「第四銀行」の読み方
就業規則の不利益変更をめぐる重要判例で出てくる第四銀行事件の「第四」は,1872年に国立銀行条例に基づき各地でできた地方銀行の創立の順番を示しています。つまり,第四銀行は,4番目の国立銀行ということです。渋沢栄一が中心になって設立したそうです。国立銀行は,その後,再編や合併などにより吸収されていったものが多いですが,第四銀行は,北越銀行(第六十九銀行・長岡六十九銀行)と合併して生き残っています。国立銀行のなかには現在の都市銀行になったものもあります。例えば第六十五国立銀行は,その後,神戸岡崎銀行に買収され,その後,同銀行はいくつかの銀行と統合して神戸銀行となり,太陽銀行(前身は無尽会社・相互銀行)と合併して太陽神戸銀行となり,その後,三井銀行と合併して,太陽神戸三井銀行となり,さくら銀行に改称したあと,住友銀行と合併して,三井住友銀行となりました。神戸の名称がなくなって寂しいです。かつてローカル色をなくすことも目的として「さくら銀行」にしたのですが,ここはもう一度,「神戸」の名称をどこかに復活させてもらうことはできないでしょうかね。
ところで判例の第四銀行は,「だいよんぎんこう」と読む人が多いのですが,国立銀行の順番は「音読み」でなされており,四の音読みは「し」なので「だいしぎんこう」となります(「よん」は,「よ」「よつ」と同様の訓読み)。京都の「四条」も「しじょう」ですね。仙台にまだ残っている「七十七銀行」は「しちゅうじゅうしちぎんこう」となります。七の音読みは「しち」だからです(「なな」は訓読み)。幼児が数の読み方を覚えるときに,とくに四と七をどのように読むかで迷ってしまうことが多いのですが,それは音読みと訓読みの混在のためです。ちなみに,四と七は,一から十に数えていくときは音読み,十から一に数えていくときは訓読みになる傾向がありますが,これは多分何か説明がつく理由があると思いますので,暇なときに調べてみたいと思います。私はとくに意識せずに,気分で使い分けていますが,どちらかというと「し」は言いにくいので,一から数えるときも,四は「よん」,七は「なな」とここでは訓読みを使っているような気がします。