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2024年10月 1日 (火)

東京新聞に登場

 今日から新学期が始まりました。法科大学院(LS)は,すでに始まっていますが,学部やその他の大学院の授業は今日からです。キャンパスでの学生の数も増えました。秋の新学期といえば,もっと涼しい気候のはずですが,今日も昼間は真夏のような暑さです。
 話は変わり,昨日の東京新聞に登場しました(AIに人事評価をゆだねるって怖いけど… IBMと労組が和解した理由とは? EUは「高リスク」と規制」)。東京新聞への登場は,今年,2度目です。日本IBMの不当労働行為事件の和解をきっかけとして,賃金の査定にAIを使うことについて記者の山田祐一郎さんが分析しています。私も電話で取材に応じて,少しだけその内容が採り上げられています。このテーマでは先日の日経クロステックに続く2回目です。ビジネスガイドに連載中の「キーワードからみた労働法」(日本法令)の次号も,このテーマを採り上げていますので,詳しくはそちらを参照してください。
 先日の神戸労働法研究会では,劉子安さんが,2021年に制定されたスペインの「ライダー法(Ley Rider)」について紹介してくれました(この法のもとは,Real Decreto-ley 9/2021です。Decreto-leyは,たぶんイタリアのDecreto-legge と似ていていて,緊急時に政府がまず命令を発し,その後,一定の期間内に,議会の承認により法律に転換するというもので,転換されなければ遡及的に失効します。私は法律命令と直訳していますが,人によっては暫定措置令などと呼んだりします。ただ法律に転換すれば,もちろん法律です。スペイン法もたぶんイタリア法と同じようなものではないかと推測していますが,スペイン法の専門家への確認を要します。いずれにせよ,今回のものは,王が出す命令のようであり,これは王政ではないイタリアにはないものです)。この法には,プラットフォーム労働に関する重要な規定が含まれていて,欧州では注目されているものです。労働者性の推定に関する規定に加え,アルゴリズム管理をめぐる透明性に関する規定を置いています。研究会で最後に議論になったのは,透明性との関係で,情報提供をされても,労働組合や労働者はよく理解できない部分が多いので,情報の提供者と受領者との間の「橋渡し役」が必要という点です。スペインやEUの例が紹介されましたが,日本でも同様の役割を担う人が必要でしょうね。それは,AIに精通した技術者や研究者などの専門家が担わざるを得ないでしょう。AI技術者にとっては,AI開発における倫理的責任(プライバシー侵害や差別などが生じないようなデータセットやシステム開発の必要性など)だけでなく,素人が安心してAIを活用できるようにするために,わかりやすく説明する責任があります。責任というとちょっと重い感じもしますが,結局,業界をあげてそのような努力をしなければ,AIは信用を失い,支持されないものになっていく危険があるように思います。

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