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2023年12月29日 (金)

真の「働き方改革」

 日本ではテレワークが減っているという日経新聞の記事を先日紹介しましたが,アメリカでは逆に出社率が戻らないという記事も出ていました(電子版では1226日「米国、戻る外食・戻らぬ出社 新型コロナ4年で新常態」)。アメリカでも,外出はもちろん増えたそうですが,出社となると違うようです。「いまとなってはオフィス復帰(という考え)は死んだも同然である」という経済学者の言葉も紹介されていました。「在宅勤務に協力的かどうかが,仕事を選ぶ上で大事だ」というカリフォルニアのシステムエンジニアの言葉も紹介されていました。私が想定する今後の働き方はこういうものですが,日本ではどうなるでしょうか。
 私は安倍政権のときの「働き方改革」は,真の「働き方改革」ではないと言ってきましたし,2020年に日本法令から刊行した『デジタル変革後の「労働」と「法」』では,そのサブタイトルを,「真の働き方改革とは何か?」としていました。デジタル変革(DX)に正面に向き合わない働き方改革などありえないという問題意識からのものです。
 でも来年は真の働き方改革が起こるのではないかと思っています。労働力不足が深刻化し,いろんなビジネスで,人手不足が深刻になり回らなくなります。DXは必要ですが,当面はそれだけでは不十分です。最終的にはDXにより人間の労働需要は減っていくでしょうが,そこにいくまえに,まず人間の労働力の確保がある程度は必要となります。そのためには,労働条件を引き上げることが必要です。労働条件のこだわりは,人によっては賃金面のこともあれば,労働時間面のこともあるでしょう。前者の例は,運送業界です。来年4月からの時間外労働規制の強化により歩合給の頭打ちが起こる心配のあるトラック運転手の,インバウンド需要などでかなり稼げるようになっているタクシー運転手への移動が起きているようです。一方,もともとある程度の賃金水準が支払われている業界では,労働時間の削減へのこだわりがあるでしょう。ワーク(W)・ライフ(L)・バランスの意味が,WLの適度のバランスではなく,L優先,ときどきWというバランスの取り方になっていて,今後は,出社型であれば週休3日はマスト,テレワークであれば週休2日というのが,標準的な働き方になるのではないでしょうか(今朝の日経新聞でも,週休3日制が地方公務員などで導入されつつあることが紹介されていました)。さらに年次有給休暇は100%消化,休日労働は原則禁止というのも必要で,これは前から私が法制化を主張してきたことです(たとえば,2011年に明石書店から刊行した『君は雇用社会を生き延びられるか-職場のうつ・過労・パワハラ問題に労働法が答える-君は雇用社会を生き延びられるか-職場のうつ・過労・パワハラ問題に労働法が答える-』,2019年に中央経済社から刊行した『労働時間制度改革―ホワイトカラー・エグゼンプションはなぜ必要か―』(中央経済社)を参照)。 
 少し前までは非現実と考えられていた働き方が,今後は普通になるでしょう。そして,それを実現できない企業は,労働力不足で廃業を余儀なくされるでしょう。もし日本企業の大部分が,こうしたL中心の要求に応えられなければ,人材は海外流出するか,国内の外資系企業に奪われることになるでしょう。こうした事情が,真の「働き方改革」を引き起こすのです。

 

 

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