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2024年11月 9日 (土)

ガラスの天井?

 Harrisの敗因はいろいろあるでしょうが,彼女の責任以上に民主党の責任が大きいかもしれません。若者から圧倒的な支持を受けていた民主党の重鎮バーニー・サンダース(Bernie Sanders)は,「民主党を牛耳る大金持ちや高給取りのコンサルタントは,この悲惨な選挙戦から本当に教訓を学べるのか。何千万人もの米国人が抱える政治的疎外感を理解できるのか。おそらくできない」と指摘し,今回の選挙戦を主流派の失敗と批判しました(日本経済新聞11月7日電子版「ハリス氏大敗の裏に「消去法でトランプ氏」 経済失政響く」)。
 そもそもBiden大統領の撤退が遅すぎたことも一因でしょう。アメリカ国民の過半数は理念より経済を重視し,現状に不満があるため,現政権が勝つのは相当難しかったともいえます。そう考えると,Harrisはむしろ善戦したのかもしれません。中絶権,環境保護,移民への寛容さといった理念は批判されにくいものの,これでは「明日の自分たちの生活はどうなるのか」という不安が生まれます。対して,移民に対する不寛容,貿易の保護主義などを掲げたTrumpは,「食べていけるアメリカ人」という分かりやすいイメージを提供しました。彼自身が大金持ちで脱税疑惑があり,道徳的に問題があっても,彼しか頼れる人がいなかったということでしょう。まさに「消去法」でTrumpが選ばれたのです。
 ただ,気になるのは,アメリカでもやっぱり女性の大統領は無理だという声があったことです。多くの男性有権者が男性であるという理由だけでTrumpに票を入れたのであれば,アメリカでも,女性にとっての「ガラスの天井」があるという厳しい現実を示していることになります。もっともHarrisも,女性・黒人・若さを強調しており,これも属性によって人を見ることのあらわれといえます。
 話は変わりますが,将棋の西山朋佳女流三冠が受けている棋士編入試験の第3局では,棋士側の上野裕寿四段が勝利し,西山さんは1勝2敗となり,後がなくなりました。ただ,今回はどうか分かりませんが,いつかは女性の棋士が誕生するでしょう。そうなると,現在女流棋戦における妊娠中の福間香奈女流五冠のタイトル戦の扱いのようなことが問題になるかもしれません。福間さんは,白玲戦や女流王将戦では,本人の対局日変更の要望が通らず不戦敗となり,タイトル奪取はなりませんでした。女流王座戦は第1局だけ行われ,第2局以降は対局日が出産後の2月に変更されました。さらに,11月に開催予定であった倉敷藤花も出産後に変更されました。5つもタイトルを持ち,さらにタイトルの挑戦もしているトップ中のトップにいる福間さんには,次々とタイトル戦がやってきます。棋士も女流棋士も若い方が強い傾向にあるため,今後,妊娠した女流棋士の公式戦の扱いを検討する必要があります。実際,日本経済新聞の電子版10月30日には「日本将棋連盟は女流棋士の出産に関する規定を整備する方針を示した。出産に伴う休場期間が対局と重なり,対局日程の変更が困難になった場合,対局料の補償や次期トーナメント戦での優遇措置を検討する。地方開催が多いタイトル戦に関しては,対局日のほか対局場所の変更も柔軟に対応する」とありました。
 もし女性の棋士が誕生した場合,名人戦や竜王戦などがどうなるのかを考えておく必要があります。いまは女流棋戦だけの話で,一般の棋戦は棋士は男性だけで問題となっていませんが,いつか女性がタイトル戦に登場する日が来るかもしれません。そのとき,女性棋士が妊娠などを理由として,対局日の変更を求めた場合にどうするかを検討しておくべきでしょう。個人事業主である棋士ですが,フリーランス法でも妊娠・出産などへの配慮規定があるため(13条),同法が将棋の棋士に直接適用されるかどうかはさておき,日本将棋連盟も,社会的な責任という観点から,何らかの配慮をすることが求められるのではないかと思われます。

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