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2024年6月21日 (金)

世界史学習の重要性

 昨年の紅白歌合戦にも出ているMrs. GREEN APPLEというグループの「コロンブス」という楽曲のミュージック・ヴィデオ(MV)が問題となっています。日本経済新聞でも,電子版の6月13日に「ミセス新曲MVが公開停止 歴史理解に欠ける表現」というタイトルで紹介されていまいた。「CMに新曲を使っていた日本コカ・コーラは「いかなる差別も容認しない」などとコメントを発表し,同曲を使用した全ての広告素材の放映を停止した」となっていましたが,常識的にはコカ・コーラが事前に知らなかったはずはないので,コカ・コーラも同罪といえそうです。
 このMVのことをもちろん私は知りませんでしたが,YouTubeで,観ることができる範囲で観ました。自分の趣味には合わないものの,それほど騒ぐほどのものかとも思いました。もちろんコロンブスというのは,とんでもないことをやった人であり(Genova 出身のイタリア人で,イタリア名はCristoforo Colombo),アメリカ大陸の先住民にとっては大犯罪者です。
 コロンブスの悪行についてはいまさら紹介するまでもありませんが,そもそも産業革命前の大航海時代に始まる欧州人によるアメリカ大陸や東アジアへの進出は酷いものでした。とりわけスペインやポルトガルが,アメリカ大陸の高度な文明を破壊したことは,人類史に残る蛮行であり,そのことは学校でも教えられているでしょう。ただ世界史は,どの国の立場からみるかによって,描き方もずいぶんと変わります。たとえばオーストラリアの歴史を,(混血を除くと)絶滅したと言われているタスマニア人の視点で書けばどうなるでしょうか。
 世界史の教え方の難しさは,白人文明批判に傾斜しすぎてもいけないのですが,だからといって,今日の私たちが享受している繁栄した文明の原点に,白人の蛮行があったことは否定できないという点にあります。まずは歴史的事実をしっかりおさえて,それをどう評価するかは子どもたちに考えさせるということが必要です。そういうことをやっていれば,今回のコロンブス問題についても,この歌手グループが,もし何か主張があってやったことなら,それはそれで聞いてみようということになるのですが,どうもそういうことではなさそうですね。
 もちろん,日本も他国のことをとやかく言える立場ではありません。明治時代に,西洋国家の植民地にされないよう頑張ったのはよいのですが,西洋国家のマネをして列強の仲間入りをさせてもらい,帝国主義的政策をとったという恥ずかしい歴史もまた拭い去れないものです。日清戦争,日露戦争の勝利と聞くと,何か日本人のプライドをくすぐるようなところがありますが,結局は,欧米のマネをして,仲間に入れてもらおうと頑張り,でも本当の仲間にはしてもらえず,裏切られて虚仮にされてきたのです。先の第二次世界大戦の直前の1939年8月に,ドイツなどとの防共協定の強化に苦心していた平沼騏一郎首相が,総辞職時に述べた「欧州の天地は複雑怪奇……」は ,独ソ不可侵条約の衝撃を示す言葉とされていますが,結局,欧州の情勢をしっかりつかめないままドイツに翻弄されたということでしょう。そのソ連と1941年に日ソ中立条約を結びましたが,1945年4月に破棄通告され,日本政府は最後までソ連を信じていた(条約は更新されないが1946年4月に失効するまでは有効と考えていた)ようですが,結局は,終戦直前にソ連は日本に宣戦布告し,筆舌に尽くしがたいほどの日本人への暴虐を中国大陸でやりましたし,アメリカには広島と長崎に原爆を落とされました。こういう歴史をみると,ひょいひょいと外交の舞台に出ていって,あたかも名誉白人的な気分で仲間に入れてもらい,いろんな負担を押し付けられているような首相をみると,最後は「欧米の天地は複雑怪奇」といって,そのツケを国民に回すのではないかと不安でたまりません。
 さて,コロンブス問題は,企業としては,時代の流れを意識して,企業イメージを損なう表現行為は避けるべきというような話となりますが,より根本には,私たちが世界史をどうとらえているかということと関係します。今回のMVが,なぜダメかということについて,ビジネスの観点から論じるだけではもったいないのであり,せっかくの素材ですから,なぜこれが問題となるのかを,一方的にこのMVはダメだということを押し付けるのではなく,むしろ,MVを支持する理由(表現の自由など)や支持しない理由を挙げながら議論をして論点を浮き彫りにすることが大切だと思います。

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