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2024年6月 3日 (月)

『法学部生のためのキャリアエデュケーション』

 弁護士の松尾剛行さんから『法学部生のためのキャリアエデュケーション』 (有斐閣)を送りいただきました。いつもどうもありがとうございます。これは良い本です。たくさん付箋紙をつけながら読みました。大げさではなく,法学部生全員にとって必読だと思います。とくに本人だけでなく,法学部生をもっている親御さんにも読んでもらいたいです。最近では,大学生でもそのキャリアの決定について親が影響力を持っていることが多いので。

 本書は前半の総論と後半の各論とから構成されています。第1章から第7章の前半はキャリア論一般であり,第8章から第12章の後半は法学部生をとくに念頭においた具体的なキャリアガイダンスになっています (法曹はもちろん,公務員や政治家まで採り上げられています)。第12章のAI時代以降の話については,拙著『AI時代の働き方と法』(弘文堂)も引用してくださっています。

 法学部生以外の人でも,前半の内容は十分に参考になります。これは基礎理論編ともいえるのですが,実際に悩める若者に対して,きわめて実践的で役立つことも書かれています。つまり,理論と実践双方が平易な言葉でわかりやすく書かれているのが,この本の凄さです。戦略的な思考が重要というと硬そうですが,将来をしっかり見越して,必要な努力を的確に行うことが大切ということを呼びかけ,そのために具体的にどのようなことをすべきかも書かれています。
 個人的には,経営学の知見が散りばめられていることも良いです。法学と経営学にまたがるところは,相当の力量がなければ書けないでしょう(労働法学者も,経営や人事管理論の知見をもたなければならないと思っていますが,そういう人はあまりいません)。これは松尾さん自身が,普通の弁護士ではなく,色んな分野に関心をもち,ポジティブに行動されていることによるものだと思います。

 私はAI時代やデジタル時代における将来志向の教育の重要性をいろんなところで述べていますが,大学の法学部については,どちらかというと未来はあまり明るくないと言ってしまうことが多かったのです。しかし,本書を読むと,きっちり戦略的にキャリア計画を立てれば,法学部生にも十分未来があるということがわかりました。教えられることが多い本です。

 

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