政倫審初日
政治倫理審査会で,突然,首相が出席し,しかも公開を受け入れると言い出したのは驚きでした。そのため,これまで出席の意向は示していたが,公開を渋っていた政治家も,公開に応じざるを得なくなったようです。首相がリーダーシップをとって,国民の要望に応えたという印象を与えようとしたのかもしれません(首相の印象を良くするために,わざとゴネさせていたのかなと勘ぐりたくもなりますが,たぶん違うでしょうね)。
私は80分のライブをずっと観ていました。まず15分少し,本人の弁明がありました。首相としては,ここが勝負で,これでアピールできるという勝算があったから公開を受け入れたのでしょう。自民党の鷲尾英一郎氏からの緩やかな質疑をこなしたあと,立憲民主党の野田佳彦氏からの質疑に移ると,形勢がやや悪くなりました。野田氏から,首相になった後の大変な時期もパーティを繰り返していたことについて「詰問」され,さらに,首相には総理としての「内なる規範」がないのかという質問については,「内なる規範」の意味がよくわかっていないような答弁でした。最後は,在任中の資金パーティはしないという答弁を引き出させられたところは,追い込みに屈したという印象を受けました。一方,十分準備していたと思われる首相のリーダーシップについての質問については,政倫審の出席は本人の意思を尊重するルールになっているという答えを繰り返しました。しかし,野田氏が言うように,本人の意思を尊重するとしても,本人に出席や公開を呼びかけるという形で指導力を発揮することは可能なのであり,首相の言い訳は形式論に聞こえました。もちろん,首相は,ほんとうは指導力がないので,呼びかけても無理であったのかもしれませんが,それは自民党のガバナンスの欠如を意味することになります。どっちにしても,首相には良い結果にならないので,これは野田氏の追い込み方がうまかったのかもしれません。
続く日本維新の会の藤田文武氏からは,首相は裏金問題の調査をしっかりしたうえで出席しているはずであろうという先制パンチを受けてからの答弁とおり,結局,すでに発表されている「聴き取り調査に関する報告書」以上の内容は出てこず,裏金問題が,いつから,誰が,どのように進めてきたのかという本質的な点は何も明らかになりませんでした(この点は,共産党の穀田恵二氏からも追及されました)。これでは首相は何のために出てきたのか,という疑問をもたれても仕方がないでしょう。藤田氏からは,さらに首相自身の宏池会の問題についても追及されました。首相は当初の弁明では,清和会や志帥会とは違い,不記載額は少なく過失によるものにすぎないとして,責任が小さいかのような印象を与えようとしていましたが,藤田氏の追及で不自然さが出てきました。
公明党からの質疑は,とくに注目すべきものはありませんでした。与党側の質疑応答からは,政治資金規正法を改正して,連座制や議員本人の責任を認めるところを落とし所にしたいという意図は確認できました。一方,野党からの裏金問題の構造の明確化という点は,内容がない答弁に終始しました。過去のことよりも,再発防止に力を入れるという態度で国民に理解を求めるという方針ですが,これは成功するでしょうかね。
次に登場した二階派の武田良太氏の弁明は,ちょっと物足りなかったです。言い訳はしないと言いながら,経理のことはよくわからず,事務局長しか真相は知らず,その不注意によるものであったという言い訳に終始したように思えました。ただ,立憲民主党の寺田学氏の追及があまりうまくなかったなと思いました(共産党の塩川鉄也氏の追及のほうが厳しくできていた印象です)。日本維新の会の浦野靖人の最後の質問である,この裏金問題の動機は何かについて,ぜひ武田氏に語ってほしかったですが,無理なのでしょうね。ということで,これを視聴した人は,やっぱりボスの二階俊博会長を呼ばなければならないと思ったでしょうね。武田氏は二階氏を守ろうとしていたのでしょうが,自身も守らなければならないということで,その結果,二階氏からも話を聞くべきという流れができてしまったような気がします。
それにしても,塩川氏の追及の途中で,大谷結婚の速報を流すのはいかがでしょうか。自動的な処理なのかもしれませんが,物事の重要性を考えると,緊急性が高くない大谷速報は,政倫審のあとでも良かったのではないかと思いました