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2024年1月13日 (土)

自律分散型

 能登震災の復興に向けて,いろんなスタートアップの活躍などが報道されるようになりました。もっと最新技術を使えないかということを前に書いたのですが,私が心配するまでもなく,そういうイニシアティブは進んでいたようです。WOTAのシャワーも活用されているようです。Starlink,ドローンも活躍しているようです。さらに,いろんな支援が来るまえに,被災者たちが自分たちで支援物資の受け入れを進めるなど,自助努力をしているようです。
 11日のテレ東のWBSでは,立教大学ビジネススクール・田中道昭教授が,自立分散型システムの重要性を指摘されていました。「自律分散型」と書いたほうがよいかもしれませんが,地域レベルで,住民が政府の手を借りずに進める復興を,最新技術がサポートするということは,まさに自律分散型の復興といえるでしょう。
 これは,前に書いた今後の企業のあり方と実は同じです。個人のフリーランスが中心となるのは,自律分散型の労働社会です。プロ人材が集まってプロジェクト型企業(スタートアップなどの中小零細企業)を作っていくのは,自律分散型を基礎とした組織化といえます。大企業でも,現場に権限委譲していれば,これもある種の自律分散型の組織といえます。
 平時には,大組織のスケールメリットが発揮されることが多いのでしょうが,有事には,中央集権的となりがちな大組織では,機動的な行動をとれず,迅速かつ柔軟な対応をしにくいように思えます。これは,今回の復興で,公的な支援がうまくいっていないこと(それには,いろいろな事情はあるのでしょうが)に通じるのではないかと思います。
 震災のような極限的な状況において,組織に頼った復興をしていると,意思決定をするだけで時間がかかってしまい,手遅れになることが多いでしょう。社会のレジリエンス(resilience)は,危機や変化に機敏に対応する力にかかっているのであり,そのためには,組織に頼らない個人の強さを鍛えることが必要だと思います。
 これを第4次産業革命に引きつけて考えると,この革命は,地震のように急激に変化をもたらすものではないとしても,私たちの社会に持続的に大きな地殻変動がもたらしているといえるのであり,レジリエンスが問われるという点では同じです。フリーランス政策というのは,組織に頼らなくても,社会に貢献できる人材を育成するという大きな社会的な課題の一つとして捉えて展開される必要があるでしょう。

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