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2023年11月23日 (木)

強制ボランティアは概念矛盾

 今日は阪神とオリックスの優勝パレードがありました。神戸と大阪でそれぞれ行なわれ,神戸では午前中は阪神,午後はオリックスでした。天候もよく,多くの人が集まったようです。
 ところで,少し興ざめになるような話で申し訳ないのですが,やや気になったのは,毎日新聞にあった記事(「阪神・オリパレードへの府市職員動員 「ボランティアではない」」)です。実際に,どうなったのかわかりませんが,記事どおりですと,大阪府と市の職員がボランティアで駆り出されているというのです。職員が真に自発的にやっている場合はかまいませんが,事実上の強制があるとすると,これはボランティアとはいえませんよね。ボランティアは,イタリア語の同じ意味の言葉であるvolontarioという言葉をみてもわかるように,volontà「意志」という言葉から来ています。名詞ではボランティアの人ですが,形容詞では,自由意志による,というような意味です。仕事上の関係のある上司からボランティア活動するよう求められたとき,自由意志によるというのは,なかなか考えにくいというのが,労働法的な発想です(公務員でも同じでしょう)。
 民間企業においても,こういう大きなイベントであれば,事実上の強制ということが起こりそうですが,もちろん業務として命じる根拠がなければ,労働者は拒否できます。根拠があっても,処遇面は別の話であり,たとえばそれが就業規則上の休日でのことであれば,就業規則に基づく手当が請求できますし,法律上の休日(週に1日の休日)にあてはまれば,割増賃金の対象となります(三六協定も必要です)。労基法上の休日労働ではなくても,時間外労働による割増賃金が発生する可能性もあります(ここでも三六協定は必要です)。代休を付与したらどうなるかというのは,休日の振替をめぐる有名な論点であり,これは労働法の本を読んで確認してください。
 いずれにせよ職員は,知事や市長の駒ではないので,どうしても金を使えないというのなら,知事・市長みずからが,自分でボランティアを集めればいいのです。職員だからボランティアを頼みやすいというのはおかしいです。ボランティアに頼るという以上,むしろ仕事上の関係のない人に頼むということにしなければおかしいでしょう。
 そもそもほんとうに重要な行事であれば,きちんと税金を使って警備の人を雇うということにすべきではないでしょうか。維新は,倹約の仕方を間違っているような気がしますね。使うべきところに使わなければ,よい政治はできないでしょう。なお,神戸のほうのパレードについては,「兵庫県と神戸市の職員はいずれも公務扱いで休日出勤となり,代休が取れる」と書かれていました。

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