経営者は社員に何を示すべきか
昨日の日本経済新聞の2つの記事が気になりました。一つが,「テレワーク3年半減」というものです。日本生産性本部の最新調査で,テレワークが,2020年5月の31.5%から,15.5%になったとのことでした。上司が出社しているから在宅勤務を続けづらいとか,自宅の通信環境が悪いといった理由があげられていましたが,どちらも困ったものです。テレワークを本気でやる気のない企業が多いことはわかっていましたが,これは日本経済の未来に暗い影を落とす現象です。昔風の働き方に慣れている人はテレワークをしたくないですし,対面型のメリットを過剰に評価していますし,テレワークのメリットを感じられていないことが多いでしょう。しかし,テレワークは,まずはいろんな意味で弱者である人(育児や介護の負担をかかえている人,障がいをかかえている人など)に大きなメリットとなるのです。対面型推進は,いわば強者の論理なのです。ただ,それだけではありません。もしテレワーク率がこのまま衰退していけばどうなるでしょう。テレワークは,いわば時間的,場所的という面での自由にかぎらず,働き方そのものの自由さを象徴しているのであり,それは独創性の源なのです。テレワークを活用するというのは,そうした独創的な人材に選んでもらうために必要な経営戦略であるということなのです。
もう一つの記事は,編集委員の太田泰彦さんが書いていた「エンジニアに点火する オープンAI騒動の含意」です。エンジニアは何のために働いているかということを論じています。社会に意味のある仕事がしたいというエンジニアたちは,自分たちにそういう仕事をさせてくれる経営者についていくのです。Altman氏は,現場が胸の踊るような世界観を語っていたので,従業員のなかで信奉者が多く,彼が会社を移籍すれば,ついていくのです。キャリア権の時代は,個人がキャリアを選択します。自身のキャリアは,自身の価値観と密接に関係していて,それに合致する企業が選ばれていくのです。もちろん個人が企業を選ぶためには,それなりのスキルがなければなりません。したがって,個人は,自身で企業の選択ができるようにするために,スキルを磨くのです。そして,企業は,そうしてスキルを磨いた人に選んでもらえるように,よい経営者をトップに据えなければならないのです。政治家との関係や財界団体の活動に熱心すぎて,従業員に向けて世界観を語れない経営者がトップにいる企業は,やがて没落していくでしょう。昨日は,企業と投資家との関係について書きましたが,今日の話は,企業と働き手との関係に関するものです。経営者は,上記のテレワークの話も含め,優秀な人材が何を求めているのかを間違えないようにしなければならないでしょう。
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