王位戦終わる
王位戦の第5局は,有馬温泉(神戸)の「中の坊瑞苑」で行われました。結果は,藤井聡太王位(竜王・名人,七冠)が,渡辺明九段に勝って,4勝1敗で防衛しました。これで連続5期となり永世王位の資格を得ました。2つ目の永世資格です。永世王位は,大山康晴,中原誠,羽生善治に次ぐ4人目です。王位戦は紅白のリーグ戦を勝ち抜いて挑戦者決定戦を実施し,その勝者が挑戦してくるというルールで,この棋戦に相性がよかった棋士としては深浦康市九段(これまでの唯一のタイトルが,王位3期),広瀬章人九段(初タイトルが王位。その後,竜王位も1期),菅井竜也(唯一のタイトル)が挙げられます。木村一基の悲願の初タイトル(「中年の星」と言われました)も王位でしたが,翌年に藤井聡太の登場でタイトルを奪われてしまい,その後,藤井王位は,豊島将之九段を2期連続,佐々木大地七段,そして今回の渡辺九段を破って永世王位となりました。
今回の最終局は,藤井王位が先手でしたが,途中で藤井玉が7七にいて,渡辺九段の5五角が直射していて怖い位置にあるようにみえました。しかし,うまく5五角を追い払い,居玉であるものの堅そうにみえた渡辺玉をあっという間に寄せてしまいました。最後は,渡辺九段は無理攻めとわかっていても頑張りましたが,投げるに投げれなかったのでしょう。
藤井七冠は,叡王を奪われたことで,その後の棋戦に影響するのではないかという見方もありえましたが,そういうことに影響されない精神的な強さが藤井七冠の特徴です。盤上没我で,対局に入ると,余計なことが気にならないのでしょう。渡辺九段との戦いはいつも白熱したものとなっていましたが,この王位戦は第4局も第5局も,渡辺九段にほとんど勝機がなかったようです。ということは,かなり実力差がついてしまったということでしょうかね。
次のタイトル戦は,永瀬拓矢九段との王座戦5番勝負です。藤井王座は,王位戦が早く終わったので,王座戦の防衛戦に集中できますね。第4局の会場が神戸のホテルオークラなので,ストレートの結果にならないかぎり,再び神戸に来ることになります。永瀬九段も対策を十分に練ってくるでしょうから,熱戦を期待しています。