王座戦
王座戦(将棋)が開幕しました。藤井聡太王座に永瀬拓矢九段が挑む5番勝負です。永瀬九段はこれまで王座戦と相性が良く,藤井聡太が八冠を達成した際,最後の一冠が永瀬九段の保持していた王座でした。二人はよく「VS」(1対1の練習将棋)を指しているそうで,永瀬九段は年下の藤井王座を深く尊敬している様子です。永瀬九段の真摯な将棋に対する姿勢は広く知られており,年下の藤井王座(七冠)から少しでも何かを学ぼうとしているのでしょう。
ですが第1局では,藤井王座が圧倒的な強さをみせました。先手の永瀬九段も終盤で際どい受けを繰り返しましたが,AIの評価値では藤井王座が優勢を保っていました。終盤でもAIが示す最善手を指し続ける藤井王座の姿をみると,もはや人間離れした域に達しているように思えます。
一方,藤井名人(七冠)への挑戦権を争うA級順位戦では,関西勢が不振に陥っています。豊島将之九段は2連敗,菅井竜也八段と稲葉陽八段はそれぞれ3連敗中です。現在2連勝なのは佐藤天彦九段,佐々木勇気八段,増田康宏八段で,永瀬九段も2勝1敗とまだ挑戦者戦線に残っています。とくにA級2年目で,次の竜王戦の挑戦権をすでに獲得しており,さらに王将戦のリーグ入りも決めた佐々木八段の活躍に期待したいです。昨年は伊藤匠現叡王が大躍進しましたが,今年は佐々木八段がその役を担うかもしれません。
B級1組では第5局が終わり,糸谷哲郎八段が4勝1敗で好調です。空き番があって3勝1敗で,近藤誠也七段と昇級組の石井健太郎七段が追っています。斎藤慎太郎八段は佐藤康光九段に敗れ,痛い2敗目(3勝)を喫しました。佐藤九段も3勝2敗で並んでいます。石井七段に敗れた羽生善治九段は2勝3敗と厳しいスタートですが,残り全勝すれば昇級の可能性はまだあるでしょう。一方,降級争いでは三浦弘行九段が1勝4敗と苦戦し,山崎隆之八段も1勝3敗と苦しい状況です。棋聖戦で藤井棋聖に3連敗してから調子を崩している感じもします。さらには,毎年昇級争いをしていた澤田真吾七段も1勝3敗と出遅れていますが,これから盛り返すでしょう。