バラマキ政治は困る
10月16日の日本経済新聞の社説は,「財源を語らぬ大盤振る舞いは無責任だ」という見出しで,私も同感です。バラマキ政治は問題を引き起こします。
なぜお金をばらまく政策が良くないのか,公的年金制度のことを考えてみましょう。本来,老後の生活資金は個人が貯金して備えることも可能です。しかし,多くの人は将来を見据えずにお金を使ってしまいがちです。そこで政府は保険料という形でお金を徴収し,それを賢く運用して老後に返す,というのが公的年金制度です。実際にはその運用が賢いかどうかは不透明で,また積立方式ではないため,受給額や支給開始年齢は人口動態によって変動します。
もし個人がしっかりと資金管理できるのであれば,公的年金制度のような不確実性のある仕組みよりも,確定拠出年金のように自己責任で運用する方が望ましいでしょう。自己責任での運用にもリスクはありますが,少なくとも自分の資金を自分で運用する方が,強制的に他人に任せるよりも納得感があるはずです。他人任せにしたいのであれば,投資信託を利用すれば済む話です。それでも,公的年金が存在するのは,政府は国にお金の管理を委ねてくださいという立場をとっているのです。
この観点からすると,現金をばらまく政策は年金制度の考え方とは大きく異なります。物価高騰への対策として限定的に支援するのであれば,例えば光熱費の引き下げなどの方が効果的でしょう。もし現金を配り,それを国民が賢く使うことを前提とするならば,極端な話,公的年金制度を廃止して保険料を徴収しないという方法もあるのです。しかし,そのような政策は現実的ではないでしょう。要するに,現金をばらまく政策は最終手段であり,軽々しく行うべきではないのです。
その点で,国民民主党が掲げる「手取りを増やす」政策の方が筋が通っていると感じます。もちろん,どのように手取りを増やすのかが重要ですが,税制の「103万円の壁」を引き上げる案は,方向性としては正しいと思います。手取りを増やすために,まずはその障害となっている要因を取り除くべきであり,現金をばらまくのは最終手段に留めるべきです。強制的に徴収した税金を簡単に戻すような政策は,どう考えてもおかしいです(減税という選択肢もあるでしょうが,消費税にしろ所得税にしろ,社会保障などの分野に賢く使うことが求められ,安易な減税も慎重に考えるべきでしょう)。
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