棋王戦始まる
一昨日の日曜は,藤井聡太八冠と伊藤匠七段の対局が2つありました。NHK杯と棋王戦で,前者はもちろん事前の収録ですが,視聴者はNHKとAbemaTVの両方で,同時進行的に藤井・伊藤戦をみることができました。NHK杯では,藤井八冠が快勝しました。現在の将棋界では,藤井八冠に次ぐ2番手は伊藤七段です。しかし,伊藤七段は,藤井八冠にこれで7連敗となり,まだ一度も勝ったことがありません。この将棋も,藤井八冠の攻めは強烈で,あっという間に投了に追い込まれました。強すぎます。伊藤七段は,この前の稲葉陽八段戦では,まったく隙をみせない完勝をしていました。藤井八冠と伊藤七段は,年齢も同じでライバル対決と言うべきなのでしょうが,解説の佐々木勇気八段も述べていたように,ライバルというには,藤井八冠が強すぎるので,まだその表現を使うことは難しそうです。藤井八冠はこれでベスト4に進出一番乗りです。羽生善治九段と中村太地八段の勝者と準決勝を戦います。残りの山は,佐々木八段と佐藤天彦九段の勝者と,八代弥七段と増田康宏七段との勝者が戦います。
棋王戦は,5番勝負が始まりました。北陸シリーズで地震の影響が心配されましたが,今回は魚津市で無事に開催できてよかったです。藤井棋王は,王将戦とタイトル戦が並行していますが,王将戦は今週に第4局があり,すでに3連勝しているので,次局で終わる可能性があります(菅井八段には悪いですが,濃厚です)。
第1局は持将棋となりました。要するに引き分けです。双方の玉が,相手陣に入り,どちらも相手玉を詰ますことが困難となった場合において,双方が24点(大駒が5点,小駒が1点)以上あれば,合意で持将棋とすることができます。この日の対局は,伊藤七段が持将棋に誘導したのではないかとも言われています。不利とされる後手番を引き分けにできれば,それだけ有利になるということでしょう。なおタイトル戦では持将棋は指し直しではなく,勝ち負けにカウントされません。つまり0勝0敗1持将棋と記録され,5番勝負は仕切り直しになります。2勝2敗となると,第6局目が実施される可能性が出てきました。これで伊藤七段は,対藤井戦のいやな流れを断ち切ることができるでしょうか。
藤井八冠は,初めての持将棋だそうです。羽生九段も,生涯で持将棋は2局しかありません。谷川浩司十七世名人も3局しかありません(いずれもタイトル戦)。強い棋士はあまり持将棋にはならないようです。そもそも素人には,入玉の将棋は難しすぎて面白くないです。できれば持将棋ねらいのような将棋にはならず,きちんと決着がつく対局を期待します。