価値観の断絶
産政研フォーラム141号の大竹文雄さんのコラム「社会をみる眼」の「技術・家庭科男女共修の長期的影響」は,とても面白かったです。中学校での技術と家庭科の科目は,1977年生まれ(中学になるときに1990年)以降かどうかで,大きく変わったそうです(知りませんでした)。それ以前は,技術・家庭科は男女別であったそうです(私も,もちろんその世代です)。それ以降は,男子も家庭科を学び,女子も技術を学ぶようになります。その影響について調査した原ひろみさん(明治大学教授)たちの研究が紹介されていて,技術・家庭科の男女共修化によって,家事労働時間の男女平等化が観察され,それが現在でもなお進行中であるというのです。男女共修第一世代は現在46歳で,それ以前の世代と比べ,男性は家庭での子育て時間や家事労働を重視し,女性は性別役割分担に反対し,正社員の比率も高いそうです。大竹さんは,「今まで伝統的な価値観で運営がなされることが多かった企業でも,意思決定者の過半数が新しい価値観をもってくると,働き方改革が進む可能性がある」と述べています。ただ,「部長級や経営トップ層の年齢層は,まだ技術・家庭科別学世代であ」り,「古い価値観の世代は,働き手の多数派が新しい価値観をもていることに気が付かないと,企業の組織運営はうまくいかない可能性がある」と指摘されていて,まさに同感です。価値観がどこかの世代のところで大きく変わっているということは直感的にはわかっていたとしても,これがきちんとした経済学の分析により,しかも46歳という明確な数字で示してもらえたことで,問題点がわかりやすくなりました。教育による価値観の断絶は,他の場面でも起きているかもしれず,今後も経済学者の方の実証研究に注目していきたいですね。
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