« 維新は反自民の受け皿になれるか | トップページ | 宝塚歌劇団問題におもう »

2023年11月13日 (月)

学生の直感的違和感

 今日は,LSの授業でも,学部のゼミでもユニオン・ショップを扱いました。偶然だったのですが,LSでは『ケースブック労働法(第8版)』(弘文堂)の第19講の「三井倉庫港運事件」を扱い,学部のゼミでは,日本食塩製造事件・最高裁判決を扱ったためにテーマがかぶりました。後者では,解雇のことを議論してもらおうと思っていたのですが,初学者である学生は,この判決については,解雇よりも,ユニオン・ショップに興味をもったようで,そちらのほうに意見が集中しました。たしかに,この判決は調査官解説をみてもわかるように,組合からの除名が無効であればユニオン・ショップ解雇が無効となることが言いたかった判決ともいえるので,そうなるのも仕方ないところがありました。それにしても,学生全員がユニオン・ショップに対する違和感を口にしたことは,こちらの予想を超えていました。たしかに,普通に考えれば,ユニオン・ショップ解雇が解雇権濫用とならないとする結論はおかしいと考えますよね。さらに除名が無効であれば解雇が無効であるという牽連説にも異論を唱える学生がいました。初学者の直感的な意見は正鵠を射ていることが多いので,私にも参考となります。彼ら・彼女らは,これから労働法を学習していくと,判例や通説に「毒されていく(?)」のでしょうが,法理のほうが時代後れの可能性もあるので,ぜひ批判的な精神をもって学んでもらいたいですし,こちらもそういう精神を刺激するような授業をしていかなければなりません。
 ユニオン・ショップ解雇への疑問と並んで,整理解雇はどうかということも少し議論をしました。労働者に帰責性がない解雇だから,こういうのは認められてよいのだろうか,だからといってリーマンショックやウクライナ戦争など企業にはどうしようもない事由による経営悪化であれば,企業にも責任がないのではないか,というような話になります。さらに,これからのDXの影響のことを考えると,これについていけない企業の衰退と本人のスキル不足という複合要因による解雇が起こることが予想されます。こうなると,労働法では手に負えなくなり,産業政策とリンクした雇用政策の出番となるでしょう。いずれにせよ,学生たちが社会に出ていく時代は,法律上の解雇制限が労働者保護として十分に機能するとは到底考えられないので,特定の企業に縛られずに,スキルアップを常にはかるというキャリア戦略が必要となります。学生時代は,そのための準備時期としなければならないでしょう。

« 維新は反自民の受け皿になれるか | トップページ | 宝塚歌劇団問題におもう »

労働法」カテゴリの記事