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2024年10月 2日 (水)

王座戦終わる

 藤井聡太王座(七冠)に,永瀬拓矢九段(先日,ASDの発達障害であることをカミング・アウトしました)が挑戦した王座戦ですが,藤井王座が3連勝で防衛しました。激戦でした。先手の永瀬九段は,評価値的には最終盤まで圧勝でした。勝率が7割に近い永瀬九段が,ここで勝ちを逃すとは考えにくいのですが,これが藤井王座の迫力というか,魔力なのでしょう。藤井王座が,詰めろ(何も対応しなければ詰まされる状態)で迫られている最終盤。藤井王座の手番で,受ける手もありますが,攻める場合には,相手玉を詰ますか,相手に駒を使わせて,詰めろを解除するしかありません。永瀬玉には詰みがない状態で,藤井王座は9六に王手で香を打ちました。王手には永瀬王座は応じなければなりませんが,玉は9八にいたので,永瀬王座は9七に歩を打ちました。歩は一番安い駒なので,手放しても攻めに影響しないように思えるのですが,これが大悪手でした。正着は9七桂だったようです。永瀬九段は,9筋に歩を打ったので,二歩が禁止であることから,もはや9筋に歩を打てなくなりました。そのため,藤井玉は詰めろでなくなり,次の藤井王座の着手で逆に永瀬玉がほぼ受けなしに追い込まれました。永瀬九段も9七桂はみえていたそうです。双方1分将棋なので,十分に考えがまとまらない状態で,永瀬九段は間違えてしまいました。将棋は最後に悪手を指したほうが負けと言われるように,評価値で(つまりAIであれば)必勝の局面で,一定の悪手で数値が一気にひっくり返りました。あの永瀬九段でも間違えるのは驚きですが,対藤井戦では既視感のある光景です。
 藤井九段は,相手がAIであれば負けになっている局面であったことはわかっていたようです。でも逆転するためには,相手が間違ってくれなければなりません。少しでも間違えやすい手を差しながら,相手が時間がないという状況をふまえ,相手が間違えやすいような複雑な局面をつくるというのが,藤井九段の戦法であった気がします。永瀬九段は罠に落ちたのです。藤井七冠は,ただでさえ圧倒的に強いのに,こんな「魔力」まで使われると,誰も勝てませんね。
  西山朋佳女流三冠の棋士編入試験の第2局は,試験官の山川泰熙四段が勝って,11敗となりました。どうも途中で飛車を捕獲されてからは,うまくいかなかったようですね。まだこれからです。コロナ感染で体調がちょっと心配ですが,巻き返しを期待しましょう。西山さんは,現在,先日,妊娠を発表した福間香奈女流五冠との白玲戦が進行中です。現在,福間さんが21敗でリードしており,西山さんとしては,その防衛戦にも全力を尽くす必要があります。ただ,西山さんのコロナ感染で1局がとび,第5局目に予定していた1012日が第4局となります。福間さんの出産が12月予定で,少し日程が心配です。臨月までには決着がつくと思いますが,女性の棋士は大変ということを感じさせられました。でもトッププロで出産しながら頑張るというのは,これからの女性の棋士にとって,素晴らしい先例をつくることになると思います。

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