社会保障の再構築
今朝の日本経済新聞の「核心」で大林尚編集委員が,「年金の主婦優遇は女性差別」というタイトルの記事を掲載していました。国民年金の3号被保険者問題です。「夫への依存を前提にした昭和の年金をいつまでも引きずるのは,みっともない。女性が真に自立するカギは,令和の年金改革である。」というのが,彼の主張です。連合も昨年,3号被保険者廃止論を唱えています。専業主婦を優遇しているというより,専業主婦を家庭に閉じ込めているという構図でみるべきだということでしょう。記事の中では,連合は,「所得比例と最低保障の機能を組み合わせた新しい年金制度への衣替えを提唱している」と書かれていました。私は不勉強で,連合がこういう主張をしていたのは,知らなかったのですが,個人的にはフリーランスの社会保障という問題を考えるうえで,現在の年金制度には問題があると考えていました。働く人のセーフティネット問題を根本から考え直そうということをいまやっていて,そこでは,これは労働法の問題,あちらは社会保障の問題といったことは言ってられなくなっています。自営的就労者(フリーランス)は,企業に頼らずに働くわけで,そうした人の保障のあり方を考える際には,政府が直接関与する社会保障のあり方を考えざるを得ず,そうした視点から現在の社会保障のことをみると,いろいろ改善すべき点がみえてくるのです。3号被保険者問題はその一つですが,より大きな問題は,最低保障+所得比例保障という仕組みを,いかにして現行の枠組みにとらわれずに(つまり働き方に中立的に),国民に公平な形で再構築できるかということになります。
この点を考えるため,3月15日に神戸大学でミニシンポジウム(オンライン)を開きますので,関心のある方はご参加ください。制度を変えると誰が得をするか損をするかという話とはいったん切り離し,また移行にともなうコストもいったん忘れ,タブラ・ラサ(白地)から制度を作ると,どういうことになるかという思考実験ができればよいと思っています。法学と経済学と実際のフリーランスの立場から論客に参加してもらいます。このシンポの詳細は,近いうちに神戸大学の社会システムイノベーションセンターのHPに掲載されると思います。
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