『不当労働行為性の判断基準』
弁護士法人高井・岡芹法律事務所編『裁判例・労働委員会命令にみる不当労働行為性の判断基準』(経営書院)をいただきました。不当労働行為性の判断基準に関連する判例や労働委員会命令を整理したものです。不当労働行為事件は,労働法のなかでも最も難しい分野であり,わかりやすい解説書が求められています。本書は,論点ごとにわかりやすく分類されているので,実務において大いに役立つでしょう。昨年のUber Japanほか1社事件の都労委命令(2022年10月4日)など,最新の情報も含まれています。もっとも,Uber Japanの使用者性を認めた部分(26頁)については,どう評価されているか知りたかったですが,書籍の性質上,そういうことは書かないということだったのでしょう。なお,この論点(Uber Eatsだけでなく,Uber Japanの使用者性まで認めたこと)については,季刊労働法の最新号で,これを疑問とする評釈が掲載されています(松田朋彦氏の執筆)。都労委命令の結論はともかく,命令の理由づけで十分かは,理論的な観点から議論があるところでしょう。
ところで,高井・岡芹法律事務所には,これまで個人的にも大変お世話になりました。高井伸夫先生が主催されていた,諏訪康雄先生が提唱されているキャリア権に関する研究会の仲間に加えていただき,大変勉強をさせてもらいました。高井先生のいろんな人をつなげる力はすごかったと思います。その高井先生が亡くなられていたことを,つい最近知りました。謹んでご冥福をお祈りします。
同事務所は,岡芹先生を中心に,今後も揺るがず発展されるでしょう。実は,同事務所の弁護士の方々には,10年以上前のことになりますが,私が編著者となった『労働法演習ノート』(2011年,弘文堂)の刊行時に,事前に原稿を読んでもらい貴重な意見をいただいたことがありました(同書の「はしがき」も参照)。優秀な弁護士がそろっているのだと思います。今回の書籍も,同事務所の成果の一つでしょう。
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