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2024年5月 5日 (日)

低投票率を嘆く前にやるべきこと

 1週間前の日本経済新聞の記事「衆議院3補欠選挙,投票率過去最低を記録」によると,そのタイトルどおり,「衆院3補欠選挙の投票率は,東京1540.70%,島根154.62%,長崎335.45%となり,いずれも過去最低を記録した」そうです。選挙区がなくなることになっていて,野党どうしの対決となった長崎3区はさておき,自民と立憲の一騎打ちとなった島根1区でさえも55%程度で,全国の注目を集めた江東区の東京15区は40%そこらというのは,この選挙の結果の民主的正統性が疑われそうな数字です。島根1区は県庁所在地の松江市を中心とする選挙区で,島根県民の関心の低さが嘆かわしいですし,東京都の江東区は,自民不在の乱打戦という感じで,激しい選挙妨害があったことも含め,情けない選挙であったと思います。
 ただ投票率が低いことについては,有権者の意識の低さを指摘するだけでは不十分です。今回の選挙はわかりませんが,直近の選挙で私が経験したことでいえば,投票所に行くと,紙と鉛筆を渡され,候補者の名前を手書きし,自分で投票箱に入れ,それを投票立会人がみつめているというものです。タイパ重視の若者は,よほどのことがなければ,こういうスタイルにはなじめないのではないでしょうか。わざわざ投票所にでかけたあと,紙と鉛筆を渡されるというのは,レトロな感じがするでしょう。私は選挙とはこういうものだと,何も疑問をもたずにしがってきましたが,はじめて選挙に行く若者たちにとっては,「なんでスマホを使って投票できないのか」と思うことでしょう。それに投票締め切りになった途端に,候補者の当確が出たりするのも興ざめです。仕方ないのかもしれませんが,なんとなく選挙をやる前から結果がわかっているような感じで,これだと選挙に行く気がなくなるでしょう。
 これは低投票率の原因が有権者の意識の低さではなく,選挙のやり方がまちがっていることに起因している可能性を示しています。区割りをどうするかとか,小選挙区制や比例代表制をどうするかとか,そういう問題もあるのですが,まずは投票方法から変えてみたらどうでしょうか。電子投票にはいろいろ課題があるのでしょうが,前にも書いたように,株主の議決権行使などでも,スマホでできる時代であり,工夫をして技術的に乗り越えてほしいです。選挙は大事なことだから人間のアナログ的な手法でという考え方もあるのでしょうが,もしそうならDXを推進している政府の立場と矛盾します。デジタル技術を活用できるものは原則として,デジタル技術でやるという意味の「デジタルファースト」をここでも適用して,投票方法を変えなければなりません。よく言われるデジタル化は高年齢者に不利であるという話は,少なくとも組織票をもっている政党には影響しないでしょう。自民を支持する高齢者だけでなく,公明を支持する創価学会員,立憲民主や国民民主を支持する労働組合員,共産党員にも高齢者はたくさんいるでしょうが,彼ら,彼女らは,どんな投票方法であっても投票するでしょう。むしろ遅れている日本社会のデジタル化に活を入れるためにも,これまでデジタルになじんでいなかった人にデジタル技術を浸透させるきっかけとなりそうな投票のデジタル化は効果的だと思いますが,いかがでしょうか。

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