新語・流行語大賞は「アレ(A.R.E)」
コロナ後は対面型授業を少しずつ復活させているのですが,コロナ中にこちらも頭がすっかりリセットされていて,あまり意識していなかったことがあります。よく考えると,学生全員がノートPCを持ち込んでいて,私も教室にはノートPC1台をかかえるだけで向かっていて,そういうのは,数年前までには考えられないことでした。それだけでなく,Google Classroom(GC)の活用により,授業時間以外でも,ネットで学生と常に接触できるようになっており,資料の配付などもGCで行い,注意事項やその日の授業の補足なども必要に応じてGCで連絡しています。
六法も紙媒体のものは使わないし,判例もその場で検索できます。のみならず,学生がゼミのなかで展開していく議論にあわせて,その場で検索したサイトの情報なども参考にしながら発言するというのも,昔なら考えられないことです。議論がどの方向に行っても,つねにネットにつながっている状況であれば,すぐに情報の確認ができるので対応できます。もちろん,こちらに一定の知識があるから,すぐにネットを活用しながら誘導できるのですが,いずれにせよネットがない状況と比べると,こちらが教えることができる情報が大幅に増加している感じがします。それのみならず,学生がネット情報を鵜呑みにして不正確なことを言った場合には,その場でその問題点を指摘することもできます(ネット上では,労働問題については怪しい情報が飛び交っています)。これも偽情報に踊らされないようにするための大切な教育でしょう。LSでは,かなり前から学生はPC持参でしたが,学部では比較的最近の現象です。でも,これからは,これが当たり前となるのでしょう。生成AIなども活用しながら,どのような授業ができるか,神戸大学で私が試行錯誤する時間はあまり残っていませんが,来年の授業ではもっと何ができないか,いまから考えていきたいと思います。
話は変わりますが,ユーキャンの新語・流行語大賞に「アレ(A.R.E)」が選ばれたことについて,異論がでています。阪神ファンとしても,別に選ばれたからと言って嬉しくはありません。関西では「アレ」は大盛りあがりで(野球には何も関係のない六甲山牧場に入るとすぐに「A.R.E」という看板があったのにはびっくりしました),私も面白がって使っていましたが,これは関西ローカルの話でしょう。野球関係の言葉に興味があるのは,年齢層からすると比較的上のほうでしょう。新語や流行が何かという感度を,年齢の高い選考委員がどれだけもっているかが疑問視されているのです。野球が国民的なスポーツであった時代は終わりつつあります。いまやスポーツと言えば,Eスポーツという時代です。
私は大学をとおしてしか世間をみることはできませんが,それでもこの間の変化の大きさをみると,新語・流行語を選ぶことが難しくなっているのではという気もします。とくに多様性の時代であり,みんなが同じように新しいと感じられるものが減ってきているはずです。個人にとっての1年ということはあっても,世相を映すというような感じの新しさや流行はとらえにくくなっているように思います。
おじさんたちが,自分たちの感覚で今年の新語・流行語を選んでも,あまり共感は得られないでしょう。もちろん,おじさんの感覚で何が悪いと開き直ることができるのも,おじさんたちの特権かもしれませんし,私にはその感覚はよくわかります。
それで,おまえにとっての新語・流行語大賞は何なのかと聞かれると,やっぱり「アレ(A.R.E)」と答えます。