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2024年9月11日 (水)

生成AIの限界と人間の素晴らしさ

 ChatGPTなどの生成AIの発展は目覚ましいですが,エネルギー効率の点では,人間の脳にはかないません。日本経済新聞のやや昔の記事で,「脳にある神経細胞の動作を模した機械学習モデルをシミュレーションすると,コンピューターは約800万ワットの電力を消費するが,人の脳は約20ワット,つまり40万分の1の電力消費で済む」ということが紹介されていました。20ワットというのは,ご飯1杯か2杯分のエネルギー量で,これだけで脳は高度な情報処理を行っているのです。
 AIが膨大な電力を消費することは明らかで,その点ではエコとは言えません。もちろん,AIは節電などの効率向上に役立つのですが,やはり生成AIの莫大な電力消費量は大きな課題です。再生可能エネルギーの拡大や核融合発電の実用化が進まなければ,AIの大規模な導入は環境に負の影響を与える面がどうしても気になり,手放しでは賛同しにくいことになります。
 このことは,人間の脳の素晴らしさを浮かび上がらせることにもなります。やはり人間の能力は凄いのです。もちろん,AIと人間の間には情報処理量という点で大きな差があります。AIはインターネット上の膨大な情報を高速に処理できるため,その点では人間より圧倒的に優位です。しかも,AIの欠点とされる,そのエラーも,多くの場合,人間のエラーを反映したものです。人間は誤解,見間違い,聞き間違い,言い間違い,記憶違いを頻繁に起こします。AIのエラーも,人間のエラーを反映したデータで学習したものといえるのです。特に人間は高齢になるとエラーが増えますので,AIのことを批判はできないでしょう。本当に重要な作業はAIに任せるべきではないのですが,それは人間の高齢者に責任ある作業を任せるべきでないのと同じです。
 このようにみると,AIは人間を凌駕する面もありますが,人間の不完全性を投影した存在でもあるし,また人間の素晴らしさを再発見させてくれる存在でもあります。私たちの課題は,こうしたAIとどのように付き合っていくかです。電力問題は,AIと人間の協働の未来を切り拓いていくうえで,とても重要な意味をもっているように思えます。

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