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2024年11月 8日 (金)

司法試験

 司法試験の合格発表がありました。私のところにも,学生から合格したとのメールが来て喜びを共有できました。全体の合格者は全体で189人減っており,合格率も3.3%くらい下がっています。合格者数が減ったのは,令和5年度は,これまで法科大学院を修了した人しか受験できなかったのが,在学中で受験できる制度が導入されたために,初年度は,修了者と3年生の受験者が増えた(つまり実質的には2学年が受験した) ということの影響であったと言われています。令和6年度は,在学中合格者の分が,修了者合格者から減ることになったので,元の数字に戻ったといえます。
 神戸大学の合格者は数字だけをみると71人から51人に減少し(全国順位は8位のまま),合格率も,合格者が5人の愛知大法科大学院を除くと,3.5%の8位です(これは昨年の5位から下がりました)。ただ令和4年度と比較すると合格者は54人から51人に減っただけで,それほどの減少ではありませんが,合格率は気になるところです。
 今年度は,合格者が比較的多い法科大学院でも,昨年より合格者が減っており,例えば京都大学は81人,東京大学は65人,一橋大学は61人減っています。合格者数が1位と2位の慶応大学と早稲田大学もそれぞれ40人,35人減少しています。それは上記の理由から仕方がないとしても,一方で,同志社大学は,29人から41人へと躍進し,合格率も33.33%から36.94%に上昇して,神戸大学に迫る勢いです。立命館大学も,20人から29人に上昇しています。関西の名門私大が頑張ったという印象です。
 それと令和5年度から始まった在学中受験についてみると,興味深い結果もあります。合格者のなかで在学中受験の合格率が高いのが,慶応大学,京都大学,東京大学,早稲田大学,一橋大学などの従来の上位常連校です。優秀な学生が早期に合格していくという感じです。大学生に入って予備試験を目指して準備をはじめ,そこでうまくいかなくても法科大学院で在学中の合格をめざすというのが普通のルートになっていくのでしょうかね。
 もちろん,今回の17歳での合格者など,法科大学院を経由しないままに合格する人もいます。司法試験の受験資格を得るための予備試験を突破するのは難関ですが(合格率34%),そこを突破すると本番の司法試験の合格率は9割を超えます(令和6年度は92.84%)。社会に出たあと,いろいろな問題意識をもって法曹を目指すという人もいるでしょうが,若くて社会人未経験のまま優秀な人が予備試験を突破し,さっさと司法試験に合格してしまうということも今後は起きていくのでしょう。法科大学院の役割が徐々に曖昧になっていきます。
 予備試験制度の導入(平成23年),そして令和5年度から入った法科大学院の在学中受験制度の導入が,法曹の質に対して,どのような影響が出るのかは,実証研究の対象として興味深いところです。エビデンスを集めて,法科大学院という制度のあり方を,しっかり議論をする必要があるでしょう。

 

 

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