部屋が暗くなっているので,老眼鏡がなければどうしようもないのです)。次回から気をつけます。

2025年4月10日 (木)

名人戦始まる

 藤井聡太名人に永瀬拓矢九段が挑戦する名人戦が始まりました。最後は,藤井名人の見事な攻めで,いつものような切れ味の鋭さを見せました。かなり難解な詰みで,飛車や馬を切り捨てる手順など,プロでもこんな危ない攻撃ができる人は藤井名人以外にいないように思われます。途中は,藤井名人が壁銀で王が狭い状況でしたが,ぎりぎりのところでかわして,最後は一瞬の隙をついて,相手玉を詰ましました。長い七番勝負ですが,藤井名人は防衛に向けて幸先の良いスタートとなりました。
 藤井竜王・名人(七冠)のタイトル戦は,次は棋聖戦や王位戦になります。棋聖戦は決勝トーナメントが進行中で,西田拓也五段,杉本和陽五段に続き,羽生善治九段もベスト4に進出を決めました。残りは,永瀬九段と八代弥七段の勝者です。王位戦は挑戦者決定リーグが進行中で,紅組は,大橋貴洸七段が31敗でトップを走りますが,21敗の佐々木勇気八段と八代七段,11敗の佐々木大地七段にもチャンスがあります。次の大橋七段と佐々木勇気八段の対局が重要です。白組は永瀬九段が3連勝でトップを走り,おそらくこのままトップになるでしょう。こうみると,永瀬九段が棋聖戦,王位戦のどちらも挑戦者となる可能性が十分にありますね。渡辺明九段の体調不良,豊島将之九段の不調で,タイトル挑戦は永瀬九段が中心になっています。現在進行中の叡王戦(伊藤匠叡王と斎藤慎太郎八段の対戦)は例外ですが,このまま藤井・永瀬の戦いだけでは面白くありません。他の棋士の頑張りに期待です。

2025年4月 9日 (水)

アメリカの影響力低下がもたらすもの

 今日も日経平均は大幅に下がりましたが,それはもしかしたらTrumpは関税を撤回するかもしれないという期待をしていた投資家もいたということでしょうかね。彼は撤回しませんでした。折れたら負けという信念で動いている人なので,譲歩はしないことは予想されていました。日本だけ特別扱いをしてもらえないかというのも甘い話でした。
 アメリカは自由貿易をなお支持しており,今回の相互関税は,ディールのためにやっていたという見方が完全に誤りであったかどうかは,まだわかりませんが,Trumpはどうもディールをしているのではないという見方が正しそうです。つまりアメリカは自由貿易を放棄して,鎖国的な政策を取り始めたということです。日本の優れた車が入ってこなくても,アメリカ国産の高い車に乗って,アメリカの雇用を守ることこそ,アメリカの国益なのだということでしょう(ほんとうに雇用が守られるかはわかりませんが)。日本は自由貿易の利益を享受してきたことは確かであり,アメリカのおかげということもあるのですが,これからは経済的にいかにしてアメリカから自立できるかがポイントです。
 そもそも日本にとってアメリカは文化的にみても接点があまりみられない遠い国です。ただ,戦争を経験した世代には,実質的な宗主国としてのアメリカへの憧れというのは,とても強いようであり(アメリカに初めて行って食べた肉の分厚さに感動したというような話はよく聞きます。胃袋を掴まれたのでしょう),アメリカ人がやっていることは正しくて,日本もそれを学ばなければならないという,誤った認識をもつことが多かったように思います。たしかに,あまりに違うから,思考実験をするうえではアメリカは参考になる国かもしれませんが,法制度のような重要なものについてアメリカを参考にするのは注意が必要です。労働法でも,不当労働行為制度はアメリカからの直輸入ではありますが,日本では独自の進化を遂げています。
 30年以上前の私のイタリア留学時の経験でも,欧州人にとってアメリカは文化的に遠い国でした。イタリアの労働法の研究者で英語が流暢な人はほとんどおらず,アメリカ法について詳しい人もあまりいませんでした。それはイタリアだけでなく,フランスなども似たようなもので,ドイツでも英語は話せますが,アメリカ法に詳しい人はやはり多くなかったと思います。アメリカは,あまりにも違うし,学ぶ価値がない国でした。国際的な学術会議でも,アメリカは,メンバーには入っていても,議論が噛み合わないので,特別参加というような位置づけでした。 
 いまはイタリアをはじめ欧州人たちも英語を流暢に話す者が多く,アメリカ文化がかなり欧州に浸透していったのではないかと思います。知的エリートのなかにも,自由と民主主義を模範的に展開していくアメリカにシンパシーをもつ人が増えてきたかもしれません。アメリカ1強時代は,軍事や経済の力だけでなく,そういう文化的な要素も相まって実現したと思います。
 しかし,いまアメリカ自身が扉を閉めようとしています。大恐慌が起こるかもしれず,それは恐ろしいことではあります。ただ,そのなかで救いを求めることができるとすれば,アメリカ的なものが世界のなかで縮小していってくれることです。Trumpは,皮肉にも,民主主義や差別というものは何なのかということを,原理的に考えるきっかけを与えてくれました。さらに,今回の「鎖国」は,グローバルにモノ,ヒト,カネが行き交う経済システムを根本から見直すきっかけをつくってくれるかもしれないのです。つまり,新たな壮大な社会実験が始まろうとしているのです。これは,我々の知を鍛えるきっかけをつくってくれるでしょう(もちろん,その間の現実社会の貧困問題などをどう乗り越えていくかは大変な問題なのですが)。

2025年4月 8日 (火)

volare

 今日は日経平均がかなり戻りましたが,依然として相場は不安定です。こういうのを英語では volatileといい,名詞にすればvolatility が高いと言ったりします。この言葉は,受験英語に含まれているかどうかわかりませんが,イタリア語を知っていると語感がよくわかります。イタリア語でvolareは,「飛ぶ」という意味で,鳥のように飛翔するということですが,株価が鳥のように上がったり下がったりでは困りますね。
 Volareは,Gipsy Kingsの名曲のタイトルとしても有名です。日本のビールのCMでも流れていました。でも,この曲は,実はイタリア人Domenico Modugnoの曲で,オリジナルのタイトルは「Nel blu dipinto di blu」(直訳すれば,「青で描かれた青の中で」)です。1958年のSanremo音楽祭で1位で,アメリカのグラミー賞の第1回の受賞曲にもなりました(このことは,以前に,このblogでも紹介しましたね)。
 英語のflight はイタリア語ではvolo です。飛行機は,飛び立ちますが,必ず着地します(しなければ困ります)。株価というのは,そういうものだと考えなければならないのでしょうかね。

2025年4月 7日 (月)

阪神首位

  プロ野球が開幕して,3チームとの対戦が終わりました。阪神タイガースは,広島戦は2連勝後1敗し,その後,DeNA戦は21分けと冴えない試合をしましたが,巨人戦は3連勝で立て直すことができ,気がつけば首位です。DeNA戦の2敗は,抑えのゲラの不調が原因でしたが,全般的には投手陣は昨年に続き好調で,開幕投手の村上は早くも2勝ですし,富田と門別も巨人戦で勝ち星がつきました。打線は湿っていますが,それでもサトテルが巨人戦の第2戦で2発ホームランを打つなど,不安定とはいえ,打ったときの破壊力はすごいです。気がつけば,打線は打順が違うだけで,ほぼ昨年,一昨年と同じメンバーで,前川がレギュラーで定着するようになったところが違いでしょうかね(1試合だけ井上を使いましたが,ダメたったので,すぐに2軍に落としています)。捕手も栄枝がダメで,ショートも小幡がチャンスをつかめず,当分は,捕手は昨年同様,坂本,梅野の二人体制(坂本が中心でしょう),ショートは木浪中心でしょう。ショートに山田を使ってほしい気もしますが,打撃が1軍クラスではないという評価のようです。外野は井上以外にも,井坪など期待の若手が2軍にいますが,近本,森下,前川に割って入るのは難しいでしょうね。投手陣は,投手出身の監督だけあって,富田と門別を開幕ローテーションから2回しして成果をあげています。才木とビーズリー(Beasley)以外に,新外国人(名前がまだ覚えられません)もいきなりの起用で,まずまずの好投をしています。2軍には大竹,西勇輝などもいて,先発陣は十分そろっています(もちろん,髙橋遥人もいます)。さらに中継ぎも,石井がエース格ですが,桐敷と及川の左投手もいて,さらに新人の工藤と伊原が大活躍です。工藤は最初の登板だけ失敗しましたが,すぐに立ち直って早くも貴重な戦力となっています。伊原も前評判どおりで,そのうち先発に回るかもしれません。ケガさえなければ,工藤,伊原は大活躍しそうな予感です。抑えはゲラと岩崎の2本柱かと思っていましたが,ゲラがつまずきました。しかし,復調してくるでしょう。
 今シーズンは打撃に期待されていたのですが,実質的には前川の成長とサトテルの「目覚め」に頼るという感じで,新外国人はあまり頼りにならないので,よく考えると,それほど大きな期待ができるわけがありません。岡田監督時代と同様,守って守って勝つということになるのでしょう。日曜の巨人戦のように,2安打で,相手の押し出しで得た1点を,完封リレーで守り抜くというのが,今季の戦い方なのかもしれません。ファンとしては疲れますが。

2025年4月 6日 (日)

東大の新学部

 ようやく暖かくなって,桜も満開となりました。喉の痛みもなんとかおさまり,空咳は残っていますが,体調は徐々に上向きになると信じたいところです。
 4月から5月というと,学校での勉強も会社での仕事も気分一新というところですが,ほんとうはこの時期は海外旅行に適しています。この時期が勉強や仕事にギアが入る時期でなければよいのになと思わないわけでもありません。
 ところで,東京大学は,44日に,文理融合型で5年間一貫の新課程「カレッジ・オブ・デザイン」を20279月に創設すると発表しました。定員100人のうち半数程度を留学生とし。世界中から優秀な学生を集めるということのようです。学部長は外国人が就任するそうです。東京大学も,歴史的にみると,たとえば法学部では,当初,多くの外国人教員がいて西洋の法学を学ぼうとしていたのであり,いまもう一度,東京大学が,外国との交流を増やしていこうとするのは良いことだと思います。教師も学生もグローバル化し,刺激を与え合うことは,学問や教育の世界ではとても重要なことです。国内にいながら留学できるようなものです。授業をすべて英語でやるというのは,私はあまり賛成しませんが,ただ英語でやらなければ,留学生や優秀な外国人教員を招くことができないからということでしょう。文科系では,日本語だけでも優れた授業をする教員はいるはずなので,そういう人から教育を受けることができないとすると,少し残念ですが,仕方がないのでしょうね。
 また新学部は秋入学だそうです。それは,たいへん素晴らしいです。4月から何かが始まるのではなく,10月から始まることにしたら,日本社会も変わっていくのではないかと思います。もちろん4月を起点とすることが日本古来の文化というものではなく,日本の伝統と関係がないのは言うまでもありません。会計年度が4月からになったのは1886年(明治19年)で,そこが4月を起点とする発想の始まりだと言われています。

2025年4月 5日 (土)

NO

 「いいえ」ではありません。一酸化窒素です。咳はまだ完全におさまっておらず困った状態です。授業が始まる金曜までには直したいところです。ところで,クリニックで,呼気NO検査というのを受けました。なんでNOなのかと思ったのですが,炎症を起こしていると,NOが発生するので,その数値を図ることにより,症状がどの程度のものかわかるというのです。私の数値は非常に悪いものでした。人生で初めてこういう検査を受けたので,ちょっと喘息というものを,もう少し真剣に恐れなければならないというように思い始めました。昨年は,桂ざこばさんが喘息で亡くなったと聞いてびっくりしました。年間1000人くらいは喘息で亡くなっているそうです。発作が重篤化すると呼吸ができなくなるので,窒息しているのと同じ状況になるのです。
 寝る前に「レルベア100エリプタ1吸入」というものを吸って,少しましになりましたが,劇的に改善しているわけではありません。花粉症や風邪といった要因で咳き込み始めると,もともと呼吸器系が弱い私は,症状が悪化しがちです。喘息が完全に治ることはないそうなので,うまくつきあっていくしかありません。発作の原因になる炎症を阻止するために,花粉から逃れる,風邪をひかないというのが大切なのですが,後者はともかく,前者は難しいです。いったい,自分がなんの花粉に反応しているのかもよくわかっていないので,今年こそきちんと検査をしなければならないと思っています。花粉症にかかるなんて,自分はまだまだ若いな,というような冗談は言ってられません。  
 ところで,NOというのは,環境に良くないものとして知られています。光化学スモッグや酸性雨をもたらします。一方で,体内では,一酸化窒素には,様々な重要な生理的機能を果たしているとされており,今回の呼気検査もそのおかげなのです。ちなみに1998年のノーベル医学・生理学賞の受賞理由は,「循環器系における信号伝達分子としての一酸化窒素(NO)の発見」です(「医学界新聞」というサイトで知りました)。NOの生理的機能はノーベル賞にもなるくらい,長らく知られていなかったということですね。

2025年4月 4日 (金)

石破内閣の正念場か

 Trump関税は経済有事だということで,石破首相は,野党に協力を求める姿勢だと報道されています。日本経済に破壊的な影響が起きるかもしれないというなかでは,野党も経済対策について協力せざるをえないところがあるのでしょう。むしろ石破首相を引きずりおろしたいのは自民党の一部議員のような気がしますが,とりあえず商品券問題などは吹っ飛んで,内閣はしばらくは延命しそうです。もっとも,石破政権の対Trump姿勢にはあまり感心できません。Trump政権に向けて,関税引上げを見送ってもらうよう交渉したいと言っているようですが,国民の多くは冷ややかにみているでしょう。そんなできもしないことを言って,恥をかくだけだと思うのですが。なにかウルトラCの交渉材料でもあるのでしょうか。それに今回,世界中の国が犠牲になっているのだとすると,日本だけ助けてくれと言うよりも,むしろ反アメリカ連合を形成したほうが,長い目でみれば良いような気がします。これはアメリカとただ喧嘩しろということではなく,アメリカ以外の国と連携してアメリカに対抗すると同時に,アメリカなしでやっていける経済圏をつくるということです。4年辛抱すれば元に戻るという期待もあるかもしれませんが,Trumpは憲法解釈をねじまげても,大統領を続ける可能性があります。そもそも連邦最高裁もTrump陣営なのですから,ある意味では無敵です。アメリカとの絆があまり強くなさそうな石破氏だからこそできる強かな外交をやってもらいたいですね。
 17世紀のGrotiusHobbesの時代から,いかにしたら私たちは世界を平和にできるかということを必死に考えてきました。それでもその後の幾多の戦争を防ぐことができず,そして,いまもなお大きな戦争が続いています。ただでさえ混乱している世界に,この愚かな大統領は,新たに無意味な経済戦争を仕掛けているのです。自分の国のこと以外はどうでもよいということです。というか,ひょっとすると自分とその家族や仲間以外はどうでもよいということかもしれません。世界の平和の実現がかくも難しいものだとすると,せめて,こういう大統領のいる国と,できるだけ付き合わずに過ごすことができないのかと思うのですが,難しいのでしょうね。

2025年4月 3日 (木)

叡王戦

 Trump関税の衝撃が世界を駆け巡りました。世界経済への影響は計り知れないでしょう。アメリカも傷つくでしょう。アメリカ国民は,アメリカ企業が製造した商品を買うのか,また,アメリカ企業は高い人件費のアメリカ国民の雇用を増やすのかは何ともいえず,むしろ自動化がもっと進み,アメリカでは雇用は生まれず,アメリカ国民の消費は増えず,アメリカ企業も衰退するというシナリオは考えられないでしょうか。
 話は変わり,今日から叡王戦5番勝負が始まりました。藤井聡太竜王・名人がでないタイトル戦は久しぶりです。昨年,伊藤匠叡王がタイトルを奪取して1年が経ちました。挑戦者になったのは,斎藤慎太郎八段です。タイトル経験者(王座1期)でもあり,2期連続名人挑戦(相手は当時の渡辺明名人)をしたことがあるなど,タイトル戦の経験は十分です。そのようななか,第1局は斎藤八段が勝ちました。猛烈な攻め合いになりましたが,相手の飛車をとった斎藤八段が一足早く,相手陣を攻め落としました。伊藤叡王は,順位戦こそB1組に昇級を決めましたが,この1年それほど目立った活躍はできていませんでした。昨年の勢いなら伊藤叡王の防衛は堅いと言っていたでしょうが,現状ではわかりません。斎藤八段が先勝したので,タイトル奪取の可能性も出てきたような気がします。第2局は19日に石川県加賀市で行われます。また9日からは藤井名人に永瀬拓矢九段が挑戦する名人戦も始まります。

2025年4月 2日 (水)

朝ドラ

 朝ドラの「おむすび」は,よくわからないまま終わりましたね。神戸編から観始めましたが,面白そうなエピソードを盛り込み,いろいろな仕掛けをつくったのですが,なにか十分に回収されないまま,強引に終わってしまった感じです。完成度が低いドラマだったような気がしますね。神戸が話題になっていたので残念ですし,神戸の良さが,あまり出ていなかったです。「ギャル」というのを中心にするのか,タイトルにちなんで「むすぶ」ということを中心にするのか,もう少しうまい締め方があったと思います。橋本環奈ありきでやってしまったので,ドラマの筋はどうでもよかったのかもしれません。
 ということで,気を取り直して,引き続いて「あんぱん」を観ています。アンパンマンのやなせたかしの自伝的ドラマですが,やなせたかしの奥さんの暢(のぶ)が主役(あるいはダブル主役)のようです。暢の前半生はよくわかっていないようであり,ドラマのなかの高知で小学生のときにたかしと会ったというのは架空の設定のようです。たかしの人生のほうは,史実をたどるのでしょうね。今日は,たかしのお母さんが再婚するということで,たかしのもとを去っていくシーンでした。たかしは父の兄弟の家に置いていかれることになりました。切なかったです。幼い少年が,お母さんと別れるというのは,どれだけ辛いことでしょうか。お母さん役の松嶋菜々子の美しさが,妙に悲しいものとなりました。でも夫を失った妻が,昭和初期の時代に生きていくためには,仕方がないことだったのでしょうね。

2025年4月 1日 (火)

新入社員に告ぐ

 新年度ですね。41日は大学の役職をしていたときは関係ありましたが,いまは関係がなく,特別な日ではないのですが,多くの人にとっては,新人が入ってきたり,部署が変わったりで,気分が変わることでしょう。
 テレビのニュースでは入社式の風景が流れていました。通年採用になると消えていく風習かもしれませんが,当面は,社会人になるという意識改革のための儀式なのかもしれません。それにしても服装はもう少し自由でよいのでは,という気もします。昭和から脱することができていないようで,昭和世代の私の目からみても異様です。親が入社式に呼ばれて涙を流しているのは,ほとんど喜劇でした。テレビで映し出されている姿が,全体を代表しているわけではないと信じたいです(ただ,そうなると報道のあり方に問題があることになりますが)。
 ところで,生成AI時代のインパクトは,かなり偏っていて,個人差があります。私の周辺では,生成AIを使っている人はまだわずかですが,使っている人と情報交換すると,どんどんスキルアップする気がします。賢くて親切な友人が一人増えたという感じです。これからは,この友人をどう使って自分のやりたいことをやって,社会に貢献できるかを考える時代です(ただし生成AIの電力問題の解決は必要です)。会社や自治体などの組織の器は,よほど特別なことをしたいと思っている場合にしか必要ではないです。新入社員に対していきなり言うのはどうかとは思いますが,いま自分がやりたことを,まずは書き出してください。そのやりたいことは,組織で雇われなければできないかを吟味してください。その際には,自分のやりたいことが,生成AIなどデジタル技術を使って,どれくらいまで自力でできるかも確認してみてください。ただ,組織に雇われなくてもできそうだとわかっても,すぐには決断しないでください。組織には組織ならではのノウハウなどもあるでしょうから,せっかくだからそれはしっかり吸収することにし(あるいは人脈づくりも大切でしょう),自分の「退職プロジェクト」実行のロードマップをつくりましょう。もちろん,自分のやりたいことは,この組織でしかできないと納得できれば,組織のためにしっかり働けばいいです。でも,組織というのは,経営者や上司が変われば雰囲気が変わったりもします。そういうこともふまえて,くれぐれも会社にロックイン(lock-in)されないように気をつけてください。
 会社の人には怒られそうなアドバイスですが,大学のキャリアセンターなどでは聞けないことでしょうから,余計なことかもしれませんが,あえて私が伝えておきます。

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