王位戦第2局
先日の王位戦第2局は,渡辺明九段が,藤井聡太王位(七冠)に完勝しました。渡辺九段の強さが出た将棋でした。初戦もほぼ勝っていたところを大逆転で負けたということで,将棋内容では渡辺九段は負けていませんでした。20歳近く下の世代と戦う40歳の渡辺九段の頑張りは,中年世代に希望を与えるでしょう。
王座戦は,挑戦者決定戦が,羽生善治九段と永瀬拓矢九段との間で行われました。羽生九段には通算タイトル100期という偉大な記録がかかっていましたが,永瀬九段の勝利となりました。永瀬九段は,これまで4期獲得している王座への返り咲きを目指して,藤井王座(七冠)に挑戦することになりました。
竜王戦については,ベスト4が決まりました。山崎隆之八段,広瀬章人九段,佐々木勇気八段,佐藤康光九段です。佐藤九段が残っているのが目を引きます。王座戦の羽生九段と並び,挑戦権争いに絡んきているのは見事です。ただこの4人だと,佐々木勇気八段に,ぜひ藤井竜王(七冠)に挑戦してもらいたいですね。
でも私にとっての将棋界の最大の関心事は,西山朋佳女流三冠が,プロ編入試験に合格するかです。まさに実力で男性独占の世界に切り込んでいけるかということであり,日本の女性史のなかでも重要な意味をもつといっても,大げさではないと思います。
女性どうしの戦いだけで,タイトルをいくつもっていても,意味がないのです。男女統一の棋戦で勝ってこそ意味があるのです。もちろん,プロ棋士になって,彼女がどれくらい活躍できるかはなんとも言えません。これまでは女性だから,男性棋士によく勝つねと言われていましたが,男性棋士のなかに入ると,年間6割くらい勝たなければ並の棋士として埋もれてしまいます。ただ,そうであっても,いまはプロ棋士になるということに意味があるのです。その後,何十年かかるかわかりませんが,いつかは,女性の棋士が,タイトルをとる時代がくるでしょう。その道を開くための第一歩となるかもしれないのです。現在の彼女の調子をみると,里見(現在,福間)香奈さんが挑戦したときよりも,期待が高まっている感じです。対戦相手も決まりました。29歳という年齢的にも,今後,それほど多くのチャンスがあるとは思えません。編入試験が始まるまで,まだ少し時間があるので,よい準備をしてほしいですね。