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2024年3月 9日 (土)

日産自動車問題に思う

 日産自動車の下請事業者“いじめ”は,非常に嫌な話ですね。日産だけの問題ではなく,この業界全般のことなのかもしれません。テレ東のWBSで報道されていたのは,代金を事前に決めないまま発注をし,下請側は商品を納めたあとに,代金を請求するというものですが,その額が買い叩かれるとのことでした。下請側は受注を拒否することは事実上できないので,代金を事前に決めなくてもよいということでしょう。もしこのとおりなら,そもそも代金が決まっていないので減額という概念も成立しなさそうですが,代金を決めないで取引を進めようこと自体が,よりひどい優越的地位の濫用といえなくもありません。ほんとうのところはよくわかりませんが,いずれにせよ,公正取引委員会は,下請代金支払遅延等防止法(下請法)が禁止する「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに,下請代金の額を減ずること」(4条1項3号)に該当するとして,同法7条2項(「公正取引委員会は,親事業者が第4条第1項第3号から第6号までに掲げる行為をしたと認めるときは,その親事業者に対し,速やかにその減じた額を支払い,その下請事業者の給付に係る物を再び引き取り,その下請代金の額を引き上げ,又はその購入させた物を引き取るべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告するものとする。)」に基づき勧告を発しました((令和6年3月7日)日産自動車株式会社に対する勧告について)。
 報道されているとおりだと,ひどい取引です。中小企業の賃上げが求められているなか,取引先に適正な代金を請求できるようにすることで,賃上げ原資を生み出す必要性が言われていましたが,公正取引委員会がしっかり仕事をしたという感じです。
 報酬についてきっちり書面で約定してくれないとか,約定したとおりの報酬が支払われないとかは,フリーランスの取引でも起きていると言われていました。昨年成立し,今年施行が予定されているフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は,業務委託事業者に対して,給付の内容,報酬の額,支払期日その他の事項を,書面または電磁的方法により明示しなければならないと定め(3条1項),特定業務委託事業者(法人である発注者など)は,「特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに,報酬の額を減ずること」が禁止されています(5条1項2号)。ただし,後者は,継続的な業務委託の場合にだけ適用されるもので,昨年出された「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会報告書」では,継続性は1ヶ月以上とする方向性が示されています。
 今回の日産自動車問題での公正取引委員会の勧告は,フリーランスにとっても勇気づけられるものでしょうが,フリーランス法では継続性要件が付けられていることで,この規定の実効性が損なわれてしまわないか心配ではあります(3条については継続性の要件はありません)。5条の継続性の要件の当否については,引き続き検討されるべきでしょうね。

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