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2024年10月 6日 (日)

岡田監督勇退と阪急の影響

 今シーズンの阪神は結局2位に終わりました。クライマックスシリーズへの進出が決まっているので,日本一になる可能性はまだ残っていますが,とりあえずペナントレースでは2連覇(アレンパ)はできませんでした。とはいえ,1年目は優勝,2年目は2位ということで,しかも2年目も最後まで優勝争いをしたという点は,岡田彰布監督の大きな功績であり阪神ファンとしては十分すぎるくらい満足しています。来季も当然,岡田監督の体調が許す限り続投してもらえると思っていました。しかしながら,岡田監督の契約期間は2年であり,その更新はもともと想定されていなかったようです(不更新特約付?)。
 阪神タイガースは,阪神電鉄(阪神電気鉄道)の完全子会社ですが,阪神電鉄は阪急阪神ホールディングズの完全子会社です。かつて村上ファンドに狙われた阪神電鉄が,阪急に救いを求めて,経営統合に至った経緯があり,実質的には,阪急が阪神を買収したといってよいのでしょう。そのため,阪神は電鉄から百貨店,球団に至るまで,まるごと阪急の系列下に入ったと思いますが,少なくとも表面的には,阪神電車も阪神バスも普通に走っており,これが阪急電車や阪急バスに名前が変わったわけではありません。阪神百貨店も残っています。ということで,阪神の独自性は残っていて,阪急色に染められているわけではありません。
 ただ経営レベルでは,阪急の支配下にあり,2022年のシーズンからの阪神タイガース監督についても,阪急阪神ホールディングスのトップに君臨していた角和夫氏の意向で岡田監督に決まったそうです。
 2年前の監督人事は,当時の矢野燿大監督が辞任することが確定しているなかでの後任人事でした。阪急支配下にある阪神において,なかなか優勝させることができない阪神に業を煮やして阪急側が,実績のある岡田監督で押し切ったという経緯がありました(角氏と岡田監督は早稲田つながり。ちなみに鳥谷も早稲田卒)。阪神側は当時の平田勝男二軍監督の昇格で固まっていたようですが,それを角氏が覆しました(平田氏は岡田政権のヘッドコーチとなりました)。阪神側は,岡田監督については,過去の監督時にやりにくかったことがあったので,阪神主導であれば岡田再登板の可能性はなかったのですが,角氏は,矢野監督がシーズン前にいきなりシーズン後の退任という驚き発言をするなどして,阪神側のガバナンスが弱まっていて,そのシーズンの成績も開幕9連敗が尾を引いて負け越しの3位となるなどパッとしないものであったことから,角氏の介入しやすい土壌があったのでしょう。監督人事が奪われて,さらに球団オーナーも,阪急阪神ホールディングスの元社長で阪急出身の杉山健博氏が就いており,2023年の優勝の手柄は,阪急にもっていかれました。阪神側にとって幸運だったのは,宝塚歌劇団の不祥事で,責任者でもあった角氏の権力に陰りがみられたことです(この不祥事は人命が失われるような重大案件なので,トップが重い責任をとらなければならないのは当然です)。岡田監督の契約期間が2年であったこともあり,阪神はなんとか監督の人事権を取り戻しました(さらにオーナーも,阪神電鉄会長の秦雅夫氏に交代することになりそうです)。コーチ経験のない藤川球児氏をいきなり監督にするのは,金本知憲氏を監督にしたときと同じで,また同じ轍を踏むのかという気もしないわけではありませんが,藤川氏は解説などを聞いていると野球をよく知っている頭脳派という感じがしますし,岡田野球をよく知っていて,それを継承することも期待できるということで,良い人事のように今のところは評価できそうです。角氏も,この人事を受け入れたそうです。
 阪神球団としては,これまで拒否していた岡田監督に優勝をされてしまったことは当然愉快には思っていないでしょう。しかし,せっかく阪神タイガースについての実権を取り戻したようですから,しっかりしたガバナンスで岡田監督のつくった基盤を活かした運営をしてもらいたいです。

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