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2024年2月 9日 (金)

公務員の処遇のあり方を考えよう

 先日,NHKのニュースで,国土交通組合が,「2024年1月2日に発生した航空機同士の衝突事故を受けて」というタイトルの声明を発表したことが報道されていました。そのなかで「今回の事故を受けて,1月6日から羽田空港において,航空管制官による監視体制の強化として,滑走路への誤進入を常時レーダー監視する人員を配置しました。同様のレーダーが設置されているほかの6空港(成田,中部,関西,大阪,福岡,那覇)においても順次配置するとしています。しかしながら,この人員は新規増員によらず,内部の役割分担の調整により捻出するとされており,国土交通労働組合は,航空管制官の疲労管理の側面から問題視しています」と書かれています。
 最初,事故対策のために,常時レーダーを監視する人員を内部分担調整により配置するという話を聞いたとき,これだと管制官の業務過多となり大変ではないか,それにより新たな事故を誘発するのではないか,ということを心配していました。デジタル技術で対応できることはあるはずで,なにかあれば,まず人ということではなく,まず機械という発想で臨んでほしいものです。もちろんコストの問題はあるのですが,現状でもおそらくかなり厳しい人員体制だと思います。管制官の仕事の重要性に鑑みると,簡単に人の配置で対処するということでは困ります。労働組合の声明は,こういう私たちの心配にも応えるものであり,非常に重要な社会的意義があるものだと思っています。
 ところで,公務員の労働組合というのは,あまり知られていないと思うのですが,いつか紹介しようと思っていた良い本があります。晴山一穂・早津裕貴編著『公務員制度の持続可能性と「働き方改革」―あなたに公共サービスを届け続けるために―』(旬報社)です。早津さんからいただきました。どうもありがとうございます。公務員のことは,身近な存在とはいえ,知らないことが多くあります。この本では,今回の国土交通労働組合のことも書かれています。限られた人員のなかで,新たな業務も増えてきて,現場が疲弊しているということが,文章は状況を客観的に書いたものですが,そこには悲痛な叫びがあるようにも思えました(99頁以下。航空関係は103頁以下)。本書のタイトルにもある「公務員制度の持続可能性」のためには,処遇の改善による人員の増加も必要ですが,それだけでなく,人手不足に対処するためのデジタル化の推進が重要でしょう。これは民間と同じ処方箋です。デジタル化により,従来のスキルが通用しなくなる人も出てくるかもしれませんが,リスキリングなしでは,公務員制度が立ち行かなくなるおそれがあると思います。
 早津さんは,本書の最後に,公務員に対して私たちは「安ければ安いほどよい」という姿勢で臨んでよいのかという問題提起をされています。公務員にきちんと仕事をしてもらうためには,それなりの処遇を保障することは必要です。公務員の「役得」のようなものは困りますが,その仕事の価値に見合った報酬は必要だと私も考えます。「民主主義の担い手である国民・住民一人ひとりにおいて,……ときに予算全体の配分のあり方,また,コスト負担のあり方とも向き合い,これを社会・経済全体の好循環にもつなげていくことをめざしていくのかが問われている」(350頁)という早津さんの指摘は重要でしょう。

 

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