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2024年6月23日 (日)

AI法

 5月21日に,EUのAI法が可決されました。AIに関する包括的な法律ですが,これはAIを規制する一面がある一方,AIの利用に関する見通しのよいルールを設けて,過剰な利用による弊害を回避し,他方で,開発者や事業者たちが慎重になりすぎて過小な利用となることによって,この技術の潜在的な価値を活かせないことがないようにするものといえるでしょう。
 AI法はリスクベースアプローチをとったとされ,AIシステムを,①unacceptable risk(許容できないリスク),②high risk(ハイリスク),③limited risk(限定されたリスク),④minimum risk (最小リスク)というようにリスクの程度に分け,それそれに合った規制の内容としています。①に該当すると禁止となるので,重要なのは禁止するほどではないが,リスクが高い②をどのように扱うであり,AI法の中心も②に関するものとなっています(具体的には,リスクマネジメントシステムの構築などのAIシステムに求められる要件(requirements)と,provider やdeployer の義務が詳細に定められています)。労働に関するものでは,「雇用,労働者管理,自営的就労へのアクセス(employment, workers management and access to self-employmen)」において,募集・選考,労働条件に影響する決定,昇進・契約関係の終了,個人の行動や特徴に基づく仕事の割当,個人の監視や評価のために使用されるAIシステムが,②に分類されています。将来のキャリア,個人の生活,就労者としての権利にかなりの影響を及ぼす可能性があるからだと説明されています。雇用も自営も区別しないところがデジタル社会に適合的ですね。
 ③については,いわゆる透明性の義務のみが課されています。そこには,たとえば生成AIやディープフェイク(deep fakes)も含められ,コンテンツがAIによって生成されたものであることを示しておかなければならないとされています。
 日本でも,従来のAI関係のガイドラインを統合する形で,4月19日に「AI事業者ガイドライン」が発表されています。先日,閣議決定された「骨太の方針」では,「AIの安心・安全の確保」という項目で,「我が国は,変化に迅速かつ柔軟に対応するため,『AI事業者ガイドライン』 に基づく事業者等の自発的な取組を基本としている」とされています。ガイドラインの内容は,まだよくみてはいませんが,一見したところ,たいへんわかりやすく,使い勝手がよさそうです。ここでも,EUと同様,リスクベース・アプローチがとられるとされていますが,雇用や労働面におけるAI利用のリスクについてハイリスクと分類され,強い規制対象となるかについて,今後の動向が注目されます。
 いずれにせよ,個人情報保護と並び,AIの利用規制は,今後のデジタル労働法においても中核的な領域を形成すると考えられますので,私たちも,その議論や規制の動向を注視しておかなければなりません(フォローしていくのは大変なのですが)。

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