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2023年11月16日 (木)

懲戒解雇と退職金

 ビジネスガイド(日本法令)の最新号(940号)の「キーワードからみた労働法」(第197回)のテーマは,「懲戒解雇と退職金」です。第184回で「退職金」をテーマとしましたが,今回は,それと連続して,懲戒解雇の場合の退職金の不支給や減額の問題を採り上げています。宮城県教育委員会事件の最高裁判決(2023627日)で,飲酒運転で物損事故を起こした県立高校の教員が,懲戒免職と退職手当の不支給処分を受けた事件で,退職手当の3割支給を認めた控訴審を破棄し,最高裁が不支給処分の適法性を認めたことから,民間部門の相場感からはやや厳しいと思えましたので,この判決を切り口にして,少し詳しく検討してみました。実は民間部門でも,少し前に,みずほ銀行事件で東京高裁(2021年2月24日判決)がやや独特の判断基準で厳しい判断をしていたので,この論点は気になっていました。
 退職金の不支給・減額をめぐる判例法理に対しては,退職金の性質論をどう考えるか,就業規則上は退職金の不支給しか規定しない場合でも一部不支給とする法的根拠はあるのか(損害賠償ではない),さらに具体的な額としての3割とか4割といった数字は何を根拠としているのか,など不明確なところがたくさんあります。永年勤続に対する功労は完全には抹消されていないということで,一部支給を認めるとしても,基本的には退職金は企業の任意の制度で,その制度設計は労使の合意で自由にできるのであり,そこに裁判所が,ほとんど実質論だけで,介入してしまっていることの妥当性は議論の余地があるでしょう。それとは別に,本稿でも少しふれているのは,退職金の一部支給は,広い意味での解雇の金銭解決という意味もあるということです。退職金の性質論だけでなく,紛争解決の妥当性という観点からもみることができそうです。裁判官の頭には,そういう発想もあるのかもしれません。
 判例の解説は,拙稿をみてください。いずれにせよ,退職金が話題になってきている今日,これと関連する,懲戒解雇の場合の減額や不支給というテーマも,理論的な検討を深める必要があると思われます。

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